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©三田紀房
それでも日本人はまた戦艦「大和」をつくるだろう〜この国が抱える根本的な宿痾 誰もグランドデザインを描けない…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49318
2016年08月05日(金) 三田紀房,戸高一成 現代ビジネス
時は1933年。日本海軍の中枢・海軍省で立ち上がった超巨大戦艦「大和」建造計画。これに対し、1人の天才数学者が"頭脳"で立ち向かう――!!
『ドラゴン桜』や『インベスターZ』の作者・三田紀房氏が描く日本海軍エンターテイメント『アルキメデスの大戦』。現在、週刊ヤングマガジンにて人気連載中だ。
単行本第3巻発売に際して、著者の三田紀房氏と戦艦「大和」の模型(全長26.3メートル)が展示されていることで有名な呉市海軍歴史科学館(通称:大和ミュージアム)の館長・戸高一成氏とのスペシャル対談を公開する。
■戦艦「大和」は必要だったのか
三田紀房(以下、三田) まず、以前から『アルキメデスの大戦』を読んでいただいていたと聞きまして、ありがとうございます。
戸高一成「大和ミュージアム」館長(以下、戸高) うちの若い職員が「館長、面白い本ありますよ」と持ってきたのが『アルキメデスの大戦』でした。読んでみて確かに面白いと思いました。今までの海軍物・軍艦物と、およそ隔絶した切り口ですね。
海軍とは、陸軍以上に計算だけで成り立っている組織。もう理屈だけ。理屈が通らなければ何も動かない。そういう海軍の新たな一面を見させる作品だな、と。三田先生は、なぜ『アルキメデスの大戦』を描こうと思ったのですか?
三田 この漫画を描こうとしたきっかけは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場建設計画で、当初は1300億円だった総工費が3000億円を超えることになったことへの疑問でした。
なぜそうなったのか? を考えているうちに、ふと戦艦「大和」が思い浮かんだんですね。建造費1億4503万円、当時の国家予算の4.4%もの巨費を投じて造られた戦艦「大和」が。
──お二方にズバリお聞きします! 戦艦「大和」は必要だったのでしょうか?
戸高 いきなり超ベタな質問ですね(笑)。基本コンセプトの第一番は、いるか、いらないか、なんですが、当時の海軍の編制上、新戦艦は必要でした。1922年のワシントン海軍軍縮条約以来、10年以上、戦艦を造っておらず、技術の進歩や世界状況の変化などを鑑みても新戦艦は必須だった。
しかし「大和」ほどの巨艦が必要だったかは判断が難しい。でも当時の日本は貧乏だったので財政的に米国に匹敵する戦艦群を建造することは不可能だった。なにしろ米国は太平洋戦争中に8隻も戦艦を建造してくる。ですから数で勝る米国の戦艦に、「絶対に負けない」戦艦を造らねばならなかった。
勝ったり負けたりの五分五分ではダメ。勝ったり勝ったりじゃないと、もう日本には後がない。あと私の「大和ミュージアム」館長という立場上、いらないとは言えませんよ(笑)
三田 僕は、日本では必要か、必要じゃないかって議論しないと思うんです。造りたいか、造りたくないか、造れるか、造れないかだと思うんです。新国立競技場も必要か、必要じゃないかという議論は、どっか行っちゃって、造りたい人と、やめとけって人の、ぶつかり合いになっちゃってる。
僕は、この『アルキメデスの大戦』で造る側のキャラクターを描いていて、それを否定する櫂を主人公にしています。でも、もし軍艦の造船官になって戦艦を造れる、って立場になったら、自分がどれだけの物を造れるのか、力を試したい、挑戦してみたい、と思っちゃう派ですね。
国家予算でそんなものを、と批判する人の気持ちももちろんわかるけれど、自分が「大和」の造船官なら、世界最強の巨大戦艦を造るんだ、って気持ちが勝つと思う。
左:「大和ミュージアム」館長の戸高一成氏、右:『アルキメデスの大戦』著者の三田紀房氏
■戦艦「大和」は国の公共事業と同じ
戸高 エンジニアってのは、自分の能力を全て発揮して素晴らしい物を造りたいという気持ちが根底にありますからね。
劇中の登場人物で、平山造船中将のモデルと思われる平賀譲造船中将も、戦艦の設計主任になる道を一心不乱に追い求めた人なんですよね。そして、それが叶うと思った瞬間、ワシントン海軍軍縮条約で戦艦建造が禁止されて挫折してしまう。
エンジニアとして、あんな気の毒な人はいないんですよ。設計主任になって「さあ、やるぞ!」というところで「あ、それ全部いらない」って言われちゃう。それまで積み上げてきたもの全てチャラにされちゃう。そんなドラマチックな方なんです、平賀さんは。
三田 それもあって作中では櫂の最大の敵ですが、「大和」建造に情熱を注ぐ最高の技術者という側面も意識しています。あくまで架空の人物ですが(笑)。
ところで戦艦「大和」の使い方ですが、僕は極秘で建造しないで、逆に世界に知らしめながら造るっていうのが一番の使い方だったんじゃないかと思うんです。巨大戦艦があるから、戦争してもつまらんな、って相手に思わせる事こそが最大の利用方法だったと。日本の場合、そういった駆け引きが下手ですよね。何ら米国への圧力になってない。
アルキメデスの大戦 第1巻 戦艦「大和」を阻止せよ!
