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2016年11月26日配信号
戦時ドラマの横行
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最近、戦時中を舞台にした映画やドラマが増えている。11月に全国公開されたアニメ映画『この世界の片隅に』や、13年に上映され15年からテレビドラマ化されている『永遠の0』、15年上映の『母と暮らせば』、NHK朝ドラの『べっぴんさん』など。これらはわれわれをまた悲惨な時代へ導く気がしてならない。
■生き残り至上主義の横行
今回はニュースではないが、映画は元祖宣伝(プロパガンダ)道具だからご海容いただきたい。『この世界の片隅に』は1944〜45年の広島県呉市が舞台。見知らぬ男性の元に嫁いだ18歳の女性が、家族や親戚、ご近所に囲まれながら、たくましく生きていく物語。
物資の乏しくなっていく中で、道端の草をゆでたり、玄米に水を含ませて量を増やしたりと工夫を凝らして食卓をにぎわせる。着物の生地を継ぎはぎしてもんぺを仕立て、爆弾で片腕を失いながら、周りの迷惑になるまいと、懸命に働く。広島市内に住む妹に会おうと焼け野原を歩いて行くと、妹は原爆の影響で全身に謎の斑点が広がっていた……。
原作は、こうの史代氏の同題の漫画。「この映画が見たい」とクラウドファンディングで3900万円を超える制作資金を集め、映画化に至った。戦争や貧困、家制度の中で抑圧を受けながらも、手を取り合って生きる女性たちの姿を描いている。
私はこの映画の宣伝を視聴したとき、ぞっとした。戦時を疑似体験させるプロパガンダ映画ではないかと。オフショア・バランシング戦略によって、いよいよ日中全面衝突させるに当たり、その準備として国民に内面化を促すための。
ところが、「大感動作」「世界中の人に見てほしい」などが映画レビューに氾濫する。11月11日付毎日新聞は「戦争に勝る日常生活」と絶賛し、「最後に届く希望の光に涙が止まらなくなる」などと紹介している。ネタバレになるが、最後に主人公の女性が焼け野原を歩いているとき、片腕のない母を持っていた孤児がしがみついてきて、この子を新しい家族の一員として連れて帰るからと思われる。
優しげな声優「のん」さんの呼吸と温かいコトリンゴの音楽の演出によって、見る者は希望を抱くのだろう。しかし、冷静に概観すれば、話の本質は悲惨の一語に尽きる。
NHKの朝ドラはもともと明治から昭和前半に時代設定をした物語が多く、『べっぴんさん』も昭和初期から戦後までを描く。夫は出征し、家は焼け、戦争が終わると財産は没収される。娘のために作った子供服を人に褒められ、子供服作りを通して人生を切り開いていく。
■悪政への抗議から逃げる作品群
これらの作品が共通して伝えているのは、困難な時代を乗り越えようとする前向きさである。同様の作品は、時代設定が現在のテレビドラマにもある。『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)がそうだ。主演女優が最後に踊る『恋ダンス』の動画がかわいいと思って知ったが、調べると全く悲惨な話ではないか。院まで出て派遣切りに遭い、住み込み家政婦として性奴隷然の契約結婚をする。
毎日新聞夕刊の「テレビ評」は11月11日にこのドラマを取り上げ、「今の社会を生きる感覚描き出す」と絶賛している。『逃げるは恥だが役に立つ』の「逃げる」とは、深刻な経済状態の中で、選択の余地のない決断をすることを指すと思われる。換言すれば、資格取得や技能習熟による一段高い社会階層への移動を目指す出世競争からの逃げである。
しかし、いずれの作品も逃げているのは、困難な時代に導く権力への挑戦ではないか。貧困化・暴力化する社会に率先して適合する姿を美しく描くことで、民衆を悲惨な状況に追いやる政治を正当化している。重要なのは、どう生き残るかより、世界をどうしたいかである。こんなドラマや映画は何十本作ったって、ロックフェラーは怒らないだろう。
大体、見知らぬ家に嫁ぐのは、貧困社会の証しである。西洋人は日本人を「写真で結婚する国」とあざ笑ってきた。憂さ晴らしにダンスを踊るのも自由だが、問題を解決したいなら、労働規制の緩和を反転させ、派遣を禁じさせるべきではないか。同時に積極財政を提言し、消費税を下げ、各種扶養控除を復活させ、離婚を奨励する年金分割やGPIFの国際賭場への投入をやめさせ、米国が早晩出してくる新たな2国間経済・貿易協定に抗議すべきではないか。
