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急坂を転げ落ち始めた安倍政権
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2016年11月25日 植草一秀の『知られざる真実』
安倍首相の解散戦略が狂い始めている。
衆議院の任期は2018年12月まで。
あと2年ある。
前回の選挙は2014年12月に実施された。
任期を2年も残して衆院が解散され、総選挙が実施された。
「解散権の濫用」
である。
憲法第7条を利用しての衆院解散は、天皇の政治利用そのものである。
日本国憲法は内閣総理大臣に、私的な事情での衆院解散を認めていないと理解するべきだ。
内閣総理大臣の矜持が問われる問題なのだ。
これ以外にも、日銀幹部人事、NHK幹部人事、裁判所人事など、内閣が関わる人事案件は多い。
その人事を公正に行うか、私的な事情のみで行うか。
これも首相の矜持の問題なのである。
この点で安倍首相の行動は、私的事情が100%という「私物化人事」である。
そのために、日本の統治構造が大きく歪んでしまっている。
日銀、NHK,裁判所のあり方が歪んでしまっている。
重大な問題だ。
話を本題に戻す。
安倍首相は早期の衆院解散戦略を描いていた。
本来は本年7月10日の衆参ダブル選の可能性を描いていた。
しかし、衆院選勝利の感触を掴めず、これを断念した。
2017年夏には東京都議選がある。
公明党が都議選に全力で取り組むため、この前後4ヵ月間は衆院総選挙を設定しにくい。
そして、2017年夏には改正公選法に基づく定数削減を具体化する選挙区の区割りが確定する。
しかし、この区割りが確定すると、選挙実施までに周知期間が必要となり、また、候補者の調整も必要になることから、2017年後半の衆院選実施は困難視されている。
菅義偉官房長官は解散権が封じられることはないとしているが、多くの批判を浴びることは避けられない。
そうなると、衆院総選挙は2018年に先送りされる可能性が高まる。
2018年末までには選挙をしなければならないことになるが、いわゆる「追い込まれ解散」では、タイミングを自由に選べなくなる。
本来は、任期満了の選挙を基準にするべきなのだが、安倍首相の行動様式を踏まえれば、追い込まれ解散は避けたいとの意向が働く可能性は高い。
この事情を踏まえると、2017年3月までの間に衆院解散を実施するとの戦略が浮かび上がる。
安倍首相は例年1月に実施している自民党大会の日程を3月に変更した。
2月までの選挙実施に合わせた日程変更であると見られている。
そうなると、現在開会中の臨時国会の会期末にTPP批准案を可決して、国民の信を問うという解散が想定された。
この場合、投票日は12月18日か12月25日となる可能性が高い。
もうひとつのケースは、年明けに通常国会を召集し、冒頭で2016年度第3次補正予算を成立させて衆院を解散するものである。
大義名分は日露交渉の是非ということになるだろう。
この場合、2月19日の投票日設定が有力だ。
前提は、日露交渉に大きな進展があるということだ。
しかし、これらの解散戦略の前提になる状況に大きな狂いが生じている。
TPPは日本が先行批准し、米国でクリントンが大統領に選出され、オバマ政権末期に米国も批准するとのシナリオがあった。
これが、トランプ勝利、議会選挙のの共和党勝利で崩れた。
また、対ロシアの平和条約締結の道筋が遠のいた。
対日経済交渉担当相が解任に追い込まれたのである。
安倍政権の戦略がことごとく崩壊しつつある。
次の総選挙では、主権者の側が主権者の意思を代表する候補者を1人に絞り込むことが肝要である。
この条件を満たせば、一気に政権交代を実現し得ると考えられる。
選挙時期が早くなろうと遅くなろうと、この基本を崩さぬ対応を示すことが重要だ。
安倍政権の下り坂が確実に始動している。
次期総選挙に向けて万全の対応策を示さねばならない。
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