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本質は「国民ファースト」対「ハゲタカファースト」−(植草一秀氏)
http://www.twitlonger.com/show/n_1spghcj
4th Jan 2017 市村 悦延 · @hellotomhanks
1月4日の大発会で2017年の東京市場が幕を開けた。
日経平均株価は前年末比415円高の19,529円で前場の取引を終えた。
昨年12月20日の終値を超えている。
後場の取引がどの水準で終了するかは未確定だが、
昨年11月8日の米国大統領選後の株価上昇の基調は、まだ終了していないと見ておくべきだろう。
11月8日以降の東京市場の推移は、
「円安=株高」
である。
日本円は米ドルだけでなく、ほぼすべての通貨に対して下落している。
この通貨下落が輸出製造業の収益を改善させる効果を発揮する。
日本経済全体は低迷を続け、とりわけ、
「格差拡大推進」
の経済政策により、一般庶民の生活環境はまったく改善されていないが、
大企業収益だけは順調な改善を示しているのである。
日本経済のいびつな構造がより強まっていると言わざるを得ない。
昨年12月に上梓した
『反グローバリズム旋風で世界はこうなる』(ビジネス社)
(消費税込み1620円)
サブタイトルには、
NYダウ2万ドル、日経平均2万3000円時代へ
と記した。
金融市場の予測は、トランプ当選=株安・ドル安だったが、
現実は、トランプ当選=株高・ドル高である。
金融市場の多数派見解は大間違いを犯すことが少なくない。
拙著について、反ジャーナリストの高橋清隆氏が書評を掲載下さったので、以下に転載させていただく。
http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/archives/1918488.html
【書評】『反グローバリズム旋風で世界はこうなる』植草一秀(ビジネス社)
政治経済学者の植草一秀氏による最新の投資指南書。
氏が執筆する会員制レポート『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
の年度版に当たり、市場動向を占うため政治・経済に関する卓越した分析が行われている。
同書は後半に「最強・常勝5カ条の極意」や「注目すべき株式銘柄2017」15などを掲載するが、
大半は政治・経済分析に当てられている。
「これらを読み抜くことなくして現実の経済を正確に予測することはできない」からである。
12年の第2次安倍政権誕生以降、マスコミは「アベノミクスの成功」をもてはやしたが、本当か。
日本の実質GDP成長率(年率換算)の平均値は民主党政権時代の2.0%に対し、
安倍政権発足後は0.8%にすぎない。
労働者の実質賃金は減少を続けていて、
一人親世帯の相対的貧困率54.6%はOECD加盟33カ国中、堂々の1位にある。
この1年間の金融市場変動で大きな注目を集めたのが中国株価調整=チャイナショックだった。
15年6月以降に中国株価が下落に転じ、
同年8月の人民元切り下げ措置実施後に世界市場に波及した際、
麻生太郎財務相が中国バブルについて
「何年も前から言われており、ついに来たかという感じで、みんな驚くことはなかったと思う」と発言した。
しかし、植草氏がチャートを示して説明しているように「バブル崩壊」はたった1年間急騰した株価の一部が
破裂したもので、「何年も前から言われて」いたことでは全くない。
「日本の経済政策の司令塔にいる重要閣僚が、
基本的な知識と情報を持たずに政策運営を行っていることは恐ろしい」と嘆く。
うならされたのが、各種指標を使った株価動向の解説である。
日経平均株価は2月12日と6月24日の1万4952円でダブルボトムを形成して現在に至る。
15年6月を転換点に円高に連動した株価下落波動が始まったが、
それに中国株下落という新たな要因が加わった。
止めたのは2月末に上海で開かれたG20会合。世界経済の下方リスクを明示し、
参加国の政策総動員方針を打ち出した。
日経株価はニューヨーク株価、ドイツ株価とともに反転上昇する。
6月24日に再び安値を付けた主因は、円高・ドル安の進行だった。
6月3日に5月の米国雇用統計が発表され、
雇用者増加数が3.8万人にとどまることが分かったからである。
しかし、翌月8日発表の6月雇用統計で雇用者増加数が28.8万人に急増し、
米国の追加利上げ実施観測が再浮上。ドルは反発し、
これに連動して日経平均株価も反発したのである。
同書を読んでいると、金融市場が実に論理的に推移していることが分かる。
まさに目からうろこの連続。
「ばらばらに見える経済指標と金融変動は、
ジグソーパズルが1枚の美しい絵画に転じるように理路整然と理解し得るものになる」と植草氏。
超一流の分析がそこにある。
何度聞いても腹立たしいのは、国民資産を預かる政府の「失敗」である。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は直近1年間に11兆4197億円の損失を出した。
14年10月の新運用方針で、外国株式や外国債券などリスク資産を65%に引き上げたのが裏目に出た。
植草氏は「結果論で言っているのではない。
そのプロセスにおいて、初歩的、そして致命的な過ちを犯している」と強調する。
植草氏はドル円相場や日経平均株価、日本国債先物価格、NYダウの各種チャートを掲げ、
株価が2倍に上昇した局面で株式の運用比率を大幅に引き上げていること、
1ドル=78円が1ドル=112円に上昇した局面で外貨運用比率を大幅に引き上げていることを問題視し、
「まさに、成績が最悪の素人の運用そのものである」と喝破する。
さらに為替変動による外貨準備金の評価損は、この1年間に30兆円に上る。
15年6月にドル円レートが125円までドル高になったとき、
政府は米国債を売るべきだと植草氏はレポートやブログで主張していた。
