2016年12月3日(土) カジノ法案 審議6時間で強行 自民・維新と公明の一部 賭博解禁 社会悪そのもの 共産党が反対 衆院委 刑法が禁じる賭博場=カジノを合法化するカジノ解禁推進法案が2日、衆院内閣委員会で日本共産党や民進党が強く反対するなか、自民、維新と、公明の一部の賛成で強行可決されました。委員会審議が行われたのは、わずか2日間、約6時間だけです。(論戦ハイライト) http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-03/2016120301_01_1.jpg (写真)カジノ解禁推進法案を自民、公明1人、維新の賛成で可決した衆院内閣委員会=2日 委員会では各党の質疑終了後、自民党議員が採決を求める動議を提出。共産、民進両党が激しく抗議し騒然となるなか、採決を強行しました。公明党は、3人の委員のうち1人が賛成、2人が反対しました。 自民党は、同法案を週明けに衆院通過させ、残る会期中に参院で成立をはかる構えです。 これに先立つ同日の委員会質疑では、日本共産党の清水忠史議員が、全国紙4紙の社説がそろってカジノ法案を批判していることを紹介。推進派がカジノ解禁の「経済効果」をことさら強調していることについて「その正体は国民から所得や貯蓄を巻き上げることで、新たな価値や技術の発展を生み出すものではない」と述べました。「百害あって一利なし、カジノ解禁推進法案は断固廃案にすべきだ」と求めました。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-03/2016120301_01_1b.jpg (写真)質問する清水忠史議員=2日、衆院内閣委 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-03/2016120301_01_1c.jpg (写真)反対討論する池内さおり議員=2日、衆院内閣委 池内さおり議員は反対討論で、「カジノ解禁は暴力団関係者の関与、マネーロンダリング(資金洗浄)、治安の悪化、ギャンブル依存症の多発、青少年への悪影響など社会悪そのもの」としたうえ、「法案には一点も賛成できるところはない」と強調しました。 4野党が申し入れ 日本共産党、民進党、自由党、社民党の野党4党は同日午前の国対委員長会談で、衆院内閣委員会での同法案の強行採決に断固反対することを確認し、自民党の竹下亘国対委員長に申し入れました。 日本共産党の穀田恵二国対委員長は「メディアもいっせいに批判している。国民多数が反対している法案をたった2日の審議で強行するなど断じて許せない」と語りました。 政治の退廃のきわみ 今回のカジノ合法化論は、「国際観光産業振興」というお題目で、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)を開設するというものです。IRをつくれば、海外から富裕な観光客を呼び込み、地域経済も活性化し、財政も潤うという「バラ色の未来」を盛んにふりまいています。 彼らはカジノを解禁したい一心ですから、ギャンブル依存症の拡大、多重債務者問題の再燃、青少年への悪影響、犯罪の誘発、反社会的集団の介入など、カジノが必然的に巻き起こす社会的な悪影響は、無視するか、きわめて過小評価します。 一方で、「政府の厳格な管理下に置けばカジノから得られる利益は弊害より大きい」と言い張り、「経済効果」ばかりを強調します。 しかも、どんなカジノ規制策を実施しようというのかは、同法施行後に政府の責任でつくる「実施法」に先送りするとして、何も明らかにしていません。賭博の害悪を封じる効果的な対策など、あるはずがないからです。 良いことばかりを並べ、不都合な事実からは目をそらし、肝心の問題は先送りでごまかす―そんなやり方だから、結局、数を頼んだごり押しに頼るしかなくなっています。 カジノ推進派は、カジノ開設によって社会が壊れ、多くの国民が苦しめられようと、そんなことは関係ないという政治の退廃のきわみに立っています。今後、国民の批判が一層高まることは必至です。(竹腰将弘) http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-03/2016120301_01_1.html 2016年12月3日(土) 論戦ハイライト カジノ法案 百害あって一利なし 多重債務・失業 自殺・犯罪誘発 清水議員が追及 衆院内閣委 日本共産党の清水忠史議員は2日の衆院内閣委員会で、カジノ解禁推進法案について「社会的害悪をもたらすカジノ解禁は行うべきでない。百害あって一利なしだ」と追及しました。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-03/2016120303_01_1.jpg (写真)質問する清水忠史議員=2日、衆院内閣委 同日の全国紙4紙の社説はカジノ法案についてそろって批判しています。 清水 この指摘をどう受け止めるのか。国民の理解が深まっている認識があるのか。 法案提出者の岩屋毅衆院議員(自民) 国民的議論を深めていかなければいけないテーマだ。 国民理解が得られていないことを認めた岩屋氏。清水氏は「それならばなぜ採決を急ぐのか、とんでもない」と批判しました。 日本で賭博行為は刑法で禁止されています。