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昼下がりのサウナで「女性の壁」を妄想する 12月の夜、働き始めた妻が顔を曇らせた理由 企業の良い行いが子どもを幸せにする
http://www.asyura2.com/16/senkyo217/msg/291.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 12 月 09 日 00:40:41: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 


昼下がりのサウナで「女性の壁」を妄想する

遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」

103万円か、150万円か、問題はそこじゃない
2016年12月9日(金)
遙 洋子

ご相談

配偶者控除のこのたびの改正、これで女性は活躍できますか?(30代女性)

遙から

 配偶者控除が、103万円の壁から150万円の壁に引き上げられた。ただし夫の年収が1000万円以上の収入によって細かく条件つきで。控除額も数十万から数万円に極端に引き下げられる。

 はて。得なのか。損なのか。働く主婦には判定がつきにくい。まわりを見渡してみる。妻がパートで働いている夫が月給を100万円もらっているカップルがどれほどいるか。

その壁は本物か

 私の周りの現実は妻がパートで必死なところは、夫も低賃金で必死。互いに必死で生きている。また、夫の月収が100万円を超える経済力の妻は、私の見るところ、パートでレジ打ちしていない。

 控除額がもたらすお得感でバランスをとっていた夫婦は、今回の改正で働く意欲が増すだろうか。壁があるからそこで収入を抑えるのではない。どうせそう稼げないのなら最もお得なラインで働きましょう、が、その判断ではなかったのか。

 壁が150万円になったから、もっと働くぞ、となるとは私には思えない。150万円まで働いたところで、これまでのような得な控除額にはならない。なら、働く意欲そのものを失わないか。そっちのほうが心配だ。

 もともと、夫が高額収入なら妻はよほど自立心旺盛なタイプかキャリア組じゃないと働かない。もっと稼げるマーケットがそこにあるなら、女性は控除額や夫の収入など関係なしに我が儲けとばかりに働くだろう。

 女性の活躍を阻害しているのは、壁、なんかじゃない。その先に待つ、うま味のなさ、だ。

 一日5時間労働を8時間労働にしたところで、数万円増えて、結果、数万円の控除がなくなる。この、どこに、働くモチベーションアップの仕掛けがあるというのか。

 女性でも年収1000万円以上が普通に狙える経済構造なら、女性はパートにしがみつくだろうか。

 それが不可能と見た女性の中には、年収1000万円以上の夫確保へとそのエネルギーを費やす者もいる。いまだ結婚マーケットは女性の経済力の代替案として活気づいている。

 そうして幸せな生活を手に入れる人もいる。しかし、なんだかおかしなことになっている人もいるようだ。

 そんなことを思わせる“富裕層”の主婦たちと出会った。

フィットネスクラブにて

 それは、とあるホテルの中にある、高額会員制フィットネスクラブという場所だった。

 女性フロアで交わされている会話は、宿泊客として割安料金で利用している私を辟易とさせる。

 豪奢なドアを開ける前から、ドア越しに聞こえてくる大きな声。

 「このバッグ、1万円のを8千円で買えるの!買わない!?」
 「きゃー。いいじゃない」
 「領収書も出せるわよ」
 「いらない。いらない。領収書なんて!」

 ・・・高級感と上質な空気を台無しにする、たたき売りトークの裏に見える虚栄心。

 平日の日中、高級フィットネスクラブに来れるほどの経済力のある妻たちトーク。だが、2000円の安さを声高に売るほうも、買うほうも、とうてい“富裕層”とはほど遠い。そもそも、フィットネスクラブは売買の場ではないし。

 「領収書も出せる」とは、「経費で落とせる」発想で、「いらない!」は、「そういう会計はしていませんから、うちは」という見栄。

 「〇〇百貨店の外商は入っている?」
 「〇〇百貨店は、入ってないわ」

 そんな会話からは「我々はわざわざ百貨店に買い物に行く層ではなく、外商を呼ぶクラスよね」という互いの認証があり、「〇〇百貨店は入ってないわ」というエクスキューズは、ほかの百貨店の外商の出入りをにおわせる。

 が、もし本当に入っていれば、「〇〇は入ってないわ。私は△△百貨店専門なの」くらいは言いそうな流れだが、そこに言及しない主婦のところにはおそらくどこの外商も来ていないと推察されるが、そんな駆け引きもコミコミで会話は続く。