戸高 そうですね、日本には完成した「大和」を使える人材がいなかったですからね。
山本五十六がこんなことを言っています。「戦艦は床の間に2隻くらいは飾っておいていい」と。でも床の間にある"名刀"はね、最後の瞬間には使わなきゃいけない。
私はね、「大和」には能力があったと思っています。ただ能力を使うには、その能力を超えた人でないと使えない。日本のエンジニアは"名刀"を造ったんだけど、それを使いこなすだけの"名人"が日本海軍にいなかった。だから世界に知らしめることが一番の使いどころだったというのは的を射てると思います。
三田 あと僕は戦艦「大和」は、国の公共事業と同じだと思ってるんです。国の資産を使って大きな事業を起こす……。青函トンネルや、四国大橋、黒部ダムとかと同じ。
青函トンネルも、はたして青森と北海道を海底トンネルで結ぶ必要性はあるのかどうか? という議論よりも、おそらく、あの当時の人は「掘ってみたかった!」「俺達の技術ならいけるんじゃないか!」って気持ちから生まれたように思えるんです。
戸高 「やるか、やらないか」という選択は政治家が決めることで、エンジニアってのは「ここまで、できますよ」ということをアピールする。「オーダーがあったら、できますよ」っていう姿勢でね。そして「なろう事なら、やりましょうよ」となる。
ですから、日本の場合、どこが弱かったか、というと、一番トップで、物事をコントロールするはずの人達が、現場のエンジニア達に押し切られる側面があった。これは決定権を持つ人間が使用目的を理解していないことが原因です。新国立競技場の場合も全く同じ。これが"ダメ"の根元ですね。
©三田紀房
■グランドデザインの欠如
三田 今、日本に何が必要なのかが分かっていない。結局、グランドデザイン(明確な目的を持って遂行される大規模長期計画)が描けてない。
日本は、島国なのが影響してか、スケール感があるものは、あまり得意じゃないな、と思うんですよね。ピンポイントで小さいエリアを巧く造るのは非常に上手なんだけど、大きな設計図を描いて、そこに何が必要か、と構想するのは意外と苦手。
いろんなところで議論を始めちゃって、纏まらないまま「じゃあ、グランドデザインはいいから、ピンポイントで造り始めよう」ってなる(笑)
戸高 そこは、もう職人技術の世界ですよね。ですから末端の技術は、もの凄く高い。ジグソーパズルのピースの完成度は高いけれど、誰も組み上がった絵を知らない。
アルキメデスの大戦 第2巻 戦艦「大和」は無駄か?
