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北朝鮮のムスダン級ミサイル(2012年4月15日撮影、資料写真)。(c)AFP/Ed Jones〔AFPBB News〕
北朝鮮の核・ミサイル実験、次はいつ行われるのか 「記念日」に決行?しかし過去の事例から読み解くと・・・
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48159
2016.10.20 黒井 文太郎 JBpress
10月15日、北朝鮮は中距離弾道ミサイル「ムスダン」を発射したが、発射直後に爆発した。失敗に終わったわけである。
これより先、北朝鮮では豊渓里の核実験場や、東倉里の西海衛星発射場、元山のミサイル部隊基地での特異な動きが報告されていた。そのため、新たな核実験、もしくはミサイル発射実験が行われる可能性が高いと目されていた。
今回のムスダン発射実験は、それらの警戒されていた場所ではなく、西部の亀城近郊からの発射だった。ムスダンは専用の自走発射機(TEL)に搭載されており、北朝鮮のどこからでも奇襲的に発射できるが、今回はそういった運用手順の確認も兼ねての発射実験だったものと思われる。
今回は失敗に終わったが、それで止めることはあるまい。今後、失敗の原因解明が急ピッチで進められ、改良され次第、再発射となるだろう。
■「実験」は記念日に行われる?
ところで、前述したように今回は、核かミサイルの実験を近々やるだろうと警戒されていたが、その実施日については、前々から10月10日の可能性が指摘されてきた。朝鮮労働党の創立記念日にあたるからだ。
北朝鮮がいつ核やミサイルの実験を実施するかというのは、最終的には金正恩の判断なので事前予測は困難なのだが、「記念日に行われるだろう」という見方がある。国の記念日に大きな軍事行動を実施することは、国内で金正恩の威厳を示すデモンストレーションになるからというのが、その論拠である。
たしかに、前例がある。2012年4月の金日成生誕100周年の記念イベントがそれだ。その時は大々的に「衛星打ち上げ」を事前宣伝したうえで、同月13日に実際にロケット(テポドン2改と同じもの)を発射した。結果的にその打ち上げは失敗ではあったが、その時にロケット打ち上げを試みたのは、疑いなく金正恩政権の威厳を示す意図があった。
しかし、それ以外では、どうだったろうか? 過去事例を振り返ってみよう。
なんらかを記念する日というのは、細かなものも挙げればキリがないが、金正恩の威厳を示すに値する記念日となれば、ほぼ以下のような日が挙げられる。
1月8日(金正恩誕生日)
2月16日(金正日誕生日)
4月15日(金日成誕生日)
4月25日(朝鮮人民軍創設記念日)
7月27日 朝鮮戦争休戦記念日
8月15日(太平洋戦争終戦記念日)
8月25日(金正日が先軍政治を始めた日)、
9月9日(建国記念日)
10月10日(朝鮮労働党創立記念日)、
12月27日(憲法記念日)
また、記念日ではないが、2016年5月6日から9日にかけては36年ぶりの朝鮮労働党大会が開催された。その期間なども、実施日としては金正恩の威厳をアピールする政治的な動機付けはあるといえる。
■必ずしも記念日とは限らない核実験
では、核やミサイル、あるいはその他の北朝鮮の大きな軍事行動を検証してみよう。
まずは核実験だが、これまで5回実施されている。もしかしたら起爆に失敗しただけで他にも実験が試みられたことがあるかもしれないが、失敗していれば外部には分からないので、ここでは実際に爆発した5回をみてみよう。
第1回が2006年10月9日、2回目が2009年5月25日、3回目が2013年2月12日、4回目が2016年1月6日、5回目が2016年9月9日となっている。
ミサイル発射の場合、天候によって実施日がズレるということはあるが、核実験は地下なので、任意の日に実施できる。したがって、北朝鮮はこれらの日を自ら選んで実施したわけである。もしかすると本来はそれより前に予定していたものが、準備が間に合わなかったという可能性もあるが、それは外部からは分からない。
ともあれこれらの日付をみると、上記した記念日にあたるのは、5回目の9月9日で、建国記念日である。それ以外では、1回目の10月9日が朝鮮労働党創立記念日の前日、3回目の2月12日が金正日誕生日の4日前。4回目の1月6日が金正恩誕生日の2日前。2回目の5月25日は特に記念日にはあたらない。
こうしてみると、かなり微妙である。もしも政権の威厳のために記念日にぶつけるなら、やはり最も重要な金日成の誕生日に合わせてくるのではないか。あるいは記念日を祝うために直前に実施したいのであれば、前日か2日前あたりではないか。いずれにせよ、核実験は記念日と一致した時もあるが、必ずしも記念日とは限らないことが分かる。
■ミサイル発射実験と記念日の関係は?
