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F-35、なぜメタボ? 戦闘機の常識を覆す「ずんぐりむっくり」の理由
http://trafficnews.jp/post/58985/
2016.10.23 乗りものニュース
航空自衛隊にも導入されているF-35A。F-2戦闘機などと比べると、ずいぶんと特徴的な「体形」です。そこには、従来機とは発想から異なる「納得の理由」が反映されていました。
■意外と小さかった? 実物大F-35A
東京ビッグサイト(東京都江東区)で2016年10月12日(水)から4日間にわたり開催された「2016年国際航空宇宙展」において、航空自衛隊の次期主力戦闘機ロッキード・マーティンF-35A「ライトニングII」の、実物大モックアップ(模型)が展示されました。
あくまでも模型ではありますが、機体の下に潜れるなど自由に見学可能だったこと、またコックピットに搭乗できたことなど、実機では無いがゆえかえって間近でF-35Aを体感できる機会とあって、連日、多くの見学者を集めました。
体形が「ずんぐり」している戦闘機F-35A「ライトニングII」(写真出典:アメリカ空軍)。
SNSなどにおける反応を見ると、「意外と小さい」という印象を抱いた人が少なくないようです。それもそのはずで、F-35Aは現在、航空自衛隊が配備する戦闘機のなかでは最小であるF-2とほぼ同等の、全長15.4m、全幅10.7mしかありません。
F-35Aは寸法の上では小さく、とてもずんぐりむっくりした、悪くいえばメタボ(メタボリックシンドローム)のような見た目で、実際にも非常に重い戦闘機です。その最大離陸重量はおよそ31トン。これは、全長19m以上と遥かに巨大な空自戦闘機F-15Jにも匹敵します。
それゆえに一見すると「カッコイイ戦闘機」とは無縁な、野暮ったい姿に思えるかもしれませんが、ところがこの見た目にこそ、「F-35Aのすごさ」が秘められているのです。
通常、戦闘機は小さければ小さいほど有利です。空気抵抗を最小限に抑えられますし、機体構造も軽くできます。ところが、小さいとどうしても装備品を機体の外に搭載せねばならず、実際、空自のF-2などはミサイルや爆弾、追加の燃料タンク、前方監視赤外線センサー(FLIR)など多くの装備を外付けしています。
しかし、F-35Aは大容積の機体のなかに、これらをすべて収容できます。ミサイルや爆弾は胴体下のウェポンベイ(兵器庫)内部に格納、また機内燃料タンクの容量は、F-2の機内タンクと外部燃料タンク2本分にほぼ匹敵。前方監視赤外線センサーは機首部に標準搭載されるほか、あらゆる方向を自動監視する「全球覆域状況認識センサー(EO-DAS)」など、F-2には存在しない多くの高性能な装備も詰め込んでいます。
F-35Aモックアップのウェポンベイ内部。左から「JDAM GPS誘導爆弾」、「AIM-120空対空ミサイル」がふたつ、右端が「JSOW GPS巡航ミサイル」(関 賢太郎撮影)。
加えて、エンジンを1基しか搭載しないにもかかわらず、そのパワーはエンジン2基を搭載するF-15にほぼ匹敵。大重量を支えるに十分といえます。戦闘機を構成する部品のなかで最も大きいエンジンを1基で済ませているのですから、単純にエンジンまる1基ぶんの容積や重量を、そのほかの搭載物にあてることを可能にしています。
現代の空中戦は、高度なレーダー・センサーや妨害装置、ネットワークシステムといった電子機器や、それらを制御するコンピューター同士の戦いです。さらに、機体の外側を「綺麗(クリーン)」に保てるF-35はレーダー反射をも低減でき、優れたステルス性も獲得しています。
■F-35は戦闘機だけど「戦闘機」じゃない?
F-35は重いぶん、機動性などに劣るのではないかという指摘もあります。確かにそれは、一部事実かもしれません。しかしほかの戦闘機も、装備品を外部搭載してしまえば重くなります。そして外部搭載すればするほど、F-35以上に空気抵抗が増えてしまうことを考えれば、それほど大きな弱点とはいえないでしょう。
F-35は、卓越したセンサーで敵を先に発見し、ステルス性を生かして自らは発見されることなく、遠くからミサイルを射撃することを基本とします。いわば、新しい世代の「情報共有ネットワークを礎とする航空戦」における、「兵装投射・センサー端末」であり、“既存の戦闘機とは全く別種の兵器”です。
F-35Aモックアップのコックピット。実機の射出座席は、先ごろ生還実績のべ7500人を突破したマーチン・ベイカー社製(関 賢太郎撮影)。
パイロットもこれまでの戦闘機とは異なり、単に「戦士」としての資質だけではなく、“F-35というシステム”を使いこなす「オペレーター」としての能力も要求されるようになりました。
ロッキード・マーティン社はこれについて、従来の常識を根底から覆す「ゲームチェンジャー」と表現しています。実際、アメリカ空軍のF-35Aは、既存の戦闘機とのある演習において、1度も発見されることなく一方的に27機を撃墜するという、無敵の戦果をあげています。
F-35の見た目は、「カッコイイ戦闘機」とは無縁であるかもしれません。しかしそれは、もはや従来の価値観では測りえない、新しい世代の設計思想を反映した「新しい価値観による美しさ」を持っているからだといえます。
【了】
【写真】F-16戦闘機と比べずんぐりなF-35
奥がF-35で、手前が1974年に初飛行し、現在もアメリカを始め各国で使用されているF-16戦闘機。空自のF-2もF-16が原型機(写真出典:アメリカ空軍)。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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