雑誌で新聞で

 私は雑誌で顔を隠しながら薄暗いリラクゼーションルームで、沈鬱な気分でその女性たちの声高なフロア中に広がる、いや、あえて広めている自慢、特権意識に、耐える。

 が、そういう女性たちの一人がリラクゼーションルームに入ってきた。そして薄暗い中でもわざわざ雑誌と私の顔の隙間の空間からのぞき込む。挨拶から始め、何かの会話をしようとし、私を品定めする。私は挨拶の段階から無視する。

 翌日のリラクゼーションルームでは、新聞紙で顔を隠した。だが、別の女性がのぞきにくる。

 それは私が遙洋子だからではない。自分たちのテリトリーに、会員ではない"誰か"が来た。仲間にするか否かの品定めが始まったのだ。新聞という広く大きな紙で顔をおおっても、その隙間から挨拶を装って品定めに来る。それを防御しようと、私はわざと新聞紙を両面に大きく開いて、その女性との間に紙の壁を作り遮蔽した。

 高級会員制フィットネスクラブは、ラグジュアリーな空間と充実した施設にふさわしい、リラックスできるスペースであってほしいと願うばかりだが、現実は何とも滑稽なことになっている。

 ある日、私が遙洋子だと気づいた女性がいた。取って返した女性がそのことをお仲間に告げると、まず「騒ぐ人」が現れ、続いて「挑む人」が現れた。

 騒ぐタイプは配慮なく騒ぎ、騒げば騒ぐほど、今まで自分が主だと自認していた女性は、陣地争いのライバルが現れたとでも言わんばかりにこちらにちょっかいを出してくる。

 こちらはただただゆったり過ごしたいだけなのだが、そういう気配は残念ながら感じ取っていただけない。

サウナの主

 このときは唐突に「サウナの入り方」についてまくし立てられた。

 公衆浴場で時たま出会う、サウナ牢名主のような女性が、高級フィットネスクラブにもいた。

 「ここのサウナはこう入れ」と一方的に命令することで、このサウナの主が誰であるかを示そうと意気込んでいる様子だが、ええと、私、このサウナを我が物にしようという野望など、つゆほどももっていないのですけれど。

 私がサウナを出て、身体を拭いている間も、そのご婦人は「2000円安い!」と、バッグを売りにフロアを歩き回っている。

 そんな騒々しいフロアの中で、一角だけかろうじて静けさを保っているスペースがあった。海外からの宿泊客が、公共の場らしく静かに語り合い、お行儀よく過ごしている。攻め込むはずの「バッグ売りの熟女」は、どうやら英語は得意ではないらしい。

 海外のホテルでもフィットネス施設やサウナを利用してきたが、新聞で顔を隠すわずかな空間にまで顔を突っ込み、相手の品定めをするような行為をされた経験はない。「サウナは私のように入れ」と命令されたことも、バッグを売りつけられそうになったこともない。

 大丈夫か、日本の高級フィットネス&サウナ。

 もちろん、この「サウナ体験」で日本の問題点を語り尽くそうなどとは思わないが、私の頭の中には勝手な「サウナ妄想」がわいてきた。

 …そのご婦人は、若かりし頃、外で頑張って働いてもたいした収入にならないという壁に直面した。そして経済力のある夫を掴まえるべく多大なエネルギーを費やし、見事にゲットした。昼下がりのサウナは彼女にとって“虚栄心の砦”だ。しかし、サウナの独占は難しい。同じく夫選びで成功を勝ち取った女性たちもやってくる。自分の居所がなくなるのは困るが、お仲間同士、一緒になって砦を占拠するのも悪くない。見栄の張り合いは少々面倒だが、そこは割り切ってやりすごす。問題は余所者の侵入だ。我々成功女性の砦を守るのに"いつもは見ない顔"のチェックは欠かせない…。

 …だから私は新聞を剥がされ、サウナの入り方を説教されることになったのか…。

立ちはだかったのは

 サウナ妄想は続く。では、どうすれば新聞を剥がされずに済むのか。

 サウナ妄想のそもそもに立ち返ってみる。彼女は「外で頑張って働いても大した収入にならないという壁」に直面した。

 改めて、間違ってはいけないのは、彼女の前に立ちはだかったのは「103万円の壁」でも「150万円の壁」でもない。「女性が活躍できる仕組みが整っていない」という壁であったということだ。


