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世界潮流を読む 岡崎研究所論評集
北の核「もはや危機は我々の戸口にまで来ている」
2016/11/16
岡崎研究所
10月13日付のワシントンポスト紙に、同紙コラムニストのイグネイシャスが、北朝鮮の核の脅威は急速に高まっており、次期米国大統領を悩ます安全保障面での課題となろうと述べています。要旨は、次の通りです。
生死にかかわる脅威
iStock
韓国政府関係者達は、北朝鮮の核について、「生死にかかわる脅威」、「差し迫った危険」、「喉元に突き付けられた短剣」といった表現を使い、長期にわたる瀬戸際政策が新たな段階に入ったことを米国側に伝えようとしている。
ある韓国高官は、「北朝鮮の核ミサイルは4、5分でこの事務室に着弾できる。もはや危機は我々の戸口にまで来ている」と述べた。
米軍の高官も、「核の新たな脅威は朝鮮半島の外にも危険を及ぼす」と述べた。北朝鮮の核問題は次期米国大統領を悩ます筆頭の安全保障課題になるかもしれない。韓米両国は、金正恩が近隣諸国と米国を攻撃出来る核・ミサイル能力を獲得するために猛進していると見ている。
米韓両国の当局者たちは、北朝鮮の核保有への執拗な前進を阻止できなかったことに不満を感じている。外交対話、国連の経済制裁、軍事力による威嚇もすべて失敗に終わった。北朝鮮は、核・ミサイル計画以外の面では、哀れなほど遅れた国である。
中国の影響力にも限界があるようだ。アナリストたちの多くは中国なら北朝鮮に対して成功裏に圧力をかけることが出来ると見てきた。しかし、昨年、中国が4回目の核実験を行わないよう警告する特使を派遣したにもかかわらず、1月には実験が行われた。3月に、中国は、北朝鮮を非難し制裁を加える国連安保理決議を支持したが、これに対し、9月、金は5回目の核実験を行った。
この厄介な問題に米国がどのように対応すべきかについて、韓国の高官たちから有益な提案があった。第1の提案が、制裁の強化である。韓国は、北朝鮮が中国に対し石炭を輸出することを認める例外措置の廃止を求めている。石炭輸出は昨年10億ドルに達し、核計画に必要な外貨の収入源となっている。しかし、中国は隣国をこれ以上締め付けることを渋っている。
韓国のもう1つの提案は、金と北朝鮮エリートとの間に楔を打ち込むことである。朴大統領は、北朝鮮の高位層の亡命が増えているのは金体制の弱体化を示すものであり、韓国は脱北を更に奨励すべきであると述べた。
韓国が米国に最も求めていることは北朝鮮を軍事的に抑止することである。朴はTHAADミサイル防衛システムの配備に同意したが、2017年12月までは準備が整わない。韓国側は核の傘の信頼性に不安を抱く国民を米国が安心させることを求めている。具体的には、B-52、B-1爆撃機の領空飛行、米国高官の韓国訪問、両国間防衛対話等をより頻繁に行うことである。
韓国では、北朝鮮との対話再開について、世論の支持はほとんど無いが、韓米両国とも対話の扉は開けている。面子が立つ一つの方法は、米国が非核化について北朝鮮と秘密裏に予備的な対話を始め、何れ中国の協力も得て、公式の対話に繋げることである。但し、北朝鮮がそのような対話を望んでいる兆候はない。
以上のようなすべての努力が失敗に終わり、金が米国領土に届く核ミサイルを配備するに至った場合に何が起こるであろうか?「先制を優雅に云う表現が必要になる」と米国の元高官が発言した。言葉はどうであれ、次期米国大統領は、不快な軍事的選択に直面する他なくなるかもしれない。
出 典:David Ignatius‘North Korea is scarier than ever’(Washington Post, October 13, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/north-korea-is-scarier-than-ever/2016/10/13/0657cb80-9169-11e6-9c85-ac42097b8cc0_story.html
イグネイシャスが指摘する通り、金正恩が核・ミサイル開発を強力に推進し、中国がこれを許容する状況が継続すれば、次期米国大領は不快な軍事的選択に直面する他なくなるかもしれません。
必要なことは制裁の強化
国際社会がまず取り組むべきことは制裁の強化です。9月9日の北朝鮮の5回目の核実験に対する国連安全保障理事会の制裁措置はいまだに決まっていません。制裁強化に消極的な中国に対する説得努力を続ける必要があります。なお、9月下旬に米国政府が中国丹東市の貿易会社とその役員4名を北朝鮮の大量破壊兵器計画に関与したとして制裁対象に指定したケースでは、事前通報を受けた中国当局が同社の幹部らを拘束し捜査を行っていると伝えられています。