三田 そうそう。でも、能力が高いから、職人だから、それでも最終的に良い物が完成してしまう。「ああ、これ、いいな!」って、そこで満足しちゃう。
戸高 でも、工業製品ってのは、エンジニアの持っている技術が高いだけでは、本当に良い製品にならない。高い技術力は、明確な目的意識が示されてこそ初めて活かされる。これは「零戦」も「大和」も一緒ですよ。
技術力だけが進んでいって、それが完成した時、何のために、その技術が要求されたのか、分からなくなってしまう。戦いに勝つことが最終目的なはずなのに、「航続距離が長い」「世界最大の巨砲を搭載している」と、個々の能力だけが語られてしまう。それは、ぜんぜん本質が違うだろうと。
何のために開発され製造されるのか?っていうコントロールが、日本はできていなかった。
三田 「零戦」、「大和」は本当に、そうですね。技術力だけを追究して、どうやって運用するか、っていうドクトリン(教義、行動指針)が全く追いついていない。
戦争って、政治的なグランドデザインに基づいてドクトリンが研究され、そのドクトリンに従って、戦略、戦術、作戦、戦闘の順で行われますが、日本軍では戦術のみが重視され、誰も戦略を研究していない。結果、個々の戦闘で勝利しても、それを、より高いレベルの戦略的勝利に結び付けられない。
これは時代を超えて、今の日本でも全く同じだと思うんですよ。この"グランドデザインの欠如"ってのは、日本の最大の欠点だと思うんです。日本人はグランドデザインを主張することを自重してしまう、っていうか、あんまり大きなことを言うと猛烈な攻撃が来る。皆、それで臆病になってしまう。
戸高 でも会社社長や政治家は、細かいことは専門家に任せてね、ぜひグランドデザインを考えて欲しいですよね。
■”努力と根性”の非合理が失敗を生む
三田 どうも日本には、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の"戦国の三傑"以来、グランドデザインが描ける指導者が、なかなか現れにくいように思えます。これは江戸時代の影響が強いんじゃないかなぁ。
信長、秀吉、家康には"天下統一"って最終目標があった。でも、いざ天下統一がなされると、それが失われてしまった。それを超える目標が唱えられると、幕府転覆を狙う謀反人となってしまう。"大きいことを考えてはいけない"ってメンタリティーで、264年間も押さえ込まれてしまう。
これが爆発的に開放されたのが明治維新なんだけど、結局、グランドデザインを描くことに失敗して、太平洋戦争の敗戦を迎えてしまう。それを仕切り直して、もう一度やり直してるのが現在なんだけど、未だ誰もグランドデザインを描けないでいる。寂しい限りですね。他にも日本は、個人の能力に頼りすぎるところも問題ですよね。
三田紀房(みた・のりふさ)
1958年生まれ、岩手県北上市出身。明治大学政治経済学部卒業。代表作に『ドラゴン桜』『エンゼルバンク』『クロカン』『砂の栄冠』など。『ドラゴン桜』で2005年第29回講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。現在、「モーニング」「Dモーニング」にて投資≠テーマにした『インベスターZ』を、「ヤングマガジン」にて『アルキメデスの大戦』を連載中。
戸高 それは大きいですよね。末端にいくほど、個人の負担が大きくなる。
三田 ある石油プラント会社の重役の方と対談したことがあるんですが、日本の会社では、社員5人に持てるだけの手荷物を持たせて「頑張ってこいよ!」って成田から送り出す。現地の中東でプレハブ小屋を一棟建てて、寝袋、カップ麺で「よし、皆、頑張ろうな!」ってなる。
すると隣でも米国の石油会社が開発を始める。米国の会社は鉄骨コンクリートで支社を建て始め、住宅やプール、果ては18ホールのゴルフ場まで建設し、それらが完成してから、社員が家族と共に赴任してくる。
日本は依然としてプレハブ小屋とカップ麺で「あいつらに負けないように頑張ろう!」のままで、東京の本社も電話で「頑張れ!頑張れ!」って応援するだけ(笑)。
戸高 もう太平洋戦争のまんまの構図ですね。個人で「何とか乗り切ってくれ」っていう。もうモチベーションが違いますよね。会社が全力でバックアップして、家族の支えもあれば100%、120%の力が出せるわけですよ。
