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トランプ大統領誕生の絶望と希望〜結局、日米同盟はどうなるの? 日本が「得すること・損すること」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50239
2016.11.22 週刊現代 :現代ビジネス
■安倍首相の第六感
「これはアメリカ発の新たな『9・11』テロ事件だ……」
「夏にイギリスがEUから脱退を決めた時の50倍の衝撃だ……」
「ベルリンの壁が崩壊して27年、新たなメキシコの壁ができてしまう……」
11月9日、東京・霞が関の外務省、財務省、経産省などでは、アメリカ大統領選の開票が進むにつれて、ゲッソリした表情と溜め息が、各所で見られた。
その頃、首相官邸の主である安倍晋三首相は、癇癪を起こしていた。外務省の杉山晋輔事務次官、石兼公博総合外交政策局長、森健良北米局長らを次々に官邸に呼びつけては、当たり散らした。
「一体どうなっているんだ!外務省は『ヒラリー勝利で間違いありません』と、ずっと言い続けていたではないか!話が違うよ。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)や日米同盟は、この先、どうなってしまうんだ?一刻も早くトランプと直接話ができるよう手配してくれ」
本誌前号で書いた通り、昨年6月にトランプ候補が出馬宣言した時、安倍首相には特殊な第六感が働いたようで、「この男と早くパイプを作っておくように」と指示している。
ところが外務省は、「あんな人は政治経験もなく、泡沫候補ですから」と、首相に進言し続けてきたのだ。
首相官邸関係者が憤る。
「総理が9月の国連総会に合わせて訪米した際にも、外務省は『ヒラリーだけに会ってもらえばいいですから』と進言し、総理はテレビカメラの前で彼女と派手に握手した。そして、『両国の揺るぎない同盟関係を、今後一層、発展させていきたい』とヒラリーに言わせたことで満足していた。
しかし総理は、『どうしてもトランプの側近とも会いたい』と主張して、ジャパン・ソサエティーのロス会長と面会したのだ。
その後、10月に、トランプ陣営のキーパーソンが来日した時にも、外務省は『ヒラリー陣営が嫌な顔をしますから』と言って、暗に無視するように進言した」
キーパーソンというのは、アメリカ陸軍出身で、'12年から'14年まで国防情報局長を務めたマイケル・フリン氏である。日本のサイバーセキュリティ会社の招待で来日した「一民間人」との立場で、10月11日に自民党本部で、アメリカのサイバーセキュリティ制度について講演している。
首相官邸関係者が続ける。
「この時は、自民党非主流派の石破茂元防衛相や、民進党の長島昭久元総理特別補佐官らと会っていた。さすがにそれだけではまずかろうということで、結局、菅義偉官房長官に、こっそり会ってもらったのだ」
フリン氏をよく知る元防衛庁情報本部長の太田文雄氏が解説する。
「トランプ氏は、11月9日に行った勝利宣言でも、真っ先にフリン氏の名前を挙げて、その貢献を称えました。そのことからも、来年1月に発足するトランプ新政権で、フリン氏はホワイトハウスの安保担当補佐官に就任するものと思われます。
フリン氏は元陸軍中将で、中東の専門家。残念ながら、日本や東アジアのことは素人です。そのため日本政府としては、一刻も早くフリン氏とパイプを築き、日米同盟の重要さをトランプ氏に進言してもらう必要があります」
■米軍はどうなるのか
トランプ氏は周知のように、大統領選挙期間中、日米同盟を破壊するような過激な発言を繰り返してきた。「アメリカ軍をアジアに駐留させておくのは無意味」「もはやアメリカがタダで日本を守ることはない」「もう『世界の警察』は止めた」……。
今後、日米同盟はどうなっていくのか。外務省は、トランプを泡沫と無視していた無能を棚に上げて、楽観的だ。外務省関係者が語る。
「かつてジミー・カーター氏は、『在韓米軍を撤退させる』と公約して大統領になったが、撤退させなかった。またロナルド・レーガン氏も、『中国と国交を断絶して台湾と国交を結ぶ』と宣言したが、やはり就任後はそうしなかった。
つまり、アメリカ大統領選挙中の候補者の発言というのは、特にアメリカ国民と直接関係しない外交問題については、どんな極論でも許されるところがある。トランプ発言も、いつもの大袈裟なモノ言いだろう」
