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支離滅裂のデタラメ政治に1億総マヒ化の国民世論
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/196192
2016年12月20日 日刊ゲンダイ 文字お越し
大茶番劇!(C)JMPA
あのバカ騒ぎは一体何だったのか。
「北方領土問題にいよいよ終止符が打たれる」「日ロ平和条約の締結交渉が本格化する」「高まる元島民の期待」――。ロシアのプーチン大統領が来日する前の嵐のような「北方領土」関連の報道が、日ロ首脳会談後はきれいさっぱり消えた。
そりゃあそうだ。安倍、プーチンの共同会見で公表された中身は「共同経済活動を行うための特別な制度の交渉開始で合意」「サハリンと北海道の住民が、自由に往来をできるようにしたい」――というパッとしないもの。新聞・TVが散々、煽りまくった「キモ」の領土問題はまったく進展せず、それどころか、安倍はプーチンに3000億円もの経済協力まで“約束”させられただけ。これじゃあ、さすがに安倍応援団の新聞・TVも報道しようがない。
だからなのか、安倍自らが「成果」を訴えようと必死だった。首脳会談の直後から、NHKや民放番組をハシゴし、「共同経済活動が平和条約への第一歩」などとドヤ顔でアピール。だが、強行採決した安保法の時と同じで、この男がTV局を行脚してグダグダと長広舌をふるうのは、失態を糊塗する際の常套手段。大体、国会議員であり、仮にも総理大臣なら、TVで一方的にしゃべくる前に、国会できちんと説明するのがスジだ。国益に直結する外交政策で「歴史的な一歩」と自画自賛するならなおさらだろう。
■焼き直しの政策を「評価」の愚
「会談は日本側の完敗だった」。東京新聞で、北大の木村汎名誉教授はこうバッサリ切り捨てていたが、これがまっとうな見方であって、海外メディアも同様だ。
〈安倍首相は経済事業のためにロシアに金をあげることになった〉(米ワシントン・ポスト)、〈プーチン大統領の外交的勝利〉(英フィナンシャル・タイムズ)、〈プーチン大統領が日本の領土問題への期待を打ち砕いた〉(米ウォールストリート・ジャーナル)。
どのメディアも総じて、安倍外交の「完敗」を報じている。安倍政権の選挙スローガンには「日本を取り戻す」とあったが、日ロ交渉で安倍がやったことは「取り戻す」どころか、「差し出した」と言っていい。
日ロ首脳会談が「歴史的大失敗」なのは明らかだが、驚くのは、そんな「亡国外交」を評価する声があることだ。FNNが17〜18日に行った世論調査で、日ロ首脳会談を「評価する」との回答は63.9%に上り、「評価しない」(30.7%)を大きく上回った。合意内容が日本とロシアのどちらに有利と思うか――との設問に対しては「66.4%」が「ロシア」と答え、北方領土問題の進展についても「69%」が「思わない」と回答。それでいて、この高い評価はハチャメチャだが、毎日新聞の世論調査でも、北方領土問題の進展に「期待する」は「60%」、共同経済活動の賛否についても「賛成」との回答が「59%」を占めていたからワケが分からない。元外交官の天木直人氏はこう言う。
「メディアがきちんと報じないからですよ。『成果はなく失敗は明らかだが、よくやった』。このロジックです。どこも本気になって『これで良かったのか』と批判しない。だから世論も何となく『まあ、いいじゃないか』という雰囲気になる。自民党の二階幹事長は『国民はガッカリしている』と言ったが、あれは単なるガス抜きであって、ホンネは『まあ、この程度じゃ政権はビクともしない』という余裕の裏返し。国民はなめられているのですよ」
そもそも共同経済活動だって、安倍は「未来志向の発想である新しいアプローチ」なんて威張っていたが、別に新しくも何ともない。日ロ両政府は98年に「共同経済活動委員会」をつくり、当時も北方4島の経済活動を「双方の法的立場を害することなく実施」できるかが検討された。しかし、折り合いがつかずに頓挫した。つまり、今回示された案も、かつての案の“焼き直し”だ。常識的に考えれば、日本の法律にも、ロシアの法律にも縛られない「特別な制度」なんてつくれるはずがないし、出来るなら日ロ共同宣言で盛り込めばいい。そうしなかったのは、安倍もプーチンも本音は「ムリ」と分かっているからで、それで「プレス向け声明」なんて曖昧な表現でお茶を濁したのだろう。こんな三文芝居、茶番劇に付き合わされる国民はタマったもんじゃない。
社会保障費を削る一方で防衛費は過去最高(最新鋭ステルス戦闘機F35)/(C)AP
暴政を許す無関心は、精神の麻痺であり、死の先取り
日ロ首脳会談に限らず、内政だって何ひとつうまくいっていない。安倍は国民ウケするようなフレーズをブチ上げるだけブチ上げて、後は野となれ山となれ――。いつもこのパターンである。
例えば、安倍政権は「介護離職ゼロ」の目標を掲げているが、厚労省の審議会がまとめた意見書は真逆の負担増案がズラリ並ぶ。▽所得が高い高齢者らの利用者負担を2割から3割に引き上げる▽中間所得層の月額負担上限額を上げる……。介護保険の利用者負担は原則1割だが、昨夏、年金収入だけで年収280万円以上ある単身高齢者の負担割合は2割に引き上げられた。介護保険制度は「社会全体で介護を担う」が導入目的だったはずだが、利用者負担は増え続け、給付は削減されるばかり。これじゃあ、どう逆立ちしても「介護離職ゼロ」の達成なんてムリだ。
「国民に丁寧に説明する」というのもウソ。今国会で強行採決された「年金カット法案」が衆院厚労委で行われた審議時間はたった19時間。しかも、参考人質疑が開かれた当日に強行採決である。こんなだまし討ちのような国会運営が許されるはずがないだろう。
「カネがない」と介護や年金などの社会保障費をバンバン削る一方で、防衛費は過去最大の5兆1000億円と大盤振る舞い。とりわけ、米国製の武器は「言い値」で爆買い状態だ。沖縄・名護市沖に墜落した「オスプレイ」を18年度までに17機購入し、総額3600億円を投じるほか、19年度までに無人偵察機「グローバルホーク」に3機で総額1200億円以上支払う。
トランプ次期米大統領が「高過ぎる」と疑問視している最新鋭ステルス戦闘機「F35」だって、日本は1機当たり180億円で計42機も買う予定だからデタラメ過ぎる。そんな暴政の極め付きが日ロ首脳会談だったのだが、大勢に流されやすく、流れにさおさす──のが日本人の特徴とはいえ、いくら何でも「世紀の亡国外交ショー」を「評価」とは唖然呆然だ。安倍政権が今も6割前後の支持率を得ているのも奇々怪々で、日本国民がよっぽど政治に無関心になったのか、1億総マヒ化しているとしか思えない。上智大教授の中野晃一氏(政治学)はこう言う。
「野党が受け皿になっていないことが(安倍政権の支持率が高い)原因だと思いますが、そろそろ国民も安倍政権について真剣に考えないといけない。対米関係でも、オバマ政権とトランプ政権では日本の対応は全く異なるでしょう。このままだと、最悪の場合、本当に(日本が)戦争に巻き込まれる事態になりかねない。無関心にならず、ちょっと考えれば『これでいいのか』と気付くはずです」
「無関心とは、精神の麻痺であり、死の先取りである」。ロシアの劇作家チェーホフはこう言っていたが、このまま安倍政権の暴走を許せばトンデモナイ時代が訪れるのは間違いない。
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