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対艦巡航ミサイルや長距離地対空ミサイルが配備されたという南シナ海の永興島(Getty Images)
南シナ海問題には長期戦で臨め
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160514-00010001-wedge-cn
Wedge 5月14日(土)12時10分配信
米戦略予算評価センター(CSBA)のアンドリュー・クレピネビッチ前センター長が、同センターのサイトに3月30日付で「南シナ海長期戦」と題する論説を寄せ、南シナ海問題は重要貿易路の航行の自由にかかわり、米中間の長期的競争の一部である、ベルリンの封鎖や壁建設にトルーマンやケネディがしたような対応をするなど、軍事的に覚悟を持って取り組むべし、と論じています。同人の論旨は次の通りです。
■軍事バランスの変化狙う中国
孫子は「戦わずして敵の抵抗を破るのが最善」と言った。近代の軍事用語では、決定的な「立場上の優位」を達成すると表現される。中国は孫子に倣い、南シナ海の諸島に戦闘機、レーダー、ミサイルを配備し、軍事化を続けている。中国の短期的な狙いは東南アジア諸国に「立場上の優位」を樹立することである。長期的には彼等の米への信頼をなくさせ、中国の地域秩序構想に従うように軍事バランスを変えることである。
中国は日本、比、韓国、台湾の戦略的貿易ルートに地位を築こうとしている。中国軍は比、越、インドネシア、マレーシア、シンガポールの近辺に展開している。
中国が西太平洋の覇権国となることを追求する中で、地域諸国は米国の支援をあてにしているが、米国の対応は不十分である。5年前、オバマ大統領はアジアへの「リバランス」を発表したが、これはレトリックに終わっていて現実にはなっていない。
2016年、米国は航行の自由作戦を展開、ケリー国務長官は「非常に深刻な話し合い」を北京とすると言っているが、安定した軍事バランスと同盟国の信頼を再確立するためには、もっと多くのことが必要である。
■南シナ海問題で米国がすべきことは
第1:南シナ海の航行の自由確保で米国は指導力を示すべきである。オバマは前任者たちに倣いうる。1948年スターリンがベルリン封鎖をした時に、トルーマンはベルリン空輸を実施した。フルシチョフがベルリンの壁を作ったとき、ケネディは陸軍部隊を伴う輸送車両を東ドイツ領経由ベルリンに向け送った。1973年、カダフィがシドラ湾領有を宣言した際、米国は航行の自由パトロールを行った。1987年、イランがペルシャ湾の航行の自由を阻害しようとしたとき、レーガン大統領は米海軍にクウェートのタンカーのエスコートを命じた。
2月にハリス太平洋軍司令官は航行の自由作戦を増やすと発表したが、有益な第一歩である。日豪もこのパトロールに参加するように奨励されるべきである。航空機の飛行も行うべきであるし、民間の航空機と船舶のエスコートもすべきである。これらのことを早く実施すべきで、中国に既成事実を作らせてはいけない。
第2:我々は中国と「立場上の優位」をめぐって長期の競争にあることを認識し、対応すべきである。比、越などは米国と協力する用意がある。マニラは4つの空軍基地と1つの陸軍基地の提供を申し出、米国はそれを受け入れた。米国はパラワン島への陸軍部隊配備をし、防空能力、ミサイル防衛、対艦巡航ミサイル、長距離ロケット砲を配備すべきである。この配備で、中国が「立場の優位」を獲得するのを拒否しうる。越は南シナ海の西側で同じようなことをするように奨励されるべきである。
中国が「新常態」を作り出し、同盟国が米国への信頼をなくす前に、行動しなければならない。中国の平和的な意図の声明に頼る時期は過ぎ去った。米国が正面から指導する時である。
出典:Andrew F. Krepinevich,‘The South China Sea Long Game’(CSBA, March 30, 2016)
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■軍事力展開以外の選択肢はない
この論説は、的を射た良い論説で、賛成できる内容です。
今般の核セキュリティ・サミットの際のオバマ・習近平会談でも、習近平は南シナ海での中国の行動を正当化したようです。中国が軍事力を使って、9段線で囲まれる地域の主権を主張し、「核心的利益」であるとして聞く耳を持たないとの姿勢をとる以上、米国としては軍事力を展開して、対抗していく以外に選択肢はありません。この論説が推奨しているようなことをしていくべきでしょう。
クレピネビッチは南シナ海問題とベルリン封鎖などを比較し論じていますが、国際法に反する主張を拒否するという観点からは、これらの比較も適切です。しかし、トルーマン、ケネディ、レーガンを一方におき、オバマを他方において比較すると、軍事力行使への姿勢が大きく異なります。そのうえオバマは、米国は世界の警察官ではないと述べ、米国の役割を制限する傾向を持っています。したがって今後の米の対応がこの論説の主張するようなものになるかはよく分かりません。
中国の平和的意図の声明などに頼る時期はとうに過ぎ去ったと言うのは、その通りです。中国の行動を見ていると、中国の共産党独裁政権は信用に値しないと結論せざるを得ません。
米中関係は今後、悪化していく可能性が高いですが、これは日本にとって悪い事ではありません。中国の脅威をきちんと認識せず、経済的利益に目を奪われて中国の無理を通す米国より、中国に対決的で、日本重視の米国の方が我が国の国益に資すると言ってよいでしょう。
岡崎研究所
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