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惨敗!プーチンに授業料3000億円を払って安倍首相が学んだこと 中国とロシアが見せつける「大国外交」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50526
2016.12.20 近藤 大介 『週刊現代』編集次長 現代ビジネス
■日ロ関係「新たな後退」
先週、12月15日と16日に、山口と東京で行われた安倍晋三首相とプーチン大統領の日ロ首脳会談について、「評価する」が63.9%に上り、「評価しない」の30.7%を大きく上回った(12月19日にFNNが発表した世論調査)。
私はまったく評価していない。安倍首相は「新たなスタートに立った」というが、新たなスタートに立ったとは、1956年に日ソが国交を回復し、日ソ共同宣言で「平和条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す」と定めた時に言うべき言葉である。
今回、プーチン大統領は「両国間に領土問題は存在しない」と明言した(12月7日の『読売新聞』『日本テレビ』インタビュー)のだから、これは「新たな後退」である。私の感想は、「日本は3000億円払ってようやく、領土というのは戦争によって奪い取らないと戻ってこないことを知った」というものだ。
それは一旦おくとして、今回の日ロ首脳会談について、一つ聞き捨てならないものがあった。「ロシアとの関係進展は中国へのカードになる」(12月17日付『東京新聞』社説他)という考え方だ。
要するに、中国を最大の「仮想敵国」とみなす日本にとって「中ロ蜜月」にクサビを打つことは重要だ、中ロの両大国を敵に回すことはできないのだからロシアとは手を結ぶべきだ、といった論理である。
それはそうなのかもしれないが、それではプーチン大統領の今回の訪日によって「中ロ蜜月」が揺らいだかと言えば、そうは見えない。むしろ日ロ接近を警戒する中国が、さらにロシアに接近する材料を与えたとも言えるのである。その辺りのことを検証してみたい。
■中国メディアはボロクソに酷評
まず、中国では「普安会」(プーチン大統領と安倍首相との会談)と呼ばれた今回の会談、どう報じられたのか。
国営新華社通信は12月18日、「千億円単位のカネをはたいて、安倍は“成果”を粉飾するが、国内での失態を覆い隠すのは難しい」と題した記事を報道した。
〈 双方は北方4島(ロシアでは南千島群島)の共同経済活動の交渉では一致したが、北方4島の帰属などカギとなる問題では進展がなかった。
安倍が所属する与党自民党の二階俊博幹事長は率直に、「領土問題で何の進展もなかったことは国民に失望を与えた」と述べ、野党は「功のない徒労に終わった」を強く批判した。要は、安倍は数千億円もの投資金を机上に置いて、何の実質上の成果も得られなかったのだ。
その金額は、野上浩太郎官房副長官が漏らしたところによれば、民間企業の提携も含めると、3000億円(約176億人民元)にも上る。
安倍は「巨大な」「確実に」「堅い決心で」など大袈裟な表現を多用して“成果”をアピールしたが、日本及び西側メディアの見出しは「領土問題に進展なし」だった…… 〉
同じく、12月17日付新華社通信の「安倍はプーチンを引っ張ってきて功なし徒労」の記事の要旨。
〈 領土問題で何の進展もなく、「経済カード」を通して領土問題の解決を推し進める安倍の「新たなアプローチ」も、空振りに終わるだろう。
思えば、今年5月に訪ロした際、安倍が「新たなアプローチ」を言い出したが、その具体的内容は不明だった。今回ようやく表に出たが、それは4島で経済協力活動を行って共存共栄を図り、領土問題の解決を進めるというものだった。だがそれは、ザルで水を掬うようなものだ。
まず第一に、今回ロシア高官は「共同経済活動はロシアの法律のもとで行う」と述べたが、それは安倍が強調する「特別な制度のもとで」と矛盾するではないか。第二に、商業活動を行う際の司法管轄権や納税はどうするのか。
日本はさらに、3000億円もロシアに投資したり借款を与えたりするという。だが、「経済カード」を使って領土を取り返すなどというのは、痴人の夢というものだ。ロシア極東は人口が少なく、労働力としても市場としても物足りない。かつ日本はロシアに対して、いまだに経済制裁を科しているのだ。
