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シリア北部アレッポの反体制派支配地区で、空爆により破壊されたとされる建物のがれきの上で少年を慰める男性(2016年2月4日撮影)〔AFPBB News〕
アサド憎しで米国が国際テロ組織をこっそり大支援 米議会関連機関が明らかにしたお粗末なシリア政策
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46073
2016.2.17 堀田 佳男 JBpress
「アラブの春」以前から、米政府はシリア政府転覆を画策していた――。
米連邦議会の調査機関である議会調査局(CRS)はこのほど、米政府がシリア政府の転覆を目論んでいた事実を記した報告書を公表した。
これまでも、米政府がシリアのバッシャール・アル=アサド政権の転覆を画策している話は、何度となくメディアに取り上げられてきた。
当欄でも、オバマ政権が米中央情報局(CIA)を使って特殊部隊をシリアに送りこんでいる動きを報告した(「シリア・アサド政権打倒で第3次世界大戦の危険性も」)。けれども同報告書では、政府機関がアサド政権打倒を記している。
■2005年に決まっていたシリア転覆政策
公表された報告書タイトルは「シリア内戦:概況と米政府の反応」。CRSはまがりなりにも税金で運営されている政府機関である。
米議会図書館に所属するCRSは上下両院議員や連邦議会の委員会の要請によって諸政策や情勢分析を行っている。政府機関であっても政治的には中立で、時には現政権を批判することさえある。
同報告書で注目されるのは、2005年にはすでに米政府内にシリア政府を転覆させるコンセンサスができていたという点だ。アラブの春は2011年であり、それ以前からアサド政権打倒の意思があったことが分かる。
報告書は全31ページ。15ページ目からシリア国内で達成すべき米国の目標が述べられている。端的に述べると、シリア国内の反アサド勢力を使って傀儡政権を作るという内容だ。反アサド勢力と行っても、もちろんイスラム国(IS)以外という意味だ。
「・・・(アシュトン・)カーター国防長官が描くシナリオとしては、シリアのアサド大統領を政権から降ろして、シリア国内の反アサド勢力と米国がパートナーとなって連合政権を築くことである・・・」
すでに議論されてきている内容ではあるが、政府の報告書に記されたという点で、米政権の意図が鮮明になった。
実はバラク・オバマ政権内には、シリア内乱の対処について様々な意見がある。錯綜していると言っても過言ではない。と言うのも、米国が主導して反アサド勢力と共にアサド政権を崩壊させても、一時的にシリアに政治的空白が生まれる可能性が高く、混乱を招くだけとの見方も強いからだ。
米国が傀儡政権を樹立しようとしても、反アサド勢力側に新しい国家を築くだけの準備も気概がないとすべてが頓挫しかねない。
そうなった場合、徳をするのはイスラム国(IS)である。米国が主導する有志連合だけでなく、反アサド勢力にしてもISに勢いづかせることだけは避けたい。シリアの短・中期的将来は悪路以外には見えてこないようにも思える。
報告書にはその点も指摘されている。
■全く見えない政権打倒後の姿
「シリア国民にとって、アサド大統領を政権から引きずり降ろすことが最善策のはずであるが、シリア国内にいる穏健な反アサド勢力と新しい政権(傀儡)を構築することは容易なことではない」
今回の報告書には、シリア全土が色分けされた地図も掲載されている。10月31日現在の勢力図で、ISの勢力範囲はピンク色。ラッカを中心に東西に帯状に伸びている。
IS以外の反アサド勢力は黄色で示され、アレッポ周辺から南部周辺が占領地域だ。政府軍はそこからさらに南側、首都ダマスカスを含むシリア西部を死守しており、青色で区分けされている。
シリアの人口は約2200万人。内戦によりすでに400万人以上が難民となって国外での難民生活を余儀なくされている。全人口の5分の1強が国外に出ざるを得ないという状況は、日本で言えば2000万人以上が難民になることで、想像すら難しい。
最近、国防総省(ペンタゴン)を悩ませているのは、アサド政権が打倒されても新政権の姿が見えないことだ。
ペンタゴンは、新政府の母体となる穏健な反アサド勢力とパートナーを組む意向をもつが、反アサド勢力への信頼が揺らいでいる。信用できないがないとの判断だ。
中東地域を管轄するフロイド・オースチン米中央軍司令官は反アサド勢力への訓練と武器供与に、これまで約5億ドル(約560億円)を費やしたと、同報告書には記されている。
だが穏健な反アサド勢力は過激派に吸収されたか、訓練した戦闘員のほとんどは逃亡してしまい、これまでシリアで費やした資金は水泡と化してしまったという。米政府は表向き、ISをはじめとするイスラム系過激派組織には軍事援助をしてこなかった。
また報告書には、これまで米政府が反アサド勢力に資金提供をしてきた事実を伏せてきた点も指摘されている。IS以外の反アサド勢力であっても、国際テロ活動と呼べる犯罪行為をしてきているからだ。
アサド政権打倒という名目があるとはいえ、国際テロ組織に米政府が加担することはあってはならない。しかし、反アサド勢力に武器供与することが、結果的にはイスラム系過激派を育成することになり、テロリストを育成するという矛盾をはらんでいる。
■訓練した戦闘員は1万人以上、残ったのは700人
ワシントン・ポストの報道によれば、CIAはこれまで1万人以上の戦闘員を秘密裏に訓練してシリアに送り込んだという。だが、今でも反アサド勢力の戦闘員として戦っているのは700人に過ぎない。
CIAは当初、1万人が穏健派であると判断したらしいが、多くは過激派へと移行し、穏健派に留まっているのは70人だけだという。すべてが裏目に出て、アサド政権打倒どころではなくなっているのが、今のシリアなのだ。
しかも米国の主導するISへの空爆も、すでに1年半が過ぎているが目に見えるだけの効果は出ていない。専門家の中からは「本当に壊滅させることは無理で、封じ込める程度の効果しかないことは最初から分かっていた」との声さえ上がっている。
議会の報告書には、シリアの状況は短期的な好転を望めないとしたうえで、より現実的な政策を採用せざるを得ないとしている。
1つはISを利用しながらアサド政権に圧力を加え続ける。2つめは反アサド勢力に直接的・間接的な武器・訓練を与えてアサド政権に圧力を与える。3つめは米国のパートナーと呼べる穏健な反アサド勢力と共闘する。4つめが現シリア政権内から次期政権を担える人材を選び、育てる。
いずれかの選択肢でシリアの短・中期的将来の展望が見い出されることを祈るだけである。
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