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このコラムについて

遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」
 働く女性の台頭で悩む男性管理職は少なくない。どう対応すればいいか――。働く男女の読者の皆様を対象に、職場での悩みやトラブルに答えていきたいと思う。
 上司であれ客であれ、そこにいるのが人間である以上、なんらかの普遍性のある解決法があるはずだ。それを共に探ることで、新たな“仕事がスムーズにいくルール”を発展させていきたい。たくさんの皆さんの悩みをこちらでお待ちしています。
 前シリーズは「男の勘違い、女のすれ違い」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/213874/120700039

 
12月の夜、働き始めた妻が顔を曇らせた理由

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」

2016年12月9日(金)
山本 直人

再就職でイキイキとした妻

 12月になると、何かに煽られるように慌ただしい気分になる人は多いだろう。そして、一年を振り返ってしみじみすることもあるかもしれない。

 いまのGさんにとっての12月は、圧倒的に「しみじみ」だ。50代前半だが、勤務する金融機関ではグループ会社に出向している。同期では、まだ本社で「最後の直線レース」に賭けている者もいるが、Gさんは今の環境に満足だ。

 そのきっかけになったのが、数年前の12月のできごとだ。

 その年の春、Gさんの妻S子さんは仕事を再開した。2人は職場結婚だったが、出産を機にS子さんは退職。転勤も多い会社だったし、当時はそれが「常識」という感じでGさんには抵抗はなかったし、S子さんにも不満はなさそうだった。

 それから20年以上が経ち、一人娘が大学に入ったのを機会にS子さんにもかつての同僚から声がかかった。最近はかつて働いていた社員を再雇用する動きがあり、職場に復帰している人も段々と増えていたのだ。

 契約社員だし、勤務先はグループ会社だがS子さんはすぐに決断した。何よりも復帰した友人たちが、みんな元気そうだったことが決め手だった。

 S子さんの復帰は、Gさんにとっても嬉しかった。そして、もっとも喜んだのは娘だった。「女性でもずっと働く」ことが当たり前の時代に、母親の働く姿はとても頼もしく見えたらしい。

 そして、S子さんはイキイキと働いて、ちょっと忙しくなった毎日を楽しんでいるようだった。

 ところが、その年の12月にちょっとした「事件」があった。

 その日は金曜日で、GさんもS子さんも、それぞれ職場の忘年会だった。先に帰ったのはGさんだったが、S子さんも程なくして帰ってきた。

 お互い、そんなに酔っていたわけではない。夜のニュースを見ながら、お茶を飲み、世間話をしていたらS子さんの様子が途中で変わった。なんか、不機嫌になったように感じられたのだ。

(何か変なこと言っちゃったかな……)

 気になったGさんだったが、その日はそれ以上気にすることもなかった。

何気なく口にした「楽しいラクな職場は、いいよなあ」

 ところが翌朝になってもS子さんの様子がおかしい。長年一緒にいれば、時にはそういうこともあったし、Gさんは取り立てて気にしなかった。ところが、日曜になって娘から話しかけられた。

「お父さん、ちょっといい?」

 S子さんが近所に出かけている間を狙ったようだった。そして、その話はS子さんの「不機嫌そうな様子」についてのことだった。

 娘は、「お母さんの気持ち」をGさんに伝えようと思ったのだ。

 どうやら、金曜日の夜にGさんが何の気なしに言った言葉が「原因」だという。それは、S子さんの仕事についてのことだった。

「楽しいラクな職場は、いいよなあ」

 忘年会帰りで楽しそうなS子さんを見て、何気なく口にした一言だった。ただ、S子さんの心には“引っかかった”。自分としては「第二のキャリア」として、それなりに懸命だったからだ。

 長いブランクの間に、社内のルールも雰囲気も変わり、専業主婦時代に遅れてしまったパソコンのスキルも身につけなくてはいけない。そうした苦労をしながら、ようやくたどり着いた年末だったのだ。

