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北朝鮮が実施したロケット打ち上げの様子。同国の朝鮮中央通信(KCNA)が配信(2016年2月7日配信)。(c)AFP/KCNA via KNS 〔AFPBB News〕
北朝鮮のミサイルもどきより中国の本物を警戒せよ 1000基の長距離巡航ミサイルが日本全土を狙っている
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46078
2016.2.18 北村 淳 JBpress
防衛省に設置したPAC-3により最大限可能な迎撃範囲(赤円内)
北朝鮮が、長距離弾道ミサイルの疑いがあるとされているローンチ・ビークル(launch vehicle、打ち上げ機)を発射する可能性があるとして、防衛省敷地内にPAC-3発射装置が展開されたのは1月29日であった。
引き続きイージス駆逐艦3隻も日本海と東シナ海で迎撃態勢をとるために出動し、北朝鮮が予告した飛翔ルート沿いの石垣島と宮古島にもPAC-3部隊が配備された。
北朝鮮は“事実上の長距離弾道ミサイル”を発射した後、ロケット発射通告を解除したため、日本政府は自衛隊に発令していた「破壊措置命令」を解除し、3隻のイージス駆逐艦ならびにPAC-3部隊を撤収させた(ただし日本政府は、北朝鮮がノドンやスカッドといった弾道ミサイルを発射する可能性は否定できないため、警戒監視活動は継続するとしている)。
今回の日本での騒ぎに対して、少なからぬ米軍やシンクタンクのミサイル戦専門家たちは次のような疑問を呈していた。
「日本政府は“ミサイル”に対する“破壊措置命令”を自衛隊に下命したが、PAC-3の段階ならばともかく、イージスBMDで迎撃すれば北朝鮮側に『日本による先制攻撃』といった対日非難の口実を与えることになる。さらには、報復と称してスカッドなどを打ち込んでくる可能性も考えられる。そのことへの防御態勢を万全にしているのか?」
たしかに日本政府のミサイル防衛態勢には疑問符をつけざるをえない点が少なくない。
■本当に危機感を持っているのか?
ノドン2の推定最大射程圏
北朝鮮は日本の大部分を射程圏に収めているノドン2弾道ミサイル(推定射程距離1500キロメートル以上)と、西日本の一部を攻撃可能なスカッドER弾道ミサイル(スカッドD北朝鮮バージョン、推定射程距離800キロメートル〜1000キロメートル)をそれぞれ50基ほど保有している。
それらのミサイルは、2月7日に北朝鮮が打ち上げた“ミサイル”と違って、地上にある発射台から発射されるのではなく、トレーラーのような地上移動式発射装置(TEL)から発射される。ノドン2は液体燃料式ロケットを使用するが、今回の“ミサイル”のように何日も前から燃料注入作業を行う必要はなく、燃料注入には1時間しか必要としない。そしてスカッドERの場合は、液体燃料を注入した状態で2〜3カ月は待機可能とされている。
北朝鮮がノドン2やスカッドERで対日攻撃を実施する場合、山岳地帯を中心に設置されていると考えられている洞窟式保管基地から発射ポイントに弾道ミサイルが積載されたTELを移動させて発射することになる。ただし、対日攻撃命令が出てから実際にミサイルが発射されるまでは、極めて短時間(おそらくは2〜3時間以下であろう)しか要さない。
したがって、いくら自衛隊が24時間365日絶え間なく北朝鮮の対日攻撃用ミサイルシステムの動向を監視していたとしても、イージス駆逐艦やPAC-3部隊が常時「破壊措置命令」に基づき対弾道ミサイル迎撃態勢を固めていない限りは、ノドン2やスカッドDによる対日攻撃に対処することはできない。
このように考えると、北朝鮮が人工衛星打ち上げと称しての長距離弾道ミサイル発射実験を実施するたびに、日本政府が大騒ぎをして弾道ミサイル防衛システムを展開させ「破壊措置命令」を発するのは、政治的パフォーマンスという意味合いが強いことになる。本気で国民と国土を北朝鮮のミサイル攻撃から守る意思があるのならば、北朝鮮が対日攻撃用ミサイルを廃棄するまで「破壊措置命令」は解除できないのである。