太平洋戦争の激戦地ガダルカナル島のヘンダーソン飛行場争奪戦が全く同じです。まず作業する人間の生活環境を整えてから目標物の建築に入る。そうして然るべきなのに、日本は掘っ立て小屋で寝起きし、風土病に悩まされながらスコップとツルハシ、モッコでの重労働で、さらに食うや食わずで補給もない。
一方、米軍はブルドーザーなどの重機とトラック、大量の物資に支えられ、一定の期間前線で戦えばオーストラリアでの休暇まで与えられる。
戸高一成(とだか・かずしげ)
1948年、宮城県生まれ。多摩美術大学卒業。財団法人史料調査会理事、厚労省所管「昭和館」図書情報部長を歴任、平成17年より呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)館長。著書に「戦艦大和復元プロジェクト」「戦艦大和に捧ぐ」「聞き書き・日本海軍史」「「証言録」海軍反省会」「海戦からみた太平洋戦争」「海戦からみた日清戦争」「海戦からみた日露戦争」など。
三田 ベスト・パフォーマンスを発揮するためには生活環境の整備は必須なのに、日本は「個人の努力と根性で困難を克服してくれ」と非合理的なことをいう。これが多くの局面で失敗を生む原因になっている。
戸高 これでは絶対に続きませんよ。誰にでもできる作業方法でないと任務達成は不可能です。
日本海軍の場合、海軍大学校を出て、戦術の研究をした人が出世する。兵隊の生活環境など誰も顧みない。そんな現場を知らない人達が「そら行け!」って作戦を立案する。
一方、米軍の将官は海軍予備員制度で、さまざまな分野から人材が集まってくる。大学教授や企業の重役、建築家など、もう層の厚さが全然違います。これが米軍の強さですね。だから兵の闘志も高い。日本兵の勇猛果敢さは誰もが知るところですが、米軍も負けてはいない。"大和魂"と"ヤンキー・スピリット"の激突ですよ。
私のかつての上司が第三次ソロモン海戦で戦った戦艦「比叡」の11戦隊の通信参謀だったんですが、米駆逐艦の勇戦っぷりを大いに語ってくれました。「米駆逐艦が、あまりに肉薄するので、比叡の艦橋トップから真下を覗きこまなきゃ姿が見えないくらい。もうぶつかる、って所まで突っ込んでくる。双方とも近すぎて大砲が撃てず、機銃を撃ち合いながらすれ違う。日本の駆逐艦でも、こんなに突撃した船はいない」って、さんざん褒めてましたよ。
©三田紀房
■「大和」の戦果はゼロ
三田 戸高さんの本『聞き書き日本海軍史』(PHP研究所)で、先ほどの戸高さんの上司だった関野氏が、戦後米海軍主催のパーティーに呼ばれ、その席上で「いかに米海軍が太平洋戦争で勇敢に戦ったか自分は身をもって良く知っている」と話し、「だから我々は、米海軍を信頼しているんだ」と語るシーンがありますね。
すると、米海軍の提督も「日本海軍は、どんなに絶望的状況下でも絶対に任務を放棄しない事を身を持って知っている。だからこそ安心して同盟を結べるんだ」と返した。そんな、お互いに命を賭して戦った者だけが知る信頼関係が、海上自衛隊と米海軍にはある。
相手をリスペクトする、戦ったからこそ分かる間柄。これが戦後、あれほど激しく戦った仇同士のはずの海上自衛隊と米海軍が、今も強固な同盟関係を結んでいるスタートとなった。これが凄く大きい。戦いに臨む男と男のメンタル、その激戦が新たな友情・信頼を生んだんだと思います。でも残念ながら、戦艦「大和」は実際ほとんど活躍しなかったとか……。
戸高 「大和」の戦果は"ゼロ"ですよ。航空機を数機落としたくらい。戦艦「大和」は、あの山本五十六でも使いこなせなかった。
というのは日本の海軍って、決戦一回で最終決着を付ける戦略だった。明治以来、太平洋戦争に至るまで、日本海軍が想い描いていたのは「日本の目の前にまで遠征してきた敵艦隊と決戦する」っていう日露戦争の日本海海戦を、すっとイメージしてるんですよ。
私に言わせれば日本海軍っていうのは徹底した専守防衛海軍なんです。だから外に打って出る太平洋戦争のような戦い方は、実は誰も考えていなかったんです。
アルキメデスの大戦 第3巻 「大和」建造計画炎上中!?
三田 日本は昔からガラパゴス化(日本独自の発展型が、世界標準と大きな差異が生まれている状態)してましたからね。
まず日本海軍は艦隊随伴タンカーをほとんど持っていない。燃料補給を考えてない。小笠原や、せいぜいサイパンの手前で決戦するっていう計画ですから。だから赤道の向こうのトラック諸島にまで出て行った時「どうしたらいいんだ」って悩んじゃう。
じゃあ、もし日本近海で決戦していたら「大和」は活躍できたと思いますか?
