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2016.12.18 Sun
「カジノ法案」成立――ギャンブル依存の実態と対策
田中紀子×佐藤拓×荻上チキ
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「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」、いわゆるカジノ法案が今月15日に成立した。自治体や経界から経済効果を期待する声が上がる一方、ギャンブル依存症への影響、金銭の流れの透明性、国際交流など、さまざまな問題が指摘されている。今回は注目されるギャンブル依存症について専門家にお話を伺った。2016年12月7日放送TBSラジオ荻上チキ・Session22「カジノ法案が今週にも成立か!? ギャンブル依存の実態と対策」より抄録。(構成/増田穂)
■ 荻上チキ・Session22とは
TBSラジオほか各局で平日22時〜生放送の番組。様々な形でのリスナーの皆さんとコラボレーションしながら、ポジティブな提案につなげる「ポジ出し」の精神を大事に、テーマやニュースに合わせて「探究モード」、「バトルモード」、「わいわいモード」などなど柔軟に形式を変化させながら、番組を作って行きます。あなたもぜひこのセッションに参加してください。番組ホームページはこちら →http://www.tbsradio.jp/ss954/
カジノに限定せず依存に対する総括的な支援を
荻上 本日のゲストをご紹介します。一般社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんと、ギャンブル依存の治療にお詳しい、成瀬メンタルクリニック院長の佐藤拓さんです。よろしくお願いいたします。
田中・佐藤 よろしくお願いします。
荻上 佐藤さんは、ギャンブル依存症からの回復についてどのような取り組みをなさっているのですか。
佐藤 GA(Gamblers Anonymous)というギャンブル依存の当事者による自助グループや、リハビリ施設で支援を受けている方と連携をとって、医療の立場でできることをしています。
荻上 GAの活動はどのようなものなのでしょうか。
佐藤 GAには依存症当事者やその家族などが参加しています。匿名参加が可能で、グループミーティングでの会話などを通じて、自分の抱える問題について理解を深める場を作っています。
荻上 カジノ法案成立の可能性についてはどのようにお考えですか。
(※編集者注:本放送は12月5日の衆議院通過を受けて。その後、15日参議院本会議にて成立。)
佐藤 もちろん、法案の成立は重要な問題です。しかし現状問題を抱えて苦しむ方々の支援を行っている立場としては、今回の件をきっかけにギャンブル依存の問題や支援体制のあり方についてより多くの方々に知っていただく機会になればと思っています。
荻上 すでにある問題について、もっと議論しなければならない。
佐藤 そうですね。賭け事には合法的なもの違法なもの、法律的にいろいろ区分があり、関連したさまざまなものへの依存で苦しんでいる方がいらっしゃいます。そうした事実や、それに対する支援がどのように行われているのか、皆さんに理解していただきたいです。
荻上 田中さんのお考えはいかがですか。
田中 カジノ自体には、賛成でも反対でもありません。しかしどの程度、依存症への対策が行われるのが気がかりです。
荻上 依存症対策に関しては野党や与党公明党からも議論の必要性を指摘する声があがっています。しかしなかなか法案には反映されません。
(※編集者注:放送後、12月14日参議院本会議の段階では法案が一部修正され、依存症対策の文章も盛り込まれた。)
田中 法案自体にはほとんど記載がありませんね。附帯決議には多少盛り込まれました。
荻上 附帯決議への記載はどのようなものなのですか。
田中 「依存症予防等の観点から、カジノには厳格な入場規制を導入すること。その際、諸外国におけるカジノ入場規制のあり方やその実効性等を十分考慮し、我が国にふさわしい清廉なカジノ運営に資する法制上の措置を講ずること」「ギャンブル等依存症患者への対策を抜本的に強化すること。我が国におけるギャンブル等依存症の実態把握のための体制を整備すると共に、ギャンブル等依存症患者の相談体制や臨床医療体制を強化すること。加えて、ギャンブル等依存症に関する教育上の取り組みを整備すること。また、カジノに留まらず他のギャンブル等に起因する依存症を含めて関係省庁が十分連携して包括的な取組みを構築し、強化すること」などが盛り込まれています(注)。
