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なぜB-52、B-2ではないのか? 北朝鮮の核受け、米が爆撃機のうちB-1Bを派遣した意味
乗りものニュース 9月14日(水)0時0分配信
編隊飛行する航空自衛隊のF-2(左)と、アメリカ空軍のB-1B(写真出典:在日米軍司令部)。
北朝鮮の核実験を受け、日米韓が合同訓練実施
2016年9月13日(火)、アメリカ空軍はグァムに駐留する大型爆撃機B-1B「ランサー」を日本および韓国へ派遣。日米韓3か国による共同訓練が行われました。
B-1Bはまず、航空自衛隊のF-2戦闘機と編隊飛行を実施。そして日本海上空の日韓ADIZ(防空識別圏)境界からは、空自機に代わり韓国空軍のF-16、F-15戦闘機によってエスコートされつつ、韓国上空まで飛行しています。
去る9月9日(金)、北朝鮮が通算5度目になる核実験を実施したと見られています。今回の共同訓練はそれに関連し、「アメリカが核兵器搭載能力を持つB-1Bを韓国、日本に派遣することによって、北朝鮮に対する核抑止力の誇示を狙ったもの」とする見方もありますが、これは正しいとはいえません。
アフターバーナーを焚いて離陸するB-1B「ランサー」。誘導爆弾を多数搭載でき、戦術爆撃機として運用されている(関 賢太郎撮影)。
ある条約によって削除されたB-1B爆撃機の能力
なぜならば、アメリカ空軍が保有するB-1Bに核兵器は搭載できないからです。
アメリカとロシアは2011(平成23)年来、「新戦略兵器削減条約(新START)」と呼ばれる核軍縮に関する条約を結んでおり、「重爆撃機」「大陸間弾道ミサイル(ICBM)」「潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)」といった3種類の戦略核兵器投射手段について、その保有総数を合計800基機以内におさめる制限を受けています。このためアメリカ軍の戦略核兵器運搬手段は、2016年7月1日現在の時点で「ミニットマンIII」大陸間弾道ミサイル431基、「トライデントII」潜水艦発射弾道ミサイル230機に加え、大型爆撃機B-2A「スピリット」12機、B-52H「ストラトフォートレス」68機の合計741基機のみになっています。
アメリカ空軍のB-1Bはレーダー網を避けるため超低空を飛行し、ロシア(ソ連)に対して核爆弾ないし核弾頭巡航ミサイルを投射する目的で開発されました。しかしながら、核兵器搭載能力を完全に削除することにより、戦略核兵器投射手段の対象外としてみなすことで、米ロ両国は合意しています。
したがってB-1Bが搭載できる武器は、通常の高性能炸薬による爆弾やミサイルのみであり、実態は「戦略爆撃機」というよりも「戦術爆撃機」にすぎません。B-1Bに核兵器搭載能力を再び持たせることは可能ですが、「新戦略核兵器削減条約」に抵触し制限を受けてしまううえに、多額の予算が必要です。また、現在では爆撃機による核兵器投射はあまり効果的ではないため、いまのところそうした予定はありません。
ではなぜアメリカは、そうしたB-1Bを日本や韓国へ派遣したのでしょうか。
あえてのB-1B派遣、そこに込められたメッセージ
B-1Bは核兵器こそ搭載することはできませんが、非常に多くの通常爆弾を機内のウェポンベイ(爆弾庫)に格納することができ、そのペイロードは2000ポンド(907kg)誘導爆弾ならば最大24発、実に20トンにも及びます。地中貫通爆弾、いわゆる「バンカーバスター」によって、地下施設に対する攻撃も可能です。
また、米太平洋軍司令官 ハリーB.ハリスJr.海軍大将は、今回の件に関するプレスリリースのなかで、次のようにコメントしました。
「これらの飛行は北朝鮮による挑発的で地域を不安定化させる行動に対して、韓国、米国、日本の防衛連帯を示威するものである」(ハリスJr.司令)
つまり今回の共同訓練は、「地下施設を破壊できるB-1Bを北朝鮮に見せつける」ことで、アメリカ政府による核実験に対する抗議のメッセージを北朝鮮の指導者に対して発信する目的があった、というわけです。
そして、今回あえてB-1Bが使用されたのは、核兵器搭載能力を持つB-52HやB-2Aでは、与える印象が強すぎると判断されたからかもしれません。
加えて、B-1Bは、北朝鮮だけでなくアメリカの同盟国である日本や韓国に対してのメッセージにもなります。もちろん日韓に対するアメリカのメッセージは、北朝鮮とは真逆に強固な同盟の象徴として、「友好」を示すものとして、捉えることができます。
関 賢太郎(航空軍事評論家)
最終更新:9月15日(木)12時32分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160914-00010000-norimono-bus_all
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