http://www.asyura2.com/16/warb18/msg/194.html
Tweet |
ロシア海軍の「ヤロスラフ・ムードルイ」(資料写真、現在の艦番号は777)
中国に続いてロシアにも、なめられる米海軍 「米軍の睨み」はもう利かない
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47271
2016.7.7 北村 淳 JBpress
地中海東部海域で、アメリカ海軍空母部隊に属するイージス駆逐艦とロシア海軍フリゲートが“異常接近”する事態が発生し、ロシア当局もアメリカ当局も互いを非難し合っている。
■ロシア側は米軍艦の条約違反を主張
ロシア国防省によると、地中海東部公海上において6月17日、ロシア海軍フリゲート「ヤロスラフ・ムードルイ」(ネウストラムシイ級フリゲート)の左舷60〜70メートルにアメリカ海軍イージス駆逐艦「グレーヴリー」(アーレー・バーク級駆逐艦)が接近し、フリゲートの進行方向前方180メートルを横切る形で追い越した。
「ロシア軍艦はアメリカ軍艦に対して何ら危険な行動はとっておらず、アメリカ駆逐艦による一方的に危険な操艦であった」とロシア側は主張する。そして「このアメリカ駆逐艦の行動は、海上での船舶の衝突を防止するための国際ルールに対する著しい違反行為である」とアメリカ側を厳しく非難した。
ロシアのメディアは、「1972年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約」(COLREG)の第13条と第15条をアメリカ駆逐艦が無視して、ロシア艦に対して危険きわまる操艦を行ったと報道している。
第13条では「他の艦船を追い越す場合には、追い越す側の船は、追い越される側の船の針路を避ける形で追越さなければならない」、第15条では「右舷側に他の艦船が航行している場合、左側の船(今回の例ではグレーヴリー)は右側の船(ヤロスラフ・ムードルイ)に針路を譲り、その船の前方を横切ってはならない」と定められている。
「RT(ロシア・トゥデイ)」(ロシア国営のニュース専門局)や「スプートニク」(ロシア政府系メディア)は、一見アメリカ軍艦の条約違反を裏付けるともみなし得る動画をインターネットに配信した。
https://www.rt.com/news/348677-destroyer-patrol-boat-mediterranean/
続けてロシア側は「アメリカ当局は、プロ意識が欠落しているロシア軍のパイロットが米軍艦に対して危険な接近飛行を繰り返している、との非難を繰り返している。だが、今回のアメリカ駆逐艦の危険な操艦を見れば、どちらの海軍がプロフェッショナリズムを欠いているのかは明らかである」とも言い立てている。
■アメリカ側はロシア艦の「妨害行動」を非難
このようなロシア政府の強い非難に対して、アメリカ国防当局もロシア側を非難している。
アメリカ海軍によると、グレーヴリーとヤロスラフ・ムードルイのコンタクトは1時間以上にわたるものであり、公開された動画は両艦のやり取りのほんの一部に過ぎないとのことである。そして「アメリカ駆逐艦の作戦行動に対して妨害的な動きを繰り返していたのはロシア海軍フリゲートであった」という。
そもそも、グレーヴリーは同海域でIS攻撃作戦実施中の米空母「ハリー・S・トルーマン」を護衛中であった。ロシア海軍のヤロスラフ・ムードルイは、明らかに米空母トルーマンによるスムーズな作戦行動を妨げる意図が見て取れる動きを示していた、と米側は主張している。
ヤロスラフ・ムードルイは米空母からはおよそ8キロメートル、米駆逐艦にはわずか300メートル程度の距離に接近して“つきまとって”いた。また米軍側によると、「ヤロスラフ・ムードルイ」の艦橋には「我が艦の操縦機能に難あり」という意味合いの国際信号旗が掲げられていたという。ところが、ヤロスラフ・ムードルイがさらに米空母トルーマンに接近を企てたためグレーヴリーが変針したり速度を変化させると、操縦に問題が生じているはずのこのフリゲートは、それに対応して自由自在に機動した。
このようにしてヤロスラフ・ムードルイはトルーマンとグレーヴリーの間の水域を動き回ることにより、米空母部隊の作戦行動を妨害していたことは間違いがない、と米軍側は非難している。
確かに、ロシア海軍が公開した米駆逐艦グレーヴリーの“危険な追い越しと横切り”の動画を注意深く見ると、アメリカ艦の航跡は直線であるように見えなくもない。もしもロシア側の主張のようにグレーヴリーがヤロスラフ・ムードルイにその左舷側から急接近して追い越し、そのままロシア艦の前方を左から右に横切ったとするならば、グレーヴリーの航跡は弧を描いているはずである。
しかし、動画に映し出されている米艦の航跡は直線に近い。そのため、アメリカ側が反論しているように、ロシアのフリゲートがグレーヴリーにまとわりついて追いかけている状況を撮影した動画の中から、アメリカ駆逐艦がヤロスラフ・ムードルイの前方間近を強引に横切ったように見えるシーンを抜き出して、公開したとも考えられなくはない。
■低下した米空母部隊の抑止力
第三者の目がない海の上の出来事は、現場で接触し合っていた当事者でないとなかなか真の状況は分からない。よって、米露の言い分のどちらが正しいのかを即断することはできない。
しかし、かつてアメリカがスーパーパワーであった冷戦後しばらくの間は、世界中の海に睨みを利かせていたアメリカ海軍空母部隊に“ちょっかいを出す”海軍は存在しなかった。
なんといっても、米海軍空母部隊(空母打撃群CSGと呼ばれている)は、中心となる原子力空母周辺を1〜2隻のイージス巡洋艦、2〜3隻のイージス駆逐艦、それに攻撃原子力潜水艦が護衛しているうえ、空母自身には70機にものぼる戦闘機や電子戦機それに哨戒機などが積載されている。
このような強力な戦闘能力を持った米空母部隊に“ちょっかい”を出して、万が一にも戦闘状態に陥った場合には、大方の軍艦(とりわけ水上戦闘艦)はまず間違いなく海の藻屑となってしまう。そのため、あえて米空母につきまとって不測の事態を招くような行為は暗黙のうちに差し控えられていたものである。その結果、アメリカ海軍が誇る空母部隊は、まさに海の覇者と自他ともに認める存在であった。
しかしながら、オバマ政権下においてアメリカ国防費の大削減が始まり、アメリカ軍の戦闘能力が幅広い分野において低下するにつれて、アメリカの軍事力はかつてのように畏怖の対象ではなくなりつつある。
わずか4200トンのロシア海軍ヤロスラフ・ムードルイによる米海軍トルーマン空母打撃群に対するチャレンジは、南シナ海や東シナ海での人民解放軍によるアメリカ軍とその仲間に対する挑発的行動とともに、いかに「米軍の睨み」というものが持つ抑止効果が低下しているかの具体的な表れということができよう。
今回のロシア海軍と米海軍の遭遇事件は、日本からはるか彼方の地中海上での出来事である。だが、米海軍の睨みが利かなくなりつつある現状を、日本も直視する必要がある。もはや「アメリカ第7艦隊が存在してさえいれば日本にとっての抑止力になる」という時代は過ぎ去ったことを、認識しなければならない。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。