9日に安倍首相と面会した前駐米大使の藤崎一郎氏も続ける。
「私は、一連のトランプ氏の発言は、新大統領として『新しい日米同盟を作る』という意味だと捉えています。そのため日本も、『新しい日米同盟』について考えていくべきです。
ただし、日米同盟自体が重要だということは、トランプ新大統領もしっかり理解されるだろうと期待しています」
元陸上自衛隊東部方面総監で、このほど新著『米中戦争』を上梓した渡部悦和ハーバード大学シニアフェローが、防衛省の立場を代弁する。
「トランプ政権が誕生したら、在日米軍駐留経費(現在は年間約2000億円を負担)の増額といった要求は覚悟しています。しかし、日本周辺の厳しい安全保障環境は不変で、日米同盟の重要性も不変です。トランプ氏は、現状のあまりに他力本願的な日本の防衛体制に、警鐘を鳴らしているのだと解釈しています」
たしかに、日本時間の10日朝に行われた安倍首相とトランプ氏との20分ほどの電話会談では、トランプ氏が「日本との同盟は卓越したパートナーシップで、関係を強化していく」と語ったと日本側は伝えた。
だが、4月に著書『トランプが日米関係を壊す』を上梓し、トランプ新時代の日米関係についての覚悟を説いた日高義樹・元NHKアメリカ総局長は、「日本が考えているほど甘くない」と前置きした上で、次のように警告する。
「私は過去半世紀、ホワイトハウスを取材してきて、いまもワシントンで取材していますが、来るトランプ時代は、これまでのアメリカとはまったく異なる時代になります。いまのアメリカ人は、自分の身の回りのことで精一杯で、世界のことに対する関心が、急速に薄れてきている。もう海外のことに関わりたくない、新たな移民もいらないというアメリカ国民のホンネが、トランプ大統領を誕生させたのです。
そのため、今後は日米同盟自体が当てにならなくなるし、アメリカ軍が尖閣諸島を守ってくれるなどというのは、幻想にすぎなくなります。つまり、日本は自分で自国を守らないといけない時代に入った。トランプ氏は選挙演説で、『日本が北朝鮮の核兵器を恐れるなら、自分で核兵器を持てばよい』と発言しましたが、まさにそうした風潮になっていくのです」
■「トランプの機嫌を取れ!」
同じく、アメリカ取材30年以上で、7月に著書『アメリカはなぜトランプを選んだか』を出したジャーナリストの開高一希氏も語る。
「トランプ氏が主張しているのは、いままでのような従属的な日米関係を対等・公平なものに変えていくということです。白人男性というのは、例えば修士号を持っている人なら、結婚した女性が学士しか持っていなければ、修士号を取って自分と対等になることを求めます。
典型的な白人男性であるトランプ氏は、そういった発想で外交も考えているのです。核兵器に関しても、同盟国のアメリカが持っているのだから、日本も持てばいいということです」
日本の核武装論に関しては、広島出身の岸田文雄外相は9日、「日本は核保有を考えていないし、将来も考えることはない」と否定した。だがこの先、トランプ政権が日本から引いていけば、日本でも議論が巻き起こってくるのは必至だ。
前出の首相官邸関係者は、防衛省にトランプ氏を取り込む「奇策」があるという。
「それは、稲田朋美防衛相を、ニューヨークのトランプタワーに送り込んで、会談することだ。
10月26日に首相官邸で、『フィリピンのトランプ』ことドゥテルテ大統領との日比首脳会談を開いた。その時、ドゥテルテ大統領は、正面の安倍総理を見ないで、向かって総理の左手に座った稲田防衛相のほうばかりチラチラ見て、熱い眼差しを送っていたのだ。稲田防衛相と握手した時なんか、喜々としていた。
だからいますぐニューヨークに、『トモミ爆弾』を放てば、トランプも目が潤んで、『アメリカが日本を責任もって防衛する』と言い出すのではないか」
米スタンフォード大学アジア太平洋研究センターのダニエル・スナイダー研究副主幹は、日本政府がトランプ陣営とのパイプ作りが後手に回ったのは、「アメリカ側にも責任がある」と言う。
「私はアメリカの多くの外交関係者と交流がありますが、彼らは日本の外交官と会うたびに、『大統領選は百パーセント、ヒラリーが勝つから、日本は心配しなくていい』と囁き続けてきました。だから、日本外務省だけの責任ではありません。今回の選挙では、アメリカのプロたちも読み間違えたのです」