その理由について、法務省は「勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらある」という政府の正式見解を答弁しました。 清水氏は、パチンコやギャンブルを要因とする犯罪件数が年間1702件発生(2015年)していることを警察庁に確認。そのうえで、次のようにただしました。 清水 カジノという新たな賭博を解禁すれば、依存症を原因とする犯罪をいっそう生みだすことになる。否定できるか。 提出者の小沢鋭仁衆院議員(維新) (カジノを中核とする)IR(統合型リゾート)をきっかけに、そういった問題にしっかり対応していくことが大事だ。 清水氏が「法案に既存のギャンブルへの対策があるのか」とただすと、小沢氏は「実施法の段階で対応策を考える構成になっている」と答弁。現在の法案では何も検討されていないことが浮き彫りになりました。 清水氏は「すでにギャンブル依存症は536万人いると推測され、多重債務、失業、自殺、犯罪を誘発し、社会的コストを大きく損ねている」と指摘しました。 パチンコ・パチスロの市場規模は23兆円。日本の成人全体の4・8%がギャンブル依存症の状態にあり、画一した治療法も研究段階にあるのが現状です。清水氏は、既に深刻なギャンブル依存症の対策こそ求められているのに、依存症対策だと言って逆に依存症を増やすカジノを推進するのはおかしいと批判しました。提案者の細田博之衆院議員(自民)は、依存症の深刻さを認めながら「政府に対して強く働きかける」と無責任な答弁をしました。 清水氏は「カジノはそもそも敗者をつくらなければ成り立たない」「国民を不幸にするカジノ賭博の解禁で経済成長をやろうなんて邪道だ」と批判し、廃案を求めました。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-03/2016120301_01_1.html 2016年12月3日(土) カジノ解禁推進法案 池内議員の反対討論 衆院内閣委 日本共産党の池内さおり議員が2日の衆院内閣委員会で行ったカジノ解禁推進法案に対する反対討論(要旨)は次の通りです。 本法案は「特定複合観光施設(IR)の整備」をうたいますが、本質は日本で許されなかった民間賭博=カジノを解禁しようというものです。 刑法は、刑罰をもって賭博を厳しく禁じています。「国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎をなす勤労の美風を害」し、「国民経済の機能に重大な障害を与える恐れ」(1947年11月22日、最高裁大法廷判決)があるからです。これをくつがえすカジノ解禁は許されない暴挙です。 社会悪もたらす カジノ解禁は何をもたらすか。暴力団の関与、マネーロンダリング、周辺地域の治安の悪化、ギャンブル依存症の多発、青少年への悪影響など、社会悪そのものです。提案者もリスクの発生を否定できませんでした。さまざまな対策を講じるためには莫大(ばくだい)な社会的費用を必要とします。カジノ事業者のもうけのために、社会悪を発生させ、莫大な公費を使う、これほどばかばかしい法案を私は他に知りません。 提案者は「カジノによって夢のような経済効果がある」といいます。しかし、シンガポールの例を繰り返すだけ。IR方式の施設の破綻は世界のあちこちで起きています。経済効果は何の根拠もありません。賭博を通じて巨大なお金が右から左へと流れ、カジノの胴元に巨額なてら銭が転がり込むだけです。 暴力団など反社会勢力がカジノ利権に食い込みを図ることは、火を見るよりも明らかです。マネーロンダリングの場となることも、世界のカジノの実態をみれば防ぐことはできないでしょう。 より深刻なのは、ギャンブル依存症の拡大です。わが国には、536万人のギャンブル依存症の患者がいることが明らかになりました。慢性、進行性、難治性で、放置すれば自殺に至る極めて重篤な疾患です。新たな依存症患者を生み出すことは許されません。提案者は、カジノ収益から出る納付金で対策を講じると述べましたが、新たな発生源をつくらないことこそ必要です。 賭博には敗者が存在します。大数の法則で必ず胴元が勝つ、ここにカジノ営業の根拠があります。日弁連が行った破産調査によるとギャンブルが原因とみられる破産者は全体の5%に上ります。カジノは多重債務者を作り出さざるを得ません。官民一体で行った多重債務者対策にも逆行するものです。 青少年への影響も深刻です。家族ぐるみで出かけるIRに公然と賭博場があることは、賭博への抵抗感を喪失させてしまいます。 政府は、カジノを中核としたIRを「成長戦略」の目玉に位置付けていますが、賭博によるあぶく銭を当てにした経済政策など、あまりに不健全、経済政策の退廃です。 日本観光の未来 日本は、額に汗してコツコツと働く、勤勉な国民性に支えられて現在の経済水準を獲得しました。一人ひとりの努力によって築き上げられた世界に誇る景観、文化遺産、社会の安全、ここに日本の観光の未来があります。 「健康で文化的な社会の基礎をなす勤労の美風」を害し、「怠惰浪費の弊風」を生じさせる本法案は決して成立させてはなりません。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-03/2016120304_02_1.html 2016年12月3日(土) 主張 カジノ法案の強行 この暴走はあまりにも危ない 刑法が禁じる賭博を合法化するカジノ解禁推進法案が衆院内閣委員会で自民、日本維新の会などの賛成多数で可決・強行されました。