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シリア停戦で露国は米国との協調を図るが、米国の好戦派はシリア制圧に固執、露国人殺害も公言
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201609090000/
2016.09.10 20:04:48 櫻井ジャーナル
アメリカのジョン・ケリー国務長官とセルゲイ・ラブロフ外相は新たな停戦計画について合意したという。スイスのジュネーブで13時間にわたって討議した結果だというが、両国の目指している方向が全く違うわけで、先行きは明るくない。
今年2月10日にヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問してウラジミル・プーチン露大統領と会談、22日にはシリアで停戦の合意が成立したのだが、アメリカの好戦派はシリアのバシャール・アル・アサド政権を打倒するという目標を放棄せず、停戦を戦闘態勢の立て直しに使ってきた。アメリカ支配層の常套手段だ。
ズビグネフ・ブレジンスキーもアメリカが地球規模の帝国ではなくなったと認めているように、アメリカを「唯一の超大国」と位置づけるネオコン/シオニストの世界制覇計画は破綻、軌道修正すべきだと考える人がアメリカ支配層の内部にもいるようだが、ネオコンを含む好戦派は1992年の初めに作成された世界制覇計画を諦めていない。この計画は国防総省のDPG草案という形でまとめられ、作業の中心には国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツがいた。
その前年、この人物はシリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると口にしていた。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官の証言だ。1991年1月にアメリカ軍を中心とする連合軍はイラクを攻撃したが、ネオコンの思惑とは違い、サダム・フセインを排除せずにジョージ・H・W・ブッシュ政権は停戦してしまった。それに怒ったウォルフォウィッツはイラクなど3カ国の殲滅を口にしわけだ。
この湾岸戦争の経験はネオコンをそれまで以上に好戦的な集団にした。アメリカが軍事力を行使してもソ連は出てこないと考えるようになったのだ。ソ連消滅後はロシアに対しても同じ見方をしている。それだけに、昨年9月30日にロシア軍がシリアで空爆を始めたことは彼らにとって衝撃的だったのだろうが、ここにきて再びロシアを甘く見始めているようだ。そうした見方を引き出したひとつの理由は、戦乱の拡大を避けたいロシアがアメリカに対して協力を求めていることにある。これを「弱さ」と考えるネオコンは凶人理論や狂犬戦術で押し続ける。
アメリカ、イスラエル、サウジアラビアを中心とする勢力の目的は一環してアサド政権を打倒することにあり、ロシアは戦乱の終結にある。公正な選挙が実施されればアサド大統領が勝利することを知っているロシアはアサド体制の維持を主張していない。シリアのあり方はシリア人が決めるべきだという立場だ。
西側の政府やメディアが描いてきたストーリーは、独裁者に虐げられていた民衆が蜂起したというもの。ドラマやプロレスで好まれる典型的なパターン。虐げられた人びとが革命で救済されのは必然だと信じる人びとにとっても魅力的である。そのストーリーをアメリカの支配層は侵略や略奪を正当化するために使っている。事実を検証するならば、シリアの戦乱は侵略だということがわかる。決して「革命」でも「内戦」でもない。
これも繰り返し書いてきたが、遅くとも2012年夏の段階でアメリカ政府はシリアに「穏健派」など存在しないとする情報をDIA(国防情報局)から得ていた。
この情報機関が2012年8月に作成した文書の中で、シリアにおける反乱の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)だと指摘、2011年3月に戦闘が始まったときから反シリア政府軍はAQIと結びつき、その反シリア政府軍を西側(アメリカ/NATO)、湾岸諸国、そしてトルコが支援しているとも報告している。シリア東部にサラフ主義者の国ができる可能性も指摘されていた。この報告書はホワイトハウスに提出されている。
サラフ主義者の国が作られるという見通しは、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記される)が2014年1月にファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言して現実のものになる。その年の6月にはモスルを制圧、その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねた「パレード」を行い、その様子を撮影した写真が配信されてこの戦争集団は広く知られるようになった。
その際、アメリカ政府はスパイ衛星、通信の傍受、あるいは人的なスパイ網などでダーイッシュの動きを把握していたはずだが、動いていない。小型トラックの車列などは格好の攻撃目標だったはずだ。
DIAの文書が公表された後、作成時にDIA局長だったマイケル・フリン中将はアル・ジャジーラの番組へ出演、その後の展開を見通していたにもかかわらず、阻止しなかったのかと詰問され、自分たちの任務は提出される情報の正確さをできるだけ高めることにあり、情報に基づく政策の決定はバラク・オバマ大統領の役割だとしている。ちなみに、アル・ジャジーラはカタール王室の放送局。国策に反しない限り自由に放送できるのだが、シリア侵略にはカタールも関与している。
2013年9月、駐米イスラエル大使だったマイケル・オーレンはアサド体制よりアル・カイダの方がましだと公言している。この人物はベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近で、イスラエル政府の考え方だと言えるだろう。
サウジアラビアは勿論、アメリカ政府も同じように考えてきた。事実が知られ、問題になるとアメリカの支配層はタグを付け替え、ごまかしてきた。最近では、アル・ヌスラなどタグを「ファテー・アル・シャム(レバント征服戦線)」へ替えている。今回の合意でもアメリカは同じことをするだろうが、そうしたタグの付け替えすら、最近はしない傾向が見られる。例えば8月16日、アメリカ軍は記者会見で広報担当のクリストファー・ガーバー大佐は自分たちが戦っている相手はダーイッシュだけであり、アル・ヌスラではないと明言している。
また、ロシアを敵視、協力すべき相手と見ていないことを隠さない人もいる。FOXニュースの番組に軍事アナリストとして登場したロバート・スケールズ退役少将はロシア人を殺せと発言していたが、最近ではマイク・モレル元CIA副長官も似たようなことを言っている。シリアを侵略して制圧するという計画をロシアやイランが妨害していることに怒り、ロシア人とイラン人を殺すべきだとインタビュアーのチャーリー・ローズに対して8月8日に語っているのだ。
こうした発言を承知でロシアはアメリカと協調する道を探っている。それをアメリカの好戦派は弱さと理解、もう少し押せば屈服させられると考えて軍事的な緊張が高まる可能性がある。
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