 それなのに、夫は「楽しくてラク」としか見てくれない。それが悔しかったのだ。

 娘は、Gさんに対してこんな風に言った。

「お母さんだって、いろいろ頑張って、ちょうどホッとしてたんだよ」

 別に父を責めることもなく、さりげなく母の気持ちを伝えるその姿にGさんは思わず胸を打たれたという。

「じゃあ、今年はどこかに2人で行けば?」

 ところが、娘の「おせっかい」はそれだけで終わらなかった。

 その日の夕食は、久しぶりに親子3人だったのだが、やたらと多弁だ。若い頃はクリスマスをどう過ごしたのか?などと訊ねてくる。

 じゃあ、お前はどうするんだ?と問い返したい気分を抑えながら、Gさんはいろいろと思い出していた。

 ふと気づくと、S子さんの機嫌も直っているようだ。いろいろと話していたら、娘が言った。

「じゃあ、今年はどこかに2人で行けば?」

 娘が高校に入った頃から、クリスマスというイベントからも疎遠になった。Gさんにとっては、「忘年会もないから帰宅する日」のようなものだったのだ。

 せっかくだから2人でどっか行きなよ、私がいい店探すよ、今からでもネットで予約できるし、と指をスマートフォンに走らせる。

 「ここでいい?」と彼女が示したのは、帰宅途中の駅の近くにあるこじんまりしたイタリアンだった。もうこうなると、断るわけにもいかない。

「じゃあ、席だけはとっておくから、後はよろしくね」

 こうして、久しぶりに2人きりのクリスマスイブを過ごすことになったのだ。


「仕事ができるって、本当にありがたいのよ」

 店に行ってみると、思ったよりもいろいろな客がいた。若いカップルはもちろんだが、年老いた夫婦とその娘夫婦と思われる人たちもいる。そして、Gさんたちのような年頃の夫婦もいるのだ。

「来てよかったわね」

 「あの子に感謝しなきゃ」と言いながらすっかりリラックスしたS子さんは、本当に嬉しそうだ。

 食事をしながら、話はS子さんの仕事のことになった。忘年会の夜のことには敢えて触れなかったが、そこはお互いにわかっている。

 Gさんにとって意外だったのは、S子さんの仕事に対する思い入れだ。いまの彼女の仕事は比較的定型的だし、「家にいるよりは……」くらいの気楽な気持ちで働きだしたと思っていたのだ。

 ところが、S子さんはここ何年か「働くこと」をずっと考えていたし、実は出産を機に退職した後も、「もし、辞めなければ……」というちょっとした後悔もあったという。

 ただ、会社に残ってキャリアを重ねた同僚がいたわけではないし、学生時代の友人もS子さんと同じような環境だった。

 ところが、娘から強い刺激を受けたのだという。

 高校に入った頃から大学受験を意識して、当然「将来のこと」についてもあれこれ思いをいたす。どんな仕事に就きたいか?と考える中で、S子さんの会社員時代についても聞くようになった。

「お母さんの働く姿、見てみたいな」

 その一言が、S子さんの気持ちを動かしたのだ。

(俺は何も知らなかったんだな……)

 そんなGさんの気持ちを見透かすように、S子さんは言った。

「きっとわからなかったでしょうね。でも……」

 一息つけた後、笑顔で続けた。

「別に、ものすごくやりがいがあるって程じゃなくても、仕事ができるって、本当にありがたいのよ」

 そして、この時の言葉がその後のGさんの決断につながった。

どんな仕事も大切な仕事

 その頃のGさんは、迷っていた。本社勤務だったものの、キャリアのゴールはもう見えている。同僚がグループ会社や取引先に出向するのを見ながら、「次は自分」という見当はついていた。

 早目に動いて、自分から行き先を見つけるような社員も多い。だが、Gさんは動けなかった。

 その理由は、何となくわかっていた。簡単に言ってしまえば、プライドだ。自分で上手に畳めないプライドなら、誰かに潰された方がいいだろう。そんな感覚だったのだ。

 あの忘年会の日も、決していい気分ではなかった。年末の慌ただしい中、段々と自分が仕事のラインから外れていることを感じ始めていたのだ。

 ところが、イブの日の妻の言葉でハッとした。「仕事ができる」ということは、それだけで感謝に値することではないか。Gさんは、大組織の競争の中で、仕事に優劣をつけて捉えていた。

「どこに行くにしろ、この先は“つまらない仕事”だろう」

 Gさんは、心の底でそう思っていた自分を恥じたし、改めて思い直した。どんな仕事も、大切な仕事なんだ。そう自分に言いきかせたら、プライド云々は二の次に思えるようになり、出向先の仕事への“違和感”も失せた。そこで、「どうせなら」と正月明け早々に自ら動いて、4月には出向が決まったのだ。

