http://www.asyura2.com/16/warb17/msg/345.html
Tweet |
(How China is driving Japan closer to Southeast Asia: DW English)
http://www.dw.com/en/how-china-is-driving-japan-closer-to-southeast-asia/a-19070879
2国間関係
どうやって中国は日本を東南アジアとの関係強化へと駆り立てているのか
中日関係の悪化につれ、日本政府は東南アジア地域で立場を強化するために同地域との政治・経済・防衛関係の強化を進めている。これが力のバランスにどのように影響しているかをDWが検証する。
アジア第2の経済大国・日本は1945年以降の時代を通じて東南アジア諸国と重要な関係を保ってきた。例えば、日本は政府開発援助の主要な供給国であり、また、日本企業は地域に多大な投資を行い、企業の生産活動のかなりの部分を現地に置くことによってその国々の安価な労働力を活用してきた。
さらに、ブルネイ・インドネシア・マレーシア産のガスやインドネシア産の石炭など、東南アジアは長年日本向け原料の重要な供給国としての役割を果たしてきた。日本企業はその代わりに地域への工業製品・サービスの輸出を増加しようと努力を続け、2011年には日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との2者間貿易は2480億ドルに達した。
しかし、この緊密な友好関係は数十年間続いてきたが、近年、2012年に保守の安倍晋三首相が政権に復帰してから関係が特に強化された。「安倍首相は東南アジアを2度目の任期で初の外遊先にしたことにより、日本にとって地域の重要性が増しているとのシグナルを送った」と、テンプル大学東京キャンパスの国際問題専門家ジェームズ・D・J・ブラウン氏はDWに語った。
転換点
この背景にある重要な要因は2012年後半に中国で発生した反日暴動だったと、専門家たちは語る。その切っ掛けは両国が主権を主張する東シナ海(ECS)の小さな島々・尖閣/釣魚諸島をめぐる領土紛争だった。
日本とASEANの関係は安倍首相の政権復帰以降強化された
この出来事の後、日本の多国籍企業は中国での生産に過度に依存することが自社の世界的なサプライチェーンに及ぼすリスクを認識し、中国への投資を引き上げ始めるとともにASEAN地域にもっと目を向けるようになり始めた。
「中国の反日暴動のためにそれに代わる工業生産拠点として東南アジアの魅力が増した」と、世界的なコンサルティング企業IHSの主任エコノミスト、ラジブ・ビスワス氏はDWに語った。地域としてのASEANはアジア第3の経済規模と全体で6億2000万人の人口を持つ。
日本の多国籍企業をベトナムやインドネシアなどの低賃金国に押しやった他の要因として、中国の製造コスト上昇や総合的な経済の減速がある。なぜなら、中国の成長が止まることがあっても、これが日本経済に間違いなくもたらす負の影響の一部がASEANとの強い経済関係によって相殺されるかも知れないからだと、アナリストのブラウン氏は指摘した。
利益の対立
しかし、日本のリバランスの背景にある理由は経済だけでない。日本は東シナ海だけでなく南シナ海でも領土紛争において中国が強引さを増していることに警鐘を鳴らしてきた。
「日本は東シナ海・南シナ海での中国を見て、地域覇権を握ろうと企てていると考えている」と、東京・国際基督教大学の国際研究准教授スティーブン・R・ナギ氏はDWに語った。
この専門家は、東シナ海の紛争は実際には島々についての問題よりもむしろアジア太平洋へのアクセスと米国の影響力排除についての問題で、一方、南シナ海の争いは主に中国・日本双方の貿易とエネルギー安全保障についての問題だと主張する。「中国は南シナ海を危険の除去が必要な裏庭を見なしているが、日本はこの地域を重大なシーレーンと見なしている」とナギ氏は強調した。
日本は南シナ海の沿岸国でなく、パラセル・スプラトリー両諸島をめぐる領土紛争の当事国でもないが、日本政府は中東から輸入する死活的に重要なエネルギー資源の全量を含む貿易の大きな割合がこの紛争水域を通過するため、日本政府はこれを安全保障にとって極めて重要な問題と考えている。
中国軍事の専門家でバンテージポイントアジア社CEOのクリステン・グネス氏はこれを踏まえて、地域における中国の強引さが、「東南アジア諸国と関係を緊密化するように日本を押しやる役割を果たしたのは確かだ」と主張する。
軍事協力の強化
中国は南シナ海で土地埋め立て作業を続けているが、東アジアと東南アジアの他国はこれを退却させることを当然の権利として関心を持っているとこのアナリストは語り、海上プレゼンスの強化を通してこれを得ることが最善の方法の1つだと付け加えた。
