2016年11月30日(水) 主張 「カット法案」強行 年金への信頼失わせる暴走だ 安倍晋三政権と自民・公明の与党が衆院本会議で国会の会期を延長し、「年金カット法案」と批判されている国民年金法等改定案の可決を強行しました。先週末の厚生労働委員会での強行採決に続く暴挙です。与党は、参院に送付し成立させる構えです。年金は、若い時から保険料を払い続け、退職後は老後の収入の柱になる、人生設計にもかかわる大問題です。その支給の仕組みを変える法案を、十分な審議を行わず、「数の力」で押し通す政府・与党の姿勢は異常です。年金への国民の不信を高める問題だらけの「カット法案」は廃案にすることが求められます。 全世代の暮らしに影響 物価が上がっても、賃金水準が下がれば年金を減額する―。安倍政権が「カット法案」に盛り込んだ柱の一つです。これは、物価が上がれば年金額を減らさないという現在のルールの大転換です。 物価と賃金の両方が上がっても、年金額を抑制する「マクロ経済スライド」の仕組みの強化も導入します。物価も賃金も上がらなかった年の「抑制分」は翌年以降に繰り越され、年金の目減りが続くことになります。 年金を現在受け取っている人の暮らしに大きな影響を与えるのはもちろん、将来世代にも引き継がれる抑制の仕組みがどのような状況をもたらすのか、極めて切実な課題です。衆院の審議は、与党や厚生労働委員長の強引な運営の下で不十分なものでしたが、その中でも野党の追及でさまざまな問題が浮き彫りになっていました。 25日の参考人質疑では、全日本年金者組合、生活困窮者支援に取り組む団体の代表から、低年金の高齢者の暮らしの深刻さとともに、現在の若者世代の非正規・低賃金の雇用実態のままでは将来の年金受給がまともに保障されない危険などが次々と指摘され、「カット法案」を強引に推し進めることに強い異論・反対が表明されました。その数時間後に質疑を打ち切り、採決を強行した政府・与党のやり方は、国民の声に真剣に耳を傾ける姿勢とは正反対です。 法案では、賃金が下がれば年金額が減らされる新ルールの施行は5年先の2021年にしています。急いで強行する理由はありません。高齢者が「老後破産」を心配しなければならない現実、若者の置かれた雇用状況などについて、この「カット法案」がどのような影響を与えるかなどについて徹底した審議を行うことは不可欠です。 どのマスメディアの世論調査でも「カット法案」への反対は6割近くを占めています。国民が批判と不安を募らせる中で、延長国会での成立にこだわる安倍政権の姿勢は、あまりに民意無視です。「カット法案」はきっぱり断念し、全ての世代の暮らしを支え、現在も将来も安心できる年金の確立への検討・議論をすすめるべきです。 社会保障改悪やめ拡充を 安倍政権は、年金改悪と一体に、医療や介護の負担増と給付減を加速する方針を次々と打ち出しています。困窮者を支える生活保護費削減への動きも強めています。19年には消費税率10%への引き上げも計画されています。年金を減額する仕組みを導入する一方で、負担ばかり増やされては、暮らしは立ち行きません。安倍政権の社会保障改悪にストップをかけ、拡充させる政治への転換が必要です。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-30/2016113001_05_1.html 2016年11月30日(水) 「年金カット法案」への堀内議員の反対討論 衆院本会議 日本共産党の堀内照文議員が29日の衆院本会議で行った「年金カット法案」への反対討論(要旨)は次の通りです。 本法案は、年金生活者の暮らしを揺るがす重大法案で、質疑を通じて問題が噴出しました。厚生労働委員会では、与党・委員長の強引な運営が行われました。年金制度の原則を根底から変える法案であり、19時間の審議では議論が尽くされたとは到底言えません。委員会に差し戻すべきだったと強く指摘します。 反対の最大の理由は、際限ない「年金カット」のための新たなルールを持ち込むことです。賃金の下げ幅に合わせて年金額も削減する今回の改定は、購買力維持のため物価に合わせて年金も改定するとの従来の説明を投げ捨てる国民への背信行為です。政府は「万一」の措置だといいますが、労働者の実質賃金は低迷を続けており、詭弁(きべん)です。将来にわたり、現役世代の賃金が下がれば年金も下げる最悪の悪循環を生みだすものです。 年金を抑制する「マクロ経済スライド」の未実施分を繰り越すキャリーオーバー制度の導入も問題です。繰り越しに制限はなく、実質的な年金削減が繰り返されます。年金の最低保障機能をますます弱め、生存権を脅かします。「マクロ経済スライド」の調整は、基礎年金に長くかかる仕組みであり、今でさえ生活に困窮する方々に、より過酷なものです。 親戚・近所づきあいや食費、医療費や介護費を削る年金生活者の、「これ以上どこを切り詰めろというのか」という悲痛な叫びが聞こえないのですか。政府は、低所得者には「社会保障全体で総合的に講ずる」としますが、介護も医療も負担増・給付減の連続です。 年金削減により高齢者が苦境に立てば、介護や医療の負担が子や孫にのしかかり、現役世代の暮らしをも直撃しかねません。