http://www.asyura2.com/16/warb18/msg/818.html
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シリア内戦で民間人を殺している「空爆」の非人道性/川上泰徳
2016年10月14日
http://www.newsweekjapan.jp/kawakami/2016/10/asyuracom-22.php
(抜粋)
<国際社会は「無差別空爆」の非人道性に対する認識が低すぎる。5年半を過ぎたシリア内戦で、アサド政権軍とロシア軍が反体制地域に空爆を繰り返し、子供・女性を含むおびただしい数の民間人の死者を出している。米欧の有志連合による空爆でも同様だ。人権団体は悲惨な現状をリポートしているが、今も関心は低い>
(中略)
10月初めにフランスとスペインは、ロシア軍によるアレッポ上空の軍用機飛行および空爆の停止を求める決議案を国連安全保障理事会に提出したが、ロシアは拒否権を行使した。フランスや米国は、反体制地域に対するロシア軍やアサド政権軍の空爆を国際司法裁判所などに提訴する可能性も示唆している。
やっと悲惨な空爆に関心を向ける動きが出たようにも見えるが、空爆の非人道性への関心というよりも、米欧とロシアの政治的な確執の色合いを強く帯びている。ちなみに、米軍が主導し、フランス軍も積極的に参加する有志連合のIS空爆は、イラク側で2014年8月から、シリア側では9月から始まったが、SNHRの集計によると、誤爆や巻き添えによって、これまでに約600人の民間人の死者が出ている。ロシア軍空爆による3000人を超える民間人の死者は許せないが、有志連合による600人の民間人の巻き添えはやむを得ないという議論は成り立たない。
政権軍であれ、ロシア軍であれ、さらに有志連合であれ、民間人を巻き添えにする空爆に対する認識の甘さが世界に蔓延している。空爆で民間人が殺戮されることの重大性が軽視されている。
ISの残酷行為に目を奪われ、現実が見えていない米欧
シリア内戦に限って言えば、政権軍やロシア軍による激しい空爆がこれまで続いてきた理由の一つは「イスラム国(IS)」の存在だろう。米欧は、ISの残酷行為に目を奪われて、ISさえ排除すれば、シリア内戦の問題が解決するかのような幻想に陥っている。
ドイツの国際放送「ドイチェ・ヴェレ(DW)」に興味深い記事が掲載された。昨年、100万人の難民が地中海を渡って欧州に押し寄せた。最も多くの難民を受け入れたドイツで昨年10月、人権組織が約900人の難民に対して、難民化した理由について質問した。70%が「アサド政権の攻撃から逃れた」と答えたという。この調査結果を伝えたDWの記事に、調査に関わったドイツ人人権活動家の次のようなコメントがある。
「ドイツでは多くのシリア難民が出ているのはISのせいだというイメージが広がっているが、それとは異なる調査結果が出て驚いている。ISとの戦いを続けても、難民を減らすことにはならないということを示す。ドイツの外交官は念頭に置いておくべきだ」
この調査から分かるのは、シリアの難民問題を収束させられるかどうかは、市民を無差別に殺戮するアサド政権の空爆をいかに終わらせるかにかかっているということである。シリア内戦が引き起こした現実に直面しているドイツでさえ、「イスラム国」の肥大化したイメージにごまかされ、現実をとらえきれていない。DWが書く「多くのシリア難民が出ているのはISのせいだというイメージ」はドイツ人だけの幻想ではなく、難民問題を引き受けようとしない欧米諸国や日本ではもっと深刻であろう。
このことは、米欧が重視するISのテロともかかわってくる。米欧でのISのテロの発端となったのは、有志連合の空爆に対する報復として、ISの報道官のアドナニが「民間人、軍人の区別なく、有志連合に参加する国々の国民を、あらゆる可能な手段を使って殺せ」と声明を出したことである。
その声明の中に、次のような下りがある。
「信仰者たちよ。あなたたちは十字軍の軍隊が市民も戦士も区別せずに、イスラム教徒の土地を空爆している時に、アメリカ人やフランス人、さらに他の有志連合の国民が、この地球を安全に歩くのを放っておいているのか? 彼らは3日前にシリアからイラクに運航するバスを空爆して、9人のイスラム教徒の女性を殺害した。あなたたちはイスラム教徒の女性たちや子供たちが昼夜なく続く十字軍の爆撃機の轟音を恐れて震えている時に、不信仰者どもを家で安全に眠らせておくのか? あなたたちは自分の兄弟を助けることなく、キリスト教徒の胸に恐れを投げ入れることもなく、彼らによる数多くの空爆に対して何かしようとすることもなく、人生を楽しみ、安眠を得ることができるというのだろうか?」
有志連合によるIS空爆によって600人の民間人が殺害されているというリポートが、中立的な人権組織から出ていることを考えれば、空爆に報復を求めるIS報道官の声明は、IS支持者にはいまなお意味をもっているだろう。ISが自らが支配している民間人の命を尊重しているというつもりは全くないが、逆に、欧米もIS支配下の民間人を軽視しているという点では同列であろう。
(後略)
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