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Business | 2016年 12月 22日 16:55 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
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新規国債減額、外為特会頼み 信頼揺らぐ政府予算
[東京 22日 ロイター] - 政府予算が税収の伸びで歳出を賄う本来の姿から逸脱し始めた。2017年度予算案では、民主党政権下の11年度以来の規模となる税外収入を頼りに、不足を補う新規国債を減額した。ただ、表面上の増減にこだわる姿はかえって信頼を損ない、安倍官邸が掲げる経済成長と併せた財政再建の手法を疑問視する声が広がりそうだ。
「禁じ手ではないだろう」。12月中旬、首相官邸。次年度予算を巡る折衝で、政府高官の一人はこう話した。
念頭にあったのは外国為替資金特別会計(外為特会)。円高に伴う法人税収の伸び悩みで、17年度の国の税収はどう見積もっても大幅に伸ばせない。経済成長と財政健全化の両立をうたう以上、「官邸の意向としては新規国債も減らしたいようだった」と、ある政府関係者は当時を振り返る。
外為特会の剰余金を一般会計に繰り入れる場合、その30%以上は特会に残すのが、ここ数年の慣例だった。
一方で、財政状況に応じた柔軟な運用も認められ、政府は17年度予算で、剰余金(見込み額)の全額を財源に充て、16年度当初比8583億円増の2兆5188億円を捻出。税外収入全体では、同6871億円増の5兆3729億円と、第2次安倍内閣発足以降、初めて5兆円台に乗せた。
別の政府関係者の一人は「税外収入で稼ぐという政治判断がなければ、新規国債の増額は避けられなかった」と指摘する。
予算案の編成過程では16年度税収について、当初想定した減額幅1.9兆円から最終的に1.7兆円に縮減し、17年度税収を57兆7120億円に蹴り上げた。次年度税収の「発射台」となる16年度分を引き下げすぎれば「高い成長率を想定しても当初ベースで税収が増える姿が示せない」(前出の政府関係者)との懸念があったためだ。
表面上は「税収増、国債減」というこれまでの路線を維持した17年度予算案。麻生太郎財務相は、予算案決定後の記者会見で「(新規国債を減額することで)バランスが取れた」と強調した。
しかし、当初予算をいくら抑制しても、補正での予算措置を事前に約束する「補正回し」が続く現状に、明治大学の田中秀明教授は「会計上の操作で見栄えを良くできる当初予算の信頼性は低い」としている。
(梅川崇 編集:山口貴也)
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外為特会の剰余金、全額繰り入れても影響大きくないと判断=麻生財務相
[東京 22日 ロイター] - 麻生太郎財務相は22日の閣議後会見で、同日決定した2017年度当初予算案に関し、外為特会の剰余金見込み額を一般会計に全額繰り入れても「(特会への)影響は大きくないと判断した」と語った。予算像をめぐっては、新規国債の減額や歳出の目安を順守したことを念頭に「方向としては間違っていない」と強調した。
17年度予算案は、税収の伸びが鈍化する中で、外為特会の剰余金見込み額2兆5188億円を一般会計に繰り入れて財源を確保した。全額繰り入れはルール上「禁じ手」ではないものの、2011年度以来6年ぶりの措置。
一般会計の厳しい現状を踏まえ、麻生財務相は「有効に活用させてもらった」と語った。
新規国債の減額が小幅にとどまったことなどから、財政健全化には停滞感も漂うが、麻生財務相は「消費増税を2年半延期した段階で厳しくなっている。今に始まったことではない」と述べた。
http://jp.reuters.com/article/gaitame-aso-idJPKBN14B073
視点:
米国抜きの新TPPに日本の活路
山下一仁キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