(注)第192回国会衆法第20号 附帯決議
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/naikaku1063EFFDA0F22F394925807D00266E7F.htm
多少なりとも依存症対策の必要性が理解されたという意味では良かったと思っています。しかしこれがカジノに限定した対策では、ギャンブル依存者への支援としてどれだけ有効に働くのかどうかは明確になっていません。
田中氏
田中氏
荻上 付帯決議には法的拘束力がありませんね。本文には、「カジノ施設の入場者がカジノ施設を利用したことに伴い悪影響を受けることを防止するために必要な措置」を政府がとる旨が書かれています。依存症対策も含まれると考えられますが、具体的ではない。付帯決議がどう機能するかは不透明ですね。そもそもギャンブル依存とはどういうものなのでしょうか。
佐藤 自らの意志でギャンブルをする事を上手くコントロールできなくなる障害といわれています。結果、使うべきではないお金に手を出してしまう。本来楽しいはずのギャンブルが楽しくなくなってしまう。それでもやめられない、といった状態です。生活上で蓄積するストレスなどを上手に解消できず、特定の依存対象物にのめり込んで行くといった背景があるといわれています。
荻上 これまで薬物やアルコールなどが身体的に快楽をもたらし、こうした作用のある物質に依存するというのが一般的な依存症のイメージでした。しかし最近では、ギャンブルや買い物、ネットなどの行為をするときに脳内分泌物質に変化が起こり、依存症になることも知られてきました。
佐藤 依存症の研究は、薬物の動物実験を中心に行われてきましたが、最近は脳画像などを使った研究も盛んに行われるようになりました。結果、行為にのめり込む場合でも、物質に対して依存する場合と同様のメカニズムが働いている可能性が指摘されるようになりました。
こうした捉え方は「依存」の枠組みを広げることになります。「勉強依存」や「ジョギング依存」など、何でもかんでも「依存」の括りにしてしまうことには問題があると思います。しかし、なんらかの行為にのめり込むことで、日常生活に深刻な問題が起こる可能性がある場合には、支援対象としていくべきだと考えています。
荻上 好きでのめり込んでいる人に比喩的に「依存症」という場合としっかり区別しないといけませんね。日本にはどれくらいギャンブル依存症の方がいらっしゃるのですか。
佐藤 厚生労働科学研究で行われた疫学調査では、国内で536万人の依存者がいると推定されています。ただしこれは海外の調査票をもとにした推定値で、実際の依存者数については今後の詳しい調査が必要です。
周囲の人を巻き込んでしまう
荻上 ギャンブルに定義はあるのでしょうか。
田中 「ギャンブル依存」で考えられるギャンブルだと、競輪・競馬・競艇・オートレースなどの公営競技、遊戯区分とされるパチンコ・パチスロ、他にも宝くじトトなどですね。最近ではFXにのめり込んで、大きな借金を抱えご相談に来られる方もいらっしゃいます。
荻上 田中さんはご自身もギャンブル依存になったご経験があるそうですが、どんな状況だったのですか。
田中 四六時中ギャンブルのことを考えて、借金も抱えてました。普通の人が考えればギャンブルをやめればいいだけの状況でありながらやめられない。この悪循環を断ち切るにはギャンブルで取り戻すしかない、という感覚に囚われてしまう。自分ではそれ以外考えられず、やめられなくなってしまうんです。しかもそのおかしさに気付けなくなっていました。
私は祖父・父・夫と家族の多くがギャンブル依存症でした。幼少期から親を見ていて「あんな風にはなりたくない」と思っていました。それでも同じような人と結婚し、同じように依存症になってしまいました。
荻上 ギャンブル依存の世代間での連鎖はあるのでしょうか。
佐藤 もちろん周囲にギャンブルをする人がいなくても、ギャンブル依存になる方はいらっしゃいます。しかし身近にギャンブルをする人がいれば、その分本人がギャンブルに接する頻度は高くなる。その中で生きづらさを解消するための手段としてギャンブルを活用し、依存する可能性は上がってくると考えられます。