北朝鮮の核・ミサイル能力の向上に備えて米韓の「拡大抑止」能力の強化が不可欠です。米韓両国は10月10日から15日まで韓国近海で定例の合同海上訓練「不屈の意志」を米国の原子力空母も参加する史上最大の規模で実施し、10月18日にはワシントンで米韓外務・防衛担当閣僚会議(「2+2」)が開催されました。韓国の韓民求国防相は、10月14日の国会答弁で日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について「軍事的必要性を十分認識している。必要性が高まった」と述べています。
一方において、北朝鮮との対話の道を閉ざさないことも重要です。18日、北朝鮮の韓成烈外務次官が北京に到着しましたが、近く東南アジアで米国政府の元高官らとも会談すると伝えられています。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8185
ロシアと欧米、どこでどう間違った パックス・アメリカーナは終わったのか
2016/11/15
BBC News
ジョナサン・マーカス、防衛外交担当編集委員
冷戦終結以降でロシアと米国の関係がここまで悪化した時期を挙げようとしても、なかなか思いつかない。
米国の政府当局者たちはこのところ、シリア北部アレッポに対するロシアとアサド政権の猛攻撃を「蛮行」と非難し、戦争犯罪が起きていると訴えてきた。
一方でロシアの大統領は、米ロ間の関係が険悪化していると明言。オバマ米政権が求めるのは対話というより「一方的な押し付け」だと主張する。
とは言え、米国とロシアは今もシリアをめぐって連絡を取り続けている。厳しい語調や非難の応酬をよそに、シリア情勢が最終的にどういう形で解決するにせよ自分たちが重大な役割を果たさなければならないと、米ロは共に認識している。
目下の戦略的意図がどうあれ、ロシアにとってシリア内戦がいつまでも続くことは、米国の利益にならないのと同様に自分たちのためにもならない。
しかし米ロ間にそんな基本レベルの信頼関係や相互理解さえ成立していない以上、両国が対話しても足元の土台は危ういままだ。本来なら決してこんなことになるはずではなかった。冷戦の終結とともに、新しい時代が到来したはずだった。
ロシアは冷戦後しばらく国際舞台から身を引いていたものの、今では威勢よく復帰し、周辺地域で足場を固めようと躍起になっている。かつて世界で果たしていたような役割を取り戻したい、欧米から受けたとされる屈辱を晴らしたいと願っている。
ではいったい、どこからすべてがおかしくなったのだろう。ロシアと欧米はなぜ違った形の関係を築くことができなかったのか。責任はだれにあるのか。米国の出しゃばりや無神経さのせいか、あるいはロシアがソ連時代の栄光に抱く郷愁のせいか。事態がここまでこじれた原因は何なのか、そして現状を「新たな冷戦」と呼ぶのは適切な表現だろうか。
すべての質問を網羅した答えを出そうとするつもりはない。こんな複雑な話を本に書けば、トルストイの「戦争と平和」ほどの長さになるだろう。ここではただ、いくつかのヒントを投げ掛けてみようと思う。
米ジョージタウン大学の安全保障研究センターで上級研究員を務める元中央情報局(CIA)高官、ポール・R・ピラー氏は、最初に問題となる行動を起こしたのは欧米側だったと指摘する。
「関係悪化のきっかけになったのは、ロシアに対する欧米の態度だ。ロシアはソビエト共産主義を放棄した国として、ふさわしい扱いを受けなかった」とピラー氏は語る。「新たな国際社会に新生国家として迎えられるべきだったのに、実際はソ連の後継国と見なされ、欧米から不信の目が集中する国という位置づけを引き継いでしまった」
これが、言ってみれば原罪だった。欧米はそのうえ北大西洋条約機構(NATO)の拡大に熱中し、まずポーランドやチェコ、ハンガリーといった国を取り込んだ。ソ連の支配に長年抵抗してきたナショナリズムの伝統を持つ国々だ。
しかしNATO拡大はそこにとどまらず、旧ソ連の一角をなしていたバルト三国のような国にも及んだ。この結果、今度は旧ソ連のジョージアやウクライナまで欧米の勢力圏に入るのではないかという恐怖感をロシアが抱いたとしても、何の不思議があるだろう――と、専門家たちは指摘する。
要するにロシアには、自分たちが冷戦終結以来ずっと不当な扱いを受けてきたという思いがあるのだ。
これはもちろん、欧米側の通説ではない。欧米ではウラジーミル・プーチン大統領に代表されるような、ロシアの「報復主義」に注目する見方が強い。そのプーチン氏は、ソ連崩壊を20世紀「最大の地政学的悲劇」と呼んだ人物だ。