日本がASEANと、特に同連合の中でも中国の行動に対抗したいと考える国々との関係強化を活発に模索してきた理由はこれだ。「日本が主にフィリピン・ベトナムに向けて安全保障面の協力を進めてきたのはこのためだ。この両国は南シナ海をめぐり中国と激しい領土紛争を起こしている」と、アナリストのブラウン氏は語った。
この結果として、日本はより広範囲の状況において軍事力を使えるようにするとともに長年堅持した武器輸出制限を大幅に緩和するために、平和憲法の解釈変更という論争を呼ぶステップを踏むことになった。日本政府は軍事・安全保障面での交流拡大の取り組みを強化しつつ、海上の安全保障能力を高めるためにASEAN諸国政府を支援している。
例えば日本とフィリピンは、2015年6月にベニグノ・アキノ比大統領が安倍晋三・日本首相を訪ねた時、関係を「強化された戦略的パートナーシップ」に格上げした。安倍政権はまた、フィリピン諸島の海上安全保障を支えるため使えるよう、同国に多目的艦艇10隻を供与した。最近では、日本とフィリピンは2015年5月に南シナ海で初の海軍合同演習を実施した。
2015年5月、日本とフィリピンは南シナ海で初の海軍合同演習を実施した
同様に、日本とベトナムも2006年から戦略的パートナーになり、2014年には日本が6隻の船舶を供与する協定が成立した。また2015年に成立した協定によって、日本の海上自衛隊(MSDF)の船がベトナムのカムラン湾に寄港出来るようになった。
最も論争を呼んだ最近の動きとして、2015年11月、安倍晋三首相は日本の海上自衛隊に南シナ海を巡視させる可能性を検討していることを公表した。「中国外務省は、この声明は中国政府が同国にとって死活的に重要と考えている区域への歓迎できない『介入』であるとして、即座に非難した」とブラウン氏は語った。
互恵関係
しかし、中国と日本の競合関係からASEANはどのように利益を得ているのか?ビスワス氏などの専門家たちは、東南アジア諸国は日本との経済・安全保障両面の関係強化に関心を持っているのは明らかだと指摘する。
「多くの東南アジア諸国は中国と強い貿易・投資関係を持っているが、中国の軍事的な強引さに懸念を強めている。そのため、こうした国々の一部は日本との関係強化を中国に対する弱さを補うためのアプローチの1つと見ている」と、このエコノミストは語った。
さらに、地域で契約を獲得するために日本と中国の企業が競争するので、東南アジア諸国政府は入札者から更に好ましい条件を引き出すことが出来るだろうと、専門家たちは語る。
また軍事関係については、日本の軍事活動の可能性には憲法上の制約が残っているが、日本とフィリピン・ベトナムの安全保障面での協力は拡大しており、海上安全保障についてこうした国々の懸念の一部緩和に役立つことが期待されている。
前方に延びる道
結果として、日本は近い将来にASEANへの影響力を増すために軍事・経済両面のインセンティヴを組み合わせて使い続けることになりそうだと、アナリストのグネス氏は語る。「経済面では、日本は存在感と影響力を増すために投資と外国向け開発援助を拡大するだろう」と彼女は語った。
日本企業は中国の投資を引き上げるとともにASEAN地域に更に目を向けるようになっている
そして、地域の経済発展が進むにつれ、日本企業はハイテク製品の輸出拡大や大規模インフラ事業参加の機会が拡大する。さらに、日本で労働力不足が激しくなり始めると、更に多くの日本企業が東南アジアに生産活動移転を検討するようになりそうだと、アナリストのブラウン氏は語った。
軍事分野では、日本とASEAN諸国の合同軍事演習や双方の海上保安当局による合同訓練と同様に、文民・軍人双方の指導者によるハイレベルな訪問の増加が予想されると、グネス氏は語る。海上の監視・偵察活動の支援も、東南アジア諸国の軍や海上保安当局の手助けとして日本が検討するかも知れないと、彼女は付け加えた。
このような要因全体を組み合わせることが、東南アジアでの日本の役割の拡大がインドネシアなどの中立国にさえ歓迎される結果に結びついたと、シンガポールに本部を置くS.ラジャラトナム国際関係学院のコリン・コー・スウィー・リーン准主任研究員は説明する。
「このような地政学・経済・技術の各面での諸要因を全て組み合わせることで、東南アジアへの日本の戦略的『軸足』の正しさを説明できる。それでも、中国の強引さが全てについての何よりも最も納得できる原動力であることは間違いない」と、コー氏はDWに語った。
発表 2016年2月24日
記者 ガブリエル・ドミンゲス
関連テーマ 日本、中華人民共和国、アジア、東南アジア諸国連合 (ASEAN)
キーワード アジア、日本、ASEAN、東南アジア、安倍晋三、中国
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。