荻上 環境的な接しやすさというのは人によってあるのですね。薬物中毒のような禁断症状はあるのですか。
田中 あります。大きなレースの時に例えば、お金がなくていけないとしても、いてもたってもいられず、イライラして落ち着くことができません。なんとしてもお金を作ってやる!という感じで、どうにかお金を用意してレースに行ったりもしました。
佐藤 薬物中毒時の禁断症状と、ギャンブル依存の禁断症状が同様のものかという点に関しては、医学的には異論があります。しかし臨床的には薬物中毒と同じように、それに接していないと落ち着かないとおっしゃる方は多いです。
荻上 現在ギャンブル依存症対策はどのように行われているのですか。
佐藤 国内では地域差が大きいです。GA以外ですと、宿泊可能なリハビリ施設があるところもある。こうしたものがない地域だと多くの場合、薬物やアルコールの依存症患者を支援する医療機関が対応をしています。ギャンブル依存に特化した支援を行っているところは、現状かなり少ないと思います。
荻上 リスナーからはこんな質問がきています。
「仮にギャンブル依存の人が増えたとして、社会どのような弊害が起こりうるのですか」
田中 ギャンブルはお金の問題が関わり、借金などで周囲の人が巻き込まれるケースがあります。最近だと、ギャンブル依存の彼氏にお金を貸した彼女が、うつ病になってしまったというご相談もありました。他にも横領や窃盗、失踪、自殺、家庭の問題だと児童虐待やネグレクトなどの問題に繋がりかねません。波及的な影響を考えると、やはり社会的にギャンブル依存へ対策を行う必要性を感じます。
荻上 ギャンブル依存になると、賭けるギャンブルの形態は問わない方が多いのでしょうか。
田中 内輪では「得意種目」なんて言ったりして、好みはあります。私は競艇とカジノにはまりましたが、パチンコは全く興味が湧きませんでした。
荻上 こんなメールも来ています。
「友人の中には恋人ができたり、将来のためといってピタッとギャンブルをやめた人もいます」
やめられる人とやめられない人の境目はどこにあるのでしょうか。
田中 やはり依存度だと思います。完全に依存している人と愛好家では、やめやすさも異なります。【次ページにつづく】
ギャンブルに対する複合的な欲求
荻上 実際にギャンブル依存に当てはまる方とはどのような方なのでしょうか。
佐藤 アメリカの精神医学学会出版のマニュアルには、ギャンブル関連の問題を抱える方の診断項目が、比較的わかりやすく記載されています。日本でも頻繁に使われている代表的な診断表です。こちらでは全9項目の内、4項目以上当てはまる場合をギャンブル依存の傾向があると考えます。以下の項目です。
1.興奮を得たいがために掛け金の額を増やしてギャンブルをする欲求。
2.ギャンブルをするのを中断したりまたは中止したりすると落ち着かなくなる。またはイラつく。
3.ギャンブルをするのを制限する、減らす、または中断するなどの努力を繰り返し、成功しなかったことがある
4.しばしばギャンブルに心を奪われている。
5.たとえば無気力、罪悪感、抑うつなどの気分の時にギャンブルをすることが多い。
6.ギャンブルで金をすった後、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い。
7.ギャンブルへののめり込みを隠すために嘘をつく。
8.ギャンブルのために重要な人間関係、仕事、教育または職業の機会を危険にさらし、または失ったことがある。
9.ギャンブルによって引き起こされた絶望的な経済状況を免れるために、他人に金を出してくれるよう頼む。
荻上 田中さんは依存症当時のことを振り返ると、いくつ当てはまりますか。
田中 9個全部あてはまります(笑)。
荻上 ギャンブル依存を隠すために嘘をついたりしたんですか。
田中 つきました。ギャンブルに行ってないように振舞ったり、「借金まではしないよねー」なんて言ってるけど、実際は借金だらけだったり。家族にも、同じくギャンブル依存だった夫を除けば一切話さなかったです。
荻上 逆に依存症になっていたご家族に嘘をつかれたことはありますか。
田中 しょっちゅうでした。例えば祖父などは、買い物に行くと言ってパチンコに行っている。病院に行くと言って帰ってこない。頻繁にありましたよ。
荻上 ギャンブルで仕事や人間関係に悪影響を出したことも?
