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コラム:米国はアジアでの「軍事衝突」防げるか
Peter Apps
[12日 ロイター] - 欧州での戦争勃発のリスクが復活したと先日指摘したが、残念ながらアジアでもやはり対立の可能性が急激に高くなっているように見える。
こうした展開の原因として、別々だが微妙に関連する2つの出来事がある。まず、朝鮮半島では、韓国の新ミサイル防衛システム導入と北朝鮮に対する米国の新たな制裁実施により緊張が高まっている。さらに、国際仲裁裁判所が南シナ海において中国が主張する領有権を否定したことにより、係争中の海上境界線をめぐって、ただでさえ強まっている示威行為がさらに増幅される可能性がある。
米国にとって、特に今年は大統領選挙があるだけに、この状況はかなりリスクが高い。米国は世界でも突出した軍事大国と言えるかもしれないが、近年見られなかったほど、複数方面に力を分散されている。それだけでなく、自国の行く先をきちんとコントロールできていない。
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アジアでは、欧州以上に、敵対国や同盟国がそれぞれ自分勝手に振る舞うことが多く、必然的に米国の対応は後手に回っている。
プーチン大統領率いるロシアへの対応と同様に、米国は扱いにくく、決定不可能なバランス取りを強いられている。
米政府の態度があまりにも妥協的に見えると、弱腰であるとの批判を受け、他の当事国がそれぞれ勝手に事態を処理することを促す結果になりかねない。かといって、主導権を握り、仮想敵国を抑止することにあまりに熱心になりすぎると、単に状況を過熱させ、これまで必死に避けてきたようなタイプの紛争を招き入れるリスクを冒すことになる。
たとえば北朝鮮情勢を考えてみよう。特に金正恩氏の後継就任以降、米国は板挟みに悩んできた。若い金正恩の支配のもと、北朝鮮政府の動向はこれまで以上に予想し難くなり、現地の人権状況は相当に悪化しているようだ。外部から見て最も深刻なのは、北朝鮮が積極的に軍備を増強しており、地域的な、あるいはそれ以上の大きな脅威になるよう、断固として(やや覚束なくはあるが)核兵器とミサイルシステムの高度化をめざしているという点だ。
北朝鮮政府がこのような兵器の開発に取り組んでいるからといって、必ずしもそれを使用したいという直接的な野望を抱いているということにはならない。外部アナリストたちの大半は、北朝鮮が核武装をめざすのは、外部勢力が、同国に対して、イラク方式の体制変更を検討することを抑止するためだと考えている。
とはいえ、北朝鮮という非常に秘密主義的な国について確定的な予測を示すことは、科学的な厳密さとは程遠い話であり、北朝鮮の近隣諸国が警戒を強めたいと考えるのも、まったく意外ではない。
したがって、米国製THAAD(高高度防衛ミサイル)システムの韓国配備を決定したことは、完全に理にかなっている。だがこのようなミサイル防衛システムは、防衛的なシステムであるにもかかわらず、それ自体が緊張を高めてしまう可能性がある。
欧州では、主として中東からの脅威に対抗することを目的としてミサイル防衛システムを配備したことで、明らかにロシアの反感を買っている。ロシアとしては、長年にわたって保持してきた、欧州内の目標に対する核・通常兵器による攻撃能力を失うことが突然気になりだしたのである。
その意味では、北朝鮮政府関係者や政府機関に対して新たな制裁を科すタイミングとしてはベストではなかったかもしれない。北朝鮮政府はこれに対抗して、国連使節団を介した米当局者との唯一の外交チャンネルを遮断することを発表した。短期的に最も可能性の高い影響としては、現在北朝鮮国内で拘束されている2人の米国民の状況が悪化することが考えられる。また、今後の危機対応も大幅に難しくなる。これが朗報であろうはずもない。
だが、北朝鮮対策の鍵は、常に「中国」である。中国政府は北朝鮮政府にとって唯一の現実的な同盟相手、かつ庇護者であり、北朝鮮の活動をコントロールする能力は常に限定的かつ不完全であったとはいえ、北朝鮮に影響力を行使する手段を経済面など複数持っている。
問題は、もちろん、中国とその近隣諸国、そして米政府との関係も、やはりこのところ深刻に悪化しているという点である。
北朝鮮絡みの限定的な戦争に比べれば、こちら方面で衝突が起きる可能性は恐らく依然として低いと思われるが、もし起きればたいへんな激動をもたらすだろう。中国は世界でも突出した貿易国・輸出国なので、中国政府としても北朝鮮のような国際的孤立はおよそ望ましくない。だが同時に中国が抱いている野心は非常にリアルなものであり、軍事力を強化し、よりいっそう地政学的な勢力を求めていくことを国内での正当性維持の中核に据えている。
その意味で、今週オランダ・ハーグ国際仲裁裁判所が示した中国の領有権についての判断は、ある種の転機、それも良い方向にではない転換点になる可能性がある。中国は仲裁プロセスをほとんど正統性が認められないとしてほぼボイコットした。