 そして2年後に、Gさん夫婦にとってはとても嬉しいことがあった。娘が就職し、しかも金融機関を選んだのだ。

 激変期を経験して、「もう子供たちにこの業界は薦めたくないよ」と言う同僚は多い。しかし、娘はこう言ってくれた。

「お母さんもお父さんも、楽しそうに働いてるし」

 「お父さんも、は付け足しだろ?」と言いそうになったが、その一言は最高のプレゼントだった。

 だから、Gさんにとって12月は「しみじみ」の季節なのだ。あの夜以来、毎年通っているイタリアンの店とはすっかり馴染みになった。

 今年も、クリスマスイブが楽しみだ。

今週の棚卸し

 キャリアを重ねるにつれ、責任ある仕事を任されるようになる。ただミドル以降に、多くの人は転機を迎える。仕事の大きさや働き甲斐自体が、ジワジワと「収まるべきところに収まる」ようになっていく。

 一方で、かつて退職を余儀なくされた女性が、子育てがひと段落した後などに仕事を再開して頑張っていることも多い。雇用形態や任されている業務はさまざまでも、自分の仕事を大切にして、充実している人も増えてきている。

 働き方は違っても、やはり仕事を持つ家族との会話が、自分にとっての仕事のあり方を見つめ直すいい機会になることもある。冬休みもあり、顔を合わせる時間が増える12月は、そうした振り返りにもいい季節ではないだろうか。

ちょっとしたお薦め

 いまでもクリスマスシーズンになると必ず耳にする曲の1つが山下達郎の「クリスマス・イブ」だ。そして、彼が1人で多重録音という方法でアカペラに挑戦した「ON THE STREET CORNER2」には、「きよしこの夜」「ホワイト・クリスマス」というクリスマスソングの定番も収められている。

 懐かしさにひたってもいいし、家族みんなで楽しむこともできる。豊かな声に耳を傾けてみてはいかがだろうか。

このコラムについて

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」
50歳前後は「人生のY字路」である。このくらいの歳になれば、会社における自分の将来については、大方見当がついてくる。場合によっては、どこかで自分のキャリアに見切りをつけなければならない。でも、自分なりのプライドはそれなりにあったりする。ややこしい…。Y字路を迎えたミドルのキャリアとの付き合い方に、正解はない。読者の皆さんと、あれやこれやと考えたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/032500025/120500019/


 


企業の良い行いが子どもを幸せにする

インタビュー

対談・YKK 吉田忠裕会長CEO×キッザニア創業者 ハビエル・ロペス氏
2016年12月9日(金)
河野 紀子
仕事のロールプレイを通して、働くことの楽しさを子どもに伝えるエンターテインメント施設「キッザニア」。1999年にメキシコで生まれ、現在は世界19カ国で展開している。創業者であるハビエル・ロペスCEO(最高経営責任者)は、子どもだけでなく高齢者や障害者も集う仕組みを作り、企業として「良いこと」をし続ける重要性を強調する。

一方、YKKの吉田忠裕会長CEOは、ものづくりの楽しさを伝えるイベントやサッカー大会の協賛などを通して、子どもが社会で能力を発揮できる環境作りに取り組み続けている。

共に米ケロッグ経営大学院の同窓である2人が、子どもが夢や目標を持って育つためにはどうすればよいか、親や企業、社会のあり方について語る。

(まとめ:河野紀子)

YKKの吉田忠裕会長CEO(最高経営責任者、写真左)とキッザニア創業者のハビエル・ロペスCEO(写真:秋元忍)
吉田忠裕会長CEO(以下、吉田):キッザニアは1999年の創業。現在は世界19カ国、24カ所で運営しています。ハビエルさんはキッザニアをどのようなコンセプトで始めたのですか。

ハビエル・ロペスCEO(以下、ロペス):まさにインスピレーションでした。私がメキシコのGEでプライベートエクイティの仕事に携わっていたとき、友人から「子ども向けデイケアの分野で新しいビジネスをやりたいから、提案書を見てほしい」と頼まれたのです。内容を見て「これはうまくいかないんじゃないか」と言ったのですが、並んでいる項目の中で唯一良いと思った点がロールプレイでした。

