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写真は昨年9月3日の抗日戦争勝利70周年軍事パレード〔PHOTO〕gettyimages
人民解放軍「創設89周年記念日」に明かされた習近平の野望と、南シナ海「ロシア参戦」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49338
2016年08月02日(火) 近藤 大介 北京のランダム・ウォーカー 現代ビジネス
■「小から大へ、弱から強へ、そして勝利から勝利へ」
8月1日、中国人民解放軍は、89周年を迎えた。自らを軍人と考え、「戦争ができて、戦争に勝つ軍隊」を目指している習近平中央軍事委員会主席は、この軍の記念日を前に、様々なパフォーマンスを行った。
まずは7月26日午後、中南海に党中央政治局(トップ25)を招集し、「国防と軍隊改革の進行を深化させる」と題した集団学習会を開いた。集団学習会は習近平政権になってからすでに34回目で、その時々に習近平主席が強調したいテーマで、不定期に開いている。トップ25は、外遊中を除いては、参加を義務づけられている。
この集団学習会の特徴は、毎回講師を招き、講師が習近平主席の意向に沿った専門家としての意見を述べる。次にそれについて習近平主席が重要講話を述べるというものだ。
専門家の意見は非公開で、習近平主席の講話のみが、国営メディアを使って大々的に報道される。すると翌日から、8800万人の中国共産党員が、その重要講話を学習させられるのである。
今回の講師は、「国防と軍隊改革の深化指導小グループ」の蔡紅碩副グループ長(少将)だった。この小グループは、2014年の全国人民代表大会(国会)が閉幕した翌日の3月15日に突然、「第1回の全体会議が開かれた」と発表された。その時のグループ長は習近平主席で、常務副グループ長が許其亮中央軍事委副主席、副グループ長が范長竜中央軍事委副主席とされた。
それから2年4ヵ月余りを経た7月26日、習近平主席は、次のように述べた。
〈 わが軍は長年、党の指導のもとで、小から大へ、弱から強へ、そして勝利から勝利へと進んできて、改革と刷新が止まることはなかった。現在、国防と軍隊建設は、新たな歴史の起点に立って全局を見渡し、時勢を見極め、刻々と複雑に変化する国際情勢に応対しながら、中国の特色ある社会主義を堅持し発展させている。
そして『二つの百年』(2021年の中国共産党創建100周年と2049年の建国100周年)の目標を実現し、党の新体制下で強軍の目標と軍事戦略方針を貫徹し、軍隊としての使命と任務をも全うし、さらに大きな知恵と勇気をもって国防と軍隊改革を深化させるのだ。
党中央は、第18回中国共産党大会(2012年11月に開催し、習近平総書記を選出)以来、国防と軍隊改革を、高度に重視してきた。そして中央軍事委員会の機構を、従来の4つの総部から1庁、6部、3委員会、5直属機関という15部門に変えた。7大軍区も、東部、南部、西部、北部、中部という5大戦区に変えた。さらに海軍、空軍、ロケット軍、武警部隊も編成を整理した。こうした大変革を通じて、人民解放軍は過去に克服できなかった多くの問題を解決したのだ。
今後は2020年までに、連合作戦指揮体制改革や、軍民融合の発展を進めていく。そして情報化戦争に勝ち、中国の特色ある現代軍事力体系を有効に履行し、中国の特色ある社会主義軍事制度を完全に整備していくのだ。そして『二つの百年』の目標と、中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現させるための強力なバックボーンとなるのだ 〉
習近平主席の向かって右隣に座った序列2位の李克強首相を始め、25人プラスに参加した幹部たちは、シーンとなって習近平主席の重要講話を必死にメモしていた。その模様を6分14秒にわたって映した中国中央テレビのカメラは、幹部たちのペンをアップで強調する演出までやっていた。
■改めて陸軍を懐柔
翌7月27日午前9時半、習近平主席は陸軍の基幹部署を視察し、陸軍の第1回党代表大会開催を祝福した。