国民の間に広がる疑問や異論を置き去りにして、乱暴な議会運営や、わずか2日の審議による強引な採決によって、なにがなんでも延長した国会で押し通す―。暴走ここに極まれりです。 ギャンブル依存は深刻化 カジノ法案は、自民、維新などの議員提案です。法案提出者として委員会で趣旨説明した細田博之自民党総務会長は、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)を国内に設置することは「国際観光振興、地域振興、税収に資する」とのべました。カジノを解禁すれば、海外から日本を訪れる観光客が増え、にぎわうことで地方の経済が活性化し、税収も増えると「バラ色の未来」に描きます。 カジノ法案は、安倍晋三首相の「肝いり」でもあります。首相は2014年5月にシンガポールのカジノ施設を視察した後、「日本の成長戦略の目玉になる」と発言し、閣議決定した「成長戦略」にもカジノを盛り込み、関係各省庁から選抜した「特命チーム」にカジノ解禁に向けた検討作業までさせるほどの熱の入れようです。あまりに無分別ではないか。 カジノは、最も刺激的で、人をのめり込ませる「毒」をもつ賭博場です。反社会的勢力の介入、マネーロンダリング(資金洗浄)の横行、多重債務問題の再発、青少年への悪影響など、大きな弊害は枚挙にいとまがありません。 とりわけ深刻なのはギャンブル依存症です。日本は賭博を禁じている国なのに特例法で競馬、競輪など6種の公営賭博が行われ、社会問題を引き起こしてきました。 さらに、賭博でなく「遊技」という欺(ぎ)瞞(まん)的な扱いで行われているパチンコの存在によって、成人人口の4・8%、536万人の患者がいる(厚生労働省研究班の推計)と、すでに世界最悪のギャンブル依存症大国になっています。この上、新たにカジノを日本に上陸させようというのか。 国会審議で法案提出者は「カジノには厳格な規制を加える」、「カジノの収益を依存症対策にあてる」などと答えました。しかし、カジノをどう規制するのか、どのような依存症対策を行うのかなど具体的問題は、同法施行後1年以内に政府の責任で策定させる「実施法」の段階に丸投げです。 カジノ法案をめぐる暴走は、審議に時間をかけて国民の関心が集まり反対世論がさらに高まる前に、「カジノ解禁」の結論だけを「先食い」しようという、あまりにも国民を愚(ぐ)弄(ろう)したものです。 国民脅かす政治的退廃 カジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)の岩屋毅幹事長(自民)は「これ以上遅れれば内外の機運がしぼんでしまう」とのべました。日本につくられるカジノ市場への参入を狙う米国などのカジノ資本、その“おこぼれ”を求める財界、一部のカジノ誘致地方自治体などの突き上げをうけた推進派による、どさくさまぎれのカジノ合法化の暴走は、矛盾もはらんでいます。 「もうかるなら何をしてもいい」とばかりに国民の暮らしを脅かす政治の退廃を許さず、カジノ法案を廃案に追い込む世論と運動を強めることが求められます。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-03/2016120302_01_1.html 2016年12月3日(土) きょうの潮流 わが国で賭博を戒めた記述をたどると、「日本書紀」までさかのぼります。双六(すごろく)の禁止令。次の「続日本紀(しょくにほんぎ)」には、悪の道に迷い込み、家業を失い、孝道にも欠ける。よって固く双六を禁断せよと▽賭博に対する為政者たちの厳しい態度はその後も続き、江戸時代には各藩が目を光らせました。明治になると刑法で罰せられ、懲役の対象に。しかし敗戦後に統制は崩れ、競馬や競輪、競艇、パチンコと、日本は賭博大国になっていきました▽ギャンブル依存に詳しい精神科医で、作家の帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)さんの著書に教わりました。「ことギャンブルに関して、わが国は無法状態。国家自体がギャンブル依存に陥っている」。帚木さんは警鐘を鳴らします▽無間地獄。ギャンブル依存の恐ろしさを表すときによく使われます。やめたくてもやめられない、本人だけでなく家族や周りも巻き込み、犯罪をも誘発させる。破滅への道を広げるカジノ法案が、たった6時間の審議で衆院委員会を強行突破されました▽「安倍政権“カジノ解禁”でトランプにゴマスリ」(日刊ゲンダイ)。米次期大統領トランプ氏の大スポンサーで、世界一のカジノ王が日本進出を熱望している。だから恩を売るために早く成立させたい。そんな臆測を呼ぶほどの性急さです▽いくら経済効果を掲げても、ごく少数の莫大(ばくだい)な利益のために、膨大な人びとを苦しめるのが賭博です。国民を不幸にしてまでやりたいことを押し通す道理のなさ。それこそ権力に依存した者の救いのない姿です。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-03/2016120301_05_0.html
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