田中 ええ。夜中までギャンブルをしてて、朝起きれず嘘をついて会社をさぼったり。大きなレースなど我慢できず、風邪だと嘘をついたりもしました。
荻上 レース前は楽しみにしているんですか。どちらかというと不安感なのでしょうか。
田中 自分の中でも、行ってはいけないと自制する気持ちと、それでもスリルや興奮感が我慢できない気持で引き裂かれるような思いでした。お金を儲けるよりも、スリル感や現実逃避のような感じで没頭していたと思います。
佐藤氏
佐藤氏
荻上 実際に逃避の感覚を持って相談に来られる方は多いのですか。
佐藤 そうした方もいらっしゃいます。しかしたずねてみると、患者さんごとに理由はかなり異なります。お金が欲しかったと言う方は多いのですが、当然これだけお金の問題を抱えている状態で、お金が欲しくてギャンブルをしていたというは理論的に矛盾しているわけです。よくよく聞いてみると、スリルや予想を当てる推理欲求、現実逃避、「勝つまで終われない」など、さまざまな本来の目的が浮かび上がってきます。
多くの方に共通するのが、上記のような目的を“同時に複数”求めている点です。しかしギャンブル依存の方の多くは、自分が何を求めてギャンブルをしているのか、ほとんど自覚していません。結果として、使うつもりのなかったお金を無自覚のままギャンブルにつぎ込んでしまうということが起こります。
荻上 不安感の有無に関わらずギャンブル依存になる可能性がある、それぞれ理由は異なるということでしょうか。
佐藤 そうですね。自身が求めているものが自覚できると、対応策も「ただガマンするだけ」ではないことが理解してもらえるようになります。余暇の過ごし方などは、とても重要です。日常生活でストレスを抱えやすい人、ギャンブル以外の趣味の少ない人などは、リスクが高いと思います。多趣味な方だと、自分の状況を客観的に「危ない」と思った時点で、他の趣味に切り替て依存を回避できる可能性が上がります。ギャンブルに複数求めている目的(欲求)の一部ずつを他の行動(趣味)に置き変えていくと、抵抗感なく問題が軽減していく方もいらっしゃいます。
荻上 リスナーからはカジノに限らず、パチンコなどの現在のギャンブルに関連した依存症についても議論すべきだという声が届いています。国会でも議論はまだカジノ依存に限定されている印象がありますが、カジノと他のギャンブルと、依存のしやすさに違いはあるのですか。
田中 私見ですが、競馬などでは他人の掛け金はわかりません。しかしカジノだと周囲の人の掛け金がわかる。そのせいで煽られてしまい、どんどん掛け金が上がったり、金銭感覚が狂ってしまう部分があるかと思います。また、カジノだとセレブでおしゃれなイメージがあり、ハードルが低い。これまで競艇場などには入りにくい印象を持っていた女性のギャンブラーが増えるのではと考えています。結果、依存症になる人も増加するのではと危惧しています。
ギャンブル依存への社会の理解が不可欠
荻上 これまで国はギャンブル依存の方への支援を行ってきたのですか。
田中 国からの支援はほとんどありません。これには複合的な要因があります。ひとつには、競馬は農林水産省、競艇は国土交通省と、管轄省庁がばらばらだったことがあげられます。これにより一貫した対策が取れなかった。また、公営競技は推進と規制を同じ省庁が担当しています。これでは規制自体、そもそも無理があります。
加えて日本は自己責任論が強く、何かあっても人に言えない雰囲気があります。カミングアウトする事で仕事をクビになる不安など、依存症の人やその家族は問題を抱え込んでしまうことが多い。結果としてギャンブル依存への社会の理解も進まず、対策も遅れていると思います。
荻上 当事者団体や医療支援に対する国の支援はあるのですか。
佐藤 精神科医療機関では、既存の医療制度を活用した形で、ギャンブルの問題への対応は可能ではあります。ギャンブルにより経済的破綻した方は、生活保護制度を利用することもあります。とはいえ、国からギャンブルの問題に特化した支援はありません。支援制度の見直しは必要だと考えます。
