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南シナ海に迫る「キューバ危機」、試される安保法制  
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 7 月 06 日 00:11:47: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 


南シナ海に迫る「キューバ危機」、試される安保法制
2016年07月05日(火)小谷哲男 (日本国際問題研究所 主任研究員)
 南シナ海でキューバ危機の再来か─。中国が今夏にも戦略的要衝のスカボロー礁の埋め立てに着手する可能性が出てきた。米中軍事バランスを変えかねないこの動きに、米国は海上封鎖も検討せざるを得ない。日本は安保法制をどう適用するのか。
 今年3月、南シナ海に浮かぶスカボロー礁周辺で中国船が測量を行っており、新たな人工島を造成するための埋め立ての兆候が見られることを、米海軍が明らかにした。スカボロー礁は、フィリピン・ルソン島のスービック湾から西へ約200キロに位置し、2012年に中国がフィリピンから実効支配を奪って以降、2隻の中国政府公船が常駐している。4月には5隻の政府公船が確認され、米比など関係国はいつ埋め立て作業が開始されるのかと警戒している。
南シナ海を航行中の米空母「ジョン・C・ステニス」に乗り込んだカーター米国防長官(中央)  AFP/JIJI
 中国の南シナ海での領有権主張が国際法に違反するとして、フィリピンが提訴した国際仲裁裁判所の判決がこの夏前にも出ると見込まれており、ハリス米太平洋軍司令官はその前後に埋め立てを始める可能性を指摘している。オバマ政権は人工島の建設が始まってもこれを実力で阻止することはなかったため、中国はオバマ政権の弱腰につけ込み、次期米政権が軌道に乗る前に埋め立てをする可能性が高い。米軍は、おそらく中国による埋め立てを牽制するため、スカボロー礁周辺でA-10攻撃機を飛行させたことを公表した。だが、このような牽制は中国に自衛措置として南シナ海のさらなる軍事化の口実を与えるだけであろう。
スカボロー礁を奪取した中国の姑息なやりくち
 12年4月、フィリピン海軍がスカボロー礁で違法操業している中国漁船を拿捕したところ、これに対抗して中国が政府公船を派遣した。フィリピン側も海軍に代わって沿岸警備隊を派遣し、中比の政府公船が対峙する状況が続いた。両国は非難の応酬を繰り広げたが、台風シーズンの到来を控え、6月に中国が緊張緩和のために両国の政府公船と漁船の撤収を提案した。フィリピンは自国船を撤収させたが、中国は船を撤収せず、むしろ礁の入り口を塞(ふさ)ぎ、そのまま実効支配を完成させた。
 振り返ってみれば、中国が漁船をスカボロー礁に送り込んだ時から、この環礁に人工島を建設し、軍事利用するという壮大な計画がすでにあったと考えるべきである。スカボロー礁は、米軍がすでに利用している旧米海軍基地のスービック湾や、クラーク旧米空軍基地などに近い。
 4月下旬に、カーター米国防長官は、中国によるスカボロー礁の埋め立てに強い懸念を示し、「軍事衝突を引き起こし得る」と発言した。スカボロー礁に軍事基地ができれば、スービック湾を含めルソン島の軍事施設を監視し、直接ミサイル攻撃できるようになるからである。
 また、中国が九段線に基づいて南シナ海上空における航空優勢を確立するためには、西沙諸島と南沙諸島に加え、スカボロー礁を埋め立てなければならない。西沙諸島、南沙諸島、そしてスカボロー礁の3カ所に空軍基地を持つことで、九段線内全域の上空監視が可能となり、戦闘機による事実上の防空識別圏の運用も可能となるのである。西沙諸島は3000メートルの滑走路を備え、レーダー施設、対空ミサイル、戦闘機の配備によって事実上の空軍基地となっている。南沙諸島の人工島でも、3000メートルの滑走路が完成し、レーダーの配備も確認され、戦闘機が配備されるのも時間の問題であろう。スカボロー礁が空軍基地となれば、現在は九段線内の盲点となっている北東部をカバーすることができるようになる。
 中国は海南島に新型の晋級戦略ミサイル原子力潜水艦を配備しており、長距離ミサイルJL-2が搭載されるのも時間の問題と考えられている。中国は九段線内をこの戦略ミサイル原潜のための「聖域」とする必要があり、スカボロー礁を埋め立てるのは対米核抑止を強化するという戦略的観点からも急務である。南シナ海問題の中核は、中国が陸上配備の移動式大陸間弾道ミサイルの開発に加え、海中配備の核抑止力の保持を目指している点にある。中国が対米核報復(第二撃)能力を向上させるためには、米海軍が常時行っている中国沿岸部での情報収集・偵察・監視活動を阻止しなくてはならない。このため、南シナ海とその上空における優勢を確立するために人工島を建設しているのである。
(出所)各種資料を基にウェッジ作成
http://wedge.ismedia.jp/mwimgs/d/8/-/img_d889a6d5a40a441c828e109d070058d022417.jpg 
 スカボロー礁の埋め立ては、すぐに米中間の軍事バランスや戦略核バランスを劇的に中国に有利なものにすることはない。有事になれば、米軍は南シナ海の人工島を容易に破壊または奪取できる。また、中国の戦略ミサイル原潜が米本土を攻撃するためには、南シナ海から太平洋の真ん中まで捕捉されずに出ていかなくてはならないし、指揮命令システムも十分に構築されていない。ただ、少なくとも平時において、中国は米軍の監視活動の妨害をしやすくなる。平時の監視活動、特に潜水艦の位置の捕捉は、有事の際に極めて重要である。
