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南シナ海の西沙諸島・永興島に中国が新設した三沙市(2012年7月27日撮影、資料写真)。(c)AFP〔AFPBB News〕
中国の国営メディア、「米艦艇に発砲せよ」と息巻く ついに南シナ海にミサイルを配備、取り返しがつかない状態に
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46138
2016.2.25 北村 淳 JBpress
南沙諸島(スプラトリー諸島)で中国が建設を猛スピードで進めている7つの人工島の1つ、スービ礁周辺海域に、2015年10月、アメリカ海軍が駆逐艦と哨戒機を派遣して「FONOP」(公海航行自由原則維持のための作戦)を実施した(本コラム「遅すぎた米国『FONOP』がもたらした副作用」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45163)。
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その後、しばらくFONOPが繰り返されることはなかったが、2016年1月30日に、すでに30年以上も中国が実効支配を続けている西沙諸島(パラセル諸島)の中建島(トリトン島)周辺海域でアメリカ駆逐艦によるFONOPが実施された。
中国側はこのようなアメリカの姿勢に対応して、西沙諸島の政治軍事的中心である永興島(ウッディー島)に地対空ミサイル部隊を展開させた。
それに対してアメリカ政府は、南シナ海の軍事的緊張を一方的に高める動きであると非難した。すると中国国営メディアは、「中国の主権的海域に軍艦を送り込むアメリカの行動こそが、南シナ海の平和的安定を損なう元凶である」と反論し、「アメリカ軍艦に発砲、あるいは体当たりして、アメリカに教訓を与えなければならない」と中国共産党政府に注文をつけた。
■初めて南シナ海の島に地対空ミサイルを設置
永興島をはじめとする西沙諸島は、ベトナム戦争で混乱している1974年に中国人民解放軍が南ベトナム軍との戦闘を経て占領した。それ以来、今日に至るまで中国が名実ともに支配を続けている。
中国は永興島を拠点にして西沙諸島の支配を維持してきた。そして永興島には、南シナ海に点在している西沙諸島、中沙諸島、南沙諸島を管轄する三沙市の政府機関が設置されている。また永興島には大型ジェット旅客機だけでなく戦闘機や輸送機や爆撃機などが発着できる2700メートル滑走路を有する航空施設と、フリゲートや多くの駆逐艦を含んだ5000トン級の艦船が接岸できる港湾施設も整っている。さらに、人民解放軍守備隊も常駐している。
これまで永興島には、しばしば戦闘機が配備されることはあったが、地対空ミサイル部隊や地対艦ミサイル部隊が配備されることはなかった。2月16日に確認された地対空ミサイル部隊の配備は、南シナ海の島嶼に人民解放軍が初めて展開した地対空ミサイル部隊である。
(米海軍関係者によると、かつて中国とベトナムの軍事的緊張が続いていた時期には、人民解放軍は永興島に高射砲部隊を配備していたという。しかし近代的地対空ミサイルが持ち込まれたのは今回が初めてである。)
ちなみに、今回配備されたのは紅旗9型(HQ-9)地対空ミサイルで、発射装置はじめ火器管制装置や制御装置などはすべてトレーラーに積載され、地上を自由に動き回ることができる。そのため、敵の攻撃を受けにくいミサイルシステムである。HQ-9の最大射程距離は200キロメートルで、高度3万メートルまでの各種航空機や巡航ミサイルを迎撃することができるとされている。
HQ-9 発射装置(TEL)
■多数の“シビリアン”を居住させる理由
人民解放軍は、アメリカ海軍が先ごろFONOPを実施した中建島ではなく、また今後もFONOPが実施されるであろう南沙諸島のスービ礁をはじめとする人工島でもなく、永興島に地対空ミサイル部隊を展開させた。
