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F-22ラプター(写真:PIXTA)
F-35にステルス無人機…軍事戦略を覆す最新兵器の狙い
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161013-36278624-bpnet-pol
nikkei BPnet 10月13日(木)10時4分配信
2016年9月23日、米国テキサス州フォートワース空軍基地において、日本の航空自衛隊向けステルス攻撃機F-35Aの受領式典が行われた。1機約150億円とも言われる高額アセットを42機も購入する計画には様々な意見がある一方、この飛行機は、現代の軍事兵器の中で、間違いなく最大のゲーム・チェンジャーとなる。単にレーダーに映らないだけでなく、これまで経験したことのないテクノロジーを活用し、既成概念を打ち破る戦い方が編み出される可能性さえある。
斬新で、敵を圧倒するコンセプトは、それまでの戦い方を塗り替え、旧コンセプトとの相乗効果も生み出しながら、革新的な戦略環境を創り出す。世界の“脅し合うリーダーたち”は、そのような既成の戦略を覆す最新兵器の開発や調達に余念がない。今回は、米国を中心とする最新兵器の動向や作戦コンセプトを紹介し、世界の軍事戦略にどのような転換が起きつつあるのか、その一端に触れてみたい。
■「見えないステルス機」の驚異的な価値
「ステルス」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。ステルス攻撃機は相手方のレーダーに映らないため、敵からの妨害を受けることなく容易に相手領空へ侵入、自由なタイミングで目標を攻撃することが可能な兵器だ。敵は突然の攻撃に衝撃を受け、自分との戦力格差を痛感。これにより、早期に戦闘終結のチャンスが生まれる。F-35に“Lightning”(稲妻)のニックネームが付されている所以(ゆえん)だ。
同じステルス性能を持つF-22“Raptor”(ワシ、ハヤブサなどの「猛禽類」)は、登場間もない2006年、米軍内での演習において、自らは一機の損害も受けることなく108機もの旧世代戦闘機を模擬撃墜、2008年には221機の模擬撃墜を記録し、関係者を驚愕させた。単純計算で戦力格差は約100倍以上に達し、もはや同じ飛行機と考えるべきではない。
効果はそれだけではない。レーダーに映らない特性を生かして相手の地上目標近くで偵察したり、得られた情報を媒介する“センシング・アセット”としての有用性が非常に高い。9月12日、米海軍はF-35による模擬弾道ミサイルの追尾実験に成功。さらに開発が進めば、イージス艦のレーダーでは捉えることができない、水平線の向こう側から打ち上げられた弾道ミサイルを探知し、イージス艦に情報を伝送してミサイルの迎撃を支援することが可能となる。
航空自衛隊がF-35Aを受領した2日後の9月25日、中国は、戦闘機と爆撃機などから成る8機編隊を沖縄本島と宮古島の間に飛行させ、沖縄方面全域での作戦遂行能力を誇示。10月1日には、開発中の中国製ステルス戦闘機J-20の最新画像が公開されたと中央日報が画像付きで報道。日本との間に圧倒的な戦力格差が存在しつつあることに警戒している、と見れなくもない。
F-35をはじめとするステルス機を開発・維持するには、高度な技術が必要となるため、保有できる国が限定される。しかも、持った方が圧倒的に有利となる上、既存の戦力との新しいシナジー効果も生み出す。かつて核兵器が初めて登場した時のように、新たな戦略を形作る可能性のある恐るべき存在となるだろう。現在、中国のほか、ロシア、日本も独自に開発中であり、実用化に向けて日進月歩の激しい競争が繰り広げられている。
■戦略を転換する、次の最新兵器コンセプト
戦略の転換を起こす兵器は、ほかにも様々なものがある。
その一つは、ステルス技術を無人機に応用するコンセプトだ。無人機は、人的な犠牲を最小限にできるメリットがあり、これまでにも攻撃機や偵察機として実用化されている。その無人機にステルス技術を適用することにより、相手方の対空兵器で撃ち落とされる可能性を排除し、任務の成功率を極限まで引き上げる試みだ。
2006年、米国は「4年ごとの国防計画の見直し(QDR:Quadrennial Defense review)」において、空母に搭載可能な長距離無人機を開発することを決定。以来、米海軍が無人ステルス機の開発プログラムを進めてきた。