陸軍の基幹部署は、昨年末の党中央と中央軍事委員会による国防と軍隊改革に基づいて設立された。習近平主席が直接、軍旗と訓示を与えた模様は、今年初めのこのコラムで詳述した通りだ(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/47891)。
習近平主席はこの日、カンカン照りの陽光をものともせず、屋外で、陸軍第1回党代表会議全体代表たちと記念撮影を行った。その後、陸軍改革の報告を受けて、次のような重要講話を述べた。
〈人民の軍隊は陸軍に始まった。だからもとは陸軍であり、陸軍が民族の独立と人民の解放を成し遂げたのだ。そして国家の主権と安全、発展に不朽の功績を残してきた。
現在の新たな情勢のもと、強大で現代化された新型の陸軍を建設する。党の強軍の目標を実現し、世界一流の軍隊を建設し、党と国家に長治久安をもたらし、中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現するのだ。そのために、陸軍全体の戦闘員が使命を強化し、危機意識を増強させ、得難い機会を掴み、陸軍建設を加速させるのだ。戦争ができて、戦争に勝てるよう、陸軍の戦闘能力と実戦レベルを上げるのだ。
党の軍隊に対する絶対的指導が、いささかも揺らいではならず、軍隊は党中央と中央軍事委員会の指揮に従うのだ。『両学一做』(習近平主席が4月末に号令をかけた、党章と習近平講話を学び、共産党員として模範的行動を取る運動)の学習教育を結合させ、『紅色』の基因が代々伝わるようにするのだ。清廉な党風の建設と、反腐敗闘争を強化し、軍部隊に『緑水青山』を沸き立たせるのだ 〉
習近平主席が、わざわざ陸軍部隊だけを視察したのは、陸軍に対する掌握を強めるためだろう。昨年末から今年2月にかけて発表された軍機構改革は、一言で言えば、北の陸軍を引っ剥がして、南の海軍を増強させるものだった。
習近平主席が述べたように、建国の功績は陸軍にあって、20世紀末までは、ソ連(ロシア)との国境地帯4300qの防衛が、人民解放軍の最重要使命だった。1960年代には、最大で600万もの軍隊を擁したものだ。
だがソ連は、1991年に崩壊し、2004年にはロシアとの国境が画定したことで、中ロの国境紛争はなくなった。中国は同様に、陸の国境を接する14ヵ国中、12ヵ国との国境を画定させた。残りはインドと北朝鮮だが、インドとの紛争地帯のカシミール地方は山中のため拡散する心配がないし、北朝鮮との未確定の小島は無人島で、互いに近づかないことで紛争にはなっていない。
こうしたことから今世紀に入って、陸軍は事実上、中国国内の災害救済チームと化していた。そして前述のように、今年年初の習近平軍事改革は、「陸から海への転換」を加速化するものだった。
南シナ海、東シナ海、黄海という3つの海洋に「海の万里の長城」を築くためには、海軍力と空軍力の大幅な増強が必要だった。そのため、陸軍の7つの軍管区は5つに減らした。かつ、昨年9月3日の抗日戦争勝利70周年軍事パレードで習近平主席が宣言した「30万人の軍人削減」も、陸軍を主な対象としたのである。
そのため、陸軍には大きな不満が燻っていた。習近平主席の最大の政敵である江沢民主席の支持者が一番多いのも、陸軍である。習近平主席は、一昨年から昨年にかけて、旧瀋陽軍区のボスだった徐才厚陸軍上将と、旧蘭州軍区のボスだった郭伯雄陸軍上将の両元中央軍事委員会副主席を葬っている。
徐才厚上将は、2014年3月15日、北京市阜成路にある自宅に強制捜査が入り、2000平米もある地下室から、不正蓄財していた人民元、ドル、ユーロなど現金1トン以上が押収された。他にも、100s、200s級の和田玉や、年代ものの書画や骨董品などが、大量に見つかった。徐才厚上将は同年6月30日に、軍籍と共産党の党籍を剥奪され、厳しい取り調べを受ける中で、2015年3月15日に病死した。
郭伯雄上将に関しては、昨年3月2日に、まずは長男の郭正鋼浙江省軍区副政治委員を拘束し、同年4月9日には郭伯雄本人も拘束した。同年7月30日には、軍籍と党籍を剥奪し、身柄を最高人民検察院に移した。そして今年4月5日に起訴し、7月25日には、収賄罪で無期懲役刑を科し、政治的権利の終生剥奪と個人財産の没収を言い渡した。
