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西沙諸島・永興島(ウッディー島)の航空写真(2012年7月27日撮影、資料写真)。(c)AFP〔AFPBB News〕
すでに地対艦ミサイルも配備されていた南シナ海 ますます強化される中国の「自衛」戦力
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46469
2016.3.31 北村 淳 JBpress
2月中旬、中国が西沙諸島の永興島(ウッディー島)に地対空ミサイル部隊を展開させたことが、米軍側によって確認された。永興島は、中国が南シナ海における「海洋国土」確保の前進拠点としている島である。
筆者は本コラムなどで、「人民解放軍が西沙諸島の永興島および南沙諸島に建設中の7つの人工島に、地対空ミサイルに加えて地対艦ミサイルを配備する日は間近であろう」と指摘してきた。
ところが、“間近”どころではなかった。すでに永興島には地対艦ミサイルも配備されていたことが確認されたのだ。
■地対艦ミサイル「YJ-62」を発射
中国のインターネットに掲載された写真
3月21日、中国のインターネットに永興島らしき場所で地対艦ミサイルらしきミサイルが試射されている写真が流された。その写真を米軍関係機関やシンクタンクなどが分析した結果、ミサイルが発射されていた場所は背景などから明らかに永興島であること、そして発射されたミサイルは鷹撃62型地対艦ミサイル(YJ-62)であることが確認された。
YJ-62にはいくつかのバリエーションがあるが、いずれも地上移動式発射装置(TEL)に3基搭載され、そのTELから発射されてはるか海上を航行する艦艇船舶を攻撃する。最大射程距離は基本型のYJ-62が280キロメートル以上(中国公称値)、改良型のYJ-62Aは400キロメートル(推定値)とされている。
水平線の彼方の艦艇船舶を攻撃するため、YJ-62ミサイルは衛星測位システム(アメリカのGPSと中国の北斗システム)を利用して海面すれすれの低高度(7〜10メートル)を飛翔して攻撃目標に接近し、目標の直近(10キロメートル〜5キロメートル)からはミサイル本体に搭載された目標捜索装置を作動させて目標の艦艇船舶に突入する。
YJ-62の最高飛翔速度はマッハ0.8程度と考えられており、対艦巡航ミサイルとしては比較的“低速”の部類に属する(とは言っても脅威ではないというわけではない)。ただし人民解放軍は、YJ-62より高速で飛翔するYJ-82や、YJ-62より高速で飛翔するだけでなく目標に突入する段階では超音速になると言われているYJ-83も保有しており、やがてそれらの地対艦ミサイルも永興島や南沙諸島人工島に配備されるものと考えられる。
YJ-62地対艦ミサイル射程圏
■中国が永興島でミサイルを発射するまで
中国側によると、永興島には海南省三沙市政府機関が位置しており、それら政府機関の民間人のみならず漁業や商業に従事する三沙市民も多数居住している。そうした永興島に島嶼防衛用の地対空ミサイルや地対艦ミサイルを配備するのは、「アメリカの軍事的威嚇に対処するための完全に防衛的な自衛措置」ということになる。
南シナ海における領有権紛争は今に始まった話ではない。中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、そして台湾による、数々の島嶼環礁とそれらの周辺海域をめぐる領有権紛争は長きにわたって続いてきた。ただし、アメリカはこれまで「第三国間の領土・領海をめぐる紛争には直接関与しない」という外交鉄則を掲げ、南シナ海での領有権紛争に直接口出しすることは控えてきた。
しかしながら、中国が南沙諸島に7つもの人工島を建設していることが確認されると、アメリカ海軍を中心とした対中牽制派の人々から「アメリカも何らかの形で南シナ海問題に関与すべきである」との声が上がり始めた。そして、3つの人工島に軍用飛行場が誕生することが確実になるや、オバマ政権もようやく中国に対する牽制行動にゴーサインを出すこととなった。
南沙諸島で中国が建設する人工島
そして、実施されたのが「FONOP」(公海航行自由原則維持のための作戦)である。昨年(2015年)10月、第1回FONOPとして人工島の1つスービ礁周辺にアメリカ海軍駆逐艦と哨戒機が派遣された(JBpress「遅すぎた米国『FON作戦』がもたらした副作用」2015年11月5日http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45163)。
