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シリア・ラタキアの基地から離陸するロシア軍のスホイ25(SU-25)攻撃機〔AFPBB News〕
ロシア軍の買い物リストを覗いてみると・・・ 丸裸になる秘密の軍隊、そんなところまで見える?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47418
2016.7.22 小泉 悠 JBpress
この数年、ロシア国防省は四半期ごとに「装備品統一受領日」と呼ばれるイベントを実施している。
各四半期にどのような装備品を受領できたか、各軍のトップが国防相に対して報告するというものだ。急速に近代化を進めるロシア軍の装備調達状況を把握するうえで貴重な機会となっている。
装備品統一受領日は去る7月15日にも実施され、2016年第2四半期(4-6月)分の装備調達状況が報告された。ロシア国防省の公式サイトに掲載されたところによると、この期間中にロシア軍が受領した装備は次のようなものである。
■ロシア軍の買い物リスト
・「イスカンデル-M」戦術ロケット・システム1個旅団分
・「S-400トリウームフ」防空システム1個連隊分
・11356型フリゲート1隻(「アドミラル・エッセン」)
・中型打ち上げロケット「ソユーズ2-1b」
・無人機15機
・レーダー8基
・航空機各種58機
・ヘリコプター各種34機
・各種戦闘車両、自動車、航空機用武装、通信装置、弾薬(数量不明)
以上のように、わずか3か月で相当数の装備品を受領していることが分かる。ロシア国防省の説明によると全計画分の40%をこの期間中に受領したということだから、特に集中的な受領が行われたようだ。
なかでも航空機は相当の数が配備されているが、この中には極東に配備された「Su-34」戦闘爆撃機も含まれていると見られる。Su-34はシリア作戦にも投入されている新鋭機だが、極東に配備されたのはこれが初めてだった。
イスカンデル-Mというのは移動式発射機から射程500キロの戦術弾道ミサイルまたは戦術巡航ミサイルを発射できるシステムで、1個旅団は発射機12両を装備する(1両あたり2発のミサイルを搭載)。
近年、ロシア軍はこのミサイル・システムを年間2個旅団という早いペースで調達しており、今年6月には極東で3つ目の旅団が配備された。
その他の地域でもイスカンデル-Mの配備は進んでいるが、おそらくは政治的理由から後回しになっているのがバルト海に面した飛び地、カリーニングラードだ。
ロシアは前々から、ポーランドに米国のミサイル防衛システムが配備されればカリーニングラードにイスカンデル-Mを配備して対抗すると示唆しているが、これはいわば最後の手段であって、実際の配備には踏み切ってこなかった(簡単に配備してしまえば脅しの効果もすぐに薄れる)。
しかし、米国は今年、ルーマニアで地上配備型イージス・システムの運用を開始し、ポーランドでも2つ目の地上配備型イージスの建設を開始した。
これに加え、すでにカリーニングラード以外の地域にはイスカンデル-Mがあらかた行き渡っていることを考えると、そろそろ同地にもイスカンデル-Mが配備される可能性が高まっていると考えられよう。
■中国輸出が取り沙汰される最新鋭システム
「S-400」は最大射程250キロ(将来型ミサイルを使用した場合は400キロ)に及ぶ長距離防空システムで、モスクワ周辺に加え、ロシア全土の重要政治・軍事拠点への配備が進んでいる。
中国やインドへの輸出も取り沙汰されている最新鋭システムだ。
我が国周辺では太平洋艦隊の母港があるウラジオストク周辺と原潜部隊の基地であるカムチャッカ半島南部に配備されている。今年は年内に6個連隊という空前の配備が行われるとされているため、サハリンや北方領土などに1個連隊程度が配備される可能性もある。
一方、ロシア国防省もミサイルや爆弾の詳しい調達数までは基本的に明らかにしていない。そこまで明らかにすると、軍事作戦を支えるロシアの軍需生産能力が明らかになってしまうためである。
例えば前述のイスカンデル-MやS-400も基本的には発射機の調達数までしか明らかにされておらず、それに載せるミサイルの数には言及していない。
ただ、それも毎度継続的に発表していないというだけで、報道を丹念に追っていくと意外なことまで分かったりする。
一例を挙げれば、統一装備受領日と同じ7月15日、ロシア軍装備総局のグリャーエフ総局長は、過去半年間にロシア海軍が受領したカリブル巡航ミサイルが47発であったことをラジオ番組で明らかにした。
カリブルと言えば昨年、ロシア軍がシリアへの空爆に使用して注目を集めた巡航ミサイルである。水上艦艇や潜水艦から発射することができ、射程は2500キロにも及ぶとされる。
シリア介入以降、ロシアは弾薬の生産体制を強化していると伝えられるため、半年間で47発というのは現在の生産能力における最大値に近いと考えられよう。
ロシア軍が最後に巡航ミサイルの生産数を明らかにしたのは2008年のことで、このときは海軍・空軍向け合わせて年間で37発とされていた。このことからしても、海軍用のカリブルだけで半年に47発というのは相当のペースであることが分かる。
■明らかになるミサイル生産能力
一方、ロシア海軍は2015年10月と11月に計3回、合計約50発のカリブルをシリア作戦で発射している。
ロシア海軍はこれ以降巡航ミサイル攻撃を実施していないが、生産能力をフル回転させた場合の半年分に相当するミサイルをわずか3波の攻撃で消耗してしまったのだから、そう長くは続けられない作戦であったことが理解できよう。
これを米国のトマホーク巡航ミサイルと比較してみると、現在の生産数は年間100基ほどでカリブルとそう変わらない。
ロシアの巡航ミサイルが米国並みの水準に達したと見ることもできるが、米国は必要に応じて年間200発程度まで生産を引き上げることができるという。
実際、米国は1998年のイラク空爆作戦で415発ものトマホークを発射したのに続き、翌1999年のユーゴスラビア空爆でも218発を発射しており、攻撃の集中度と継続性においてロシアを大きく凌駕している。
巡航ミサイルによる長距離精密攻撃を実戦で実施したことがあるのは、これまで米英のみだった。
シリア介入によってロシアは「巡航ミサイル・クラブ」に仲間入りしたわけだが、四半世紀も前から巡航ミサイルを実戦投入していた米国に追いつくのは容易ではないようだ。
一方、大陸間弾道ミサイル(ICBM)となると状況は逆転する。
米国は長らく新型ICBMの生産を行っておらず、中国もごく小規模な生産しか行っていない中で、ロシアは世界最大の弾道ミサイル生産国となっている。これはソ連時代に開発・生産された旧式ミサイルの退役が進み、かなりの大量生産を行わなければ核戦力の大幅な減勢が避けられないためだ。
ロシアが調達中の新型ICBMである「RS-24ヤルス」を例にとると、2014年には16基、2015年は24基が調達されている。
今年7月15日、装備品統一受領日に合わせて製造元のヴォトキンスク機械工場が明らかにしたところによると(このように、何らかのメルクマールとなる日には、国防省の公式発表だけでなく軍高官や軍需産業からも相次いで様々な情報が明らかにされることが多い)、2016年は19基のRS-24が調達される予定で、すでに7基が引き渡し済み、3基が引き渡し準備の段階にあるという。
以上、ロシア軍の「買い物リスト」を覗いてみた。謎の軍隊というイメージがあるロシア軍だが、丹念に公開情報を追っていくだけでも意外にもかなり細かいことまで分かるのに驚かれた方もいるのではないだろうか。
なお、次回の統一装備受領日は10月半ばに開催の見込みである。買い物リストに何が追加されているか、注目されるところだ。
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