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【第453回】 2016年11月8日 真壁昭夫 [信州大学教授]
韓国の歴代政権は、なぜ懲りずにスキャンダルを繰り返すのか
謝罪した朴槿恵大統領 Photo:YONHAP NEWS/AFLO
朴大統領の支持率が急低下
スキャンダルで揺らぐ政権基盤
韓国の朴大統領の支持率が急低下している。大統領が機密情報などを親しい友人に渡していたという、政治スキャンダルが発覚し社会を揺るがしている。朴槿恵(パク・クネ)の政権基盤は大きく揺らいでおり、国政の不安定感が急速に高まっている。
今回に限らず、韓国では大統領経験者が引退後や晩年にスキャンダルにまみれることが多い。その背景にはいくつかの要素が考えられる。その一つに韓国の伝統的なカルチャー=文化がある。
元々、韓国では個人的なつながりを重視する傾向がある。確かに、激烈な競争や権力闘争のなかでは、本当に信頼できる人材が有効であることは間違いない。しかし、そうした個人的つながりを重視しすぎると、政府要人などが抱える公的機能との区別が難しくなってしまう。
特に、多くの企業経営者などにとって、一部の有力者との知己を得ることで重要なアドバイスを得るメリットは大きい。同時に、政治家が政府外の知人と国家の情報をやり取りし始めると、機密情報は漏えいしやすくなる。その弊害は小さくない。
今回、情報を受け取っていたことが明らかになった崔順実(チェ・スンシル)という女性は、朴大統領の母親の暗殺を機に、父親の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領に取り入った人物の娘だ。
私的な関係が親から子に引き継がれて崔順実の権力が増すだけでなく、その考えが政治にも影響していたことを考えると、問題の根は深く、事態は深刻だ。こうした状況を長く見逃してきた、韓国の情報管理態勢は根本から見直されるべきだ。
また、韓国社会では一部のエリート層が社会に対して大きな力を持ってきた。そのため、韓国ではソウル大学などの名門大学に入学しようと受験競争がし烈化している。サムスンや現代のような財閥系の企業が経済を仕切っていることもあり、エリートや一部の権力者には、社会をコントロールできるとの意識があるのかもしれない。
今回のスキャンダルを見る限り、権力にすり寄ろう、それを使って私腹を肥やそうという考えも強い。韓国の政治・経済には公明正大とは言えない部分があることは確かだ。
「個人的なつながり」に起因する
韓国指導者のスキャンダル
韓国の政治、経済を振り返ると、これまでにも「個人的なつながり」に起因するスキャンダルが社会を揺るがしてきた。1980年〜88年まで大統領の座にあった全斗煥(チョン・ドファン)は不正蓄財罪などを問われ、一時は、死刑宣告を受けたほどだ(のちに恩赦)。
また、全元大統領の親族も不正に手を染め、1997年には元大統領に対して追徴金の支払いが命じられた。2013年には朴大統領によって“全斗煥法”が定められ、全元大統領の自宅、長男が経営する企業への捜査が行われた。
その後の大統領経験者も、親族等が収賄や不正献金を受けたことが明らかになっている。全斗煥の不正を明らかにした故金泳三(キム・ヨンサム)元大統領は、次男が民間企業から不正に金銭を授受していた。故盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領も、側近の贈賄や兄弟の不正な金銭授受が明らかになった。
李明博(イ・ミョンバク)前大統領は現代建設社長として同社を大企業にまで育てた手腕から、経済再生への期待を背負って政権の座に就いたが、ここでも不正資金を受け取っていた実兄が逮捕された。
また、経済界でも、自らの地位などを利用して私利私欲を追求した例は多い。中には大韓航空の“ナッツリターン事件”のように常識では考えられないようなケースもある。これは企業統治以前の問題だ。
足元では財閥系企業の経営不安が高まっている。例えば韓国財界5位のロッテは、親族間の内紛だけでなく、不正な政治工作資金のプールへの疑いから創業者である重光武雄会長、その息子らが在宅起訴される状況に陥っている。
そうした状況を見る限り、アジア通貨危機の際にIMFなどから“クローニー(縁故)資本主義”と揶揄された社会構造はいまだ根強い。景況感が悪化するにつれ、こうした問題が市場の関心を集めることも増えるだろう。
日本との外交方針も相談していたとの報道も
大統領の知人は政治判断に大きく影響
朴大統領と崔順実の関係は、1974年8月15日に文世光事件が発生し朴大統領の母親(陸英修〈ユク・ヨンス))が暗殺されたことまでさかのぼる。この事件を契機に現大統領と崔一族の関係が始まったとみられている。
大統領と崔順実は、わが国との外交方針をも相談していたとの報道が出ている。相当に、朴大統領はこの知人との関係を重視し、その存在が政治判断にも影響してきたとみるべきだ。
朴大統領の父親、朴正煕元大統領に関しては様々な評価があるものの、“漢江の奇跡”といわれる輸出重視の成長基盤を実績がある。それだけに、元大統領の娘、エリートとの印象は強く、就任当初は相応の期待を集めた。
