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左・石原慎太郎公式サイトより/中・曽野綾子『人間にとって成熟とは何か』(幻冬舎新書)/右・長谷川豊公式ブログ『本気論 本音論』より
新年だからこそ差別主義者たちのヘイト発言を振り返る! 石原慎太郎、曽野綾子、百田尚樹、長谷川豊、安倍政権
http://lite-ra.com/2017/01/post-2826.html
2017.01.03. 新年特別企画◉差別事件・ヘイト発言再検証 差別主義者のヘイト発言を振り返る! リテラ
この年末年始、マスコミはこぞって1年を振り返り、2017年の展望や問題点を語っていたが、そのなかでほとんど触れなかったことがある。それは、この国に差別やヘイト、排外主義が蔓延しているという問題だ。
ここ数年、とくに在日コリアンへのヘイトスピーチが深刻化してきたが、昨年には、そうした民族や国籍など、自分では容易に変更できない属性を根拠とするグロテスクな排斥運動がより広範囲にわたって広がり、同時に、社会的弱者への差別思想が、戦後最悪の虐殺事件を引き起こすに至った。
にもかかわらず、テレビなどの大マスコミは、そんなことはまるでなかったかのように完全に無視してしまった。しかし、この現実から目を背ける態度は、たんに自己保身のためであり、むしろ差別をエスカレートさせる結果にしかならない。
そこで、本サイトは、この1年間に起きた差別事件、政治家や有名人のヘイト発言を振り返り、どこが問題なのかを改めて批判検証することにした。いったい連中がどんなグロテスクな思想をもち、何を語ったのか。そしてどんな人間の尊厳を踏みにじる行為をしたのか。それがどれだけ聞くに耐えがたいものでも、真正面から向きあい、差別とレイシズムへの怒り、そしてこうした問題が生まれる背景をもう一度考えるきっかけにしてもらえたら、と考えている。
●相模原障がい者施設殺傷事件の背景にあった石原慎太郎や曽野綾子らの障がい者ヘイト、自民党ネトサポも同調
戦後日本で最悪の連続殺傷事件は、ヘイトクライムだった。障がい者施設を襲撃し、一夜で46人を殺傷した容疑者は「障害者は死んだほうがいい」「何人殺せば税金が浮く」などと主張した。ナチの優生学思想そのものだ。事件自体は、2016年を象徴するものとして、この年末年始に多くのメディアに取り上げられた。だが一方でマスコミは、ネット上で「植松容疑者の主張は間違ってない」「障害者は税金を使う金食い虫」などと、容疑者の思想に共感する声が多数あがったというグロテスクな事実を直視しない。容疑者の“障害者抹殺思想”は残念ながら特殊なものではなく、事件前より“弱者は排除すべき”という考え方は政治家や文化人にも見られ、社会のなかに広く潜行しているのが現実だ。
たとえば石原慎太郎は、都知事に就任したばかりの1999年9月、障がい者施設を訪れ、こんな発言をした。「ああいう人ってのは人格があるのかね」「絶対よくならない、自分がだれだか分からない、人間として生まれてきたけれどああいう障害で、ああいう状況になって……」「おそらく西洋人なんか切り捨てちゃうんじゃないかと思う」「ああいう問題って安楽死なんかにつながるんじゃないかという気がする」。
曽野綾子は13年の著書で、子どもが障害をもつ野田聖子に対しこう書いていた。「自分の息子が、こんな高額医療を、国民の負担において受けさせてもらっていることに対する、一抹の申し訳なさ、感謝が全くない」「言い方は悪いが、夫婦の自然の生活の中でできた子に、こうした欠陥があるのは仕方がない。しかし野田夫妻は、体外受精という非常に計画的なやり方で子供を作った。その場合は、いささかご自分の責任において、費用の分担もされるのが当然という気がするのだ」。
そして、相模原事件発生後、自民党公認のネット応援部隊「自民党ネットサポーターズクラブ」(通称、ネトサポ)のある会員はブログで、植松容疑者の主張に同調したうえで、このように言い放った。「知的障害者を生かしていて何の得があるか?まともな仕事もできない、そもそも自分だけで生活することができない。もちろん愛国者であるはずがない。日本が普通の国になったとしても敵と戦うことができるわけがない。せいぜい自爆テロ要員としてしか使えないのではないだろうか?つまり平時においては金食い虫である」。
こうした発言をみても、容疑者の思想がいまの日本社会で特殊なものではなくなっていることがよくわかるだろう。弱者には「人格がなく」社会に「迷惑をかける」から「責任」をとって「切り捨てろ」。そう彼らは言っている。そして実は、これは安倍政権の政策の根幹に流れる新自由主義、そして歪んだ愛国主義とも密接に関係している。このままでは、この国は本当に後戻りのできないところまでいってしまうだろう。
●長谷川豊「人工透析患者なんてそのまま殺せ」問題の根本は医療弱者と貧困層差別