 友人が示したこのアイデアが、キッザニアを創業するきっかけになったのです。ロールプレイは子どもが成長する良い機会になるのに、真剣に取り組んでいる企業がありませんでした。

吉田:私たちYKKは、子どもが持つ能力を実社会でどう発揮させるかを考えています。一例として、全日本少年サッカー大会を協賛しています。

 小学生の時期に、スポーツをはじめとする色々な経験をさせるのは素晴らしいことです。キッザニアは、仕事に関わるエンターテインメントを子どもたちに与えています。ビジネスとして実行したのはすごいことだと思って、関心を持っています。


YKKの吉田忠裕会長CEO(写真:秋元忍)
ロペス:私たちは「子どもたちが将来なりたい職業」を、4〜5年ごとに国際的に調査しています。あるとき、女子のなりたい職業に「獣医」が入りました。それまでキッザニアには獣医の仕事を学べるプログラムがなかったので、用意しなければと思いました。男子ではサッカー選手などのスポーツ選手に人気があります。スポーツから学べることは多いですよね。

吉田:子どもが学校で学ぶことは素晴らしい。ですが、それに加えて、個々人が持つ色々な興味を実際にぶつける場があるのが良いと思うのです。

ロペス:そうですね。キッザニアは設立以来、エンターテインメントとともに教育を提供する場となることをミッションに掲げてきました。子どもにとっては、楽しい場所であることが大事。一方、大人は子どもに価値ある経験を与えたいと思っていますから。

 キッザニアの教育は3つの柱から成り立っています。まず、実際に実行すること。その道のプロの経験、国際社会との関係や政府・環境のことまで、実際に子どもが関わるプログラムを通して、幅広く学べるようにしています。

 次に将来使えるスキルを教えることです。技術が発展し、パソコンは1人に1台の時代になりました。その一方で、社交性を高めたり、交渉のスキルを学ぶ機会が減少していると思います。これらのスキルを磨いていかなければなりません。

 さらに子どもには良い価値観を与えるということ。時代がどんなに変わっても、変わらない価値観を子どもと一緒に考えて、選んで、学びに取り入れています。


キッザニア創業者のハビエル・ロペスCEO(写真:秋元忍)
親が楽しんで働く姿が大事

吉田:日本には「親の背中を見て育つ」という言葉があります。仕事に対する親の姿勢は子どもに伝わるので、いかに楽しんで仕事しているかを子どもが幼いうちから見せておくことが、人格形成の上で非常に大事だと思います。

ロペス:私もそう思います。キッザニアは教育者になるつもりはありません。既に家庭と学校がありますから。我々はこれらと対立する気はなく、これらを補填する存在でありたいと考えています。

 キッザニアの特徴は、楽しみながら、そして実行しながら学ぶことです。楽しんでいるときこそ、学びは速いのです。

 もう1つ大事なことは、子どもの独立性です。キッザニアは、全ての判断は子ども自身にしてほしいと思っています。子ども自身が「これをやりたい」と決めて、親は「うちの子はこんなことに興味があるのだな」と気づく。親は、科学や芸術など、子どもが持つ好みや傾向を幼い時から把握することが大事です。

 親の役割を見た時、日本のキッザニアは、他の国と異なる特徴があります。それは親が子どもを率先してキッザニアに連れて来ている点です。キッザニアの価値を理解しているので、自分の時間を投資して、子どもを連れていくのでしょう。

吉田:私には4人の娘がいます。小さいころから楽しく育てようとしてきました。同じ環境で育てていても、それぞれが持つ興味・関心は違います。それが本当にその子の好きなことなのか、辛抱強く見ていないと分かりません。子どもが幸せになるために、アドバイスしたり、何かを見せたりする。そういった習慣は、コトラーの言うマーケティング理論につながると思います。

ロペス:多様な選択肢を与えると、子どもはさらにより良い機会に恵まれます。

 キッザニアが色々な国に進出していく度に、学びがありました。最も大きかったのは、自分たちだけでやろうとしてはいけないということです。キッザニアは各国の企業と組み、そこから地域の特性、ビジネスマナーを学んでいます。

 ロールプレイというコンセプトはユニバーサルなもので、子どもが本能的に楽しめるものだと考えています。しかし、国によって体験させるパビリオンは異なり、各国に特化した業界の企業を入れています。例えば、同じレストランでの就業でもメキシコにはタコスのレストラン、日本ではすし屋といった形です。その国や地域との融合を重視しています。

