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米大統領選:嫌な予感ほど当たることがあるんだよね、という話
http://nobuyoyagi.blog16.fc2.com/blog-entry-753.html
2016-11-11 八木啓代のひとりごと
いやいや、バック・トゥ・ザ・フューチャーの未来予知度は凄い。
トランプ大統領が誕生ですね。
それと共に、全米で大デモですよ。これもなんとも映画っぽい。
などと人ごとの笑い話のように書いていますが、残念ながら、米国はラテンアメリカにとっても日本にとっても「ヘビーな隣国」なので、他人事と言いきれないのが痛いところです。
さて、トランプが「地方の白人中下層」の不満をすくい上げ、一部の経済的政治的特権階級(エスタブリッシュメント)をdisり、反グローバリゼーションを唱えたのが圧倒的な支持を得た、という論評が多いようですが、これは正しい部分もありますが、間違っている部分も大きいです。
確かにトランプの熱狂的支持層(すなわちトランプ支持であること公言していた人たち)は地方の「中下層白人」なのは間違いありません。
しかし、実際に選挙の趨勢を決めた「隠れトランプ」すなわち、「政治的正しさ」に反して人種差別や女性差別発言を連発するトランプを堂々と支持しているとは言わなかったが、トランプに投票した人たち、というのは、白人の中〜高所得者層が多かったという統計で明らかです。
http://edition.cnn.com/election/results/exit-polls/national/president
言い換えれば、口先ではトランプの下品さに同意しかねるふりをしていながら、腹の中ではトランプに同調して(「有色人種」や「働く女性」に差別感情を抱いて)いる「白人」の人々がトランプに投票したわけです。
というと、「ヒスパニックでもトランプに投票した人はかなりいる」という人がいると思いますが、「ヒスパニック」というのは、「黒人」とは違って、単なる「母言語集団」。「人種集団」ではないのです。つまり、カリフォルニアで「ヒスパニック」といえば、ほぼ「大半がメスティーソ(先住民とスペイン人の混血=すなわち有色人種)であるメキシコ系」ですが、フロリダのヒスパニックは「極右系白人」が多いのですよ。そういう意味では、民主党支持者が圧倒的なカリフォルニアのヒスパニックと、伝統的に共和党の最大支持基盤であるフロリダのヒスパニックはまったく違うのです。
つまりなにが言いたいかというと、トランプの勝利は、「彼が貧困層の味方だと思われ、弱者の支持を得た」ということではなく、いままで米国という国で「征服者であり絶対的支配階級」であったはずの「白人」が、公民権運動の起こった20世紀後半以来、どんどん立場が弱くなってきていて、しかもヒスパニック(この場合は、フロリダの「白人系」ではなくて、メキシコや中米から来る「有色人種系」)や黒人の人口増加で、やがて多数派としての地位さえ失い、「このままだと、米国は有色人種に乗っ取られる」と感じている「白人優位志向のおっさんおばはん層」が、8年間の黒人大統領と、そのあとの「リベラルな女の」大統領に「ノー」と叫んだ、ということだということです。
選挙戦終盤、トランプがビデオ問題で支持を落として、このままヒラリーが逃げ切れそうになった時に、FBIが突然ヒラリーのメール問題を再燃させました。
これ、「事情がわかっていれば、そもそも訴追になるわけもないようなレベルのネタ」なのでしたが、だからこそ、このタイミングでそれを出すか、というのは、明らかに「政治的」なわけです。
「訴追するかというような小ネタ」なのに、政治的な重要局面で露出させて騒ぎ、候補者のイメージを大きく損ねるって、日本でもありましたよね。
そして、ヒラリーのイメージを決定的に悪くしましたよね。
既得権益層が全面的にヒラリー支持なら、逆はともかく、そんなことは起こるわけがないわけです。
つまりですね。やはり米国社会のなかで、「白人男性至上主義」「そういう意味でのヒラリー嫌い」というのは、そんだけ強かったということですよ。
そして、ここでまた、一部の「日本のリベラル」な皆さんの勘違いですが、米国の本来の「既得権益層」って、IT長者とか株長者じゃありませんよ。
米国の本来の「既得権益者」ってのは、まさに、インディアンの土地を強引に武力で奪って、その後も黒人奴隷を使い、奴隷解放後も60年代まで、公然と露骨な人種差別をやってきていた「白人」層なんです。
その「既得権益者」が、ここ数十年の、人権運動や社会環境の変化で「当たり前のように持っていた特権」を次々に剥奪されてきた。それどころか、下手すると黒人やインド人や中国人が仕切る社会になりつつある。移民が増えて、誰でもできるような仕事もどんどん奪われる。
その不満の代弁者がトランプだったわけです。
もちろん、レーガノミクス以来の新自由主義とグローバリゼーション主義で、格差が広がり、固定化して、米国が病んでいるのは事実です。そして、その米国で、上位1%の超高額報酬を得ているのが、「エスタブリッシュメントな白人」であるのは事実ですし、彼らが、自己の利得のために、地方や弱者を踏みにじってきたのは事実です。
しかし、その格差の底辺にいるのは、貧困層の黒人や不法移民の人たちや、未来の見えない若い人たちであり、彼らはサンダースに熱狂した層でもありますが、その後は、ほぼちゃんとヒラリーに投票しているのです。
つまり、ネトウヨが生保を叩き、ブラック企業で働くサラリーマンが(自分はこんなに辛い苦しい思いをしてるのに、楽して福祉受けてる連中は許せないよね、在日が優遇されてるなんて許せないよね、そういうところで人権ガーとかいうエリート女なんか絶対許せないよね的論理)で、それに同調してしまう....