米シンクタンクの専門家の間では、どちらの説が正しいかをめぐり興味深い論争が繰り広げられている。欧米が新生ロシアへの対応を誤ったという初期の戦略ミスに注目すべきか、あるいはロシアが近年ジョージアやシリア、ウクライナで取ってきた強引な行動に目を向けるべきか、という論争だ。
英情報部(MI6)の前長官でかつて国連大使も務め、近年のロシア外交を見守ってきたサー・ジョン・ソワーズは、より直近の時期に注目すべきだと言う。
同氏はこのほどBBCとのインタビューで、欧米は過去8年間、ロシアと適切な戦略的関係を築くことに十分な注意を払ってこなかったという見方を示した。
「米国とロシアが基本ルールを明確に理解していれば、つまり互いの体制を打倒するつもりはないと分かっていたなら、シリアやウクライナ、北朝鮮など、急速に迫ってくる局地的な問題はもっと簡単に解決できるはずだ」
筆者が話を聞いた何人かの専門家もまた口を揃えて、オバマ米政権による外交の不手際を指摘し、米国が発してきたシグナルはしばしば曖昧で矛盾していたと批判する。
米国が持つ絶対的な力は衰えているかもしれないが、では今も残るさまざま影響力をどう行使するかというと、煮え切らない態度が目立つ。例えば、米国はアジアへ軸足を移そうとしているのか。欧州や中東での役割を、実際にはどこまで軽視しているのか。
自身の発言を武力で裏付ける用意はあるのか(シリアに関しては今のところ、答えはノーだ)。また、ロシアに対して自らが取ってきた立場はどんな影響をもたらすか、本当にじっくり考えたことがあるのだろうか。
ロシアが2014年にクリミア半島を併合した後、プーチン氏はロシア議会での演説でこう強調した。「ばねは限界まで押さえつけたら、強い勢いで跳ね返す。このことを覚えておくべきだ」と。
米ロ関係の専門家ニコラス・グボスデフ氏は、実利的なリアリズムの見地に立つ米外交専門誌「ナショナル・インタレスト」のウェブサイトで、「賢明な対応は2つに1つ。ばねにかかる力を緩める方法を見つけるか、跳ね返りに備えて衝撃を和らげられるようにしておくかのどちらかだ」と
過去のミスが何だろうと誰のせいだろうと、決まり文句にもある通り、我々がこの場所にいることに変わりはない。ならば、この場所とはどこだろう。米国とロシアは本当に、シリアをめぐって衝突する一歩手前まできているのか。筆者はそうは思わない。では、我々が「新たな冷戦」に突入しようとしているという説はどうか。
まずピラー氏は、冷戦という言葉が的確でないと考える。「冷戦を特徴付けたような世界規模のイデオロギー対立はない。また幸いなことに核軍拡競争も起きていない」。
「残るは影響力をめぐる大競争だが、ロシアはかつての旧ソ連ほどの大国ではないし、今も超大国であり続ける米国にはかなわない」
それでは将来はどうか。米国の大統領選を前に、ロシアは当面自分のしたい放題だと判断したのかもしれない。このチャンスにあちこちの紛争地域を思い通り方向付け、ホワイトハウス入りする次期大統領に既成事実として突きつけようとしたふしがある。
2008年にロシアとジョージアが戦った南オセチア紛争を受けて、米ロ関係が冷え込んだ時の状況とよく似ている。ブッシュ前政権の対ロシア政策は崩壊し、その混乱をオバマ大統領が引き継ぐことになった。
当時、ヒラリー・クリントンという名の国務長官がロシアとの関係を「リセット」しようとした、あの有名な外交方針を覚えているだろうか。結局あまり大きな成果は出なかった。
ソワーズ前MI6長官はBBCとのインタビューで「米国の次期大統領には、従来と違った対ロ関係を築くという大きな責任がかかっている」との見方を示し、「その大統領がヒラリー・クリントン氏であることを、私は強く望んでいる」と付け加えた。同氏によれば「我々が求めるのはロシアとのより温かい関係でも、より冷たい関係でもない」という。
「求められているのは、両国が世界の安定にどう貢献するかという点について、ロシアと戦略的合意に達すること。欧州を挟んでロシアと米国の間が安定すれば、世界の本質的な安定を支える土台はこれまでより堅固なものとなる」
米国の一極体制を意味する「パクス・アメリカーナ(アメリカによる平和)」の時代は「非常に短命だった。そしてすでに終わっている」――ソワーズ氏はそう言い切った。
(英語記事 Russia and the West: Where did it all go wrong?)
提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-37983764
- 報道にはすべて裏がある 韓国・朴槿恵大統領が辞められない理由 トランプ氏とプーチン氏、米ロ関係修復に努力すると合意 軽毛 2016/11/16 15:56:34
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