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正月の新聞がつまらない理由
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8592
2017年1月3日 織田重明 (ジャーナリスト) WEDGE Infinity
新しい年が明けた。2017年だ。
元日の朝、客もまばらなコンビニで、新聞各紙を買いそろえてみた。残念なことに、いずれも目立ったスクープはない。あえていえば、読売が「中国 海底に命名攻勢」との見出しで、中国が日本の排他的経済水域周辺で海底地形の調査を行い、国際機関に中国語による命名の申請を活発に行っていたという記事くらいか。朝日や毎日は、それぞれ「試される民主主義」、「多文化主義の危機」とトランプ現象に見舞われた米国社会の病巣を描く記事を一面に掲載していた。いずれも読むと、いい記事なのだが、目を引くようなものではない。
■新聞のスクープは終わったのか?
もはや新聞はスクープで勝負する時代ではなくなったということか。昨年は週刊文春によるスクープの連発が注目された一方で、その他のメディアがスクープから手を引く傾向が露になった年だった。調査報道の朝日の看板だったはずの特別報道部もぱっとしなかった。私の親しい記者もこの部署にいるが、酒を飲んでは覇気のない部内の空気を愚痴ってばかりだった。
スクープは競争相手がいるからこそ、次々と出てくるもの。文春一強時代のような現状は、決して望ましいものではない。新聞も雑誌もどこの編集部でも、経費削減で取材にカネをかけないようにする傾向が強まる一方だから、業界で最もふんだんに経費を使っている文春にスクープで対抗できるような媒体が出て来るのは、難しいだろう。昨年の文春の成功は、スクープの時代の終わりの始まりなのではないか。
そうした悲観的な業界関係者の嘆きはともかくとして、新しい年はどんなニュースに注目すべきであろうか。国際情勢について見ていきたい。まず、当然のことながら、今月20日に米大統領に就任するドナルド・トランプ氏の打ち出す新政策の行方について。今年一年を占う上で、極めて重要で、為替相場や対中政策など、いずれもトランプ氏がどう出るか、不確定な要素も多く目が離せない。
なかでも私が注目しているのは、沖縄の基地問題への影響だ。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画をめぐり、日本政府は沖縄県と争ってきた裁判で、最高裁判決を勝ち取り、中断していた辺野古での工事を新年早々にも再開する予定だ。打つ手がなくなり、追い込まれつつある翁長雄志県知事は、2月にも訪米してトランプ氏本人、あるいはその側近に直接、この計画への反対を訴えたいとしている。
大統領選のキャンペーン期間中に、トランプ氏が在日米軍の撤退もあり得るとの発言をしたことに、突破口を見いだそうとしているのだ。トランプ周辺にアクセスするルートがうまく作れず、この直訴が実現するかは不透明だが、トランプ氏の鶴の一声で、辺野古移設計画に大きな変更が出れば、またもやこの問題が漂流することにつながりかねない。
■懸念される日韓合意の破棄と、日ソ共同宣言よりも後退した共同経済活動
さらに、国際情勢でもうひとつ挙げるとすれば、韓国だろう。大晦日の晩に、釜山の日本総領事館前の路上に設置された少女像(いわゆる慰安婦像)の除幕式が行われた。市民団体が設置しようとしたところ、いったんは地元自治体がこの像の設置を認められないとして撤去させたはずなのだが、市民などからの猛抗議に屈服して自治体が設置を認めてしまったのである。
少女像をめぐっては、2015年末の日韓合意で、外国公館の威厳の侵害防止を定めたウィーン条約に違反するとしてソウルの日本大使館前に設置された像の撤去を求めた日本側に対し、韓国の尹炳世外相は「日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と約束したはず。
もはや死に体の朴槿恵政権に、世論の猛反発を買ってまで像の設置を阻むことは期待すべくもないとはいえ、こうもあっさりと政府間の合意が反故にされてしまっては、呆れざるを得ない。
今年予定されている大統領選挙では、年末に国連事務総長を退任したばかりの潘基文氏や野党・共に民主党の文在寅氏などが有力候補とされているが、大統領選後は日韓合意そのものを破棄することを示唆する候補が少なくない。「最終的かつ不可逆的に解決」されたはずの慰安婦問題が振り出しに戻る恐れが十分にある。残念なことではあるが、今年の日韓関係の大きな難題となるのは避けられそうにない。
沖縄の基地問題が漂流し、日韓関係がぎくしゃくすれば、喜ぶのは誰か。
昨年末にあった外交上の大きなイベントとして日露首脳会談がある。どうしてこの会談がもっとメディアに批判されないのか、不思議だ。平和条約締結後に、色丹と歯舞の2島を引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言よりも後退し、共同経済活動なるふわっとしたものと引き換えに3000億円もの投資をロシア極東やシベリアに実施することを約束させられてしまったのである。日露両国の法律がどう適用されるかも分からずリスクが多いのに、人口も少なく水産資源の他にはさして何もないこの島で経済活動をしようという企業が日本にどれだけあるのだろうか。
ロシア側の報道によると、プーチン大統領は、領土交渉に踏み込むことに意欲を示していたというが、国防省や外務省の巻き返しにあって、急速にトーンダウンしたという。やはり一筋縄ではいかない国だ。年明け以降、安倍晋三首相は訪露して交渉を続けるというが、取るものを取ったロシアが一気に冷淡な反応を示す可能性はおおいにある。公安関係者のあいだでは、外交上の失点を挽回するため、安倍首相が電撃訪朝するという怪しげな噂が早くも流れている。
■混迷が続く、中東のヨーロッパ
年越しの晩にトルコのイスタンブールで銃の乱射事件が起きた。このところ、トルコの治安情勢が急速に悪化してきている。かつてトルコは中東でも屈指の治安の良さで知られ、それが多くの観光客を呼び込むことにもつながっていた。エルドアン政権のもとで隣国シリアの内戦への介入を続けた結果が、一連のテロだ。トルコの治安情勢の悪化は、中東の先行きに暗い影を投げかけているように思える。
さらに、今年はEUで重要選挙が目白押しだ。3月にオランダ総選挙、4月から5月にかけてはフランス大統領選、9月にはドイツで総選挙だ。オランダやフランスでは極右勢力のいっそうの台頭が懸念され、ドイツではEUの守護神となってきたメルケル首相の与党の敗北があり得る状況となっている。極右勢力の台頭は、イギリスに続いてEU離脱の動きにつながる恐れもある。そうなれば、世界経済への影響は必至。世界同時株安の引き金になることも考えられる。
新年早々、暗い話ばかりで恐縮だが、どこかに明るい兆しはないものだろうか。
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