というのと似た構図が米国でも起こっちゃったということですね。
なので、日本には、「ヒラリーは富裕層の代弁者だったので嫌われた」「貧困層がグローバリズムに反対するトランプに投票した」と勘違いして、トランプを歓迎している人がいますけれど、それ、違います。
米国の本当の弱者であり、サンダースの最大の支持基盤だった有色人種系ヒスパニックや黒人、若い世代は、圧倒的にヒラリーに投票しているんですから。そして、実際の統計では、白人の豊かな人たちの方が、トランプに投票しているのです。
http://edition.cnn.com/election/results/exit-polls/national/president
でも、残念ながら、若い人の投票率は、65歳以上の人たちに比べると圧倒的に低いんです。そこがマイケル・ムーアが、
「もしみんなが自宅のカウチからXboxとかプレイステーションで投票できるなら、ヒラリーが圧勝するのは間違いないと思う。
でもこれは、アメリカで実際にできる方法じゃない。みんな家を出て、投票の列に並ばなければならない。」
と、懸念していた点ですが。
http://www.huffingtonpost.jp/michael-moore/5-reasons-why-trump-will-win_b_11254142.html
だからこそ、トランプ勝利のあと激烈な反対デモを起こしているのは、若い世代なのです。
いわゆるエスタブリッシュの人たちは、ヒラリーを支持していたのは事実ですけど、クルーグマンみたいに、ただ呆然としてるだけですよ。
さらに言えば、投票数ではヒラリーが勝っていたことが明らかになっています。大きな差に見えるのは、米国の選挙制度のせいに過ぎません。
http://business.newsln.jp/news/201611101336020000.html
ですから、「大差を予測できない」=「大衆に対する肌感覚がない」という指摘は適切ではありません。
先に述べたように、表だって活動する在特会やネトウヨは熱狂的に見えても、それほど数が多いように見えませんが、実際には、彼らに同調する(だけど恥ずかしいから公然と支持を口にしない)人がそれなりにいる、というのと同じ理屈だからです。
また、世論調査が間違っていたというのを、米国のマスコミの「偏向」と決め付けている人がいますが、それも適切ではありません。世論調査というものが、今の時代にまったく合わなくなっているということです。
で、これからどうなるか、です。
「当たらなければ嬉しい嫌な予感」として書いておきます。
トランプは日本から金を巻き上げる方向に行くでしょう。
安倍首相との親和性に関して言えば、はっきりいって、ヒラリーより仲良くなれると思います。
先日、安倍首相が訪米の時にトランプではなく、ヒラリーにだけ挨拶に行ったことで、安倍をヒラリー贔屓と思っている人がいますが、それは単に、日本の外務省の見通しがはずれていたというのと、TPP推進という点からだけ見れば、ヒラリーとの方が話の余地があると思ったということにしか過ぎません。
しかし、これからは、安倍首相は積極的にトランプ氏に擦り寄るでしょう。ジャイアンに貢ぐスネ夫のように。
そして、トランプなら、安倍の歴史修正主義に嫌悪感を持ったりしないでしょう。(ヒラリーなら露骨に嫌悪するでしょうが)し、むしろ、安倍の改憲には賛成するでしょう。
それは米国民に対しては、米国の軍事負担を軽減するという口実にもなるからです。
かといって日米同盟そのものを破棄することまではおそらくしないので、安倍首相としては、トランプに擦り寄ることで、むしろ「夢」の改憲による「日本を戦争のできる国」化と歴史修正がしやすくなります。
そもそも中国が日本に攻めてくる可能性などないので、安倍首相としては「中国や北朝鮮に対する備えに米軍を巻き込みたい」のではなく、「中国や北朝鮮に対する備えに米軍を巻き込むという口実での安保法案や憲法改正をやりたい」のが本音なのですから。
もうひとつは、フランスでのマリーヌ・ルペンのさらなる躍進です。彼女は、この選挙で「いろいろ学習」したでしょうから、自分の選挙戦に、トランプ的手法をさらに採り入れていくでしょう。
フランスに限らず、ヨーロッパの極右が活気づくでしょうね。
米国の孤立主義は、彼らにとっても好都合ということになります。
念のため繰り返しておきますが、これは「当たってほしくない嫌な予感」です。
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