それには理由がある。すなわち、政府機関や航空施設そして港湾施設や漁業関連設備もある永興島には多数のシビリアン(非戦闘員)が居住しているからである。
「シビリアンが居住しているがゆえに、ミサイル部隊を配置した」というのは、何もシビリアンを守るためという意味ではない。多くのシビリアンが居住している島嶼は、各種ピンポイント攻撃兵器を有しているアメリカ軍といえども、そう簡単には攻撃することができないからである。
したがって、南沙諸島で建設が急ピッチで進められている7つの人工島にも、3000メートル級滑走路や港湾施設などとともに気象観測所、海洋研究所、漁業設備、観光施設などの“民間施設”が次から次へと誕生するはずだ。そうやって多数の“シビリアン”(南シナ海で操業する漁民の多くは本格的軍事訓練を受け小火器を携行する海上武装民兵である)を居住させて、「アメリカ軍の軍事的強迫から中国市民を守るため」という理由で地対艦ミサイル部隊や地対空ミサイル部隊を配備するであろうことには疑いの余地がない。
■巡視船を攻撃することはできない
国営メディアは「アメリカに教訓を与える」ために「米艦に発砲し、体当たりせよ」と息巻いている。だが、永興島に配備されたのは地対空ミサイル部隊である。よって、このような威勢の良いプロパガンダは、南シナ海や東シナ海での侵攻主義的海洋戦略の主役と位置付けられている海警局巡視船を想定してのものと思われる。
「発砲せよ」というのは、海警局巡視船によるFONOPを実施する米駆逐艦に向けての警告射撃を意味している。そして「体当たりせよ」とは、海警局も人民解放軍海軍も公言し、現に実施している米艦艇への体当たり作戦のことである。
海警局巡視船の中には、海軍フリゲートから移籍した比較的強力な火砲を搭載した巡視船や、体当たり戦法によって大型駆逐艦をも撃沈させられる超大型巡視船もある。そのため、「ただのこけ脅しの掛け声に過ぎないとは見なせない」と米海軍関係者たちは危惧している。
もちろん、いくら強力な機関砲を数門搭載していようが、体当たり戦法によって駆逐艦を沈めるだけの巨体であろうが、海警局巡視船はあくまで巡視船である。対艦ミサイルや魚雷それに多数の火砲を搭載している駆逐艦が本気で立ち向かえば、たちどころに巡視船など撃沈してしまう。
しかし、巡視船は軍艦でないゆえに、軍艦にとっては「ミサイルや魚雷で攻撃することができない」というジレンマを抱える最大の難敵なのだ。
「中国の巡視船が退去警告を発しながら我艦に突貫してきた場合、いくら我々が中国の領海とは認めていない公海上とは言っても、中国巡視船を攻撃することはできない。あらゆる手段を駆使して衝突を回避し、現場から退避することになる。南シナ海をパトロールする米海軍艦艇の指揮官たちは、神経をすり減らす日々が続くことになるだろう」と米海軍関係者たちは嘆いている。
それだけではない、これまでの人工島建設のスピードから判断すると、南沙諸島の人工島に多数の“シビリアン”が居住し、地対艦ミサイル部隊や地対空ミサイル部隊が配備される日はそれほど遠くはない。その暁には、それら人工島周辺200キロメートル空域を“侵犯”した航空機は撃墜される可能性が生じる。また、同じく人工島周辺海域を航行するアメリカやその仲間の軍艦は、常に対艦ミサイルの餌食となる覚悟をしなければならなくなる。
やがて青円内は飛行・航行危険域になるかもしれない
■取り返しがつかない状態になりつつある
それらの島嶼から人民解放軍ミサイル部隊を排除するには、中国共産党政府を説得して「お引き取り願う」か、軍事的に叩き潰してしまうかのいずれかしか方法はない。しかし、非戦闘員が多数居住する島に展開した地上移動式ミサイル部隊を、精密攻撃によって壊滅させることは神業に近い。
まさに米海軍戦略家が言うように、「アメリカ政府が、中国共産党政府に対して波風を立てないように、腫れ物に触るような態度を取り続けてきたことが、悪夢のような状況を生み出しつつあるのだ」
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