世代間の対立をあおり、年金削減を強行することは許されません。 短時間労働者への被用者保険の適用拡大は喫緊の課題ですが、今回の措置で加入できるのは、対象者の5%程度になりかねません。中小企業への保険料負担軽減等の支援強化と合わせて適用拡大を進め、短時間労働者の年金加入権を守ることが必要です。最低賃金引き上げ、正規雇用拡大や均等待遇確立など、人間らしい雇用と賃金を実現して年金財政の支え手を増やし、安定した年金制度を確立すべきです。 安倍政権は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式運用比率を倍増させ、年金積立金の運用を株価つり上げの道具にしました。損失が出れば、ツケは国民に押し付けられます。変動の激しい株式市場に大量の年金資金を投入することは許しがたいことです。危うい「投機的運用」から手を引くべきです。 「底なしの低水準」の構造が年金制度の最大の問題です。公的年金制度こそ、憲法25条を体現し、生存権を支える制度であるべきです。最低保障もなく、際限なく減らされる年金制度を将来世代に残すわけにはいきません。本法案は廃案にすべきです。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-30/2016113004_03_0.html 2016年11月30日(水) 自公維 年金カット法案強行 野党反対押し切り会期延長 衆院本会議 共産党「満身の怒り込め抗議」 厚労委員長解任・厚労相不信任を否決 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-30/2016113001_01_1.jpg (写真)反対討論する堀内照文議員=29日、衆院本会議 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-30/2016113001_01_1b.jpg (写真)討論に立つ塩川鉄也議員=29日、衆院本会議 自民、公明、維新などは29日の衆院本会議で、環太平洋連携協定(TPP)承認案・関連法案や「年金カット法案」などの成立を狙い、30日までの今国会会期を12月14日まで延長することを決めました。日本共産党、民進、自由、社民の各党は反対しました。衆院厚生労働委員会で25日に強行採決された「年金カット法案」は本会議で自民、公明、維新などの賛成多数で可決され、参院に送られました。民進、社民、自由の各党は採決の際に退席。共産党は採決で反対しました。 「年金カット法案」の反対討論には、日本共産党の堀内照文議員が立ちました。 堀内氏は「質疑を通じ問題が噴出しているにもかかわらず、野党の反対を押し切り、審議打ち切り、採決を強行したことに満身の怒りを込めて抗議する」と力を込めました。反対の理由として、際限のない「年金カット」のための新たなルールを持ち込むことなどを挙げ、「将来にわたり、現役世代の賃金が下がれば年金も下げる、最悪の悪循環を生みだすものだ」と批判しました。 さらに、「高齢になっても、障害をもっても、人間らしく尊厳をもって生きることは当然の権利だ」と強調。「公的年金制度こそ、憲法25条を体現し、生存権を支えうる制度であるべきだ。最低保障年金もなく、際限なく減らされる年金制度を将来世代に残すわけにはいかない」と述べ、同法案の廃案を求めました。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-30/2016113001_01_1c.jpg (写真)年金カット法案を可決した衆院本会議=29日 日本共産党の塩川鉄也議員は会期延長に対する反対討論で、「いまなすべきことは、国会を閉じ、TPP承認案・関連法案、『年金カット法案』などの悪法を廃案にすることだ」と主張しました。 塩川氏は、日本主導でのTPP発効に固執する安倍晋三首相の姿勢は「きわめて危険で有害だ」と批判し、「TPP協定の国会承認を思いとどまることは、今後、米国の理不尽な市場開放と規制撤廃要求を拒む足場になる」と強調しました。さらに、「政府・与党による『強行採決』発言が相次ぎ、そしてその言葉通りに年金カット法案などの強行採決が行われたのは極めて重大だ」と指摘。「その上、会期延長に乗じ、カジノ法案や『部落差別』永久化法案を党利党略で強行することなど断じて許せない」と批判しました。 同日、共産、民進、自由、社民の野党4党は、「年金カット法案」の委員会採決を強行した丹羽秀樹衆院厚生労働委員長の解任決議案と、同法案を担当する塩崎恭久厚生労働相の不信任決議案を衆院に提出しました。両決議案は本会議に上程され、日本共産党の高橋千鶴子議員が塩崎氏の不信任決議案に対し「野党の必死の抗議を『演出』などと言う厚労相の不信任は当然だ」と賛成討論しました。 両決議案は自民、公明、維新などの反対多数で否決されました。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-30/2016113001_01_1.html
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