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「米中新秩序」到来!日本はついに中国との関係を見直す時を迎えた 対抗ではなく、協調路線でいくしかない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50205
2016.11.15 近藤 大介 『週刊現代』編集次長 現代ビジネス
■中国人インテリ層の反応は?
「トランプ大統領誕生」――11月9日のアメリカ発の衝撃波は、アジアの2大国、日本と中国を、ともに激震させた。
だが、その波動の伝わり方は正反対で、日本には「危機」として伝わり、中国には「機会(チャンス)」として伝わった。早い話が、日本は悲しみ、中国は喜んだのである。
まず、トランプ大統領誕生を受けて、霞ヶ関の官庁街を取材すると、日本の官僚たちから聞こえてくるのは、怨嗟や呻き声だった。
「これは、アメリカ発の新たな『9・11』テロ事件だ。2001年の時はアメリカの外からテロがやって来たが、15年経った今回は、全米で内部から地雷が炸裂した。しかもその結果、過激派集団は、ホワイトハウスの『占拠』に、まんまと成功してしまったのだ……」
「夏にイギリスがEUから脱退を決めた時は、『これで世界が憎しみ合う暗黒の時代に逆戻りするかもしれない』と、強い衝撃を受けた。だが今回は、夏の50倍の衝撃だ……」
「ベルリンの壁が崩壊して27年、21世紀は『壁のない時代』になるかと思っていた。だがこれで、『メキシコの壁』ができてしまう。世界は新たな『壁の時代』に入った……」
私は普段、約100人の中国人のインテリたちと、「微信」(WeChat)を使って交信している。だが彼らとのやりとりで、このような悲観的な内容のものは、ただの一本としてなかった。返ってきたのは、こんなメッセージだ。
〈「特朗普」(トランプ)大統領誕生は、アメリカ版の文化大革命だ。怒れるアメリカ人民が蜂起して、エスタブリッシュメントや既得権益者たちを追放したのだ。
「特朗普」は、言ってみればアメリカの毛沢東主席だ。だから「毛沢東の生まれ変わり」と言われる習近平主席とは、蜜月関係を築けるだろう。偶然だが、二人は誕生日も1日違いだ(トランプ氏が6月14日で習近平主席が6月15日)。
特朗普主席万歳! 美国(アメリカ)人民万歳! 造反有理(造反には理が有る)万歳! 〉
〈 特朗普は商人だろう? 商人が、東洋で一番カネを命と考える中国人と波長が合わないわけがない。これからの時代は、政治がビジネス化していくので、まさに中国向きの時代と言える。だからビジネスライクに『你好我好』(両者ともに満足)の関係を築けば、特朗普大統領は中国を、最大の味方と思うようになるだろう。
ちなみに、大統領選挙で特朗普の陣営が使っていた大量の赤いキャップは、すべて中国浙江省義烏で作られたものだった。また、中国で「特朗普」関連の商標を確認してみたら、彼はすでに80数種類も登録済みだった 〉
〈 特朗普の当選で、世界の株価は乱高下しているが、人民元は高くなった。年初から、どうやっても人民元安が止まらず、中国の金融当局を悩ませていたが、特朗普が一発で正してくれた。大統領に就任する前から、期待が持てる男だ 〉
〈 今回の大統領選挙は、金融業界をバックにつけた希拉里(ヒラリー)と、製造業界をバックにつけた特朗普との戦いだった。その結果、製造業界側が勝ったのは、アメリカがまだ健全だという証だ。同時に、金融大国ではないが世界一の製造大国である中国に、大きなチャンスがあるということを意味している 〉
〈 特朗普は、自分で金儲けしてから、そのカネを使って最高権力を掴もうとした。普通の政治家は、希拉里もそうだし、中国の多くの政治家もそうだが、金持ちになりたいから、その手段として権力を掴もうとする。その点でも、特朗普は見上げた男だ 〉
〈 あのニューヨークのトランプタワーを見てみろ。あれこそ「金光閃閃」という中国人の理想郷を体現しているではないか。だから世界中の人々がニューヨークを訪れると、自由の女神像へ行くが、中国人だけは真っ先にトランプタワーの前へ行って写真を撮る 〉