年金と外貨準備合わせて41兆円の損失。私には「失敗」でなく、わざとやっているとしか思えない。
世界政治における16年の「3大ミステリー」を挙げている。
すなわち
@米大統領選における異常なトランプたたき
A英国EU離脱国民投票におけるメディアのヒステリー
B日本のTPP前のめり対応である。
これらの理解し難い動きを植草氏は「グローバリズムに対する、
世界の各地から示され始めた狼煙(のろし)、反抗=レジスタンスのうねりに対する、巨大資本勢力、
いわゆる1%勢力の動揺、あせりの裏返しである」とみる。
Bは次期米大統領が「脱退」と言っているのになぜ突き進むのか。
それは反グローバリズムのうねりの中で、
1%勢力は窮地を打開すべく安倍首相に早期TPP批准の強行を命令したからではないかと推論している。
同書の帯には「株価再躍動」とある。
植草氏は17年が4、5年に1度の「大相場」になる可能性が生まれ始めていると記す。
中国経済とともにわが国に強い影響を及ぼすのが米国経済の動向。
FRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長は15年10月、
「高圧経済“high-pressure economy”」という言葉を使って、
緩和的政策を維持するのが得策との見解を示している。
同書が可能性を示唆した通り、
14日に米連邦公開市場委員会(FOMC)で1年ぶりの利上げが決まった。
植草氏は直近レポートで、トランプ新政権の成長政策を背景に、
「高圧経済」論に基く金利引上げ路線が修正されて利上げが加速されるとの見通しを示しているが、
09年のサブプライム危機から完全に立ち直っていない米国経済において、
早急な金融引き締め策に慎重な姿勢を貫いてきたイエレン議長の手腕を植草氏は評価している。
懸念の1つは、トランプ次期大統領との関係だ。
「トランプ新政権がFRBの真意を正確に理解し、FRBと良好な折り合いをつけて、
米国経済の回復と安定的な金融政策運営、さらに世界経済の緩やかな回復実現に向けて、
適正なマクロ経済政策運営の体制を構築することが強く望まれる」。
17年は安定した内外の政治経済運営を願う。同書は資産運用だけでなく、
激動する社会情勢を読み解くための羅針盤である。
高橋清隆氏はフーミー社の有料メルマガ
「高橋清隆のニュース研究」
の執筆を始められたので、ご参照賜りたい。
2016年6月の英国国民投票では、事前のメディア予想に反して英国民はEU離脱の判断を示した。
私は、投票結果がEU離脱になる可能性が十分にあると予測していた。
メディアの情報流布には、
「希望」
ないし
「誘導」
という要因が含まれていた。
国民投票結果が判明した時点で、私は、この投票結果が
「反グローバリズム旋風」
の端緒になることを指摘した。
主要メディアが、
「世紀の誤判断」
と大報道しているなかで、これとはまったく次元の異なる判断を示したのである。
「反グローバリズム起点になる英国民EU離脱決定」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-9c1b.html
このなかで、次のように記述した。
「「移民の増加を嫌うEU離脱派は外国人排斥派である」
とのレッテル貼りが横行した。
これは、グローバリズムを推進する強欲巨大資本による情報操作である。
EU離脱の根本精神には、
「自国のことは自国の主権者が決める」
という民族自決の原則の尊重がある。
第2次大戦後に世界中で広がった国家の独立は、
「自国のことは自国の主権者が決める」
というものだった。
この考え方が、正当に、そして当然の主張として、表面化しているに過ぎない。
EU離脱派が「他国人排斥者」であると決めつけるのはあまりにも短絡的である。」
11月8日の米国大統領選でトランプ氏が勝利した。
メディアはクリントン氏当選確実情報を開票日当日まで流布していた。
安倍晋三氏などは、クリントン氏当選を疑わず、選挙戦の最終局面で、
訪米の際にクリントン氏とだけ会談するという「失態」を演じた。
11月にトランプ私邸詣でに「馳せ参じ」、文字通りの「土下座外交」を展開する状況に追い込まれた。
メディアがクリントン氏当選情報を流布し続けたのは、やはり、
「希望」
と
「誘導」
によるものである。
しかし、米国民はメディアの誘導に流されなかった。
トランプ氏の主張には多くの問題がある。
しかし、重要なことは、それらの問題点を認識した上で、米国民が、
「多国籍企業の支配下にあるクリントン氏」
ではなく
「多国籍企業の支配下にはないトランプ氏」
を選択したという点にある。
米国民が米国民の利益を優先することは当然のことである。
「グローバリズム」の名の下に、米国民の利益が損なわれることに対して、
反対の意思を表明することは間違っていない。
トランプ氏は、この点を訴えて、米国民の支持を獲得したのである。
安倍政権が推進する「成長戦略」が、
「誰の利益を追求するものであるか」
を考えることが重要である。
安倍政権は漂流するTPPをあえて強行批准するという奇怪な行動を示した。
この行動についても、
「誰の利益を追求するためのものか」
の視点から見つめることが重要である。
考察から導かれる結論は、
安倍政権が
強欲巨大資本の利益極大化を目指しており、
その結果として、一般国民の利益が損なわれることを厭わない
というものである。
「働き方改革」
と表現すると耳に心地が良いが、
究極の狙いは
「労働コストの圧縮」
である。
最終的に目指されていることは、
外国人労働力の活用
残業代支払ゼロ
金銭解雇の全面解禁
であり、
一億総非正規化
なのである。
同時に、強欲巨大資本が狙う
農業と医療の市場収奪
を政府が全面支援しようとしているのだ。
日本国民は真実を見抜いて、
こうした「ハゲタカファースト」の政策路線に
YES
と言うのか、それとも
NO
と言うのかを判断しなければならない。
それが、次の総選挙の争点になる。
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