今回の経緯を分析すると、ロシアは領土問題をエサに日本を引き寄せて、欧米の制裁包囲網を突破しようとした。そのロシアの接近に日本が“幻想”を抱いた。だがロシアの国内外の情勢が好転したことで、ロシアの日本に対する態度が強硬になったということだ。結果、日本の「完敗」に終わった 〉
同じく12月17日付新華社通信。タイトルは「安倍は誠心誠意“温泉”首脳会談を準備したが“成果なし”に苦々しい」。
〈 安倍は「できるだけ長く二人きりの時間を作ってプーチン大統領と対話したい」としていたが、プーチンは3時間近くも遅刻し、日本は混乱に陥った。安倍は仕方なく、父・安倍晋太郎元外相の墓参りに行った。
プーチンがようやく温泉旅館に着いた時、安倍が「温泉で疲れを癒やしてほしい」と述べたら、プーチンは「私を疲れさせないでほしい」と答えた。会談終了後、安倍は北方領土問題について、「非常に良好な雰囲気のもので」「率直に」「意義深い」会談ができたと強調した。
だが、同行したラブロフ外相は、「プーチン大統領は会談で、アメリカのアジアにおける軍備に懸念を示し、日本はわれわれの懸念に対して理解し始めた」と述べた 〉
次は、12月17日付上海『文汇報』の「ロ日“温泉外交”に秘めたチャンス」。
〈 いわゆる「一枝が動いたが万の葉は従わず」というものだった。
前世紀末からいままで、日本はロシアとの外交を推し進めることで、日米中ロの「四角関係」中、「短小軽薄」だった日本の地位を引き上げようとした。それによって、中ロの戦略的な圧力を弱め、中米関係が高まっていくのを防ごうとしたのだ。第2次安倍政権の「地球儀を俯瞰する外交」とは、司馬昭の心(帝位簒奪の野心)をもってロシアに注力することだったわけだ。
これに対しロシアは、渡りに船とばかりに対日「ゾンビ外交」に意欲を見せた。すなわち欧米の経済制裁を突破すると同時に、日本の力で極東開発を活性化させようとしたのだ。ヨーロッパに錨を降ろし、アジアに帆を上げる――元来の“二頭の鷹”の国策を応用させた。
日本はロシア外交と言っても、すべてにおいてアメリカの顔色を窺いながら進めざるを得なかった。この先、トランプ次期大統領の幕僚たちに少なからぬ親ロ派が含まれていることを思えば、「米ロ関係が強化されれば日本は捨てられる」「プーチンはますます強硬になる」との懸念があった。
それを思えば、いまは米ロ関係が転換する前夜なわけで、対ロシア関係を推進しようとする日本にとって、「釜の底の薪を取り出される」(万事休す)的な状況だったのだ。
今後、モスクワは今回の「温泉外交」を日本からの「物乞い外交」のように捉えていくことだろう 〉
12月17日付の中国共産党中央委員会機関紙『人民日報』の「日本はなぜ“顔を火照らせ”ロシアに接するのか」。
〈 11年ぶりにプーチン大統領を迎えるため、安倍政権は8項目の経済協力プランを作り、安倍首相が4回もロシアを訪問するなど、多大な準備を重ねてきた。そしてアメリカでトランプ政権が誕生する前に、先手を打ったのだ。
だが、日本の厚遇ぶりに対して、ロシア側の態度は“氷のような冷たさ”だった。プーチンは日本のテレビ局の事前取材で、「ロシアと日本との間に領土問題は存在しない。それはただ日本があると思っているだけだ」と述べた。
日本は、欧米から制裁圧力を受けているロシアが、日本の経済協力を求めて領土問題で譲歩すると踏んだ。だがトランプの“まさかの”当選によって、安倍外交は重要な外交カードを失った。
振り返れば、あまりに失策の多い安倍外交だった。ロシアに経済制裁を科しているG7は(プーチン大統領を招待したことに)不満だし、ロシアも日本は経済分野での待遇が足りないと気分を害している 〉
他にも挙げていけばキリがないが、中国メディアは、今回の日ロ首脳会談の結果を、このようにボロクソに酷評している。かつそれぞれが、中国メディアによくありがちな感情的な日本批判ではなく、根拠をもって日本外交の失態を突いているところがポイントである。
中国の報道がロシア寄りになることは差し置いても、「中ロ蜜月」に何もヒビは入らなかったということを、暗に示しているように思える。
■プーチンが見せた喜色満面の笑み
中国は今回の「プーチン訪日」を傍観していたかと言えば、決してそんなことはなく、事前に、少なくとも二つの場面で、ロシア側にクサビを刺している。
1回目は、11月6日から8日まで、李克強首相がサンクトペテルブルクとモスクワを訪問し、7日にメドベージェフ首相との間で開いた「第21回中ロ定期首相会談」である。
