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ネット世論で人気のわが国の総理大臣・安倍晋三と、不人気街道ばく進中の防衛大臣・稲田朋美。
安倍政権を支える「ネット世論」の害悪。宮崎謙介、武藤貴也、上西小百合…なぜ公募議員はクズが多いのか? 人材不足の最たる分野が「政治家」だった。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161216-00004049-besttimes-pol
BEST TIMES 12/16(金) 19:00配信
ネット世論と自民党
一番怖いのは「慣れ」
ネット世論に判断を委ねてよいのか。
ダメである。
本来ならその一言で終わる話だ。
しかし、わが国の現状はどうか?
自民党は二〇一六年夏の参院選比例区の公認候補をインターネットで公募し、さらに、ネット投票で一人に絞り込んだ。
問題はこれを異常と感じない人間が増えていることだ。多くのメディアは、「若者の声が反映される」「政治が身近になる」「地盤、看板、鞄の政治からの脱却」などともてはやしていた。
一番怖いのは「慣れ」だ。どんなに異常な事態が発生しても、慣れてしまえば目に入らなくなる。
たとえば、久本雅美や柴田理恵がテレビ画面に登場したとき、誰もが違和感を覚えたはずだ。彼女らは当初「衝撃的なブス」という役割を引き受けていた。しかし、今では頰紅を塗り、それなりにテレビ画面に収まっているのである。彼女らが変わったのではない。視聴者の目が慣れたのだ。
自民党のネット公募「オープンエントリー2016」は、多様な人材の発掘と若者の取り込みを目的として企画されたという。ネット投票の対象は、四五八人の応募者から書類審査と面接で絞り込まれた一二人。この「ファイナリスト」のうち、最も多くの票を集めた五二歳の冴えない男が、比例代表候補として公認された。この男、かつては「東京プリン」というコミックバンドをやっており、二〇一三年七月の参院選では自民党の比例区から出馬し、落選している。
鳴り物入りでスタートしたネット公募で選ばれたのは、すでに世間からダメ出しを食らった人物だったというオチ。
党選対幹部はアイドルグループAKB48を例に出し、「有名人が候補者になるのではなく、候補者になったから有名人になるんだ」と説明したという。AKB48が政治のまねごとをやるのではなく、いまや政治がAKB48のまねごとをやっているのだ。アホにしても限度がある。
世論や民意を利用する政治家
巷では連日のようにネットによる世論調査の結果が垂れ流されている。しかし、そこで扱われる数字の多くは意味がない。ネットでは必然的に回答者が偏るし、母集団の質もほとんど考慮されていない。
ネットアンケートを行うテレビ番組も増えたが、回答するのは視聴者だけであり、番組の内容により当然、回答の傾向は異なってくる。
要するに、ネットから世論を抽出するのは無理なのだ。
一般的な世論調査とネット上のそれでは大きな差が出ることが多いが、情報弱者やネトウヨはそれをもって「われわれは騙されている」「大手メディアは情報操作をしている」「ネットには真実が流れている」と騒ぎ出す。こうした「ネットの声」に翻弄されているのが今の時代である。
ネットで一番強いのは暇なバカである。
そこでは、人間のもっとも薄汚い感情が野放しになっている。怨恨、嫉妬、妄想、悪意……。さらに正義感が重なることで、生贄に対する集団リンチが発生する。こんな連中の相手をするほうも悪いのだ。
ネットでは自分の世界観を補強してくれる情報をピンポイントで集めることができる。こうして知的に武装することで、万能感、自己肯定感が高まっていく。過剰な情報により、世界がますます狭くなる。こうしてネットではバカがより凝縮されたバカになり、より居丈高になっていく。
結果、書籍の口コミサイトでは、読まずに書いたとしか思えないコメントが並ぶようになり、グルメの口コミサイトでは、ロクでもない料理屋が上位にランクインし、真っ当な店はどこの誰かもわからない奴に誹謗中傷される。そもそも、こうしたレビューを投稿しているのは、平気な顔をして料理の写真を携帯電話で撮るような連中だ。「ネットの声」など、この程度のものである。
ウォルター・リップマン(一八八九〜一九七四年)は、ジャーナリズム論の古典『世論』でこう述べる。
「公共の事柄に対する意見は社会の正常な成員によるものだけではないし、また選挙、宣伝、支持者集団のためには数が力となるものであるから、注意の質はなおさらに低下する。読み書きのまったくできない人たち、精神薄弱者たち、たいへんに神経質な人たち、栄養不良の人たち、欲求不満の人たちからなる大衆の数は相当に大きい」
