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米フロリダ州オーランドで、銃乱射事件が起きたゲイナイトクラブ「パルス」の損傷した壁の周辺を調べるFBI捜査官ら(2016年6月12日撮影)〔AFPBB News〕
テロ主戦場ついに米国内へ、拡散招く3つの憂い 次期大統領の言動が逆にテロを助長する危険性も
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47091
2016.6.15 堀田 佳男 JBpress
米フロリダ州オーランドで6月12日に起きたテロ事件は、米国が抱える3つの憂慮の根の深さを改めて示すことになった。解決不能と思われるほどの深みを見せられた思いさえある。
3つの憂慮とは、テロリズムとの果てなき戦いであり、次が銃規制、3つ目が性的少数者(LGBT)の処遇である。
100人以上の死傷者を出した米史上最悪の銃乱射事件は、3つの問題とどう向かい合うかを根本的に問うことになった。大統領選の争点として新たに浮上してもいる。
実行犯オマル・マティーン容疑者(以下マティーン)がイスラム国(IS)からの指示を受けていたとの情報もあるが、真の問題はそこではない。
■ISの間接的影響
本人は警察に電話で「ISに忠誠を誓っている」と言っており、IS執行部の手の及ばぬ場所で、間接的に影響を受けていた可能性が高い。
この点で、昨年12月にカリフォルニア州サンバーナーディーノで起きた銃乱射事件と似ている。当事件の実行犯も射殺されたため、動機やISとの関連性は聴取されていないが、ISに忠誠を誓うコメントは残されている。
ISが直接的、または間接的に背後にいたのだ。
しかもテロ攻撃に使用された武器が今回と同じスミス&ウェッソン社製のAR-15自動小銃だった。カリフォルニア州の事件では、凶弾によって14人が死亡し、17人が重軽傷を負っている。
ISから派生したテロ攻撃はいまシリアやイラクだけでなく、確実に米国内に拡散している。ISによるテロの「種子」が米国内に蒔かれたのだ。
しかもマティーンは単独犯である。2013年からISとの関係を疑われ、米連邦捜査局(FBI)の捜査線上に2度も浮上していたが、事件を未然に防ぐことはできなかった。
ニューヨーク・タイムズは事件の5日前、FBIのおとり捜査についての記事を掲載している。ISの「種子」は全米中に蒔かれ、特に過去2年でテロリスト数が急増しているという内容である。
FBIはおとり捜査を使ってこれまで約90人を検挙しているが、潜伏しているテロリストの一部に過ぎない。
今月9日にはISの関連団体と言われる「サイバー・カリフ国(United Cyber Caliphate)」が、世界中の標的とされる約8000人をリストにして公開。ほとんどが米国市民で、フロリダ州には600人がリストされていた。
ISの活動領域はすでに中東諸国から他国へと拡大している。テロとの戦いは収束するどころか、主戦場が米国内へと移行していると考えるべきなのかもしれない。
■トランプはテロを防げない
バラク・オバマ大統領は会見で「今回のテロ攻撃はすべての米市民に向けられたもので、平等と尊厳に根ざした基本的価値観への攻撃だ」と述べたが、事前にテロ活動を防止することは多難を極める。単独犯となるとなおさらだ。
共和党ドナルド・トランプ候補(以下トランプ)は事件後、「(イスラム教徒の一時入国禁止の自分の判断は)正しかった」とツイート。「オバマ大統領がイスラム過激派への対策を発表しないなら、即刻辞任すべきだ」とまで書いた。
年頭から米国で言われていたことがある。
米国内で新たなテロ事件が勃発した場合、トランプを勢いづかせるとの観測だ。イスラム教徒への排斥の流れを加速させることで、トランプ支持者が増えると一般的には思われるが、その部分に同調する米有権者は実は一部に過ぎない。
というのも、いまの時期になると、すでにトランプ派と民主党ヒラリー・クリントン候補(以下ヒラリー)派にはっきり分断され、トランプが強硬なテロ対策を打ち出したとしても、新たにトランプに流れる支持者は限定されるからだ。
一方のヒラリーは声明で、「国内外で(テロの)脅威から我が国を守る努力を再び強化したい」と述べたが、テロ対策についてはオバマ大統領と大差がない。特効薬を持ち合わせていないということだ。
それではトランプであればISを壊滅できるのかと問われれば、強硬策が裏目に出てより多くのテロ事件が起こらないとも限らない。テロ対策は、地道な捜査を繰り返して芽を摘んでいく以外に道はない。
銃規制についても米国は深い憂慮を抱えたままだ。社会は分断されている。多くの共和党有権者は、憲法修正第2条の「国民が武器を保持する権利」を守ろうとする。
単に守るだけではなく、銃の所有と売買への規制を嫌う。トランプの基本的な考え方は、「銃を持つテロリストには銃で立ち向かえ」であり、保守系の賛同者は多い。
一方、ヒラリーは「銃規制を徹底させていくことで、犯罪を減らしていける」という民主党が掲げる理念を述べる。
■米国の3つの憂いを巧みに突くIS
銃規制はオバマ政権の重要案件だったが、明確な結果は残せていない。繰り返し発生する銃乱射事件に「遺憾の意」を表しはするが、そこで留まっている。
全米にはいまでも約3億丁の銃があると言われる。筆者は1982年に渡米以来、米連邦政府や地方自治体が銃の総数を減らす試みをしてきている実態をずいぶん見ている。しかし実数は大幅に減少してはいないのが現状だ。
LGBTについては、全米で認知が拡がっている。しかし、フロリダのテロ事件の実行犯マティーンがホモフォビア(同性愛者嫌い)であったことは、父親の証言から分かっている。
ISの標的は性的少数者だけでなく、キリスト教徒、ユダヤ教徒、いや欧米人一般にまで広げられており、オーランドにあるゲイのナイトクラブ「パルス」が狙われたのは、マティーンの個人的な選別によるものと思われる。
同性婚については2015年6月、米最高裁が同性婚を認める判決を出したことで、大きく前進している。それが世の流れであろう。しかしマティーンのように個人的に反感を抱く人間が、社会の分断の切れ目を鮮明化させる。
ヒラリーは以前、同性婚には反対していたが、近年賛成派に回った。トランプは同性婚に対しては慎重な言い回しをしている。けれども過去の言動を見る限り反対派であり、大統領になった時には最高裁の判決を覆す野望を抱く。
次期大統領は、任期中に最高裁判事の交代を経験するはずで、保守系の判事を登用して同性婚を禁止する動きに出るだろう。
このように、フロリダ州のテロ事件は改めて米社会が抱える3つの憂慮を明確化させると同時に、分断を深めることにつながっている。
しかも米国をまとめ上げるべき大統領候補のトランプとヒラリーが、さらに社会の二分化を加速させる結果になっている点が何とも皮肉である。
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