■はるかに恐ろしい中国のミサイル戦力
DF-21(赤)とDF-16(青)の推定最大射程圏
それ以上に、日本政府の対日ミサイル攻撃に関する本気度が疑われるのは、北朝鮮の何倍もの対日破壊力を持った中国人民解放軍の弾道ミサイルと長距離巡航ミサイルに対する危機感が欠落していることである。
中国人民解放軍の戦略ミサイル部隊である「ロケット軍」(1966年以来の名称であった「第二砲兵」が、2015年12月31日に「火箭軍(ロケット軍)」に変更された)は、対日攻撃用の東風21型(DF-21)弾道ミサイル(推定射程距離1800キロメートル以上)と、台湾攻撃用で南西諸島を攻撃することができる東風16型(DF-16)弾道ミサイル(推定射程距離800キロメートル)を、それぞれ100基以上は保有していると考えられている。
これらの弾道ミサイルは、いずれも固定基地ではなく地上を移動するTELから発射される。また、北朝鮮の弾道ミサイルと違い固体燃料を使用するロケットにより発射されるため、発射準備時間は極めて短い(15分程度とされている)。したがって、北朝鮮による弾道ミサイル攻撃よりも、日本にとっては質・量ともに数等倍脅威度が高いことになる。
中国ロケット軍が手にしている弾道ミサイル以上に日本にとって深刻な脅威となっているのは、長距離巡航ミサイルである。長距離巡航ミサイルは弾道ミサイルに比べると弾頭が小さいために破壊力そのものは弱くなる。しかし、湾岸戦争やイラク戦争などではアメリカ軍は数百発単位で長距離巡航ミサイル攻撃を実施しており、長距離巡航ミサイル使用のハードル(国際社会からの反発)は弾道ミサイルに比べればかなり低い。そのため、中国が実際に対日攻撃を実施する場合、弾道ミサイルよりも長距離巡航ミサイルを多用するものと思われる。
日本全土を攻撃できる長距離巡航ミサイルはどこから発射されるかわからない
中国は東海10型(DH-10)あるいは長剣10型(CJ-10)と呼ばれる長距離巡航ミサイル(推定射程距離1800キロメートル〜2000キロメートル以上)を大量に生産し続けており、その配備数はすでに1000基を超えている可能性が高い。これらの長距離巡航ミサイルはロケット軍のTEL、海軍の駆逐艦や潜水艦や戦闘攻撃機、それに空軍のミサイル爆撃機ならびに戦闘攻撃機から発射され、日本全土の目標をピンポイント攻撃することが可能である。
そして、長距離巡航ミサイルによる突然の攻撃(戦時においてのミサイル攻撃は、発射の予告などはありえず、常に突然発射される)に対処するための長距離巡航ミサイル防衛システムは、弾道ミサイル防衛システムと違い、いまだに開発が緒についた段階にとどまっている。そのため、ある意味では、長距離巡航ミサイルは弾道ミサイル以上に恐ろしい兵器なのである。そして中国人民解放軍は、200発以上の弾道ミサイルと1000発以上の長距離巡航ミサイルによって、いつでも日本各地を廃墟にする能力を持っているのだ。
■ミサイル防衛態勢の現状は甘い
北朝鮮が大陸間弾道ミサイル発射テストを実施するたびに、日本政府は自衛隊に対して「防衛省敷地内へのPAC-3発射装置展開」「破壊措置命令」「イージス駆逐艦出動」「PAC-3部隊の先島諸島への展開」という一連の作業を繰り返させている。しかし、極めて危険な中国人民解放軍の長距離巡航ミサイルや高性能弾道ミサイルの現実的脅威については、見て見ぬふりをしている状態だ。
より深刻な脅威には、対処することが困難であるがゆえに真剣な対抗策を講じず、北朝鮮による人工衛星打ち上げという事前予告付きの“弾道ミサイル発射テスト”という、時間的余裕があり、軍事的危険性が極めて低い事態に対しては、大騒ぎをして迎撃態勢を固めさせる──これでは、政治的パフォーマンスとの誹りを受けてもいたしかたない。
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