戦争にもし反対なら、戦時をたくましく生き抜く映画を作るより、新安保法制の撤回や南スーダンへの自衛隊派兵中止を訴えるべきだし、米軍に少しでも長くいてもらうように次期大統領との交渉を進言すべきではないか。グローバル軍需資本は戦争の犠牲を日本人に押し付け、わが国にさらに武器を買わせるために「日本の独立」、すなわち米軍の撤退を望んでいる(第2号で詳述)。
これまで挙げた作品は、いずれも大規模興業あるいは全国放映されている。映像を扱い、流行をつくるだけの影響力を行使できるなら、世論に訴えればまだ十分、外交や経済、社会政策などが進む方向に改善を促す余地がある。
■潜在意識への影響は甚大
前向きに見えて実は後ろ向きなこれら映画に感心しないが、さらに深刻なのは、潜在意識への影響である。時代設定が戦時中という理由だけで、警戒すべきである。
『この世界の片隅に』を知ったとき、真っ先に『母と暮らせば』を連想した。原爆で息子を亡くした寡婦が、その亡霊と接触するフィクション。息子の婚約相手はしばらく家に手伝いに通ったが、途中で来なくなり、挙げ句に新しい結婚相手の男性を連れて来る。まさに「踏んだり蹴ったり母子家庭」と評するのが妥当な映画である。
『永遠の0』はすご腕パイロットだった祖父の生涯をたどる物語。家族の元に生還したいと願いつつも、理不尽な作戦の下で特攻死を遂げる姿に「感動した」「泣けました」などのコメントがネット上にあふれている。
『べっぴんさん』は、はつらつとした女性が古い因習や価値観をぶち破って自立していく連ドラ特有の伝統破壊宣伝番組である。『母と暮らせば』は息子に溺愛する母親の末路が描かれ、決して「たくましい生き方」とは言えない。しかし、いずれも戦時の悲惨な状況下で物語は進む。『永遠の0』は左から「戦争を美化している」、右からは「軍部を批判している」など賛否両論の評価があるが、戦争の極限状況での苦悩を描いている。
映画やテレビを見て登場人物に感情移入することによって、あたかも自分が体験したかのように錯覚するのが疑似体験である。このとき潜在意識に与える影響は殊の外、大きい。潜在意識は疑似体験と実際の体験との区別がつかないからである。良い感情を刷り込めば良い出来事が、悪い感情を刷り込めば悪い出来事が再生されることになる。
たとえ、ハッピーエンドの物語でも、途中の段階で悲惨で残酷な場面が生々しく続けば、見る者の心に恐怖や怒り、悲しみの気持ちが刻まれる。しかも、映画やテレビドラマは何百人、何千人が同時に見ることで一斉に恐怖や怒りの感情を共有するから、相乗効果によってそのときに創られるエネルギーは巨大である。
■物語が事件を引き起こす?
神智学やヨガの世界観では、根源的なデータが光として存在する想念の世界「コーザル界」のデータが、ビジョンの世界である「アストラル界」に投影され、この現実の世界「現象界」が成立していると考える。表層意識は現象界、潜在意識はアストラル界、超潜在意識はコーザル界に対応する。だから、想念で描いたことが現実となって表れるのは、理にかなっている。
芥川龍之介の作品に『竜』という短編がある。昔、奈良の恵印という法師が鼻の大きいのを馬鹿にされたので、報復のため猿沢の池のほとりに「3月3日にこの池から竜が上る」と札を立てるいたずらをした。うわさがうわさを呼び、大騒ぎになり、当日は大勢の見物客が集まった。恵印は気をとがめながら、皆の雰囲気に飲まれ、本当に上るような気がしてきた。日が暗くなると雨が降り、本当に黒い竜が池から現れ、空に飛んで行ったのである。
芥川は潜在意識と顕在意識の関係を知っていたと思われる。空想が現実となった有名な例の1つに、「タイタニック号」沈没がある。1912年4月に起きたタイタニック号沈没は、それより14年前の1898年に発表されたモーガン・ロバートソンの小説『タイタン号の遭難』と細部に至るまでうり二つだった。
この手の話は数ありすぎて挙げたらきりがないが、皆さんになじみがありそうな例として、1997年の神戸少年事件を示しておく。少年Aが犠牲者の頭部に添えた挑戦状には「積年の大怨に流血の裁きを」と書かれていたが、これは彼が愛読していた少年漫画『瑪羅門の家族』の影響と思われる。この作品には「積年の大怨に灼熱の裁きを」の巻があった。残酷な事件を起こした背景に、ホラー映画『十三日の金曜日』の影響も指摘されている。