荻上 自治体レベルでの支援はいかがですか。
佐藤 そもそもギャンブル問題に理解のある地域資源に、かなり大きな格差があります。自治体によっては、関連機関でどんなサービスが受けられるのか、しっかり把握しており、ギャンブル依存の問題を抱えた人へ適切な支援への結びつけが行われているところもあります。10年前と比較しても、全国的に状況はずっとよくなっていると思います。しかし、支援体制が十分に整っていない自治体が多いことも否めません。
荻上 当事者団体としては国や自治体にどんな支援をして欲しいとお考えですか。
田中 1番はギャンブル依存が病気と認識され、相談しやすい環境をつくるための啓発活動に力を入れていただきたいです。たとえば依存症の話をする際、多くが「アルコール・薬物等」と言われます。物質依存への啓発には繋がる一方、ギャンブルなどの行為に対する依存については取りこぼされています。「等」の中にギャンブルが入ると思いつきません。私自身、以前はギャンブル依存者を支援するための医療機関や相談所があると知りませんでした。啓発活動には予防教育が必要です。小学校でギャンブル依存に関する問題を取り上げたり、関連する研究への助成、実態調査などをしっかり行っていただきたいです。
依存症の人がギャンブルをやめるのは大変なことです。私の場合、4年もの期間苦しみながらも、自助グループのサポートでどうにかやめることができました。依存症の改善には支援が重要です。こうした団体や医療機関への援助も進むといいと思います。
荻上 ギャンブル依存から脱するためには、一切ギャンブルをしなくなることが必要なのでしょうか。
佐藤 私自身はそうしたこだわりを持っていません。家族に連れられて来院した方が受診を通して次第に考えを変えてやめていく場合もあります。「やめるために病院へ」というよりは、お金を使い込んでしまったり、なんとなく自制が利かなくなっている違和感に対する気軽な相談所のつもりでやっています。
近年海外では、これまでの「やめる」か「依存」かの二極的なものではなく、ハーム・リダクション(Harm Reduction)という「害を減らす」ことを目的とした支援が行われています。日本でもこうした目線での議論ははじまっていて、より柔軟な支援へ繋がるのではと期待しています。
荻上 海外でのギャンブル依存への対策にはどのようなものがあるんですか。
佐藤 問題がある人に対応できる資源については、国内にある自助グループ、リハビリ施設など、諸外国においても大きくは変わらないと思います。ただ、ギャンブルは国ごとに種類や規制の度合いが異なり、各国での実情にあった対応が必要になります。したがって支援の状況も異なる。一概に言うのは難しいです。
荻上 各国の対策からヒントを得て、国内でも状況にあった支援体制を築くことが必要ということですね。田中さんは海外のギャンブル依存対策にどのような印象をお持ちですか。
田中 どこの国も子どもを守ることに力を入れている印象があります。シンガポールでは、トトのようなくじもギャンブルとされていて、購入のため子どもを連れて並ぶことすら禁止されています。広告も自国内の子どもの目に触れないように設置場所に規制がかけられている国が多い。
逆に日本は公営ギャンブルで家族イベントなど開催したり、敷地内に遊び場を作ったり、子連れを狙ったものが多い。子どものころからギャンブルなじむための環境づくりを推進しています。実際、仲間内では幼少期に親に連れられてギャンブルに行っていた話しを多く聞きますし、こうした環境下ではリスクが高まると懸念しています。
荻上 リスナーからは、本来違法であるはずのギャンブルが、政府が執り行うと合法になることへの疑問や、反対にギャンブル全てを悪とするような議論は単純すぎるという指摘もきています。