押収したのは、人民元10トン以上、ドルが1億ドル近く、金塊105トン、骨董品10億人民元相当、預金通帳約300冊、別荘9件などだった。金塊と預金通帳分だけで、邦貨にして4兆1,000億円(!)にも上った。
この両幹部は、習近平主席の「政敵」である江沢民元主席の最側近の「二枚看板」で、軍を仕切っていた。この「2トップ」を習近平主席は、いわば一網打尽にしてしまったわけだが、じわじわと陸軍からの返り血を浴びる結果となった。そこで陸軍を改めて懐柔するため、陸軍に擦り寄ったのである。
■じつは空軍重視
この日は、いわゆる「軍トップ10人組」と呼ばれる中央軍事委員会の最高首脳たち、范長竜中央軍事委副主席、許其亮中央軍事委副主席、常万全国防部長(国防相)、房峰輝軍事委連合参謀部参謀長、張陽軍事委政治工作部主任、趙克石軍事委後勤保障部長、張又侠軍事委装備発展部長、呉勝利海軍司令員、馬暁天空軍司令員、魏鳳和ロケット軍司令員が顔を揃えた。
その翌々日の7月29日午後4時、習近平主席は、軍事博物館脇の「八一大楼」へやって来て、「上将」の発令式を行った。
上将は大将の上に位置する軍の最高位で、200万人民解放軍の中で、これまで現役では、わずか38人しかいなかった。中央軍事委員会10人、正大軍区28人である。それを今回、西部戦区の朱福煕政治委員と、軍事委員会連合参謀部の乙暁光副参謀長の二人を昇進させて、40人体制とした。
今回、上将に昇進した朱福煕政治委員と乙暁光副参謀長は、いずれも空軍の出身である。これは習近平主席の空軍重視の表れに他ならない。だからこそ、その前々日に陸軍を称える会を開いて、陸軍の機嫌を取ったのである。
この日も「軍トップ10人組」に加えて、副大軍区職以上の幹部が勢揃いして、人民解放軍の結束を確認し合ったのだった。
■ついに空軍を完全掌握
ところで、習近平主席は空軍に関して、7月にもう一つ、興味深い動きに出ている。7月9日午前11時、人民解放軍の公式見解を掲載する「中国軍網」のサイトで、次のような発表がなされたのだ。
〈 最近、空軍の元政治委員の田修思が、厳重な紀律違反の嫌疑で捜査を受け始めた。これは軍事委員会規律検査委員会が関連する規定に基づいて行うものだ。事実を根拠とし、紀律を基準とし、厳重な紀律違反の嫌疑がある党員幹部に対しては、党内の紀律審査の措置を講じる。
第18回中国共産党大会以来、習近平主席と中央軍事委員会の堅強な指導のもと、全軍と全武装警察部隊は、全面的に厳格な党の統治を決然と貫徹し、軍に厳格な法治を要求し、案件があれば必ず調査し、腐敗があれば必ず懲罰を下してきた。無法地帯などなく、すべてを覆い、お目こぼしなく、正しい反腐敗の強風を吹かし、厳格に調査して処分を下してきた。郭伯雄、徐才厚、谷俊山、楊金山など一連の厳重な紀律・法律違反者などが、それにあたる。そしてそのことは、広範な官兵と一般国民の心からの指示を得てきた。
軍隊の各部署は、習主席と軍事委員会の決定と指示を決然と貫徹し、頑強な意志とレベルで、いささかも容認しない態度を変えず、腐敗問題に対しては一歩も譲歩せず、一網打尽にするのだ。釈放されるのが遅れればそれだけ罰が重い印であり、査案の懲罰に対する高圧力姿勢を終始保持し、腐敗分子が軍の中で隠れ場所が皆無となるようにし、わが軍の空気が根本から好転するよう推進し、強軍の目標が紀律を支持し保証するような軍隊を実現させるのだ 〉
共産党用語の羅列で難解な文体だが、要は「田修思上将を捕まえた」というニュースを、軍の公式サイトが発表したのだ。
同じ7月9日、習近平政権に近い週刊誌『財新』のネットニュースは、「数名の軍関係者からの話」として、軍事紀律委員会のメンバーが田上将を拘束したのは7月5日だったと報じた。田上将の容疑について同誌は、「現在66歳の田修思は、郭伯雄と同様、長期にわたって蘭州軍区に勤務し、郭伯雄とつるんでいた」ことを挙げている。