安倍首相とプーチン大統領との会談が、今回で16回目だったというが、中ロは定期首脳会談を、21回も開いているのだ。この会談で両国は、経済貿易、投資、金融、原発、先端技術など20項目以上の新たな提携を決めた。
この首相会談後の共同記者会見で、李克強首相は、「両国の中小企業の提携は、大きな潜在力を秘めている」と強調し、メドベージェフ首相もこれに同意した。この「中小企業の連携」に含まれているのが、ロシア極東貿易、極東開発なのである。
換言すれば、この時、李克強首相は、「これから中国の中小企業にどんどん投資させるから、ロシアの極東開発は、日本とではなく中国と行おう」とロシア側にプッシュしたのである。
そして、李克強首相を「わが兄弟」と呼び、2012年7月に国後島を、2015年8月に択捉島をそれぞれ訪問した対日強硬派のメドベージェフ首相も、これに同意したというわけだ。
実際、この中ロ首相会談の結果を受けて、プーチン大統領が東京で安倍首相と経済分野の首脳会談を行った12月16日、それに対抗するように、中国吉林省の省都・長春で、中国ロシア貿易投資専業委員会の設立大会を開いた。主催は、中国国際商会の吉林支部である。
この大会には、物流、観光、医療機器など50社の代表100人あまりが参加し、吉林省国鹿生物科学技術有限公司の劉竜執行役員を委員会主席に選出した。挨拶に立った劉主席は、「今後、中ロの国家戦略に則って、吉林省とロシア海浜地域との貿易を伸ばしていく」と宣言した。「ロシア海浜地域」というのは、当然ながら北方領土も含んでいる。
そもそも、中国はロシアにとって、最大の貿易相手国である。2013年3月に、国家主席に就任した習近平主席は、すぐさまモスクワへ飛び、プーチン大統領との間で、「2015年に両国の貿易額を1000億ドルにしよう」と約束した。
事実、翌2014年は953億ドルまで伸びたが、2015年は両国の経済低迷などの理由で、642億ドルに下降してしまった。だが2016年は持ち直して、700億ドルまで回復する見込みだ。
これに対して、2015年の日ロ貿易額は212億ドルと、同年の中ロ貿易額の3割強に過ぎない。しかも、プーチン大統領が12月16日に安倍首相と行った共同記者会見で述べていたように、今年上半期の日ロ貿易は前年同期比で36%も落ち込んでいる。仮に下半期も同様の状況だとするなら、中ロ貿易の700億ドルに対して日ロ貿易は135億ドルとなり、2割にも満たない。
ちなみに、訪日の1週間前にあたる12月7日に、『読売新聞』と『日本テレビ』のインタビューを受けたプーチン大統領は、中国についてこう述べている。
〈 我々は今、露中関係を戦略的パートナーシップに位置づけている。しかも特権的な戦略的パートナーシップだ。ロシアには中国との間でかつて、これほどの信頼関係はなかった。
中国は国の規模で言えば、我々の経済・貿易面での最大のパートナーだ。我々は、大規模で巨額の共同プロジェクトをいくつも実現している。我々は、国連の安全保障理事会で協力しているだけではない。協力しているのは中国とロシアが常任理事国なので当然だが、それ以外にも上海協力機構や、いまやグローバルな連合体のBRICS(新興5ヵ国)でも協力している。
現在、旧ソ連圏で我々が創設したユーラシア経済同盟について話し合いをしている。我々は、ベトナムと結んだような自由貿易協定を中国と結ぶために協議している。その後は、中国の「一帯一路」構想と、我々が創設した地域機構とをつなげる用意がある 〉(12月14日付『読売新聞』)
私はこのインタビューを、日本テレビの映像でも見たが、中国について語った時、プーチン大統領は喜色満面の笑みを浮かべていた。
つまり、ロシアにとって中国は、日本よりもはるかに重要なパートナーだということだ。それは習近平主席も常々、「ロシアとは過去100年で最良の関係にある」と述べている通りだ。2004年には、長年の懸案だった国境も画定させていて、翌2005年からは合同軍事演習も行っている。
私は今後、ロシアが北方領土開発を、中国企業とともに進めていく可能性もあると見ている。それは、ロシアが今回の日本との経済協力の成果が思うように伸びないと判断した場合である。
例えば、ナマコの養殖事業である。中華料理でアワビ、フカヒレと並び、「3大海鮮珍味」と呼ばれるナマコは、三国志の時代から中国人が愛してやまない食べ物だ。ナマコにはビタミン、鉄分、カルシウムなど50以上の栄養分が含まれ、健康と美容に欠かせないと、中国人は認識している。