他にも挙げていけばキリがないが、中国人がトランプ大統領に、いかに期待感を膨らませているかが、ひしひしと伝わってくる内容だった。そしてそれは、「中南海」(習近平政権)とて同様なのである。
■米中は「新型の大国関係」へ
1979年に米中が国交正常化して以降、歴代のアメリカ政権において米中関係は、共和党、民主党を問わず、だいたい似たパターンを辿ってきた。政権発足当初は人権問題や少数民族問題などで中国に対して手厳しいが、政権の後期になると俄然、中国ビジネスの旨みを知って、親中的になっていくのである。
レーガン大統領は当初、「中国と断交して台湾と国交を結ぶ」と公言していたが、そのうち中国にミサイル輸出まで始めた。
クリントン大統領は政権前期には、「人権問題を改善しない限り最恵国待遇は与えない」と上から目線だったが、政権後期には1200人もの経済人を引き連れて9日間も中国訪問した。
ブッシュJr大統領も政権前期、「悪の枢軸のバックで手を引く国がいる」と中国を非難したが、政権末期にリーマンショックが起こると、どの国よりも中国を頼った。
こうした中で、唯一の例外が、オバマ政権だったのである。オバマ政権の場合は、それまでの「強硬→親中」というパターンが逆だったのだ。
2009年に就任したオバマ大統領は、発足当初こそ極めて親中的で、「アジアのことは中国と話して決める」と最初に断言したアメリカ大統領だった。それまでの大統領は、「日本との同盟は最も重要な二国間関係だ」と言っていたからだ。当時の胡錦濤政権は、「これこそチェンジだ」と欣喜雀躍した。
ところが、2010年に入って米中関係に暗雲が垂れ込め始め、以後は視界不良になっていった。そんな中で、中国側が胡錦濤政権から習近平政権にバトンタッチしたのである。
2013年3月、習近平政権が正式に発足したことを受けて、オバマ政権は中国との関係改善に乗り出した。中国側も、対中強硬派のヒラリー・クリントン国務長官が抜けたことなどで対米関係改善を目指し、習近平新主席にオバマ政権の特徴を進言した。
@オバマ政権は戦争放棄を宣言した「ハト派政権」なので、軍事優先に傾かない。
Aオバマ大統領、ライス安保担当補佐官はアフリカ出身者の末裔であり、新興国に理解がある。
Bオバマ政権はますます内向き志向になっているので、アジアへの干渉が少なくなる。
Cオバマ大統領は思想信条よりもビジネスライクな性格なので、交渉しやすい。
オバマ大統領は、就任して3ヵ月しか経っていない習近平主席を、1泊2日でカリフォルニア州のアンナバーク農園に招待した。同盟国の安倍首相には1時間しかくれなかったのに、習近平主席とは8時間以上も首脳会談を行うという破格の厚遇で迎えたのだ。
そこで習近平政権は、早くも勝負に出た。それが、「新型の大国関係」という両国関係の定位(位置づけ)だった。
「広大な太平洋は、中国とアメリカという両大国を受け入れる十分な空間がある。中米双方は、新しい思考のもとで積極的に行動すべきだ。そこで『新型の大国関係』を構築していこうではないか」
「新型の大国関係」という言い方は、胡錦濤時代の2012年に作られた概念だったが、習近平新主席は、それを換骨奪胎し、前面に持ってきたのである。
■天は「オバマ路線」を断絶した
習近平主席が考える「新型の大国関係」とは、軍事問題の師匠である呉勝利海軍司令員からの受け売りだった。2007年5月、北京でアメリカのキーティング太平洋司令官一行を出迎えた呉勝利司令員は、キーティング司令官に持論をぶつけた。
「中国とアメリカで、ハワイを境に太平洋を2分割しようではないか。アメリカは、太平洋の東側半分と、大西洋を取る。それに対して中国は、太平洋の西側半分と、インド洋を取る。
そうすれば、わざわざアメリカの艦隊が、遠く西太平洋の東アジアまで出向いてくる必要はなくなる。もし東アジアに用事がある時には、われわれに言ってくれればよい」
キーティング司令官はジョークかと思いつつも、唖然としたという。だが呉勝利司令員は大真面目で、それから6年後に、習近平新主席が衣を変えて、「新型の大国関係」という提案をしたというわけだった。