[東京 22日] - ドナルド・トランプ次期米大統領の予告通り、米国が環太平洋連携協定(TPP)から離脱したとしても、日本は米国抜きの新TPPを通商戦略の根幹に据えるべきだと、キヤノングローバル戦略研究所・研究主幹の山下一仁氏は主張する。
同氏の見解は以下の通り。
<論拠を失うTPP反対派の米国脅威論>
トランプ氏が、1月の米大統領就任後100日間の優先政策事項を語った11月21日公開のビデオ声明で、TPP離脱を予告したにもかかわらず、日本のTPP推進派には任期中の君子豹変を期待する向きがいまだ多いようだ。しかし、そのような甘い期待はきっぱりと捨てた方がいいだろう。
トランプ氏を大統領にまで押し上げたのは、移民と貿易に関する保護主義的な言動だ。地球温暖化対策の見直しや医療保険制度改革(オバマケア)の廃止といった他の公約で妥協することはあっても、通商問題では譲歩できないだろう。トランプ氏が大統領でいる間は、米国のTPP参加はないものとして、日本は通商戦略を再構築する必要がある。
とはいえ、私は、TPPがダメだから、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉に軸足を移すべきだとの考えには賛同できない。むしろ、その逆だ。米国抜きの新TPPを進めることを、日本の通商戦略の根幹に据えるべきだと考えている。
理由は2つある。1つはその規模だ。米国が離脱しても、TPPにはカナダ、オーストラリア、メキシコなど比較的大きな国が多数参加している。しかも、フィリピン、インドネシア、台湾など、他にも多くの国や地域が参加の意向を示している。個々の国・地域と結んできた通商協定よりも大きなスケールメリットを追求できる。
もう1つの理由は、TPPが既存のいかなる多国間通商協定よりも高いレベルの内容であるということだ。関税撤廃やサービス貿易拡大など自由化の取り組みは、世界貿易機関(WTO)以上に進んでいる。また、投資、貿易と環境、貿易と労働などWTOがこれまで網羅してこなかった分野についても、新たなルール作りに踏み込んでいる。さらに、将来の中国加入をにらんで、国有企業のあり方についても細かく定めた。
これらはいずれも中国主導のRCEPでは、実現不可能な内容だ。例えば、TPPでは、労働者に労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を法的に保障することが参加国に義務付けられているが、現在の中国政府には到底受け入れられる項目ではないだろう。
また、RCEP交渉には、高関税国のインドも入っており、関税引き下げはほとんど進まない可能性が高い。TPPの空白をRCEPが埋められるとは、いずれのTPP交渉参加国も考えていないのではないだろうか。
実際、米国抜きの新TPPの可能性に言及する当事国は増えている。報道によれば、ペルーのクチンスキ大統領は「米国を外し、環太平洋での新たな経済連携協定を構築すべきだ」と表明。メキシコのグアハルド経済相も、米国を除く11カ国で協定が発効できるように条項見直しを提案している。その意味で、日本が先んじてTPP批准案を可決したことは、他国に対して前向きなメッセージになったと思う。
ちなみに、TPP発効には参加国の国内総生産(GDP)の85%を占める6カ国以上の批准が必要との規定があるため、60%を占める米国が抜ければお蔵入りすると思われがちだが、実際にはその規定を修正・削除した上で、米国以外の参加11カ国で新TPP協定を締結し直せばよいだけだ。
加えて、米国は抜けるのだから、同国の利益を反映した条項の修正・削除も行われることになろう。日本の場合、米国に認めた7万トンのコメ特別輸入枠の削除などが可能になる。農産物関税の削減・撤廃規定が米国に適用されることもない。
さらに、ISDS(投資家と国家間の紛争解決)手続き条項や新薬のデータ保護期間、食品の安全などに関する米国主導で決まった他の規定も大きく見直されるだろう。TPP反対派の米国脅威論は論拠を失うことになる。
<日米FTA交渉は拒否すべき>
何より重要な点は、先に米国抜きでTPPを発効させることができれば、将来、米国が加入を求めてきたときに、既存参加国は結束して強い交渉態度で臨めることだ。