若者の自信のなさは企業にも責任あり

吉田:日本の若者は諸外国に比べて、自分自身への満足度が低かったり、自信が持てていなかったりするといった調査結果があるそうです。私は理由の1つに、子どもが生まれてから物心つくまで、親の存在や意識が希薄になっていることがあるのではないかと思います。大元を治そうとするなら、親が子どもに対する時のあり方、ふるまい、意識、価値観を変えないとダメだろうと思います。親が「働くのは収入を得るため」「ちっとも楽しそうでない」と思っていたら、それは親を見ている子どもに伝わるでしょう。

ロペス:これは日本独自の問題ではなく、世界共通の問題です。10年以上前に初めて日本に来た時、「ニート」について知りました。実はスペイン語にも同じような言葉があります。先日、ニートはメキシコが世界で一番多いというニュースがありました。問題はまず家庭にあります。家庭で自信や夢をかなえようとする意識をはぐくむことが大事です。

 働くことの意義を子どもがきちんと理解していない現状があると思います。親が子供に「仕事に行ってくるね」と言うけれど、子どもは親がどこへ行くのか、あまり考えていないのではないでしょうか。それを学ぶのに、キッザニアは最適な場所です。

 キッザニアには「経済圏」があります。今、世の中にはクレジットカードやデビットカードがあり、お金を得るためには銀行に口座を作り、そこに給料が振り込まれることが必要です。そのために仕事をして収入を得る。キッザニアはそれを教えています。子どもは、お金の価値について、高い・安いしかわかりません。そのお金を得るために、どのくらいの努力や労働が必要なのか。例えばもっと余裕がある暮らしをしたければさらなる収入が必要だと、知るわけです。

 将来のための準備も必要です。最近新設しているキッザニアは中に大学を設置していて、ここで必要なことを学び、卒業証書をもらえば、さらに収入を得ることができると教えています。

 キッザニアには、働いて収入を得る場所とそれを使える場所があります。メキシコやインドネシアでは、入場した5割の子供が働いて、残りの5割がお金を使っています。ところが日本の子どもは皆働いて稼ぐばかりなのです。ですから、もっと使う方に誘導するようプログラムを変えたことがありました。日本の子どものそういう姿勢は、世界中の子どもが学んでほしいものなのですが。

 若者に元気がないのは、企業にも責任があります。世界中のCEOに、「会社の一番の資産は何か」と聞けば、人材と答えるでしょう。しかし本当にそう思っているのでしょうか。時間や努力を投入して、企業と従業員がウィンウィンの関係になるようにしていくことが大事です。会社の成長は、経済的なメリットを分かち合うこと、そして、仕事の楽しみを分かち合うことであるべきです。世界中が取り組むべき問題だと思います。

 私はかつて通っていた、ケロッグ経営大学院の商談のクラスで、ビジネスではウィンウィンの関係が大事だと学びました。キッザニアではその考えが生きています。子どもはロールプレイで学び、親は安全で楽しい学びを子どもに与え、仕事の価値やスキルを教える。スポンサー企業にとっては、入場者であるお客様と新しい接点を持つことができます。キッザニアが入っているショッピングセンターは、他との差別化を図れます。キッザニアはフランチャイズチェーンビジネスなので、フランチャイジーによいツールを与えて、ビジネスを展開してもらうといった具合です。

吉田:ウィンウィンの話に関連していえば、YKKには労働組合がないのです。従業員が株主、経営者、労働者の3役をしているイメージで、ウィンウィンウィンとなるようにしており、日本の中ではちょっと変わった会社ですよ。

ロペス:全ての企業が、従業員にもっと投資すべきでしょう。キッザニアはサービス産業で、人材こそが大切です。従業員を巻き込んで長く歩んでいきたいと思います。この点でYKKはお手本になります。


吉田会長CEOとハビエルCEOは、時期は違うが、米国のケロッグ経営大学院で学んだ。吉田会長は、学生が経営者と労働者に分かれてディベートするクラスに影響を受けた。YKKには労働組合がないが、学んだことを生かしているという
企業が始めた良いことが社会を変える

吉田:YKKは製造業で、ものづくりで価値を生み出すことを基本にしています。時代とともに材料や技術は高度になっても、その基本は押さえておかないといけない。こうした価値を分かってもらえるように、子どもたちや社会に発信していきたいと思います。