戸高 「大和」建造中に艤装員副長を務めた砲術の専門家で、海軍砲術学校の教頭も務めた黛治夫海軍大佐に言わせれば「俺に任せれば絶対、勝ったんだ」と。もう死ぬまで胸を張って言ってましたよ。「米軍がやって来るまでつまらない作戦で兵力を消耗せずに待って決戦を挑めば、日本は負けないんだ」って。
たしかに「大和」の攻撃力、防御力は桁が違います。「大和」の主砲弾が命中したら米国の戦艦は一発轟沈したはずですから。だから理論的には間違ってない。「でも、あなた戦争中も全然、弾、当たってないでしょ」って海軍反省会(戸高氏が編纂した旧海軍将官らの反省座談会の証言録)で皆から突っ込まれてましたけど(笑)。
三田 実際、文献などを読んでいると日本海軍の「大和」にかける期待は大きかったことがわかります。その分、落胆も。
戸高 まぁ、でも戦争ってのは始まったらアウトですから、始めないことが大事なんです。連合艦隊の参謀長を務めた福留繁海軍中将も戦後、こう言っています。「日本は、なんで太平洋戦争に負けたのか? それは戦争を始めたからだ」と。
三田 でも、やっちゃう。
戸高 そう。戦争の一番恐いところは、みんなが嫌だ、あってはならないって思っているのに起こってしまう。みんなが嫌なのに世界中から無くならない。
■やっぱり「大和」に惹かれてしまう
三田 英国のEU(欧州連合)からの離脱も、そうですよね。十中八九、離脱はない、って思ってたのに、蓋を開けたら「離脱だ」ってなって全世界が驚いた。まさかないよな、って皆が思ってて、政治家も「少しでも威勢の良いことを言っとけ、どうせならないから」って感じで。そんな雰囲気が重なり合って歴史が大きく動いていく。サプライズの瞬間を見た。
戸高 そんな"流れ"の根底には人々の意志がある。だから皆がキチっとした対応をとっていれば間違いないんだけど、微妙にズレていく。
三田 論理に裏付けされない、軽はずみな行為・発言がいかに危険であるか、リアルに見せられた。対米開戦を決する時、強硬派の人も実は開戦になると思っていなかったんじゃないかな、と。
戸高 絶対数では少ないんだけど、声の大きな人の意見が通ってしまった感じですね。勢いのある方向に最後の瞬間、傾いてしまう。そこが恐いですね。
── なぜ人々は「大和」に惹かれるのでしょうか?
戸高 やっぱり知らなかったからですね。「大和」はね、国民が知った時には、もういないんですよ。知らないうちに造られて、知らないうちに沈む。敗戦後に初めて知る。
あんなボロボロに負けた日本にも世界一の戦艦があった。それが空襲で焼け野原になった日本で、打ちひしがれた日本人が復興する心の支えになった。それがもう一度、頑張れる気持ちになった。
三田 あと「大和」はデザインが素晴らしい。これを超えるデザインはない。究極の戦艦ですよ。未来永劫、人の脳に残る美しい形、それが戦艦「大和」と「零戦」。美しいから、ずっと心に残る。このデザインを当時、創り得たってのは神懸かってるなと思います。文化の結晶ですね。
日本人って、雅に創りたいじゃないですか、なんでもかんでも。駅弁とかでさえ開けた瞬間「あぁ」ってなる(笑)。そんな"美しさ"とあっけなく散った"はかなさ"。それが日本人の心をがっちり掴んでる。
戸高 たしかに「零戦」も無骨で機能重視の米軍機と比べると、ホント堀越さん(「零戦」設計者・堀越二郎氏)は、いらんところに苦労して形にしたなと(笑)。"美しくなければならない"って気持ちが最後まである。まあそれが後世にも残る所以ですよね。
三田 常に美を追究する日本人の感性が作った傑作ですね。誇りに思います。本日はありがとうございました。戸高館長、最後に作品に何かあれば。
戸高 平山さんを、あんまり悪く描かないでください(笑)。
三田 分かりました(笑)。
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アルキメデスの大戦 第1巻
アルキメデスの大戦 第2巻
アルキメデスの大戦 第3巻
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