田中 違法だから全部なくす、というのは難しいと思います。現状で言えば、ギャンブルを認めてしまった以上、せめて依存症への対策は万全に行って欲しいと思っています。
荻上 買い物依存、ネット依存などがあるからといって、ネットや買い物を規制すべきかといえば、それは別問題ですからね。それと同様、ギャンブル自体の議論と、依存症の議論を切り分ける必要があるということでしょう。
田中 線引きは必要だと思っていますし、私自身はギャンブル産業の是非と依存症の問題は切り離して考えています。
荻上 佐藤さんはいかがですか。
佐藤 ギャンブルの是非もですが、何よりこれを機会に、こうした支援対策に関する議論が自由闊達に行える環境が広がっていけばいいと思っています。
荻上 カジノを認めるならば、懸念への対策をしっかり固めることが重要ということですね。さらにいえば、従来のギャンブルの論点整理、そして他の依存症も含めた総合対策が求められると思います。田中さん、佐藤さん、本日はどうもありがとうございました。
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荻上チキ(おぎうえ・ちき)
評論家 / シノドス編集長
1981年生まれ。シノドス編集長。評論家・編集者。著書に『ネットいじめ』(PHP新書)、『社会的な身体』(講談社現代新書)、『いじめの直し方』(共著、朝日新聞出版)、『ダメ情報の見分け方』(共著、生活人新書)、『セックスメディア30年史』(ちくま新書)、『検証 東日本大震災の流言・デマ』(光文社新書)、『彼女たちの売春』(扶桑社)、『夜の経済学』(扶桑社 飯田泰之との共著)、『未来をつくる権利』(NHK出版)、編著に『日本を変える「知」』『経済成長って何で必要なんだろう?』『日本思想という病』(以上、光文社SYNODOS READINGS)、『日本経済復活 一番かんたんな方法』(光文社新書)など。
荻上チキ Sasyuracom-22(おぎうえちき・せっしょん22)
TBS RADIO 954kHz
毎週月〜金 22時〜24時55分(金曜日は23時55分まで)放送。様々な形でのリスナーの皆さんとコラボレーションしながら、ポジティブな提案につなげる「ポジ出し」の精神を大事に、テーマやニュースに合わせて「探究モード」、「バトルモード」、「わいわいモード」など柔軟に形式を変化させながら、番組を制作。
番組HP http://www.tbsradio.jp/ss954/
田中紀子(たなか・のりこ)
一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表理事
1964年生まれ。祖父、父、夫がギャンブル依存症者という三代目ギャンブラーの妻。夫と共に、ギャンブル依存症の問題から立ち直っていった経験を伝えていきたいと、カウンセラーとなり、ギャンブル依存症の問題を持つご家族からの相談に対応している。8年間弁護士事務所のパラリーガルとして、債務整理に携わった経験から、借金問題に詳しいカウンセラーと頼りにされるようになり、ギャンブル依存症者とその家族の支援に関わる。2014年2月に、「ギャンブル依存症問題を考える会」を立ち上げ、代表就任。「ギャンブル依存症問題の社会への啓発運動」と、「学校教育、企業に向けた依存症予防教育の導入」を掲げ、活動している。2015年「ギャンブル依存症対策を推進する超党派勉強会」にオブザーバーとして参加。自民党政策審議会をはじめ、各政党の勉強会や経団連、地方自治体の研修会等でも講師を務めている。著書に『祖父・父・夫がギャンブル依存症!三代目ギャン妻の物語』(高文研)、『ギャンブル依存症』(角川新書)。
佐藤拓(さとう・たく)
精神保健指定医、精神科専門医
成瀬メンタルクリニック院長。福島県出身。北里大学大学院博士課程修了。
http://synodos.jp/society/18718/2
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