だが中国政府にとって問題なのは、ほとんどの国が今回の判決を真剣に受け止めていることだ。そして裁判所は、南シナ海の大半の領域について中国政府の権利主張を完全に否定しているのである。
中国海軍や補助的な準軍組織は、領有権が争われている一部の島嶼(しょ)・岩礁において、すでにかなり強引な姿勢を見せており、近い将来、彼らが撤退する見込みはほとんどないように思われる。とはいえ、今回の判決を受けて、フィリピンなどの国家が自信を深め、彼ら自身もより積極的なアプローチを取ることにより、深刻な不安定化を招く結果が生じる可能性もある。
もっとも、悪いニュースばかりではない。今回の判決は、中国政府がフィリピンの領有権を侵害したと結論づけてはいるが、スカボロー礁など係争中の領域の一部においては、たとえば漁業権などについて共有することも可能ではないかと示唆している。
これなら協力に向けた道が開けるかもしれない。いや、ただ衝突の可能性を高めるだけかもしれないが。
昨年、国家安全保障の専門家を対象に行われた調査では、米国と中国のあいだで通常兵器又は核兵器を用いる戦争が生じるリスクは、NATOとロシアのあいだで同様の戦争が起きるリスクよりもわずかに低いという結果が出た。恐らく、今でもそのように言えるだろう。
しかし、フィリピンや日本、ベトナムといった、米国が安全保障条約を結んでいる数多くの同盟国が戦争状態に陥るリスクは高まったと言ってもよかろう。
平和がコンセンサスに基づくものだとすれば、今年、アジアが向かっている方向は完全に間違っているように見える。
*筆者はロイターのコラムニストで、シンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
http://jp.reuters.com/article/apps-china-idJPKCN0ZU0GB
韓国「THAAD」の中国向けメッセージ
中国にできる最良の行動は北朝鮮への支援を考え直すこと
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領 ENLARGE
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領 PHOTO: AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
2016 年 7 月 14 日 18:05 JST
中国が今週受けた打撃は、南シナ海問題をめぐる仲裁裁判所の裁定だけではなかった。もう一つ中国政府をいら立たせたのは、米国が開発した最新迎撃ミサイルシステム「THAAD」の配備を韓国政府が決めたことだ。THAADは北朝鮮の脅威から韓国国民を守るために必要なもので、この決定で韓国はさらに米国に接近することになる。
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中国政府はいつもの高圧的な態度で韓国政府に対し、自衛目的であってもTHAAD配備に踏み切らないよう促してきた。国営新華社通信は2014年、両国が新たな貿易協定を妥結させようとする中、「韓国がアジア最大の経済大国からの抗議を無視し、(米国のTHAAD)防衛ネットワークに引き込まれることがあれば、急速に発展する中国との関係を犠牲にすることになろう」と警告した。韓国の報道によると、中国の習近平国家主席は朴槿恵(パク・クネ)大統領に対し「慎重に事を運ぶ」よう求めたという。
一方、中国政府は北朝鮮に抑制を働きかけるのを拒んできた。北朝鮮は最近4度目の核実験と複数回のミサイル発射実験を断行した。ソウルに拠点を置くシンクタンク、アサン政策研究所が実施した3月の調査では、韓国人の74%がTHAAD配備を支持していた。
朴氏は今週、THAAD配備の決定に当たり「増大する核とミサイルの脅威は、大韓民国の未来と国民の生活がかかっている極めて重要な問題だ。私には祖国と国民を守る義務がある」と説明した。
中国政府はこの決定を非難したが、まだ報復には至っていない。今週の株式市場では中国が貿易や観光の分野で制限を課すとの懸念から、韓国化粧品メーカーや旅行会社の一部で株価が下落した。ただ、中国による過去の経済制裁的な行為は裏目に出てきた。
中国にできる最良の行動は北朝鮮への支援を考え直すことだ。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が率いる北朝鮮の体制は米国を揺さぶっているが、アジアにおける米国の影響力と同盟関係を弱めるという中国の目標にかなうものではない。THAAD配備は韓国が日米との協力を進める中で実現した。日本は補完的な早期警戒レーダーシステムを配備しており、近くTHAADインターセプター(迎撃ミサイル)も設置される可能性がある。3カ国は最近、弾道ミサイル防衛の合同演習を実施したばかりだ。
韓国政府高官は来年末までにTHAADの運用を開始すると述べた。その前に中国の指導層に対して北朝鮮との同盟が自滅的なコストを招くことを示せれば、無鉄砲なミサイル攻撃を防御する以上の成果を生み出すことだろう。
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