一昔前まで、ウラジオストクの中国名は「ナマコ湾」(海参崴)だった。それは北方領土から最良のナマコが、ウラジオストクに水揚げされるからである。特に、水深30mの汚染されていない海域で5年以上育った「国後ナマコ」が有名だ。一般のナマコは市場で、1sあたり100元(約1700円)くらいから取り引きされているが、「国後ナマコ」はその5倍から10倍の値がつくと言われる。
中国人が大好きな「国後ナマコ」は、いまでこそロシアからの輸入に頼っているが、今後は国後島の沿岸に中国企業が大規模に投資し、「国後ナマコ」を量産させていくことは、十分考えられるのである。
■タス通信が報じた一本のニュース
さて、中国がロシアにクギを刺した第2の場面は、11月22日から24日まで、ロシアのショイグ国防相が訪中した時だった。
中国はこの時、25日から27日まで、年に一度の共産党の重要会議「6中全会」を控えていて、外国の賓客をもてなしているような状況ではなかった。それにもかかわらず、ショイグ国防相は突然、訪中したのだ。
11月23日、中国人民解放軍の最高幹部がズラリ勢揃いして、「中ロ政府間軍事技術提携合同委員会第21回会議」が開かれた。この場で主に話し合われたのは、中国が15年来、熱望してきた最新型のスホイ35戦闘機の売却問題であろうと推測される。
つまり、習近平主席は「6中全会」で、ロシアの最新鋭のスホイ35戦闘機を手に入れることを誇りたかったのだろう。
この時は、「6中全会」の準備の合い間を縫って、兪正声常務委員(共産党序列4位)が面会に応じ、こう述べた。
「今年は『中ロ善隣友好提携条約』の15周年であり、中ロが戦略的パートナーシップ関係を樹立して20周年にあたる。両国の国家元首の大きな推進力のもと、両国関係は歴史上、最良の状態にある。
中ロが全面的な戦略的パートナーシップ関係を発展させることは、両国及び両国民に恩恵を与えるだけでなく、地域と世界の平和を維持し保護すること、並びに国際的に求められている公平さと正義を促進することにもなる。中国は、両軍が友好関係と実務関係を発展させることを、高度に重視するものである。
そして、ロシアと同じ方向を向いて、戦略的な相互信頼を継続して強め、各分野での交流と提携を推進させ、両国並びに世界平和の発展と安定を実現していきたい」
兪正声常務委員は言ってみれば、多忙で面会に応じることができなかった習近平主席の代理として現れたという感じだった。そしてこの時、「来月のプーチン大統領の訪日では、北方領土に関して、日本に対していささかの妥協もしないでほしい」とクギを刺したことが、想像できるのである。
習近平主席は、ショイグ国防相に「借り」があった。それは、前述の国家主席として初外遊でモスクワを訪問した際、これまで外国人を一度も入れたことがないロシア国防省の本部を視察させてもらったことだ。
習近平主席はどうしても国防省を見たいとせがみ、ロシア側は拒絶し続けたが、最後はプーチン大統領が根負けして承諾した。
その際、案内役に立ったのが、ショイグ国防相だったのだ。習近平主席は、ロシア国防省の作戦指揮センターに感動し、「同様のものを中国にも作れ」と同行した常万全国防相らに命じている。そこから、習近平主席の人民解放軍改革が出発したのである。
その時、習近平主席は、最新鋭のスホイ35戦闘機の売却を懇願したが、これにはプーチン大統領が首をタテに振らなかった。最新鋭だからという理由の他に、他の売却した機種で中国に模造品を造られて立腹していたからだとされた。
それから3年半余りを経て、事態は変わった。今回のプーチン大統領が訪日する日に合わせるように、12月15日にロシアのタス通信が、一本のニュースを報じた。それは、24機の売買契約を結んだスホイ35戦闘機の最初の4機の納入が、12月25日に行われることになったというものだ。
中国が、なぜスホイ35戦闘機を欲しいかと言えば、尖閣諸島を含む東シナ海、及び南シナ海でアメリカ軍や自衛隊に対して優位に立ちたいからに他ならない。
日本の戦略としては、プーチン大統領を招待して北側のロシアとの国境を安寧にすることで、南西の尖閣諸島の防衛に専念したいという思惑があったかもしれない。だがロシアは、そうした日本の意図を見透かしたかのように、わざわざこの時期に合わせて、スホイ35戦闘機の納入に踏み切るのである。
ロシアも中国も、大国の外交を行っているということだ。
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