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ただし、中国による人工島の各種施設の建設スピードが緩むことはなかった。今年の正月には人工島の1つであるファイアリークロス礁に建設されていた飛行場(あらゆる軍用機が使用可能な3000メートル級滑走路)に大型旅客機が発着し、人工島飛行場第1号の運用が開始された(「中国が人工島に建設した滑走路、爆撃機も使用可能に」2016年1月14日http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45748)。
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それに対してアメリカは、第2回目のFONOPを実施する。今回は駆逐艦を西沙諸島(中国とベトナムが領土紛争中)の中建島(トリトン島)周辺海域に派遣して12海里内海域を通航させた(「それでも日本はアメリカべったりなのか?」2016年2月4日http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45947)。
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すると中国軍は、西沙諸島が脅かされたことを口実にして、西沙諸島の中心である永興島に地対空ミサイル部隊を展開させた(「中国の国営メディア、『米艦艇に発砲せよ』と息巻く」2016年2月25日http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46138)。
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それに対してアメリカ海軍は、空母打撃群を南シナ海に派遣し、中国に対し海軍遠征投射能力のデモンストレーションを行った(「米国の空母打撃群派遣を中国は間違いなく逆手に取る」2016年3月10日http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46287)。
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すると、上記のように中国のインターネットに、永興島で地対艦ミサイルが南シナ海に向けて試射されている状況が映し出されたのだ。
アメリカによるFONOPは、中国の南沙諸島や西沙諸島に対する領有権の主張に対して直接的に反対するためのものではなく、「南シナ海において船舶が自由に航行できる状態を確保するためのデモンストレーション」という建前になっている。しかし、中国はそれを逆手にとって「アメリカが中国の“海洋国土”に軍事的脅威を加えている」として、「自衛措置を強化せざるをえない」という論法なのだ。
■伝統的海軍戦略ではもはや対抗できない
このように南シナ海での米中衝突が“いたちごっこ”の様相を呈している中、オバマ政権の国防費大削減によって海洋戦力の低下という現状に直面しているアメリカ軍としては、日本やオーストラリアを南シナ海での対中牽制活動に引っ張り出そうと動き始めている。
実際に、海上自衛隊と米海軍それにオーストラリア海軍が南シナ海で合同訓練をしたり、海上自衛隊の潜水艦がフィリピンに寄港したり、同じく駆逐艦がベトナムに寄港したり、オーストラリア海軍艦艇が南シナ海での定期パトロールを開始したり、日本政府が海上自衛隊の中古練習機をフィリピン軍に供与したり、といった状況が現実のものとなっている。
また、海上自衛隊の中古P-3C哨戒機をフィリピン軍に供与するとともに、海上自衛隊自身もフィリピン・パラワン島の航空基地をベースに南シナ海のパトロールを実施する方向で準備が進んでいる。海上自衛隊哨戒機が、アメリカ海軍哨戒機やアメリカ海軍やオーストラリア海軍艦艇とともに南シナ海をパトロールする日もそう遠くはない。
実際にアメリカ海軍では、「安倍首相や統幕長が、南シナ海への自衛隊派遣をアメリカ側に確約したのであるから、自衛隊駆逐艦あるいは哨戒機の派遣は当然である」と理解されている。
だが、アメリカが自衛隊やオーストラリア軍を巻き込んで中国側に圧力をかければかけるほど、人民解放軍の南沙諸島や西沙諸島への各種ミサイル配備や、航空基地並びに海軍拠点の充実がますます強化されることは自明の理である。
また、アメリカや日本そしてオーストラリアが、軍艦や航空機を繰り出して中国側を威嚇(威嚇になるかどうかは疑問であるが)しても、中国に人工島の建設や軍用滑走路の更地化などを強要することなど不可能である。
アメリカ海軍は依然として「海洋戦力には海洋戦力で」という方針を振り回そうとしているが、永興島や7つの南沙人工島、そしてスカボロ礁にまで陸上軍事拠点を設置しつつある南シナ海の人民解放軍戦力(プラス中国海警戦力)に対しては、そうした伝統的な方針だけでは対抗しきれない状況に立ち至ってしまっている。
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