1950年2月に河南省孟州生まれの田修思は、1968年に入隊し、新疆軍区の砲兵団に所属した。1985年8月から86年9月にかけて、蘭州軍区第八偵察大隊副政治委員として、雲南省で実戦を経験した。その後、2004年に新疆軍区党委書記兼政治委員となり、2009年末に、長年勤務した新疆軍区を離れて成都軍区党委書記兼政治委員となった。
胡錦濤政権末期の2012年7月に上将となり、同年10月に人民解放軍空軍党委書記兼政治委員となった。2015年8月には、全国人民代表大会(国会)外事委員会副主任も兼務した。2007年から中国共産党中央委員も兼務してきた。
上将の失脚は、徐才厚、郭伯雄に次いで3人目である。習近平主席としては、初めて空軍の上将をひっ捕らえることで、今後重要になってくる空軍を完全掌握するとともに、陸軍に対しても決して差別しているわけではないことを示したのだろう。
■毛沢東の「双擁運動」が復活
習近平主席は、7月29日午前9時半から、軍事委連合参謀部が経営するホテル「京西賓館」で、「全国双擁模範都市命名及び双擁模範部署・個人表彰式」を行った。
「双擁」という言葉は、あまり聞き慣れないが、このところ習近平主席が強調しているキーワードの一つで、軍人と一般国民との一体化を意味する。
1943年1月、毛沢東が全国の根拠地に向けて、「軍民が一体化して日本軍と戦え!」と号令をかけたことが、「双擁運動」の始まりとされる。ケ小平時代の1980年に、江蘇省徐州市で全国双擁活動会議が開かれ、「双擁運動」が復活した。
全国双擁活動会議は、1984年に北京市で、1987年に黒竜江省佳木斯市で開かれた。1990年に福建省の省都・福州市の党委書記(市トップ)兼福州軍分区党委第一書記となった習近平は、毛沢東が始めた「双擁運動」に感銘を受け、1991年の全国双擁活動会議を、福州市に招致することに成功したのだった。
この習近平が主催した初めての全国規模のイベントとも言える福州開催の全国双擁活動会議で、「双擁模範都市」を制定し、「全国擁軍優属擁政愛民活動指導小グループ」(後に「全国双擁活動指導小グループ」に改称)を発足させた。つまり全国双擁活動指導小グループは、当時38歳だった習近平が、人民解放軍の全国組織に足掛かりを掴んだ第一歩だったのだ。
この小グループは、江沢民時代と胡錦濤時代には、形骸化していた。だが習近平時代になって復活。2014年8月1日の創軍記念日に、習近平主席が、「2014年8月から2015年末にかけて、『庶民の中の双擁運動』を全国で行う」と宣言した。これは、「軍民一体化」を、全国津々浦々まで浸透させるとともに、軍民合わせて掌握しようという習近平主席の政治的意図があった。
習近平主席が昨年末から今年2月にかけて、過去半世紀で最大規模の軍事機構改革を断行すると、全国双擁活動指導小グループは「双擁活動の優位的な大きな力を発揮して国防と軍隊改革を深く支持する通知」を出して、習近平軍事改革を援護射撃した。また今年6月17日には、習近平主席の鶴の一声で、第1回会議を開いた徐州市に、「双擁展覧館」まで完成させた。
このように、「双擁活動」に対する習近平主席の思い入れは、半端でない。そのため、7月29日の「全国双擁模範都市命名及び双擁模範部署・個人表彰式」の模様は、同日夜7時〜7時半の中国中央テレビのメインニュース『新聞聯播』で、トップニュースとして、8分25秒にもわたって流したのだった。
この日は、全国416の市区県が、全国双擁模範都市に命名され、64の愛国擁軍・擁政愛民の模範部署と、100人の模範国民が表彰された。習近平主席が、これら300人近い参加者たちと、一人ひとり握手する場面まで、これでもかというほど『新聞聯播』で放映したのだった。かつ、全国各都市と映像を回線でつないで、各都市の幹部たちや軍の各部隊も「同時参加」させたのだった。
■李克強首相には「踏み絵」
習近平主席は、模範軍民たちを前に、次のように強調した。
「最も偉大な力とは、同心合力である。この新たな情勢において、双擁活動は強化するのみで、低下させることはできない。軍地合力、軍民同心によって、必ずや『二つの百年』の目標を達成し、中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現するのだ。