習近平政権が考える「新型の大国関係」とは、具体的には「第一列島線」の内側からアメリカ軍を撤退させることを目標にしている。第一列島線とは、日本列島、韓国、台湾、フィリピン、大スンダ列島と続く南北のラインである。この地域を「アメリカの海」から「中国の海」に変えないと、中国は永遠にアジアの覇権を取れないと考えているのである。
ところがオバマ政権は、アンナバーグ農園で行った習近平主席との最初の首脳会談で、この考えに警戒感を抱き、曖昧に回答した。それでも習近平主席は、オバマ大統領と首脳会談を行うたびに「新型の大国関係を構築しよう」と提案した。
2014年11月の北京APECの時に行った「瀛台会談」(瀛台は中南海にある毛沢東元主席の旧居)で、オバマ大統領はついに、中国に譲歩を見せた。「アジアのことは中国に任せてもよいが、それなら周辺諸国と摩擦を起こさないようにやってほしい」と注文をつけたのだ。
だが、同時期に国防長官が、親中派のヘーゲル氏から対中強硬派のカーター氏に代わったことや、この「オバマ発言」以降、中国のサイバーテロ、南シナ海の軍事要塞化が深刻化したことから、2015年10月のワシントン会談で、米中は正面衝突した。
以後、オバマ政権は南シナ海で「航行の自由作戦」を始め、韓国にTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)を配備することを決め、台湾独立色の強い蔡英文新政権に肩入れし、日本を巻き込んで「経済的中国包囲網」であるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)を推進し・・・と、対中強硬路線に走っていった。
そのオバマ路線を継承するどころか、さらに強硬な路線を取ると中国が警戒していたのが、ヒラリー・クリントン候補だった。
ところが、天はクリントン候補を大統領にしなかった。天啓を得たのは、オバマ政権とはまったく異なる考えを持ったドナルド・トランプ候補だったのだ。
■21世紀は「米中ロ三国志」時代に
2017年1月20日にトランプ政権が発足して以降の世界は、おそらく次のような形へと向かうだろう。
まずアメリカは、急速に「内向き社会」になっていき、かつてブッシュJr大統領が言っていた「世界の警察官」の役割を放棄する。これを「アメリカの衰退」と呼ぶこともできるが、トランプ流に言うなら、「アメリカ第一で、国内を偉大な国にしていく」ということだ。
その結果、世界各地に「力の空白」が生まれる。こうした状態を、アメリカの未来予測学者イアン・ブレマー氏は、「G0時代の到来」と呼んでいる。どの国も「G=グループ」を組まなくなる時代という意味だ。
だが私は、もう少し先のことまで述べたい。アメリカが「超内向き社会」になると、世界各地に生じる「力の空白」をカバーするのは、その地域の大国の役割となる。具体的には、ヨーロッパにおいて大国ロシアの影響力が増大し、アジアにおいては大国・中国の影響力が増大していく。
ところが、ロシアと中国が実際に「地域の大国」として君臨するには、荷が重い。そこでヨーロッパでは、ドイツとイギリスがサブ・リーダーに就き、アジアでは日本とインドがサブ・リーダーに就く。そんな時代がやって来るに違いない。
つまり近未来の世界は、「三国志時代」、もしくは「3大国鼎立時代」に入っていく。アメリカ、中国、ロシアの3大国が、それぞれの地域を統括していく時代である。
古代中国で「三国志」と言えば、漢王朝亡き後の魏・呉・蜀の角逐を指すが、21世紀の「米中ロ三国志」は、それとは似て非なるものだ。つまり世界を3分割するが、世界統一の野望を抱く国は、もはや存在しない。新たな3大国は、互いに干渉しないことを原則とし、自己のテリトリーの中で繁栄を目指すのである。
アジアにフォーカスしてみると、これはまさに習近平政権が目指している「新型の大国関係」に他ならない。習近平政権が提案し、オバマ政権が押し返してきた「新型の大国関係」を、今度はトランプ新政権の方から、新たにお膳立てしてくるのである。「アジアのことは今後は中国に任せるから、その代わりアメリカ国内に利益を生むようにやってくれよ」というわけだ。
■日本が採るべき道は?