 米戦略国際問題研究所(CSIS)のクーパー研究員とポリング研究員は、中国がスカボロー礁の埋め立てを強行する場合は、フィリピンが行う「隔離」、つまり海上封鎖を支援するべきであると主張している。「隔離」は、1962年のキューバ危機で、ソ連船がミサイル部品をキューバに海上輸送するのを阻止するために、米海軍がカリブ海で実施した。キューバ危機で米ソは核戦争の一歩手前までいったが、米海軍が「隔離」を実施する中、米ソは威嚇と誤解、対話と譲歩、そして幸運によって危機を回避した。中国がスカボロー礁の埋め立てに着手するなら、フィリピン海軍と沿岸警備隊が中国作業船の領海内への進入を阻止し、米国を中心とする有志連合の政府公船および軍艦が領海外で支援し、埋め立てをあきらめさせるのである。
 もちろん、岩礁の埋め立ての阻止のために、中国との軍事衝突を引き起こしかねない海上封鎖など論外というのが一般的な見方であろう。世界を消滅させる可能性があったキューバ危機はわずか13日間であったが、中国が「中国のカリブ海」で行っていることはより長期的な問題で、切迫感はないかもしれない。
 だが、国際社会が現状変更を実力で止める覚悟がないことを中国は見抜き、既成事実を作り上げてきた。埋め立てが始まってもこれを看過すれば、南シナ海はいずれ中国の「湖」になる。そうなってからでは手遅れである。国際社会はスカボロー礁の埋め立てが「レッドライン」であることを中国に伝え、それを越えた場合、「隔離」を実施する覚悟を持たなければ、いずれ深刻な危機が訪れるであろう。
ホムルズ海峡の答弁踏まえ安保法制をどう適用するか
 仮に米軍が「隔離」を行う場合、日本は、平和安全保障法制の下で、日本の平和と安全に重要な影響を与える重要影響事態に認定するかどうかの判断を迫られる。南シナ海情勢は重要影響事態の対象となり得ることは、安倍首相が国会答弁で言及している。事態認定ができれば、自衛隊による補給、輸送、捜索救難、医療など多岐にわたる後方支援が可能となる。
 ただ、キューバ危機では、米海軍の「隔離」に対して、ソ連海軍は潜水艦を派遣し、米海軍がこれを強制浮上させることがあったし、キューバ上空で偵察機U-2が撃墜されることもあった。南シナ海の「隔離」でも、中国が同様の挑発行為をしてくることが想定されるため、自衛隊には米軍の「アセット(装備品等)防護」が求められる。ただ、そのためには米軍が日本の防衛に資する活動をしているという認定が必要である。
 さらに、中国が「隔離」を妨害するために機雷を敷設した場合、米海軍は世界一の掃海能力を誇る海上自衛隊に支援を要請するであろう。だが、機雷掃海は武力行使に当たるため、これに応えるためには集団的自衛権を行使が許される存立危機事態の認定が必要となる。また、重要影響事態における船舶検査では、船長の承諾が必要なため、中国船に検査を拒否されれば、実効性は薄まってしまう。強制的な検査実施のためには、やはり存立危機事態の認定が必要である。
 南シナ海の「隔離」で日本が役割を果たすためには、存立危機事態の認定が必要である。そのためには、事態が日本の存立を脅かすだけでなく、武力行使以外に方法がない、武力行使は必要最小限という新三要件を満たさなくてはならない。集団的自衛権の行使に関して、政府はホルムズ海峡の封鎖を例にこれまで説明してきた。だが、他に代替ルートのないホルムズ海峡とは違い、南シナ海には代替ルートが存在するため、新三要件に当てはまるかどうか議論が分かれるであろう。政府は平和安全保障法制の目的をどのような事態にも「切れ目なく」対応するためと説明してきたが、南シナ海情勢がその試金石となる可能性がある。
●重要影響事態とは
そのまま放置すれば日本に対する直接の武力攻撃に至る恐れのある事態など、日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態

●存立危機事態とは
日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態

●集団的自衛権による武力行使の「新三要件」
@ 存立危機事態であること
A 日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
B 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7170

 

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コメント
 
1. 2016年7月06日 03:04:14 : w3M1BHSquE : 5KToaZSVnLw[688]
まあ 危機を煽るのは勝手ですが その 「日本と密接な関係にある他国」 の中には 中国だって含まれている
と言う事を忘れてはいませんかね

貴方の履いている靴を裏返して見て御覧なさい 貴方の動かしているマウスを裏返して見て御覧なさい
made in china と表記されているでしょう大抵は

我々の生活の大部分を 安い中国製品で支えられている事実を 考えた事があるのでしょうかネトウヨ諸君。


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