フリーアナウンサーの長谷川豊が、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」という記事を自身のブログに投稿したところ、批判が殺到し、全レギュラー番組を降板した。あまりにも当然である。そもそも人工透析患者に限らず生活習慣病と総称される疾病は、後天的要因と先天的要因のいずれかのみに起因するわけでなく、医学的にも長谷川のいう「自己責任」ではありえない。また、仮に不摂生によってなんらかの疾病を患ったとしても、この国の憲法ではすべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有し、国はその増進に努めなければならないと定められているから、長谷川の暴論は根本からおかしいのである。
だが、この国の副総理が同じような発言をしているのだから笑えない。麻生太郎は2013年4月、都内の会合でこう述べている。「食いたいだけ食って、飲みたいだけ飲んで糖尿になって病院に入るやつの医療費は俺たちが払っているんだから、公平じゃない」「こいつが将来病気になったら医療費を払うのかと、無性に腹が立つときがある」。しかし欧州の研究などにより、生活習慣病は「贅沢病」ではなく、貧困層ほど発症リスクが高いことが明らかになっている。つまり、連中のがなりたてる「医療亡国論」は、ただ「貧乏人は適正な治療が受けられず死んでも仕方がない」という階級的な差別意識の表れにすぎない。
事実、貧困叩きは熾烈さを増している。『NHKニュース7』が家庭の経済的事情から進学を諦めざるを得なかったという高校3年生の女子生徒を特集すると、放送終了後にネット上で彼女のあら探しが始まり炎上。そこに「生活保護バッシング」の片山さつき参院議員がまたぞろ参戦し、“貧乏人は贅沢するな!”と公然と批判した。いずれにせよ、貧困問題やそこに由来する医療問題がレイシズムのフィルターにかかれば「そのまま殺せ!」にまで繋がるのだ。これもやはり、差別による虐殺扇動とまったく同じ構図をなしている。
●百田尚樹が千葉大レイプ事件で「犯人は在日外国人」デマ、関東大震災朝鮮人虐殺の「再現」も
“ベストセラー作家”の百田尚樹が、千葉大医学部の学生3名が集団強姦致傷容疑で逮捕された事件で氏名が未公表だったことについて、〈犯人の学生たちは大物政治家の息子か、警察幹部の息子か、などと言われているが、私は在日外国人たちではないかという気がする〉とツイートし、問題になったことは記憶に新しい。なんの証拠もなしに“犯人は在日”と言いふらすのは明らかな人種差別の扇動。しかも、後日の週刊誌報道で容疑者のひとりが“法曹界の名家”出身者であることが報じられ、百田のツイートが実際に悪質なデマであることも確定した。
こうした犯罪や社会的混乱の根元を「在日外国人」に求める百田やネット右翼たちの心性は、歴史的な虐殺行為を彷彿とさせる。とくに、それを痛感させられたのが、熊本地震に乗じて〈熊本の井戸に朝鮮人が毒を入れて回っているそうです!〉という、極めて悪質なデマツイートが出回ったことだ。これは、1923年9月、関東大震災の発生直後の数日間で「朝鮮人が暴動を起こした」「井戸に毒をいれた」「放火している」等のデマが広がり、日本人らによる大規模な朝鮮人の虐殺が行われた歴史を再現させようとするものだった。“差別は人を殺す”という事実は、歴史が証明してきたことだ。
●安倍首相の側近政治家たちも…女性差別やセクハラが次々とあらわに
「保育園落ちた日本死ね」の匿名ブログは待機児童問題が国会で大きく取り上げられるきっかけとなったが、その一方で昨年は、政治家による子育て問題を女性に一方的に押し付ける差別的発言が相次いだ。たとえば、安倍首相の肝いりで自民党から参院選に出馬、当選した山田宏は、「保育園落ちた」ブログに対し、「まぁ、落書きですね」「「生んだのはあなたでしょう」「親の責任でしょ、まずは」と言いたいところだ」などの暴言をブログで吐いた(しかも、直後に自身の不倫隠し子が発覚するというオチつき)。
また、前述したネトサポを統括する自民党ネットメディア局長・菅原一秀は、3月、「週刊文春」で元愛人にモラハラ、セクハラを告発された。それによれば、菅原は当時、27歳だったこの元愛人に「女は25歳以下がいい。25歳以上は女じゃない」と言い放ったあげく、「子供を産んだら女じゃない」と女性全体に対する差別をむき出しにしたという。
自民党では他にも、一昨年に例の「マスコミは懲らしめないといけない」発言で問題視された大西英男衆院議員が、自民党公認候補の支持を神社の巫女に依頼して断られたことについて、「『おい、巫女さんのくせに何だ』と思った」「巫女さんを誘って札幌で夜、説得しようと思った」という、職業差別とセクハラのダブル発言も明るみになった。安倍政権のいう「女性の輝く社会」とやらが、いかに口先だけで、むしろ旧態依然とした女性蔑視、差別意識が強化されているということがよく分かるというものだ。
●蓮舫の二重国籍問題で飛び出た右派のファナティックな「純血主義」