 ファスナーは1891年に米国で誕生しました。靴の紐を結ぶのが嫌だった人が生み出した発想が起源になっています。スライダーとエレメントとテープで面白い動きをします。こうした構造は早くになくなるだろうと思っていましたが、いまだに変わっていないんですよ。

YKKは東京・秋葉原にあるイベント施設「ものづくり館 by YKK」で、ファスナーを使った手芸などを学べる機会を提供。大人だけでなく、子ども向けのイベントもある(写真上)。今年10月には、キッザニア東京でファスナーの構造を伝えて、実際にポーチを作る「ファスナーウイーク」に協賛した
ロペス:実はキッザニアで、一番ポピュラーなアクティビティーが製造業なのです。手を動かして、ポテトチップスや飲料を製造するなど、自分の努力が商品になる。しかも、それを持って帰れる。そういう喜びをなくしてほしくないですね。

 今の子どもが将来に就く仕事の多くは、今はまだ存在しない仕事と言われています。だからどんな仕事が出てくるか、我々もわかりません。技術の変化が目まぐるしい中で、コミュニケーションや論理的な思考が大事です。また、技術や数学、英語など特化した教育に力を入れる中でも、忘れてはならないのは芸術などその他の分野です。様々なオプションを子どもに与えて、本当に自分が必要としているのは何なのかを見いだしてもらう。大人は、押し付けるのではなく、それをサポートするのだが役割だと考えています。

 キッザニアは、新しい職業を取り入れています。コンピュータープログラミングやアニメーションスタジオでの仕事、3Dプリントに関わる仕事などです。最近は事業家になりたいという子どもが増えてきたので、事業家養成プログラムを導入したところもあります。自分が会社を設立して、社会に貢献できるということを教えようとしています。

 社会貢献は、もらったものを返すという視点です。機会は全ての人に平等にあるのではありません。キッザニアは、得た収入をパートナー企業を介して恵まれない子どもに寄付するなどしています。


東京・豊洲にあるキッザニア東京では、中学生向けの特別プログラムを不定期で提供している。写真は資生堂によるスキンケア講座
吉田:企業として、社会の問題にアプローチしている姿勢がいいですね。全員が同じことをするのではなく、分担して社会を作っていくことが大事です。

 私は富山県の黒部という人口4万人以上の地方都市にいます。ここでの生活・社会を夢のパークにしたいと思っているのです。高齢者もいれば若者もいる。ある年齢まで仕事ができて、遊びの機会もある。そのためには社会全体がバランスよく組み立てられていないと難しいので、もっと楽しい街を作りたいと考えています。

ロペス:高齢化については、日本がメキシコよりも進んでいます。メキシコは別の問題も抱えています。高齢者や障害がある人を、家族が家に閉じ込めて外出させないようにしているのです。

 そこでキッザニアは、微力ながら2つの課題に取り組んでいます。1つは高齢者の雇用。その数は従業員2000人のうち10%を占めます。ただ、メキシコには高齢者の就労をサポートする仕組みがないので、働いてくれる人を探すのには苦労しました。障害者には入場を無料としています。キッザニアの中で健常な子供と障害児が交流し、皆が同じような経験してほしいと思っています。

吉田:キッザニアが実社会でいろんな役割を担い始めているのですね。子どもだけでなく、人生の大半を過ごしてもよいような…。それではキッザニアではなくなりますね(笑)。

 誰かがサンプルとして、良いことを始めないといけない時代なのでしょう。集団や個人が始めた良いことが展開されることで、社会が変わっていくだろうと期待しています。

ロペス:その通りですね。私たちキッザニアには「良いことをする」という長期的目標があります。

 長期的な目標がなければ、利益面などで短期的な目標を達成することはできない。少し成長できても、すぐに止まってしまいます。従業員が良いことに取り組むための教育などに投資できている企業はまだ少ない。今すぐ出る結果を出すことばかりに集中しています。こうした状況を変えなければ、10年後には、ほとんどの会社が事業を継続できなくなると思います。

 キッザニアは若い会社ですが、より良い世界を構築することにコミットメントしている。それを達成することが、我々のミッションだと考えています。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/120700066/?  

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コメント
 
1. 2016年12月09日 00:57:22 : 0CejVRban6 : urcdmA9xc1s[1091]
日経ビジネスの回し者ですか?

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