翻って、いまの安倍晋三政権は、「中国に対抗する」ことを、すべての外交の基本方針に据えている。こうしたやり方は、2017年以降は通用しなくなるだろう。なぜなら、日本が頼る同盟国のアメリカに、ハシゴを外されるからである。
その典型例が、TPPだ。TPPは、中国ではなく日米が中心となって、今後のアジア太平洋地域の自由貿易を牽引していこうという試みだ。TPPが12ヵ国によって合意した2015年10月、図らずもオバマ大統領と安倍首相は、同じ発言をした。
「TPPは単なる経済協定ではない。これからのアジア太平洋における国際秩序を決めるのは、中国ではなくわれわれなのだ」
安倍政権はこうした方針に沿って、先週11月11日、TPP法案を衆議院で可決した。ところが同盟国のアメリカはと言えば、11月9日に、「TPP廃止」を公約にしたトランプ候補が大統領選に勝利しているのだ。つまり、誰がどう見ても、TPPには「死刑宣告」が出されている。TPPの協定上、アメリカが不参加なら残りの11ヵ国で発効するということはできないのである。
こうしたことが、2017年以降、軍事分野においても起こってくるに違いない。日米同盟は、全面的に見直される。すなわち、アメリカの利益になると確定できるものは残すが、そうと言えないものは変更を余儀なくされるということだ。
そもそもトランプ大統領を誕生させたアメリカの有権者たちは、「なぜアメリカが、太平洋を挟んだ遠い彼方にある日本を守らなくてはならないのか?」という根本的な疑問を抱いている。「そんな予算と人員があるなら、アメリカ国内の自分たちの生活向上に回してくれ」というわけだ。
そのため日本の側からトランプ新政権とアメリカ国民に向かって、「日米同盟強化によってアメリカに多大な利益をもたらす」ということを、説明する必要がある。これは義務でも責任でもないが、そうしないと今後アメリカは、どんどん日本とアジアから撤退していくだろう。
■日本は今後、どう変わるべきか
そんな未曽有の時代が到来するにあたって、今後、日本としてやるべきことが3つある。
一つ目は、いま述べたような、トランプ政権及びアメリカ国民を説得することである。安倍首相は、11月17日にトランプタワーを訪問すると電撃的に決めたが、こうした迅速な行動は称えるべきだ。
第二に、アメリカが守ってくれない時代に備えた「自立」である。「自立」という意味は二つあって、一つは尖閣諸島の百パーセント自衛隊による防衛システムの構築や、先制攻撃能力も含めた日本国内の自立的防衛の確立(核武装の是非の議論も避けては通れないだろう)。もう一つは、アメリカに頼らない外交の推進である。
第二次世界大戦後の日本は、言ってみれば「トラの威を借るキツネ」のような外交を、70年近く行ってきた。世界各国も、「日本のバックにはアメリカがいる」という観念があるから、日本に対してそれなりに敬意を払ってきたわけだ。
ところがこれからは、アメリカが頼りにならなくなるのだから、日本の威厳は日本自身が示して行かねばならない。戦後の世界の外交は、外務省、軍、諜報機関という三元外交が常識だったが、日本だけは外務省のみの一元外交で、残りはアメリカに頼ってきた。だがこれからは、日本も軍事能力を高めると同時に、早急に諜報機関(日本版CIA)を設置していかねばならないだろう。
そして、日本としてやるべきことの3点目が、中国との関係改善である。アメリカが引いていった後のアジアは、どう見ても中国がリーダーとなるからだ。これは、古代アジアの姿に立ち返るということでもある。
21世紀に入って台頭した中国は、2010年にGDPで日本を追い抜いて、アジア最大の経済大国、アメリカに次ぐ世界第2の経済大国に成長した。いくら昨今、中国経済が減速しているとはいえ、中国経済はまもなく日本経済の3倍規模となる。
軍事的にも、中国の台頭は目覚ましく、軍人の数で日本の約10倍、公表されている軍事費で約3.6倍、戦闘機の数で約5倍、それに日本が持っていない核兵器や原子力潜水艦、空母まで保有している。純粋に日中が全面戦争に突入したら、日本がとてもかなう相手ではない。
他にも、人口、国土面積から国連における存在感やアジア近隣諸国への影響力まで、中国の方が日本よりも上である。
現在の習近平政権は日本で不人気だが、トランプ政権誕生とともに、そんなことは言っていられない時代になるだろう。中国にいかに対抗するかではなく、中国といかに協調していくかが、日本の行方を定めることになる。
ともあれ、日本は早急に、トランプ時代到来で幕開けする「世界の新秩序」に備えるべきである。
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