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中国の選択、戦争か平和か
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7869
2016年10月6日 岡崎研究所 Wedge
CNAS(新アメリカ安全保障センター)ジェリー・ヘンドリックス上級フェローが、ナショナル・インタレスト誌に「中国の選択――戦争か平和か。西太平洋の諸国は世界における中国の立場を弱めることを追求すべし」との論説を9月2日付けで書き、対中けん制策を提言しています。論旨、次の通り。
■中国の権利主張を無視
G20会合が開かれる中、米国と西太平洋諸国は中国に南シナ海についてのハーグの仲裁判断に従うように求める経済的、外交的、軍事的な準備をしなければならない。
中国は今、米国は西太平洋での中国の権利主張を真剣に争う気がないと信じている。7月のハーグ判断後、1カ月以上経つ。この間、中国はこの判断の執行のための米の出方を注意深く見てきたが、ハーグの判断は言葉だけにとどまると考えている。
最近の画像は3つの人工島で新しく航空機駐機場、ミサイル施設が作られたことを示している。中国はG20会合後、スカボロー礁での軍事建設を始めるとの見方がある。米大統領選挙後、オバマ政権が終わる前に、中国はこれらの島に航空機、ミサイルを配備、不法な領海の主張を軍事力でバックアップするだろう。これは米国と地域諸国の軍事的立場を弱め、今の国際システムをボロボロにする。
そうなる必要はない。中国の拡張を止め、法の支配を再健するためにとり得る、経済制裁から軍事行動まで一連の措置がある。
経済的には、豪州は高い対中輸入関税を課することができる。中国が人工島から出ていかない限り、毎月、上げればよい。フィリピンは外国の裁判所で中国を訴え、フィリピン領土の占拠についての賠償を求め得る。たとえば、フィリピンは米連邦地裁に、中国が所有するニューヨークにあるウォルドルフ・アストリア・ホテルの所有権移転を求め得る。国際法に反し、不法に環礁を占拠している中国に規律を守らせるためである。
外交的には、西太平洋諸国は世界での中国の立場の弱体化を追求すべきである。朝貢外交の伝統を拒否し、2国間の話し合いは拒否し、多数国間での話し合いにすべきである。また、米国は独立国家としての台湾の中華民国を承認する措置を始めるべきである。台湾は国際機関で正統な地位を与えられるべきである。
軍事的には、太平洋諸国と米国は航行の自由作戦やスビ、ミスチーフ、ファイアリークロス、スカボロー礁の12カイリ内の通常の軍事行動を含む共同演習を増やすべきである。米国は上陸演習に比、台湾、越、豪、シンガポール、ラオスの部隊を招待すべきである。
こういう行動は好戦的で、戦争の始まりを意味すると言う人もあろう。しかし中国が人工島を作り、現状を変更した原罪を忘れた議論である。またリベラルな国際秩序は脆弱で、国際社会のコンセンサスによらないと、継続しない。米国、同盟国、パートナー国は中国の行動は通らない、ハーグの判断には従うべしと通知すべきである。中国は国際法順守に譲歩するか、あるいは経済、外交、軍事的な措置を受けるかである。
中国には、中国が自ら牢屋に入ったこと、それを開けるカギは中国だけが持っていることを理解させるべきである。
出典:Jerry Hendrix,‘China’s Choice: War or Peace?’(National Interest, September 2, 2016)
http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/chinas-choice-war-or-peace-17562
この論説は対中強硬論であるが、米国にはこういう論もあるということを知っておくべきでしょう。著者のヘンドリックス氏は自由な思考で知られる米国防総省ネットアセスメント室(ONA)の出身ですが、この部局の意見が政策に反映された事例も少なくありません。
論説では中国をけん制する諸措置の例が挙げられています。米国による台湾の中華民国承認など、米中国交正常化時のコミュニケに反することであり、まず実施できないでしょう。国際法順守をこの論説は強調していますが、二国間の条約や約束も国際法の立派な法源です。国際法重視を言いつつ、それをないがしろには出来ません。ただ、台湾との関係の法的現状は変えなくとも、台湾との関係強化は中国をけん制する上で、重要でしょう。
経済面での諸措置の提言については、なかなか考え及ばないような傾聴すべき内容も含まれています。中国はグローバルな世界経済に組み込まれており、それゆえに弱点もあります。グローバル経済からメリットを受けつつ国際秩序に反抗するという中国のやり方は、維持不可能です。中国がそのことに気づくのが早ければ早いほど良いです。日米などが気づかせるようにすべきです。航行の自由作戦の継続などは当然すべきでしょう。
G20でのオバマ・習近平会談では、南シナ海問題では平行線であったとされています。「ごり押しすれば通る」と中国に思わせない措置を講じることが必要になってきています。この論説の諸提案はそういう措置を考えるにあたっては、参考になります。
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