双擁運動は、我が党我が軍我が国民に特有の、優良な伝統であり政治的アドバンテージだ。軍民の団結を盤石なものにして、永遠に戦勝に至る困難を共にし、勝利から勝利への不断の重要な体験を共にするのだ。『軍民の団結はあたかも一人のようで、天下に恐れる敵などいるか見てみよ』(1938年5月に毛沢東が延安で開いた抗日戦争研究会で発表した『持久戦論』より)というわけで、これは永遠に突き破ることのできない真理なのだ。
いま世界は、深刻で複雑な変化を遂げている。そんな中で、我が党、国家、軍隊の建設事業は、新たな歴史的な起点に立って、全党全軍全民の同心同徳でもって、団結し奮闘前進するのだ。
われわれはいままさに、国防と軍隊改革を深化させている最中だ。これは全体的で革命的な変革であり、各方面の多大なる支持が必要なのだ」
続いて李克強首相が挨拶に立ち、習近平主席の太鼓持ちをするかのようなスピーチを行った。
「党中央、国務院、中央軍事委は、双擁運動を高度に重視している。軍事用地は優先的に保証し、国防道路建設を優先し、とどこおりのない戦争準備に協力する。軍需品の科学研究や生産にもアドバンテージを与える。
退役軍人が安らかに過ごせるよう全力で保障する。中央政府が管轄する国有企業は、退役軍人たちを多く受け入れ、退役軍人たちの創業への参画を支援する。また、軍人及び退役軍人の生活待遇を不断に引き上げる。さらに、軍人の子女たちの入学などに便宜を図る。そうやって双擁活動の新局面を切り拓くことで、『二つの100年』の目標を実現し、中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現に貢献するのだ」
国務院総理(中央官庁トップ)である李克強首相は現在、失速に歯止めがかからない中国経済のテコ入れに躍起になっている。中でも、赤字を垂れ流している二大組織である人民解放軍と国有企業は、憎き存在のはずだ。
本心では、軍事費の削減と、国有企業の民営化を果たしたいのだ。それなのに、財政健全化よりも「先軍政治」(軍事最優先の政治)だと、習近平主席及び全国民、全軍人の前で、「踏み絵」を踏まされたのである。
■南シナ海にロシアが参戦!
こうした北朝鮮ばりの「先軍政治」に、人民解放軍は意気軒昂になっている。中国国防部は毎月月末に、国防部新聞局長の楊宇軍大校(大佐に相当)が定例記者会見を開いているが、7月28日午後3時から4時20分まで開いた最新の会見で、楊局長が「爆弾発言」を行った。
「中国とロシアの合意に基づき、両国の海軍は9月に南シナ海の海空域で、合同軍事演習『海上連合2016』を実施する。これは両軍の定期的な演習であり、現在発展中の中ロの全面的戦略的パートナーシップを強固にするものであり、両軍の実務友好提携を深化させるものだ。同時に海上安全の脅威に、両軍の海軍が共同で応対する能力を増強させるためのものだ。この演習は第三者を標的としたものではない」
ついに人民解放軍が、南シナ海でロシア軍を呼び込んで合同軍事演習を強行するのである。9月に設定したのは、9月4日、5日に習近平主席が議長を務める一大イベント「杭州G20」を無事終えてからということだろう。
この会見を踏まえて、日本の防衛省幹部に確認したところ、次のように答えた。
「中国軍とロシア軍が、合同で南シナ海に繰り出してくるのは、確かに日本とアメリカにとって脅威だ。だがわれわれにとって最大の脅威は、ロシアが最新兵器を中国に売却し、それが南シナ海や東シナ海で配備・運用されることだ。
ロシアは、以前中国に売却したスホーイ戦闘機が、中国軍の殲11B戦闘機というソックリの模造品を作られたことから、警戒感を強めている。それにいくらいまは蜜月とはいえ、いつ中国が敵になって4300qの国境を破ってくるか知れない。そのため、最新兵器の売却は拒否しているのだ。だから南シナ海での中ロ合同軍事演習は、ある程度の脅威にはなるが、それは織り込み済み。最大の驚異にはいたっていない」
ともあれ、習近平主席率いる強大な人民解放軍は、日本にとって最大の脅威となりつつあるのは間違いない。
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