無人偵察機がステルス性能を持つことで、敵に近い危険な領域で長時間滞空しつつ、攻撃目標を継続的に監視し、正確に識別することが可能となる。そして得られた情報をリアルタイムにネットワークで自軍に共有。例えば、そのデータを遠方で待機する爆撃機が受け取り、長射程のミサイルでピンポイント爆撃する、という戦術も可能となる。
無人機の特性をステルス性能とハイブリッドすることにより、旧型の兵器は必要以上に戦域に近づかずに済み、結果として戦争による自国軍隊の犠牲者が少なくなり、厭戦機運を低減させることにつながる。
また、「通常兵器による迅速なグローバル・ストライク」(CPGS:Conventional Prompt Global Strike)というコンセプトも新しい。全地球上のあらゆる地域の敵に対し、極めて短時間で長距離攻撃を行い、核兵器以外の通常兵器による戦略的な攻撃能力を獲得しようとする考え方だ。
HTV(Hypersonic Technology Vehicle)と呼ばれる飛翔体をロケットで打ち上げ、分離後、大気圏上層をマッハ20で滑空、コントロールを維持したまま攻撃ポイントへ急降下して精密爆撃を行う。A2AD(Anti-Access/Area Denial=接近拒否/領域阻止、第2回「南・東シナ海で中国が本当に欲しいもの」参照)環境で、日本や韓国のような敵本土に近い同盟国の駐留米軍基地が被害を受けた場合であっても、米本土から即座に反撃することも可能となる。
米国は2006年のQDRで本プログラムを提唱した後、2008年以降、年間約1〜1.5億ドルを予算化している。実験では失敗も多いものの、核兵器に替わる戦略兵器として期待されており、完成すれば核兵器の絶対数を下げて管理コストを削減できるとともに、自国への核リスクを相対的に低減できると見込んでいるものと考えられる。
ここで紹介したものは、最新兵器コンセプトのごく一部であるが、このような革新的なコンセプトは、軍の戦い方を変えるだけでなく、国民の厭戦機運を変化させたり、核戦略に転換を起こすなど、これまで私達が持っていた「戦争」に対する観念さえもドラスティックに塗り替える可能性がある。
■2035年の戦い、キーワードは「アジリティ」
現代の陸海空3軍種の中で、戦略環境の変化の影響を最も受け易い米空軍は、2015年9月、2035年の戦いを念頭に置いた「Air Force Future Operating Concept」を公表。陸・海・空・宇宙・サイバーの5つのドメイン(領域)を多層的に連結し、「アジリティ」(機敏さ)を最大限発揮して敵を凌駕しようとする考え方を打ち出した。
端的に言えば、「相手にやられるよりも、早く動く」がコンセプトであり、無秩序な世界での生き残りのための最新の“掟”となる。旧世代の兵器とのコンビネーションによる効果の最大化も視野に入れつつ、ステルス、無人機、宇宙、サイバー・ドメインなどの新たな分野の有効活用を大胆に起草している。
この中で興味深いのは、米空軍にとっての中核任務の変化に対する認識だ。第二次世界大戦後は「制空権」、今日では「グローバル」だが、将来は「マルチ・ドメイン」や「ドメイン・コントロール」へと変化している(下表参照)。既存の陸・海・空・宇宙ドメインに存在するアセットをサイバー・ドメインを介して接続し、圧倒的な「アジリティ」を達成する考えだ。
良いことばかりではない。あらゆるモノがネットとつながる「IoT」の世界でも宿命として待ち受けるように、インフラとしてのサイバー・ドメインへの依存にも警戒し、サイバー・ドメインでの行動の自由にプライオリティを置いている。
また、相手方にとっても、サイバー・ドメインを活用して同様のメリットが享受されることも指摘。米国がこれまでのような独占的なパワーを保持することがますます難しくなるとの認識も示されている。想定される環境の変化と正面から向き合い、主導的に状況をコントロールしようと試みる米軍独自の強さも伺い知ることができる。
斬新で敵を圧倒するコンセプトは、古いコンセプトを塗り替え、戦いの勝敗を分ける。ビジネスの場面においても、様々な革新的なプロダクツを提供し続ける企業、イノベーションを続ける企業が勝利を収めることは少なくない。この基本的なルールは、“Win or Lose”の国家間の戦いでも、全く揺るぎない。
次回以降は、将来の軍事戦略の鍵を握ることとなるサイバー・ドメインの攻防についてフォーカスしていく。
※この連載の内容は筆者個人の見解であり、所属する組織の公式的な見解ではありません。
(文/上村康太=GEジャパン株式会社 安全・危機管理部長)
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