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世界潮流を読む 岡崎研究所論評集
米軍近代化へサプライズ投資
2016/11/07
岡崎研究所
カーター米国防長官が9月29日空母カール・ビンソン艦上でアジア太平洋リバランス政策につき演説し、アジア太平洋配備の米軍戦力の近代化と同盟国の間のネットワーク強化を進めていくとの決意を表明しています。主要点は次の通りです。
iStock
米国が単独でやるのではない
今の主要な安全保障上の課題は、@ロシア、A中国、B北朝鮮、CイランDISISの5つ。5年前にオバマ大統領が発表したリバランス政策は米国の国家的なコミットメントである。この地域をすべての国が台頭し繁栄することができる地域にするために外交、経済、軍事の政策を進めるものである。
米国が単独でやるのではない。米国は友邦国や同盟国との間で「原則に基づく包含的な安全保障ネットワーク」を築くことを通じて行う。
戦後米国は、「紛争の平和的解決、外部からの強制・脅迫不行使、国際法に基づく航行飛行の自由など」の重要原則を擁護してきた。それにより日本等が発展し、今や中国やインドが続いている。TPPは最重要な非軍事のリバランス政策である。米国はTPPをやらねばならない。
北朝鮮の核開発の他、東シナ海や南シナ海、インド洋などの海洋は将来にとってリスクとなっている。原則擁護のために米は国際法が許す飛行、航行、行動を続ける。
リバランスの第一段階である過去5年の間、米国は展開部隊の量と展開位置を強化した。この地域に数万人の兵士を追加的に派遣し、2020年までに米国の海外展開海軍と航空アセットの6割を当該地域に展開することを決めた。リバランスは昨年から第二段階に入った。米国の最新兵器(F22やF35ステルス戦闘機、P8哨戒機、戦略爆撃機、DDG1000ステルス駆逐艦など)をアジア太平洋に展開する。最新の戦略等も策定している。
同盟国等との連携を強化する。アジア太平洋の要である日米同盟は強力である。韓国にはTHAADを配備する。豪州との同盟はグローバル化している(イラク、シリアでも協力)。比との同盟は堅固で、防衛協力強化合意により比軍の近代化を支援している。
米印関係は緊密である(防衛技術貿易イニシアティブ等)。シンガポールには米国の沿岸戦闘艦船やP8哨戒機が展開中。越には軍事機器の移転が可能となった。今秋には米の駆逐艦が30年ぶりにニュージーランドを訪問する。
海洋安全イニシアティブ
昨年、米国は比、越、インドネシア、マレーシア、タイの間で「海洋安全イニシアティブ」に合意、ハードウェアの供与を含めてこれらの国々の間の協力強化を支援していく。米国は中国との間で意思疎通強化や計算間違い低減のために、最近、海洋行動に関する措置と危機意思疎通の措置という二つの信頼醸成措置を締結した。軍高官協議も定期的に開催。しかし、海洋、サイバーなどでの中国の最近の行動については深刻な懸念を持っている。中国は原則の摘み食いをしようとしている。中国は国際社会の原則を等しく順守すべきだ。
リバランスの第三段階では、米軍の戦力を先鋭にする。詳細は言えないが、サプライズの投資もする。アジア太平洋の国々は米との連携を求めている。米国はこれに応えていく。それにより「原則に基づく包含的な安全保障ネットワーク」が確実に発展する。それは正式の同盟ではないが、安全保障の協力と原則の擁護に資する。
ネットワークは既に進展している(日米韓協力の進展、インドネシア、マレーシア、比による共同海洋パトロール開始、ASEAN国防相会議プラスなど幅広い多国間枠組みの芽生え)。将来、豪州のP8にシンガポールの要員が乗り込み、米の駆逐艦と連携して捜索救助活動ができるかもしれない。航行の自由もネットワーク参加国の共同パトロールによって守っていくことができるかもしれない。
出典:Ashton Carter,‘Remarks on “The Future of the Rebalance: Enabling Security in the Vital & Dynamic Asia-Pacific”’(U.S. Department of Defense, September 29, 2016)
http://www.defense.gov/News/Speeches/Speech-View/Article/959937/remarks-on-the-future-of-the-rebalance-enabling-security-in-the-vital-dynamic-a
米国のリバランス政策を知る上で有益な演説です。手堅い力量を発揮しているカーター長官のリバランスにかけるコミットメントの強さが窺われます。日本にとっては心強い政策宣言となっています。
サプライズ投資
キーワードは、@米展開部隊の質的、量的拡大、A「原則に基づく包含的な安全保障ネットワーク」の構築という二つです。戦後のアジア太平洋のハブ・アンド・スポーク体制に多国間協力の枠組みを補強していくものであり、理屈に合う政策方向です。ここでは、「原則」と「包含」という二つの制限句が目を引きます。紛争の平和的解決や国際法順守など国際社会の原則の重要性を強調しています。他方で、排他的なものでないことも示そうとしています。しかし、いずれもアジア太平洋で挑戦を惹起している台頭する中国に対して、「立ち向かう」ことと「中国封じ込めではない」ことを念頭に置いた文言であることは明白です。
オバマ大統領もカーター長官も約3カ月で任期が終わります。日本としては、リバランスが次の米政権にも引き継がれていくよう見届けることが重要です。なお、本演説がTPPの重要性を述べていること、詳細は言えないとしつつ、リバランス第三段階でサプライズの投資をする」と述べていることなどにも関心を惹かれます。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8128
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