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翁長雄志オフィシャルウェブサイトより
公安調査庁が沖縄の反基地世論を「中国の分断工作」とするネトウヨ並みデマ報告書! 組織維持目的で沖縄を利用か
http://lite-ra.com/2016/12/post-2796.html
2016.12.23. 公安庁が沖縄めぐりネトウヨ並み報告書 リテラ
オスプレイの墜落事故から1週間も経たないうちに同機の運用再開を容認した安倍政権。翁長雄志沖縄県知事はこれに抗議するために、昨日、沖縄県名護市で開かれた政府主催の米軍北部訓練場返還の記念式典を欠席し、同市内で行われたオスプレイ配備撤回を求める抗議集会に参加した。辺野古への新基地建設や高江のヘリパッド建設の強硬工事など“沖縄いじめ”を繰り返し、命と安全さえ疎かにする政府への県民の怒りは計り知れない。
しかも、今度は、警視庁公安部、警察庁公安部と並んで「日本の三大公安機関」のひとつである公安調査庁が、沖縄を貶めるような報告を行っていることがわかった。
公安調査庁(以下、公安庁)は、もともと破壊活動防止法適用のための調査機関として設置され、日本共産党、新左翼団体、右翼団体、オウム真理教や国際テロ組織の監視・情報収集にあたっているとされる役所。毎年、その情報をまとめた「内外情勢の回顧と展望」なる報告書をまとめている。
ところが、NHKニュースによれば、来年版の報告書のなかで〈在日アメリカ軍基地が集中する沖縄県をめぐり、中国の大学やシンクタンクが、沖縄の独立を求める団体の関係者と交流を深めている〉としたうえで、こんな警告を発しているというのだ。
〈中国に有利な世論を沖縄でつくることによって日本国内の分断を図る狙いが潜んでいると見られる〉
しかも、公安庁が沖縄の反基地運動を中国と絡めて“危険分子”として槍玉に挙げたのは、これがはじめてではない。2015年の同報告書にも、こんな記述がある。
〈(中国は)在沖米軍基地撤去に向けた運動に取り組む反対派住民団体などの主張を「日本国民の政府批判の声」として世論戦での材料に利用するとともに、「琉球独立勢力」に接近するなど、日米同盟分断や尖閣諸島「領有権問題」での揺さぶりを企図した動きも見られた〉
つまり公安庁は、“沖縄に中国のスパイが入り込んできて、基地反対運動や独立運動を煽ろうとしている”と言いたいらいしい。
たしかに、沖縄の基地反対運動については、ネトウヨや右派メディアがこれまでさんざん中国謀略論を展開してきた。だが、そのことごとくがデマであることが証明されている。
たとえば、先の沖縄県知事選では“翁長氏の娘は北京大学に留学”“その娘の婿は中国太子党出身”なる情報が右派界隈で乱れ飛んだが、実際には知事選当時、翁長氏の娘は「埼玉の小さな大学」におり未婚。「翁長は中国の手先」と誘導するための真っ赤なデマだったことが明らかになっている。ようするに、「中国が沖縄を分断しようとしている」なる情報は、リテラシー皆無のネトウヨの妄想に近いような陰謀論にすぎないのである。
今回、公安庁が「中国の大学やシンクタンクが、沖縄の独立を求める団体の関係者と交流を深めている」としたのも同様だ。
どうも、公安庁は中国側の研究者が琉球文化の研究者を学術会議に招待していることをもって「分断工作」などと言っているようだが、しかし、言うまでもなく日中の文化交流や共同研究、大学間の提携などは、日本中で山ほど行われている。仮に、ある日中共同の会合のなかに「独立」を主張する日本側の学者がいたとしても、だからといってそれを“日本分断を目的とした謀略会議”のごとくアピールするのは針小棒大、もはや妄想でしかない。
というか、そもそも「沖縄独立論」というのは本当に、そんな危険視しなければならない問題なのか。一部の人たちが独立を主張しているのは事実だが、「居酒屋独立論」などと呼ばれていたことからもわかるように、そうした意見が大々的な政治行動に発展したことなんて一度もない。
