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今年の「中国軍事レポート」はどこが不十分なのか 最新鋭の対艦弾道ミサイルとA2/AD戦力への言及は?
http://www.asyura2.com/16/warb17/msg/760.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 26 日 00:20:00: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

           中国人民解放軍の「東風26型(DF-26)」対艦弾道ミサイル(出所:Wikimedia Commons)


今年の「中国軍事レポート」はどこが不十分なのか 最新鋭の対艦弾道ミサイルとA2/AD戦力への言及は?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46933
2016.5.26 北村 淳 Jbpress


 アメリカ国防総省は毎年中国の軍事力に関する報告書を作成して連邦議会に提出している。その最新版である『Annual Report To Congress: Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2016』が今年も公開された。


 今年の『中国軍事レポート』は、これまで15年にわたって発行されてきた中で最も分量が多い。現在の装丁がスタートした2012年版は52ページであったが、本年版は156ページと大幅に分厚いレポートとなった。


 分量が3倍になっただけではない。15年前、このレポートの主たる関心は「中国による台湾侵攻能力」の分析であった。その後も、このテーマは毎年、主たる関心であり続けていた。しかし、今回のレポートでは、アメリカ軍当局の主たる関心が「中国による台湾侵攻能力」ではなく、「中国人民解放軍の地球規模での展開能力」に完全にシフトしたことが明示されている。


 毎年公開されている『中国軍事レポート』は、アメリカ国防総省による中国軍事力に関する公式見解である。そのため、米国内や中国はもとより、広く国際社会からも関心を持たれており、毎回様々な批判や提言などが噴出するのが常である。今回のレポートに対しても、様々な反応が見られる。中国当局はもちろん例年の通り厳しい非難を加えている。


 一方、米国のシンクタンクや米軍関係の対中戦略家などの間からは、様々な問題点を指摘する声が上がり始めている。それら問題提起の1つに、最新鋭の「東風26型(DF-26)」対艦弾道ミサイルならびにA2/AD戦力の脅威に関する言及が極めて不十分であるというものがある。


 この論点には筆者も同感であるだけでなく、日本にとっても重要な論点であるため、本コラムで紹介してみたい。


■進化を重ねる対艦弾道ミサイル


 中国はかねてより鳴り物入りで対艦弾道ミサイルの開発に邁進していた。


 対艦弾道ミサイルというのは、中国本土に展開する地上移動式発射装置(TEL)から発射する弾道ミサイルで、はるか沖合を航行する敵の大型軍艦(主たるターゲットはアメリカ海軍航空母艦)を攻撃するシステムである。


 いくら目標が超大型の軍艦であるとはいえ、長さ300メートル、幅75メートル程度の船体で、それも最速時には時速60キロメートルもの高速で海上を移動する目標に命中させるには、極めて高性能な弾道ミサイル本体が必要になる。具体的には、ミサイルが目標に接近すると自ら目標を捕捉し針路を調整する機能などだ。それに加えて、水平線のはるか彼方の攻撃目標を探知し誘導するための衛星測位システムと超水平線(OTH)レーダーが必要となる。


 人民解放軍は中国独自開発の「北斗」、アメリカの「GPS」、それにEUの「ガリレオ」といった衛星測位システムを使用して、万全なるミサイル誘導体制を固めつつある。また、人民解放軍のOTHレーダーの技術的進展は、レーダーシステム自身だけでなく偵察衛星などの関連システムを含めて、目覚しいものがあると米軍情報関係者たちは分析している。


 このような対艦弾道ミサイルシステム開発の成果の第1弾として登場したのが、「東風21丁型(DF-21D)」対艦弾道ミサイルであった。


 DF-21Dは、主として日本を攻撃するために多数配備されているDF-21弾道ミサイルをベースに、対艦弾道ミサイルに仕上げられたものであり、射程距離は1450キロメートル程度と言われる。したがって、沖縄の太平洋沖を航行中のアメリカ空母を攻撃することが可能であり、佐世保や横須賀の軍港に停泊中の米空母や海上自衛隊大型艦も“有望”な攻撃目標ということになる。


 DF-21Dはすでに数基が配備されているものの、対艦弾道ミサイルの開発に成功しているのは“中国だけ”であり、洋上を航行する艦船に対して実際にDF-21Dを発射して命中させる実戦的実験が実施された形跡がないため、その実態については懐疑的な専門家も少なくない。


 このように能力が若干疑問視されていた中国の対艦弾道ミサイルであるが、昨秋になると人民解放軍はDF-21Dの進化形としてDF-26を完成させた。


 DF-26の射程距離はDF-21Dに比べると大幅に延伸されて2500マイル(およそ4000キロメートル)に達すると言われている。たとえこの推測値の8割の2000マイル(およそ3200キロメートル)だとしても、中国本土から発射されたDF-26はグアム周辺海域のアメリカ空母に命中することになる。