その上で、スナイダー氏は「トランプ氏との付き合い方」を伝授する。
「いま日本が行うべきことは、ただ一つ。徹底的にトランプ氏に媚びへつらうことです。『日本はあなたのことが大好きです。あなたはとても賢く、素晴らしい人だ。日本国民は、あなたの大統領就任を心から待望している……』。
ちょっと皮肉に聞こえるかもしれませんが、私がもし安倍首相のアドバイザーだったなら、このように『ひたすらトランプ氏の機嫌を取ってください』と進言します。トランプ氏はとにかく、周囲からチヤホヤされるのを好む性格なのです」
日米関係史の大家であるウェイク・フォレスト大学のロバート・ヘリエ准教授も語る。
「安倍政権がトランプ政権に協調するか、トランプ政権が安倍政権に協調するかと言えば、当然ながら前者しかありません。だから安倍政権には、忍耐が必要です。
ただ、日本にとって幸いなのは、トランプ氏が基本的に日本に対して関心がないことです。そのため対日関係は、全面的に周囲の専門家たちに任せきりになるでしょう。つまり日本としては、トランプ氏の周囲の専門家グループと、緊密な関係を築いていけばよいのです」
■TPPは死んだ
だが、そうは言っても、トランプ新政権が確実に見直すと思われるのが、TPPだ。TPPは、日本やアメリカを中心とした12ヵ国が加盟するアジア太平洋地域の自由貿易協定である。昨年10月に基本合意がなされ、各国の批准を待つばかりだ。
ところが、取りまとめ役だったアメリカが、オバマ政権内の連邦議会での批准を断念した。そしてトランプ氏は、「アメリカの製造業を犠牲にするTPPは破棄する」と断言している。
そんな中、日本は間の悪いことに、トランプ候補が勝利した翌10日に、衆院本会議でTPP法案を可決したのである。
この先、TPPはどうなるのか。前出のスナイダー氏が語る。
「TPPには、死亡宣告が出たも同然です。だから日本は、スッパリ諦めるしかありません」
スナイダー氏は、「さらに日本にとって悪夢が起こる」と予言する。
「それは、1994年に発効したNAFTA(北米自由貿易協定)も、破棄される可能性が高いということです。
多くの日本企業が、人件費が安いメキシコに工場を作り、NAFTAによって無関税でアメリカ市場に製品を運んで儲けています。ところがトランプ氏は、『メキシコ国境に壁を築いて、人と物の流れを遮断する』と宣言しているので、日本企業は立ち往生してしまうのです。
トランプ氏は他にも、『ネブラスカの牛肉に税金をかけるのなら、日本車にも税金をかける』などと言っています。だがこれをやったら、WTO(世界貿易機関)違反になるので、さすがに無理だと思います。とにかくトランプ氏の思考が、1980年代の日米貿易摩擦時代でストップしてしまっていることは問題です」
それでは、TPPが破棄された後の日米の経済関係はどうなるのか。経済評論家の荻原博子氏が語る。
「トランプ氏がTPP破棄を強調しているのは、アメリカの産物を世界に売りたいからです。そのため、まずはジャガイモ、ニンジン、トウモロコシといったアメリカの農産物が、大量に日本に入ってくるでしょう。日本の農家にとっては、TPPよりよほど脅威で、これに対抗するには、ブランド野菜を育成していくしかありません。
他にも、円高が進んで企業は人件費カットを迫られるので、賃金アップは望めません。とにかく『アメリカ・ファースト』なので、日本はセカンドということになり、損をすることが多くなるでしょう」
だが、「日本は得することもある」と言うのは、RFSマネジメントのチーフ・エコノミスト、田代秀敏氏だ。
「日本はトランプ氏の声をよく聞いて、チャンスを探していけばよいのです。
たとえば、トランプ氏はイスラム社会全体を嫌っているので、イスラム圏からアメリカ企業が引き始める。するとそこに、日本企業の商機が出てくる。
また、トランプ氏がTPPを止めるのなら、日本は日中韓FTA(自由貿易協定)の締結を急げばいい。IMF(国際通貨基金)の予測によれば、日中韓のGDPの合計は、'20年にアメリカを追い越すので、日本としてはこちらのほうが、よほど経済効果があります」
安倍首相は17日、ニューヨークのトランプタワーで運命の初対面を終えた。日本の将来はいかに?
「週刊現代」2016年11月26日号より
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