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安倍首相「真珠湾訪問」は、中国ロシアを牽制する絶妙の一手 日米ハワイ会談の正しい読み方
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50421
2016.12.09 長谷川 幸洋 ジャーナリスト 東京新聞・中日新聞論説副主幹 現代ビジネス
■日露交渉にも影響アリ?
安倍晋三首相が12月26、27日にハワイを訪れ、オバマ米大統領と会談する。首相は「日米和解の価値を象徴する機会にしたい」と語り、マスコミもそのまま報じた。だが、それだけだろうか。私はロシア、中国との関係に注目する。
発表は突然だった。5日午後7時前、安倍首相が記者団の前に立って、真珠湾訪問について「犠牲者の慰霊のための訪問だ。二度と戦争の惨禍を繰り返してはならないという未来に向けた決意を示したい」と意図を説明した。
ハワイ訪問は、かねてから可能性が指摘されていた。首相の昭恵夫人が8月に真珠湾を訪れ、献花していた経過からも「いずれは首相本人も訪問するのではないか」という観測が強かった。問題はそのタイミングである。
15、16の両日にはロシアのプーチン大統領が訪日する。その直前に突然、意表を突く形で日米会談を発表したのは、ロシアを牽制する狙いもあったのではないか。
というのは、ここへきて「日ロ首脳会談で北方領土交渉の進展は難しい」という観測が強まっていたからだ。
たとえば、プーチン大統領は11月20日、ペルーのリマで会見し、平和条約締結後の歯舞、色丹2島返還を明記した1956年の日ソ共同宣言について「どのような根拠で、だれの主権の下に置かれ、どのような条件で返還するか書かれていない」と指摘している。
一方で、大統領は北方領土における日ロの共同経済活動について「首相と話し合った」と述べ、経済協力を優先したい意向を強くにじませている。
次いで大統領は12月2日、ロシアを訪問した岸田文雄外相との会談に2時間近くも遅刻したうえ、会談自体もわずか30分で終わらせた。通訳を交えているから、実質は双方が片道15分の会談だ。
首脳会談を控えた最後の意見調整だったのに、ほとんど「いまさら外相と相談する中身はない」と通告したも同然の扱いである。ロシア側の揺さぶり作戦という面もあるだろうが、冷たい雰囲気が漂っているのは間違いない。
■プーチン大統領、強気の理由
大統領がここへ来て強硬姿勢に転じたのはなぜか。それは米国の次期大統領にトランプ氏が決まったことと無関係ではないだろう。なによりタイミングが重なっている。トランプ氏の当選は11月8日であり、その直後から大統領の強腰が目立っているのだ。
もっと重要なのは、トランプ氏がロシアに対して融和的姿勢を示している点である。具体的には、中東でIS(イスラム国)掃討のためにロシアと協力する。その一環で、トランプ氏はロシアが支援するシリアのアサド政権の存続も容認する考えを示唆している。
中東に限らず、トランプ氏が対ロ関係全般を見直すとなれば、日米欧によるクリミア侵攻を受けた対ロ経済制裁も緩和される可能性が出てくる。そうであれば、プーチン氏が日本の経済協力欲しさに北方領土問題で慌てて妥協する必要はない、と判断してもおかしくない。
北方領土交渉に暗雲が垂れ込めてきたタイミングで、安倍首相がオバマ大統領との会談を発表したのは、プーチン大統領にあらためて「日米同盟の結束はこれほど強固」と見せつける狙いがあったのではないか。
もっと言えば「トランプ政権だけを相手にしようとしても、そうはいかない。日米は結束している。ロシアが孤立を防ぐには日ロの関係改善も不可欠なのだ」という強烈なメッセージを放ったのである。
さて、そうなると注目されるのは中国の出方だ。
■対抗に「中露会談」という可能性も
日ロの関係改善にもっとも神経を尖らせているのは、言うまでもなく中国である。
習近平国家主席が頼りにするのはプーチン大統領であり、中ロ両国は地中海や日本海で合同軍事演習を実施したり、たびたび首脳会談を開いて一枚岩の関係を世界にアピールしてきた。
日米欧が反中、反ロで動くなら、中ロは結束して対抗するという構図を作り上げてきた。そこへ日ロが北方領土問題と経済協力で接近すれば、中国にとっては相棒を奪われたも同然になる。だから、できることなら日ロの関係改善を邪魔したい。
そんな中国にいま切れるカードはあるだろうか。
私は中国が突然、中ロ首脳会談開催を言い出す可能性もあるのではないか、と思う。まさに日米首脳会談の裏返しである。日米が首脳会談でロシアと中国を牽制するなら、中国もロシアと首脳会談を開く。それによって中ロの結束をあらためて世界に示すのだ。
もし、そうなればプーチン大統領にとっては願ってもない展開だろう。なぜかといえば、自分の値段がつり上がるからだ。日米中の3ヵ国が「だれが1番、ロシアと仲良くなるか」を競い合う形になって、結果として自分の価値が高まる。
いずれにせよ国際情勢はトランプ大統領の誕生をきっかけに、水面下で激しい綱引きが始まった。ただし、人々の目に見える部分はほんのわずかしかない。各国首脳があけすけに自分の本音を語るのはありえないからだ。
たとえば、日本の内閣総理大臣が「オバマ大統領と会うのはロシアを牽制するためだ」などとは、口が裂けても言えない。そんなことを喋れば、プーチン大統領の気分を害して「百害あって一利なし」である。
■なぜマスコミは自ら指摘しないのか
私は9月9日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49669)から一貫して「日ロ首脳会談は中国牽制」というポイントを指摘してきたが、マスコミもいまごろになってようやく気がついたようだ。
たとえば、朝日新聞は12月4日付け2面で「安保連携で中国牽制狙う」と報じた。記事は「防衛省内にも『中国の動向を踏まえれば、ロシアとの関係は大事だ』との声がある」と紹介している。いかにも官僚に気を使って、おずおずとした感じがにじみ出ている。
官僚は「中国牽制が狙い」などとはとても言えない。それはまさしく政治の仕事である。それが真実なのだから、記者が自分の言葉でずばり書けばいいのだが、それができない。だれかがレクチャーしてくれないと、自信を持って書けないのだ。
それでは、読者に真実が伝わらないではないか。
念のために言えば、私は10月17日、ニッポン放送の番組『ザ・ボイス そこまで言うか』で中谷元・前防衛相にインタビューした際、中谷氏から「(日ロ首脳会談は)中国を牽制する意味もある」との発言を引き出した((https://www.youtube.com/watch?v=2QVllFcXguk、下記27分ごろ)。中国牽制論は私の勝手な推論ではない。
【長谷川幸洋×中谷元・渡辺周】ザ・ボイス そこまで言うか!2016年10月17日(月)
私からみれば、朝日の記事は「いまさら」である。日米首脳会談についても同様ではないか。
日ごろ「政府の監視が役割」と唱えるマスコミは、実は肝心な時に首相の話をオウム返しに報じている。そうではなく「政府が言えない本当の話」こそ、記者がリスクをとって踏み込んで報じてもらいたい。それが、もっとも大事なジャーナリズムの役割であるはずだ。
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