 そして米海軍情報局やシンクタンク関係者たちは、このような長射程での、しかも移動する小型目標を捕捉しDF-26の弾頭を誘導するための各種衛星群、ならびにOTHレーダーシステムの改良も飛躍的に進んでいると分析している。



中国の対艦弾道ミサイルの射程圏


■アメリカはA2/AD戦力に跳ね返される


『中国軍事レポート』は、なにも人民解放軍の兵器や武器の分析を目的とするものではない。そのため、DF-21DやDF-26といった対艦弾道ミサイルそのものに対する記述が不十分なのはさしたる問題ではない。それよりも米国のシンクタンクや対中戦略家が問題にしているのは、それらの新鋭兵器が投入されている「接近阻止領域拒否戦略」(A2/AD戦略)が米軍や同盟軍に大きな脅威を与えている事実が等閑視されていることについてである。


 本コラムでもしばしば登場している「A2/AD戦略」とは、中国本土に近寄ろうとするアメリカ海軍や航空戦力を中国からできるだけ遠方の海域で迎撃して、中国本土には絶対に接近させないための人民解放軍の基本戦略である。そのために中国は「第1列島線」「第2列島線」という概念を生み出した。


 九州から南西諸島、台湾を経てフィリピンへと続く第1列島線周辺海域にはアメリカ海洋戦力を寄せ付けない防衛体制を固めつつある。そのために用いられる人民解放軍の主たる戦力が、各種長射程対艦ミサイルと対空ミサイルである。


 長射程ミサイルのほとんどは巡航ミサイルであり、中国本土沿岸地域に展開するTEL、中国沿海の安全海域(米軍や自衛隊の攻撃が行われない)洋上の軍艦、中国沿海部上空の安全空域を飛行する航空機、それに西太平洋に進出し海中深く潜行する攻撃原子力潜水艦などから発射可能な準備態勢が固められつつある。


 そして、第1列島線に近づくアメリカ海軍空母打撃群を撃破するために、それらの各種巡航ミサイルとともに発射されるのがDF-21Dということになる。


 巡航ミサイルは、ひとたび米軍や自衛隊の高性能レーダーシステムによって探知補足された場合、(理論的には)撃墜されてしまう。そこで、超高速(マッハ12)で軍艦に突入する対艦弾道ミサイルが、数多くの巡航ミサイルとともに発射されることになるのだ。超高速の対艦弾道ミサイルならば、イージスシステムをはじめとするアメリカ側の高性能ミサイル防衛システムといえども迎撃は不可能に近い。


 第1列島線までの接近阻止態勢が整ってきた中国にとって、次なるステップは、第2列島線周辺海域でのアメリカ海洋戦力の自由な作戦行動を封じることである。第2列島線周辺海域とは、伊豆諸島から小笠原諸島を経てグアム島をはじめとするマリアナ諸島に至る海域だ。


 そのために登場したのが、グアムに停泊する艦艇はもとよりマリアナ諸島周辺海域を航行するアメリカ空母を撃破するためのDF-26ということになる。ただし、DF-26だけでは、アメリカ海軍の行動を阻止することは難しく、DF-26を補強する各種巡航ミサイル戦略による第2列島線周辺海域への攻撃能力を構築しなければならない(これには、今しばらくの年月を要する)。


 いずれにせよ、極めて大量の各種巡航ミサイルとDF-21DそれにDF-26を人民解放軍が手にしているということは、少なくとも第1列島線に近づくアメリカ海洋戦力に対するA2/AD戦略が効果的に機能するであろうことを意味している。そこで、少なからぬ対中戦略専門家たちが、「このような状況を、多額の税金を投じて作成している『中国軍事レポート』で詳述しないのは、納税者の対する裏切り行為である」と強く危惧しているのである。
 

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コメント
 
1. 2016年5月26日 07:50:54 : GEp40GNW7E : W73TaNWY_Wg[129]
書いたってどうしようもないではないか。神の杖の弾道弾版だから対抗のしようがない。そもそも武力で対抗、あわよくば屈服させようという発想が、大国相手に通るわけもない。

2. ステン[94] g1iDZYOT 2016年5月26日 19:14:44 : kXe4SWCDeQ : b8GeeCbCV68[59]
減速すれば迎撃される
減速しなければ終端誘導が難しくなる
ましてや相手は動く船

空母キラーというよりは艦隊に自分への対処を強要させるためのものじゃないのか


3. 2016年5月28日 22:23:49 : sCcr7LTP4i : 7y0oIv7cQ3c[1]
「A2ADへの対応」が新兵器の開発の根拠になってる事は見逃しちゃいけない。
中国軍がカスだとは言わないけど、敵の脅威を喧伝して予算削減を阻止しようとするのは米軍の常套手段だ。

だから対艦弾道ミサイルのように「技術的な妥当性があやしい敵の必殺兵器」は、眉に唾つけてイロイロ考える必要がある。


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