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東シナ海の尖閣諸島海域近くを航行する中国公船。海上保安庁提供(8月7日撮影、 資料写真)。(c)AFP/JAPAN COAST GUARD〔AFPBB News〕
尖閣に迫る中国、日本はどう対応すべきか 米専門家が警告、中国の尖閣奪取計画は確実に次の段階へ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47631
2016.8.17 古森 義久 JBpress
8月に入ってから、尖閣諸島(沖縄県石垣市)海域で中国による威圧的行動が急速にエスカレートしてきた。
武装した中国海警の艦艇が頻繁に日本領海に侵入してくる。本来ならば立ち入る際に日本の了解を得るべき尖閣周囲の接続水域にも、十数隻の武装艦艇が連日のように入ってくる。しかも、数百隻という「中国漁船」を従えている。まさに日本の権益を二重三重に踏みにじる行動である。
中国のこうした行動は一体何を意味するのか。日本はどう対応すべきなのか。そして、日本の同盟国である米国はどう受け止めているのか。その点についての見解を、中国の海洋戦略について研究している米国の4人の専門家たちにワシントンで質問してみた。
結論を先に述べるならば、専門家たちは誰もが、中国の今回の動きは単に尖閣奪取にとどまらず、東シナ海全体で覇権を確立する野心的な目標への新たな展開だと口を揃えた。
■米国は軍事衝突を抑止する役割を担っている
今、米国の首都ワシントンはなんとも奇妙な空気の中にある。真夏だから当然暑いし、休暇をとって遠出をしている人たちも多い。人や車はふだんよりもずっと少ない。一方で大統領選挙の本選が近づき、目に見えない高揚感が街を包みつつある。選挙キャンペーンはもちろん全米各地に及ぶが、政治の中心地ワシントンでもさまざまな選挙関連のイベントが開かれている。
ワシントン市民の関心が大統領選に向けられているのに対し、もはや過去の人となりつつあるのが現職のオバマ大統領だ。任期満了が近づいたオバマ政権はもう長期的な政策を語れない。特に中期的、長期的な政策を必要とする外交課題への取り組みでは、明らかに弛緩が見え始めた。不安定さを増す世界情勢の中で、米国の対外政策は焦点がぼやけてきた観が禁じえない。
だが、そんな状況の中で、旧知の中国軍事研究の専門家たちに連絡をとってみると、それぞれが自分の専門領域の調査や研究を堅実に続けている様子がすぐに伝わってきた。国政が混乱し弛緩している中でも中国の軍事動向をしっかりウォッチして分析を続けるシステムは、さすが超大国だと実感させられた。
さて、最近の中国の尖閣諸島への攻勢は何を意味しているのか。米国はどう受け止めているのか。まず、米海軍大学の中国海洋研究所のピーター・ダットン所長に尋ねると、こう答えた。
「中国の最近の尖閣海域での動きは、明らかに日本を威圧する作戦が新たな段階に入ったことを意味します。日本を領土問題で二国間協議に引き出すことが当面の狙いでしょう」
ダットン氏はさらに「米国は日本と中国の軍事衝突を抑止する役割を担っています」と強調した。現在の尖閣情勢が軍事衝突に発展する危険があることを懸念しているのだ。ダットン氏が「軍事衝突」という言葉を使ったこと自体が、事態の重大さと深刻さを感じさせた。
■日本は南シナ海に出ていくべき
同じ中国海洋研究所の研究員で、海軍大学の教授、トシ・ヨシハラ氏は別の角度から同様の懸念を語った。「中国のこうした活動拡大によって、東シナ海全体でのパワーシフトが進むことを最も懸念しています」。パワーシフトとは、もちろん中国の力が強くなることを指す。
中国側の狙いについて、ヨシハラ教授は次のように語った。
「中国はまず尖閣海域に恒常的なプレゼンスを確立して、日本側の施政権を突き崩そうとしています。尖閣への上陸が可能な軍事能力を築きながら、日本側の出方をうかがっているのです」
「では、日本はどう対応すべきだと思いますか」と問うと、ヨシハラ教授は慎重に言葉を選びながらこう述べた。
「日本は深刻なジレンマに直面したといえます。尖閣諸島に人員を配置するなどの措置は、当面はとらないほうが賢明だと思います。中国は日本に『挑発行動』をとらせたいと意図している気配があるからです。
その代わり、日本側は対抗策として『水平エスカレーション』に出るのも一案でしょう。米国などと協力して日本も南シナ海で積極的に安保行動をとるのです。この対応によって、尖閣諸島での中国の挑発をとどまらせることができるかもしれません」
日中両国が尖閣諸島周辺で新たな措置をとれば「垂直エスカレーション」となる。しかし、尖閣からは離れた南シナ海で日本が中国の膨張抑止という措置に出れば、中国に対する水平エスカレーションになるというわけだ。
■米国は「中立」という立場を変えよ
元国防総省日本部長で現在は民間のアジア安保研究機関「グローバル戦略変容」会長を務めるポール・ジアラ氏にも見解を尋ねてみた。ジアラ氏は長年日米安保関係の研究を専門としてきたが、ここ数年は中国の軍事動向に注意を向けるようになったのだという。
「中国は、事実上の民兵組織である『漁船』を多数、動員するという極めて独特な手法で、日本に軍事圧力をかけています。その攻勢に対して、日本はまず尖閣諸島周辺の防衛能力を高めなければなりません。現在の事態は米国にとっても深刻であり、日米同盟としての対処が求められます」
米国政府はこれまで尖閣諸島の主権争いについて「中立」の立場を保ってきた。しかしジアラ氏は、米国はその立場を変えて日本の主張を支持し、尖閣海域で米軍の演習を実施すべきだとも主張した。米軍が出動して、その実力を誇示し、中国側の攻勢を抑える時期がきたというのである。
■中国の「漁船」は普通の漁船ではない
中国の軍事戦略を研究する民間シンクタンク「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー主任研究員も、日本は危機的な状況を迎えていると強調する。
「中国は尖閣諸島に対する今回の攻勢で、日本側の防衛の能力や意思を探っています。日本側の抑止が弱いとなれば必ず攻撃をかけてくるでしょう」
フィッシャー氏はまず、日本側は中国側の「漁船」を普通の漁船のように認識しているかもしれないが、実際にはこれらの「漁船」は中国人民解放軍の指揮によって動く民兵組織であり、命令ひとつで一気に武装舟艇や戦闘要員に変わるという点を強調した。
「中国側は、数の多い『漁船』民兵とヘリコプターや潜水艦を使った尖閣奇襲上陸作戦を計画している気配が濃厚です。さらに最近ウクライナなどから調達した大型ホバークラフトの使用もありうるでしょう」
フィッシャー氏はそのうえで、中国の攻撃を抑止するために日本側は先島諸島のミサイルや沖縄などのオスプレイを増強すべきだと訴えた。
以上4人の米国の専門家たちに共通するのは、現在の尖閣諸島をめぐる事態が日本の国家危機、日本の国難だという認識である。この厳しい認識にくらべると、当の日本の対応は官民ともに、なんとリラックスしているのだろうか。
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