次にミサイルをみてみる。
ノドンの発射実験は1993年5月29日、2006年7月5日、2016年3月18日、7月19日、8月3日、同年9月5日(一部推定含む)。
テポドンは1998年8月31日、2006年7月5日(失敗)、2009年4月5日、2012年4月13日(失敗)、同年12月12日、2016年2月7日。
ムスダンは2016年4月15日(失敗)、同年4月28日(失敗)、5月31日(失敗)、6月22日、10月15日(失敗)。
また、準中距離弾道ミサイル級の打ち上げとしては、潜水艦発射ミサイル(SLBM)「KN−11」が2016年8月24日に発射されている。
これらのうち、前述した金日成生誕100周年でのテポドン発射(衛星打ち上げ)の試みを除くと、ムスダンの1回目(失敗)が金日成誕生日であるだけで、あとはどの記念日とも重なっていない。つまり、ほとんどのミサイル発射実験が、記念日とは関係なく実施されているのである。
たとえば2016年5月の朝鮮労働党大会で「核ミサイル武装」を高らかに宣言しているように、北朝鮮は核やミサイルの実験を国内向けアピールに利用している。成功した実験については国内で大々的に報道し、金正恩の指導力の成果だとして喧伝している。しかし、特に記念日や行事に合わせて日程を組んでいるわけではない。国内向けアピールが主目的ではないからだ。
金正恩政権は、国内での絶対的な権力の維持のためには、徹底した粛清で対応している。核もミサイルも国内で威厳を保つために開発しているわけではない。メインは国内問題ではなく、対外問題なのだ。したがって、北朝鮮の核実験やミサイル発射実験を予想する際に、記念日の日付はあくまで副次的な要素でしかない。
ちなみに、核・ミサイル実験以外の軍事行動として2つの事件をみてみると、韓国海軍コルベット「天安」の撃沈が2010年3月26日、延坪島砲撃が2010年11月23日である。はやりいずれも記念日とは関係がない。
■テポドン発射の名目は「人工衛星打ち上げ」
現在、急ピッチで核・ミサイル実験を繰り返す北朝鮮指導部の狙いは、アメリカの軍事介入を回避しつつ、一刻も早く核ミサイル戦力を拡充し、アメリカに対する抑止力を手に入れることであろう。そのために、必要な実験は実施したいはずである。
しかし、北朝鮮の核ミサイル開発は国際社会から危険視されており、核実験も「弾道ミサイルの技術を使ったいかなる発射実験」も国連安保理決議によって禁止されている。それに対して北朝鮮は自分たちが危険な存在ではないと主張し、アメリカに追い詰められてしかたなくやっているのだという論法で自己正当化している。国連加盟国である以上、安保理決議を遵守する義務があり、それに違反するのは禁じ手になるわけだが、それでも決定的な孤立化を避け、安保理常任理事国である友好国の中国に助けてもらいやすいように、自己正当化するわけだ。
そのため、2013年の3回目の核実験までは、まず「人工衛星打ち上げ」と称したロケット(テポドン)発射を実施した。
テポドンの発射は、初期を除いて基本的には「人工衛星打ち上げ」を名目としている。そして国際社会の制裁を受けると、「平和的な宇宙ロケット発射なのに、それを口実にアメリカは自分たちを追い詰めようとする。自分たちを不当に滅ぼそうとしているから、自衛のために核爆弾を持たざるを得ない」との理屈を振り回す。最も国際社会に危険視される核実験は、こうした手順を踏んで行われてきたのだ。
ムスダンの場合は、(2007年の軍事パレードに登場したことがアメリカの偵察衛星に探知されているが)一度も発射実験することなく長年が過ぎ、初めて発射実験が行われたのは2016年4月だった。その間もおそらく発射実験をしたかったはずだが、「人工衛星打ち上げ」との口実が使えないため、アメリカを刺激する発射は自制したのであろう。実験失敗が続いていることから、技術に自信がなかったのかもしれないが、それでもそこを克服するための技術開発に、実験は必要だったはずだ。
■「アメリカの敵対政策のせい」と開き直り
ノドンその他のミサイル発射では、多くのケースで、北朝鮮は米韓軍事合同演習を口実に利用している。「米韓が自分たちを攻撃する訓練をするから、自分たちも対抗手段を持たなければならない」との理屈だ。
2016年に入り、北朝鮮はそれまでのように衛星打ち上げを口実にしたり、あるいはウラン濃縮施設の建設に原発計画を口実にしたりするなどのカムフラージュを捨て去り、「米韓が自分たちを攻撃する準備を進めているから、自衛のために核ミサイル武装が必要だ」と開き直って、安保理決議違反である核とミサイルの実験を矢継ぎ早で推し進めている。
北朝鮮側の何が変わったのかといえば、おそらく核爆弾の小型化に成功し、核弾頭を実現化したことで(あるいはそのメドが立ったことで)、アメリカももはや容易に自分たちに手は出せないとの自信を得たのではないか。
今後も北朝鮮はもはや一切の遠慮をすることなく、核とミサイルの実験を、自分たちが必要だと思う時にやっていくだろう。
その口実として利用されるのは、「アメリカの敵対政策」だ。したがって、核・ミサイルの実験の日付としては、アメリカあるいは国連安保理などが何かしらの対北朝鮮アクションを起こしたことに「反発」する体裁がとられる。10月15日のムスダン発射も、その流れにほかならない。米空母ロナルド・レーガンも参加する大規模な米韓合同軍事演習の最終日が、まさに10月15日だった。
最終日にぶつけてきたのは、もしかしたら意図的ではなかったかもしれないが、「北朝鮮は米韓軍事演習を非難する立場から、対抗手段をとらないわけにはいかない」「米韓演習期間中なら核・ミサイル実験の大義名分を主張しやすい」「ただし、米韓軍事演習の最中に実施すると、臨戦態勢の米韓軍の過剰反応を引き起こす可能性がある」「米韓軍がさらに対抗措置をとった場合、北朝鮮はさらに対抗しなければならない」などの諸条件を考慮すれば、米韓軍事演習最終日はたしかにミサイル発射をしやすい日ではあったといえる。
さて、次に注目されるとすれば、現在、米中を中心に調整中の「5回目の核実験に対する国連安保理の制裁」がまとまった時だろうか。北朝鮮はそうした圧力を「不当な敵対行動」と断じ、しばしば自らの軍事行動の口実に利用するからである。
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