蓮舫のいわゆる「二重国籍」問題で、右派ががなりたてたのが純血主義という人種差別の正当化だ。この問題に火をつけたウェブメディア「アゴラ」や産経新聞は、“二重国籍者は「国家への忠誠心がない」”などと言うが、実際には世界を見渡しても二重国籍の政治家は保守派も含めて珍しくもなんともない。
しかも「アゴラ」代表の池田信夫にいたっては、日本とベトナムのハーフであるTBSの山内あゆアナウンサーを標的に、なんと“TBSは二重国籍のアナウンサーを解雇しろ!”とまで喚き始めた。言うまでもないが、仮に山内アナが「二重国籍」の状態にあるとしても、国籍を根拠に解雇することはれっきとした違法行為である(労働基準法第3条違反)。結局、証明されたのは、重国籍者バッシングに血眼になっている右派言論人や右派メディアの根っこが、グロテスクな純血思想と排外主義、差別主義に他ならないということだ。国籍を問い、「純血の日本人」でなければ血祭りにあげられるという状況は、ほとんど戦中である。
しかし、連中は驚くほどしつこく、とくに産経新聞はいまだに蓮舫の国籍問題がどうのこうのとのたまっている。が、これは蓮舫と民進党側にも大いに問題があるものだった。もちろん、蓮舫が二重国籍状態にあったのを確認していなかったということではない。それは二重国籍問題を受けて、蓮舫が「私は日本人」と発言して火消しに走ったり、民進党内から「代表選をやり直すべきだ」なんて声が上がったことだ。それ自体が国籍や出自に対する差別を助長し、多様性を否定する行為だが、そのことになぜ気が付かないのか。はっきり言って、首を傾げざるをえない。
●右派が総攻撃を仕掛けた安倍政権による沖縄差別問題…警察と公安庁もグル
2016年、熾烈を極めたのが国と対立する沖縄への差別だ。高江で進められている米軍ヘリパッド建設工事で、大阪府警から派遣されていた機動隊員が反対派市民に対し「触るな、土人が」「黙れコラ、シナ人」などと差別発言を行ったのも記憶に新しい。問題は、これがいち機動隊員による沖縄への差別にとどまらないということだ。
本サイトが追及したように、実は、警察組織の中では、こうした沖縄差別、外国人差別は日常化している。実際、警察官専用雑誌「月刊BAN」(教育システム)には、沖縄ヘイトを始め、ネトウヨ丸出しの歴史修正主義者や嫌韓ヘイト本の著者、さらにはヘイト市民団体関係者らが登場。この事実からもわかるように、警察組織内では差別意識を植え付けるような講演や勉強会が日々行われており、その結果として、今回の高江で「土人」「シナ人」発言が出てきたのである。
また、公安組織では公安調査庁が今年の調査報告のなかで、〈中国に有利な世論を沖縄でつくることによって日本国内の分断を図る狙いが潜んでいると見られる〉などとネトウヨなみのデマを飛ばしている。これは“お荷物官庁”である公安庁が予算と人員獲得のために針小棒大の謀略論を展開しているわけだが、それとは別に、第二次安倍政権以降、公安庁はかなり増長し続けているとの情報もある。
安倍政権はこうした警察・公安組織、さらに司法と一体となって沖縄への締め付けを強化。沖縄で反対活動を行う市民や、その模様を取材中の新聞記者らが逮捕される弾圧事件も相次いだ。ところが、本土の政治家やマスコミはこうした事件を大きく扱わないどころか、デマにデマを塗り重ねて差別を強化している。鶴保庸介沖縄担当相や松井一郎大阪府知事が「土人」発言を擁護したのはもちろん、応援団メディアはトンデモ情報を拡散。たとえば“維新の腰巾着”辛坊治郎はテレビで「高江の地元ではヘリパッドを早くつくって欲しい人が圧倒的に多い」という事実無根のデマを吹聴、産経や「週刊新潮」などの保守系メディアは反対派の言動のほうがヒドいと権力関係を無視した言いがかりをつけ、百田尚樹にいたっては「土人を流行語大賞に」などとほざく始末。
いま安倍政権は、警察や司法など権力のすべてを結集し、かつ掌握したメディアをつかって、沖縄を徹底的に追い込んでいる最中だ。沖縄を犠牲にしてきた歴史、そして今も犠牲にし続けている現実を一切かえりみないばかりか、「土人」などと差別して攻撃対象にする、政権の卑劣な沖縄ヘイトを許すわけにはいかない。
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いかがだったろうか。2016年の差別事件簿から、外国人差別、障害者差別、医療弱者と貧困者差別、女性差別、血統差別、そして沖縄差別について振り返った。こうした差別やヘイト発言が、たまたま異常な人間が発したものでなく、背景に日本の政治や社会のグロテスクなバックラッシュの動きとが、密接につながっていることがわかってもらえたはずだ。
本サイトはこうした動きを食い止めるために、今年も、さまざまな事件の裏に潜む差別思想を暴き出し、徹底的に批判していくつもりだ。
(編集部)
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