米国抜きと言ったが、私は米国もいずれ(トランプ大統領後は)TPPに加入申請せざるを得なくなると考えている。TPPに入らないことで一番割を食うのは、米国であるからだ。
例えば、日本が輸入する牛肉にかけている関税は、TPP加盟国のオーストラリア産やニュージーランド産が9%に引き下げられるのに対して、米国産は38.5%で据え置かれる。同じような関税率の格差が豚肉や小麦、乳製品など他の農産物についても発生するため、米国の農業界は大きな痛手を受ける。
米国の農業界はもともと共和党支持層であり、これまで日本市場の確保とさらなる開放を強く求めてきた。TPP不参加で明白な不利益が生じれば、共和党中枢を突き上げ、TPP加入申請を強く求めることになるはずだ。そもそも、共和党は伝統的には自由貿易推進派である。
米国がTPP加盟を求めてきたら、既存参加国は、強い交渉態度で臨めばいい。後から入る国の要求が通りにくいのは、国際通商交渉の常である。米国自体、例えば中国のWTO加入交渉で、そうした強硬な姿勢を取ってきた経緯がある。
こう話すと、トランプ氏は、自国の農業界などに明白な不利益が生じれば、日本に対し「日米自由貿易協定(FTA)」を結ぶよう強い圧力をかけてくるのではないかとの反論が聞こえてきそうだ。確かに、その可能性は高い。だが、拒否すればいい。道理は日本側にある。
そもそもTPPはアジア太平洋経済協力(APEC)全域を網羅する自由貿易圏構想(FTAAP)実現に向けた取り組みの1つとして、米国をはじめとするAPEC首脳が推進してきたことだ。
また、2国間FTAの乱立が複数のルールや規則につながり、世界貿易の障害となることは自明の理だ。こうした筋論や自由貿易主義の理想を、日本はAPECやTPP参加国を味方につけて、米国側に諭すべきである。
<報復関税合戦は杞憂か>
ただ、私のこうした見方は全て次期米政権が常軌を逸した行動には出ないとの前提に基づいている。仮にトランプ次期米大統領が、選挙期間中に公言していたように、本気で中国やメキシコに45%や35%の高関税をかけようとした場合、日米FTAを断れば日本もその標的にされるのかもしれない。
むろん、そのようなことをすれば、WTO違反であり、トランプ政権は「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」の貫徹のため、TPPどころか、WTO離脱も辞さないということになる。実際には離脱せずとも、報復関税合戦を招くことになりかねない。
現代のビジネスは、国境を越えて複雑に入り組んだサプライチェーンによって支えられている。世界貿易の6割が部品の貿易だ。100%のメイド・イン・チャイナも100%のメイド・イン・USAもない。米国などから輸出された部品を中国で組み立て、米国に輸出している企業も多い。関税引き上げによる保護貿易主義は、米国企業の収益を直撃し、結果としてトランプ氏を支持した米国人労働者を苦しめるだけだ。
さすがにトランプ氏も現代の産業構造を理解していると考えたいが、選挙期間中の過激な発言が万が一、ブラフ(はったり)でなかった場合、大恐慌まっただ中の1930年に米国が国内産業保護を優先するスムート・ホーリー法を制定し、関税を大幅に引き上げ、世界経済をさらに悪化させた「暗黒の時代」再来も杞憂とは言えなくなりそうだ。
*本稿は、山下一仁氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。
(聞き手:麻生祐司)
*山下一仁氏は、キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹、経済産業研究所の上席研究員(非常勤)。1977年、東京大学法学部卒業後、農水省入省。ウルグアイラウンド交渉などの国際交渉に参加。農水省の国際部参事官、農村振興局次長などを経て 2008年に同省を退職。東京大学博士(農学)、ミシガン大学行政修士・応用経済学修士。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの特集「2017年の視点」に掲載されたものです。
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