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人類は民主的な社会へ向かって進むという「予定説」を信じることの危険性(1)/侵略戦争
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2016.02.28 20:42:54 櫻井ジャーナル
アメリカ政府とロシア政府は2月22日、シリアでの戦闘を停止することで合意した。2月10日にヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問、ウラジミル・プーチン露大統領と会談しているが、そこで何らかの話し合いがあり、ロシア政府がそれに答えた形になっている。ダーイッシュなどはこの合意を潰そうと必死のようだ。
停戦は2月27日からだが、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)、アル・ヌスラ(アル・カイダ系武装集団)、あるいは国連がテロリストと認定しているグループには適応されない。蛇足ながら付け加えると、シリアで行われているのは侵略戦争であり、内戦ではない。
停戦にアメリカが合意した最大の理由は昨年9月30日にロシア軍が始めた空爆だろう。この事実から目を背けてはならない。ロシアが始めた攻撃によって侵略勢力が雇っているワッハーブ派/サラフ主義者やムスリム同胞団を中心とする武装勢力が壊滅的な打撃を受け、侵略勢力のプランが完全に狂ってしまったのだ。
シリアでロシア軍の攻撃を見るまでアメリカ側はロシアを甘く見ていた。生産設備も兵器/武器も時代遅れでアメリカの「近代兵器」の敵ではないと考えていたようだ。例えば2006年にフォーリン・アフェアーズ誌に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文「未来のための変革と再編」では、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できると主張されている。
停戦の合意を国連も歓迎したというが、ジェフリー・フェルトマン国連事務次長は平和的人物でなく、単に戦争を終わらせたかったのではないだろう。彼は1991年から93年にかけてローレンス・イーグルバーガー国務副長官の下で東/中央ヨーロッパを担当、ユーゴスラビア解体に関与したと言われ、2004年から08年にかけてレバノン駐在大使を務めた人物。
大使時代の2005年2月にレバノンではラフィク・ハリリ元首相が殺害されている。この事件を扱うために「レバノン特別法廷(STL)」が設置され、イスラム教シーア派のヒズボラに所属するという4名が起訴された。
この法廷は2007年、国連の1757号決議に基づいて設置されたが、国連の下部機関というわけではない。年間85億円程度だという運営資金を出している主な国はアメリカ、サウジアラビア、フランス、イギリス、レバノン、つまりシリアを侵略しようとしていた国々だ。
この事件では西側メディアが「シリア黒幕説」を流し、2005年10月に国連国際独立委員会のデトレフ・メーリス調査官は「シリアやレバノンの情報機関が殺害計画を知らなかったとは想像できない」と主張、「シリア犯行説」に基づく報告書を安保理に提出しているのだが、一連の調査、そして結論に疑惑があることは本ブログでも指摘した。(例えば、「2年前の2月にウクライナでネオナチのクーデターがあったが、そこで登場した国連事務次長の闇」)
フェルトマンはアメリカ支配層の手先としてターゲット国を破壊してきたひとりだということ。ウクライナのクーデターでも登場する。そうした人物が事務次長を務める組織がシリアでの停戦を望んだのは侵略部隊として使っていたアル・カイダ系武装勢力やそこから派生したダーイッシュを助けるためだった可能性が高い。ウクライナでも西側は自分たちの使っている武装勢力が苦境に陥ると停戦を持ちかけ、戦闘態勢を立て直そうとしてきた。
おそらく、シリアでもフェルトマンたちはそうしたことを考えたのだろうが、ロシアはアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュへの攻撃は続ける姿勢を崩さなかった。そのころシリアの要衝、アレッポを政府軍が攻撃していたのだが、西側が対応しきれないスピードで状況が変化、侵略軍の敗北が決定的になる。そして和平交渉は2月3日に中断した。
すぐに政府軍はアレッポをほぼ奪還したが、ここを政府軍が押さえたならば、トルコから延びている侵略軍の兵站線が断ち切られてしまう。侵略軍を編成、訓練、支援してきた国々は窮地に陥ったということだ。ワシントン・ポスト紙でさえ、アレッポを政府軍がおさえたことで戦争自体の決着がついた可能性があると報道している。
和平交渉が始まる前、アメリカ政府は軍事的にバシャール・アル・アサド政権を倒すつもりだった。それが侵略の目的だったからだ。1月22日にアシュトン・カーター国防長官は米陸軍第101空挺師団に所属する1800名をイラクのモスルやシリアのラッカへ派遣すると語り、23日にはトルコを訪問していたジョー・バイデン米副大統領がアメリカとトルコはシリアで続いている戦闘を軍事的に解決する用意があると発言している。そうしたアメリカ支配層の思惑を一気に変えたのがアレッポの戦闘だった。(つづく)
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