こうした連中を扇動し権力を握るのがデマゴーグであり、それに類する政治家だ。リップマンは世論や民意を利用する政治家を警戒した。
「なぜなら、あらゆる種類の複雑な問題について一般公衆に訴えるという行為は、知る機会をもったことのない大多数の人たちをまきこむことによって、知っている人たちからの批判をかわしたいという気持から出ているからである」(同前)
情報は操作され、制限され、屈折する。複雑な事象は二項対立に落とし込まれ、判断能力が欠如した人々に呈示される。
権力と世論の結託が全体主義を生み出すなら、世論とすら呼べない「ネット世論」に判断を委ねるのは、ほとんど狂気の沙汰である。
リップマンは「引きこもっているばかりの人たち」に意見を求めてはダメだと言う。
まさに今、ネット世界に引きこもっている人たちに、「正邪」の判断が委ねられようとしているのだ。
拍車をかけた郵政解散
女房の出産入院中に不倫していた宮崎謙介、未公開株をめぐる金銭トラブルを起こした武藤貴也、「マスコミを懲らしめる」発言の大西英男、国会をさぼり秘書と旅行に行った上西小百合……。彼らの共通項は公募議員である。なぜ公募で集まる人間はクズが多いのか?
実は公募制度の乱用とネット世論の過大評価という現象は密接な関係がある。
かつての政党の候補者は、地元で当選を重ねた地方議員や議員秘書、支持団体の推薦者、官僚OBが多く、人品や立ち居振る舞いがある程度見えていた。
しかし、一九九二年に日本新党が議員の公募を始めると、他党も追従。八党派連立の細川政権下では衆議院小選挙区比例代表並立制が導入されたが、そこでは基本的に上位二政党の戦いになる。政治家個人の資質より党のイメージ戦略が重要になるので、ポピュリズムが急激に政界を汚染した。また、政治資金規制法改正により、党中央にカネが集まり、権限が拡大した。こうして公募制度による恣意的な公認が横行するようになり、話題づくりにすぎない人物、良識のかけらもない人物が政界にもぐり込むようになった。
こうした流れに拍車をかけたのが小泉政権だろう。
二〇〇五年、郵政民営化関連法案が参議院で否決されると、小泉は「郵政民営化に賛成してくれるのか、反対するのか、これをはっきりと国民の皆さまに問いたい」と言い、衆議院を解散した。職業政治家の判断を無視し、素人の意見である世論に判断を委ねたのだ。
小泉は、反対派の議員に「抵抗勢力」とレッテルを貼り、公認を拒み、即席の公募で集めた候補者を「刺客」として選挙区に送り込んだ。
小泉は「自民党をぶっ壊す」と息巻いたが、自民党と一緒に議会主義も良識もすべてをぶっ壊したのである。
逆に言えば、この二〇年にわたる改革の乱痴気騒ぎにより、政党は国民の声をくみ上げるシステムを見失ってしまった。彼らは自らの役割を放棄し、ついには発狂してネット世論に飛びついた。政治がもっとも警戒しなければならないのは、顔が見えない世界であるにもかかわらず。
ネットはデマやプロパガンダの温床であり、悪意に火をつけるのは簡単だ。さらには架空の敵をでっち上げることも容易にできる。
問題は現在進行中の「新しい形の大衆扇動」が何を生み出すかだ。
政令指定都市である大阪市が住民投票により解体直前まで追い込まれたのは記憶に新しい。思考停止した社会はナチズムやスターリニズムに行き着いたが、二一世紀においては、ネット世論から悲劇が発生するかもしれない。
(※話題のベストセラー『安倍でもわかる政治思想入門』本文一部抜粋)
著者略歴
適菜 収(てきな・おさむ)
1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。ニーチェの代表作『アンチ・クリスト』を現代語訳にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『日本を救うC層の研究』、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(以上、講談社)、『死ぬ前に後悔しない読書術』(KKベストセラーズ)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)など著書多数。安倍晋三の正体を暴いた渾身の最新刊『安倍でもわかる政治思想入門』(KKベストセラーズ)が発売即重版。全国書店、Amazonにて好評発売中。
写真:アフロ/時事通信フォト
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