もちろん、『この世界の片隅に』も『永遠の0』も、戦時中に数奇な運命をたどった人たちへの同情があって原作がつくられ、それに共感した人が映画やドラマを制作したのだろう。その純粋な思いを否定する気はない。しかし、プロパガンダ作品も、無知な善意から生まれた作品も、与える影響は同じだと人々に警告したいのである。
■事件を創作し、大衆を導く
思いの力は強烈だから、どうせ見るならハッピーエンドで、途中段階も明るく楽しい物語を薦める。しかし、マスメディアが流したり、大規模興業される映像でプロパガンダでない善良な物語をほとんど知らない。それで、上記の作品も、実は1つも見ていないことを白状しておく。
例外として最近、『君の名は。』を信用できそうな人に薦められた。大手制作なのに権力による宣伝性が見当たらず、豊かで明るい気持ちしか感じられないので12回も見ている。しかし、今やこれとて疑念が湧いてきた。映画を含めた広義のマスメディアは、政治や社会事件を絡めて大衆を劇場に誘い込む働きをしているからである。
先ほど、潜在意識による影響を指摘したが、実はタイタニック号は氷山にぶつかって沈没したのではなく、人為的に沈められたと確信する。これは第一次大戦の惨劇を暗示する海難事件で、その後英国の豪華客船ルシタニア号撃沈やドイツ軍のUボートの活躍、ユトランド沖海戦など、海での悲劇が相次ぐ。
メディアをも牛耳る支配権力は、大衆にこれから起こることを暗示するために映画を作り、最初の事件を創作するのである。いくらフィクションで大衆の潜在意識を汚染しても、期待通りに克明な現象になって表出されるとは限らないから。そうすれば、事件を模倣する馬鹿者も出てくるだろう。
ひな形として犯罪を遂行するのは、「希望する結果を模倣することにより、人は実際にそれを創り出すことができる」という魔術の原理から来る。この視点は、ロバート・オッペンハイマー著、目方肇訳『日本は情報操作大国』(第一企画出版)から授けられた。著者は「有賀裕二」および「有賀裕士」の名前でも著書を出していて、私の処女作『偽装報道を見抜けー世論を誘導するマスメディアの本質ー』(ナビ出版)でも紹介している。
もちろん、少年Aは無罪であり、翌年幼女連続誘拐殺人で逮捕された宮崎勤氏(処刑死)とともに「おたく」文化創造の演出に使われた。和歌山毒物カレー事件の林眞須美死刑囚も無実で、地縁的結び付きを解くための宣伝に使われた。秋田児童連続殺人事件の畠山鈴香死刑囚も無実で、児童虐待を社会問題にするために使われた。秋葉事件の加藤智大(かとう・ともひろ)死刑囚もスケープゴートで、技術立国日本の陳列棚としての当地を殺人と奴隷(メイド)の古里に書き換える役割を押し付けられた。
■『君の名は。』も黒ミサ招待に使われたか
『君の名は。』に疑念を抱かせたのは、博多駅前の道路陥没「事故」である。九州一の繁華街なのに、犠牲者は0人だった。映画を見に行ったとき劇場で話題になっていたのは、あるツイッターの書き込みである。「未来から来た男の子が、女の子に伝えてみんなを救ったんじゃないか」。
この趣旨の投稿を実際、確認できた。ところが、この道路工事をしたのは大成建設。『君の名は。』の新海誠監督が制作した「地図に残る仕事」CMで知られている会社ではないか。しかも、この映画とほぼ同じタッチ。支配権力が好きなブラックジョークである。この場合、彼らの手先がわざと早朝の車や人のいない瞬間を狙って落とした可能性が浮かび上がる。
有賀裕士氏によれば、そもそも活版印刷やラジオは、悪魔教徒が大衆を黒ミサに誘い込むために発明されたもの。この本質は、プラズマテレビやシネコンになった今も変わっていないと私も思う。
潜在意識への刷り込みから不幸を引き寄せないため、ニュースはもちろん映画やドラマもうかつに見ない方がいい。少なくとも、悪い要素が含まれそうな物語は絶対。犯罪劇場に引き込まれないためにも。
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著者:高橋清隆(反ジャーナリスト)
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