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平壌の祖国解放戦争勝利記念館前にたたずむ北朝鮮軍のガイド(iStock)
北朝鮮が核保有に固執するワケ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160316-00010002-wedge-int
Wedge 3月16日(水)12時11分配信
ダニエル・イノウエ・アジア太平洋安全保障センターのジャクソン准教授が、2月8日付Diplomat誌ウェブサイト掲載の論説にて、今の北朝鮮に基づいた新たな対北朝鮮政策が必要であり、非核化を交渉目的とする政策を変え平和条約の議論を始めるべきだ、と述べています。論旨は以下の通り。
次期米大統領は、これまでとは違う北朝鮮に直面することになろう。従来の政策は不十分である。以下の考えが今後の対北朝鮮政策の新たな基本ラインになるべきである。
北朝鮮の小規模の挑発は望ましくはないが許容できる、との従来の考えは、二つの理由で通らなくなった。第一に、この考えは、北朝鮮への報復を主張する2010年来の韓国の立場と全面的に矛盾するようになってきた。報復すれば半島の安定は崩壊するし、しなければ北朝鮮の一層の挑発を招く。第二に、挑発が続くことは韓国での米国のコミットメントの信頼性を侵食することになる。
■「正当な朝鮮国家」と認めてほしい北朝鮮
北朝鮮を予測不可能で狂った国と見るのは正しくない。北朝鮮の行動は合理的である。北朝鮮は、何時、いかなる場合に挑発すべきかについては熟慮し、エスカレーションをコントロールするために既成事実や単独の事件を通じて挑発する。危機になっても面目ある出口を探る。将来もソウル攻撃や核の先制使用はしないだろう。それらはレジームの壊滅が切迫した際の最後の手段であろう。
今や北朝鮮は核保有敵国である。北朝鮮の崩壊を望んだり、北の挑戦にはそれを上回る反撃をすると宣言したり、核の使用をちらつかせることは、今やナイーブで危険な考えだ。核保有は、非戦争事態でも北朝鮮の行動の自由を広げる。最近のB52の挑戦半島飛行のような、域外からの米軍の大規模な部隊移動にも核戦争の危険が伴うようになった。
北朝鮮が核兵器を保有した以上、意味ある非核化交渉は夢物語になった。今後北朝鮮の安全保障政策における核の重要性は増えこそすれ、減ることはない。北朝鮮と本気でエンゲージしていくのであれば、その直接の目的は非核化ということにはならない。
北朝鮮は、我々とは異なる和平を望んでいる。北が欲する和平は、核兵器保有を正式に認め、韓国を平和条約から除外することによって韓国より上位の「正当な朝鮮国家」と認め、米軍を半島から撤退させることで、裏口から北の核保有国としてのステータスを正当化し、米韓の間に楔を打つようなものである。そのような和平は米朝間の和平でしかなく、南北間の敵対関係は続く。これらのことは、いずれかの時点で平和条約の議論を始めるべきではないということを意味しないが、議論に当たっては、それが米の同盟関係と不拡散の規範にどういう意味を持つかについて冷徹な考えを持つことが非常に重要となる。
現在の政策は、核は交渉によって取り除くことができ、必要があれば侵略、占領でき、制裁その他の圧力により屈服させることができた時代の北朝鮮に対するものである。しかし、今の北朝鮮はそれとは異なる。
出典:Van Jackson,‘A New Baseline for North Korea Policy: What the Next US President Needs to Know’(Diplomat, February 8, 2016)
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非常に読み応えのある冷徹な議論です。注意深く読む価値があります。
論説が言う新たな政策が必要とする議論の中で、韓国要素がどれほど大きいのかが、定かには分かりません。従来から韓国は北の挑発には反撃を主張してきました。しかしその都度最終的には米国からの自制要求に従ってきました。この点は今でもコントロールできる状態にあるのではないでしょうか。ただし、今回の核実験、ミサイル発射についての衝撃は大きく、メディアなどで核武装がオプションとして再び叫ばれています。戦略論というよりも多分に国内的な政治論の側面が強いのではないかと思われますが、注目する必要はあります。
■膠着状態打開には米朝協議を
新たな政策が必要となる最大の理由は、やはり、90年代の北朝鮮と違って、核保有の既成事実化が進んでいることにあります。その意味で、北の核開発はイランの核開発より進んでおり、一層厄介な大問題です。北朝鮮の核保有はそこまで現実が進んでいます。筆者の極めて冷静なポイントは、議論として理解できます。筆者は、先のB52飛行についても批判しています。
米国の関係者が北朝鮮について本気になってきている最大の理由は、筆者は言及していませんが、やはり、北朝鮮が米国に届く長距離弾道ミサイル獲得に少しずつ前進していることです。米国にとっての戦略リスクが増しています。
筆者は、北朝鮮とのエンゲージに当たって、直接の交渉目的を非核化とするのは今やおかしいと主張し、同盟関係、核の不拡散などにつき熟慮しながら、「今の北朝鮮」との平和条約の議論を始めるべきだとしています。現在の膠着状態を開くのは、やはり米朝協議だとの点は賛同できます。平和条約は、二国間になるか、複数国間あるいは多数国間になるかは別として、いずれやらねばならない事項です。日朝を含め二国間交渉がますます重要になっているのではないでしょうか。
このような中で、日本、そして韓国がどのように考えるかが非常に重要になると思います。米、中、ロシアは核保有国として基本的には「同じ言葉」で大国政治を行い、それに対して、日本などもきちっとした、真面目な戦略政治論を行っていくことが重要となります。
岡崎研究所
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