沖縄の「自己決定権」については、琉球新報社と沖縄テレビ放送による2015年5月の世論調査で、87.8%が「広げていくべきだ」と回答しているが、これは本土からの差別や抑圧を考えれば県民の心情として当然であり、「独立論」とはまたレイヤーが異なる話だ。事実、同世論調査では、将来の沖縄の方向性について「日本の中の一県のままでいい」がもっとも多い66.6%、「日本国内の特別自治州などにすべき」が21%で、「独立すべき」はわずか8.4%だった。
こんな状況で、どうやって、中国が「分断工作」を展開できるというのか。つまり公安庁は“独立運動をもくろむ団体がある”“その背後で中国が日本分断を狙っている”などとわめき立てることで、沖縄の反基地感情を“日本を危険に晒そうとする反社会的な勢力の仕掛け”であるかのようにイメージ誘導しているだけなのである。
そういう意味では、これは“琉球独立論は蒋介石が仕掛けた時限爆弾”などと吠える極右評論家たちとまったく同じ思考回路。やはり、ネジがはずれた脳内でひねり出した「陰謀論」でしかない。
それにしても不思議なのは、仮にも法務省管轄の役所の公式報告書がなぜこんなネトウヨ並みのデタラメを書き綴っているのか、という点だ。
しかし、元共同通信社の公安担当記者で『日本の公安警察』(講談社)などの著書もあるジャーナリスト・青木理氏は「それこそが公安調査庁。あの役所にとっては珍しいことでもなんでもない」と苦笑する。
「警察庁や警視庁の公安部門ならともかく、公安調査庁に大した情報収集力も調査能力もありません。かつてオウム真理教に対する団体規制を請求した際は、スポーツ紙のコピーを証拠として提出したような組織ですよ(笑)。警察の公安部門なら、被疑者を検挙すれば裁判などの場で一応はチェックを受けますからそれなりの緊張感はあるけれど、公安庁には逮捕権も強制捜査権もなく、漫然と情報収集まがいのことをやっているだけ。適当な情報を上げても外部の検証を受けることもないから、いい加減な情報が飛び交う。これまで公安調査庁のガセネタでどれだけの新聞や週刊誌が誤報をとばしてきたか(笑)」
しかも、青木氏によれば、「公安庁の最大の問題は、自分たちの組織延命、予算獲得のために監視対象の危険性を煽っていること」だという。
そもそも、公安庁は前述のように破壊活動防止法とセットで設立され、ながらく共産党や過激派の運動を監視してきたが、この60年以上、なんの破壊活動の証拠も掴むことはできず、政府内でも、“無能官庁”“カネの無駄遣い”“時代遅れの情報機関”と呼ばれていた。
ようは、リストラ候補ナンバーワンの存在だったわけだが、90年代半ばにオウム真理教事件が起きて団体規制法の対象になったため、それを大義名分にかろうじて組織は存続された。しかし、ここ10年ほど前から、オウム真理教の後継団体などの動きもたいしたものではなくなり、再び不要論が盛り上がり始めた。実は、公安庁の今回の沖縄をめぐるデマ拡散もそのことと無関係ではない。青木氏もこう分析する。
「危機を煽らなければ、自分たちの存在意義がなくなり、予算や人員も減らされてしまう。だから毎年発表する『内外情勢の回顧と展望』なる報告書などでは、必死になって危機を煽るわけです。オウムの危険性などには事前にまったく気づかなかったくせに、事件が終わって壊滅状態になってから『危ない、危ない』と言い続けているのは典型例。質の悪い狼少年みたいなものです。今回も、安倍政権が敵視する沖縄に目をつけ、自分たちの組織維持に利用し始めたということでしょう」
“無能官庁”が生き残りのために仕掛けるデマゴギーに決して騙されてはならないが、一方で、公安庁は最近、安倍政権下でにわかに勢いを取り戻しつつある。今後も注視しておく必要があるだろう。
(編集部)
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