現在の朴大統領は中国とは政治・経済面での協調を図り、わが国には歴史問題や領土問題で強硬路線をとった。そこには、国民の反日感情をあおることで、一定の支持率をキープする目論見があったのだろう。
しかし、ミサイル配備をめぐる中国との関係悪化、現代自動車でのストライキ発生(ストライキにより12年ぶりに生産ラインが停止)やサムスンのスマートフォン問題(ギャラクシーノート7の発火事故を受けて生産と販売を終了)から、韓国の置かれた状況は不安定だ。特に、ギャラクシーノート7の問題は、韓国中銀が2016年のインフレ率見通しと2017年の経済成長率を下方修正するほど影響が大きい。
今回のスキャンダルは韓国の通貨、株式への売り圧力につながっている。先行き懸念が高まりさらに通貨が売られるなら、わが国との通貨スワップ協定が必要になる可能性は高い。
そうなったとき、はたして朴大統領はこれまでの反日姿勢を撤回し、国民の理解を得えることができるだろうか。支持率が就任以来最低の17%程度に落ち込んだ中、これまでの反日路線を転換するにも、世論の批判が懸念されるため容易ではない。事実上、政権維持は限界を迎えている。
困難が続く韓国経済
韓国といかに付き合って行くべきか
今回のスキャンダルが、恐らく、わが国に与える目立った影響はないだろう。これまで韓国経済は、通貨安を追い風にして自動車や半導体などの売り上げを伸ばしてきた。
しかし、ここへ来て世界的に需要が低迷する中で、韓国企業は自動車のリコールなどを重ね、競争力を低下させてきた。韓進(ハンジン)海運の経営破綻など、韓国財閥系企業の経営は行き詰まっている。当面、韓国経済は苦しい状況が続くとみる。
その状況を韓国が自力で打開できるかは不透明だ。朴大統領は中国との関係を重視してきた。一方、中国には韓国を使って北朝鮮の暴走を抑え、朝鮮半島の安定を支えたいとの打算がある。
最近、韓国が高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)を配備したことによって、中国の対韓国政策が変化している。そうした状況を考えると、韓国が経済支援などを中国に求めることは現実的ではないだろう。
そうなると、韓国経済を支える頼みの綱の一つはわが国の協力ということになる。この状況をわが国はうまく使っていくべきだ。毅然とした態度で、自らの利益を第一に考え、韓国に接すればよい。
これからも韓国は歴史問題などを取り上げ、過去の反省を迫り有利な条件を引き出そうとするだろう。わが国は歴史の問題と、韓国の要請を区別し、支援する場合には相応の条件を突きつければよい。支援を求められたからと言ってそれに応えるのが義務ではない。あくまで、支援条件の決定権はわが国にある。
米国の大統領選挙後、国際社会の先行き不透明感は増しやすい。特にアジア太平洋地域では、中国の海洋進出など、安全保障への不安は高まる可能性がある。そうなったとき、最終的に自国の利益は自分で守るしかない。アジア経済の中でも、相対的にわが国が安定していることもあり、交渉の選択肢も柔軟に選べるはずだ。他国からの支援要請をうまく生かし、徐々にわが国のシンパを形成して国際的な連携を強化すべきだ。
http://diamond.jp/articles/-/107037
元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」
【第13回】 2016年11月8日 武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
韓国野党が朴大統領の弾劾訴追をためらう事情
市民の朴槿恵大統領退陣要求はこれから強まることも予想される Photo:AP/AFLO
朴槿恵大統領が
「国民への談話」で語ったこと
朴槿恵・韓国大統領は11月4日午前、国民向け談話を発表した。
その中で大統領は、まず一連の疑惑について「国民を深く失望させ、心配を掛けている」として改めておわびを表明した。そして、崔順実(チェスンシル)氏との関係については、長い付き合いで「警戒心が緩んだのは事実」と認めながらも「特定個人が利権をむさぼり、違法行為まで犯していた」として自らの関与を否定している。本当に大統領自身、崔順実氏の過ちの詳細を知らなかったのかもしれない。
朴大統領は続けて、「検察は真実を明らかにし、それを基に厳正な司法処理が行われなければならない」「今回の事件の真相と責任を究明する上で、最大限協力する。必要なら、検察の捜査に誠実に応じる覚悟だ。特別検察官の捜査まで受け入れる」として検察の事情聴取など捜査に応じる考えを表明した。そして、「誰であれ、捜査を通じて過ちが判明すれば、相応の責任を取らねばならず、私もすべての責任を負う覚悟がある」と述べた。
しかし、国内では経済不振に直面し、その立て直しは急務である。国外では北朝鮮が核実験やミサイルの開発を繰り返し、これらの大量破壊兵器の実戦配備が近づいている。こうしたことから、「国政は一時も中断してはならず」、「真相究明と責任追及は検察にゆだね、政府は本来の機能を一日も早く回復しなければならない」と訴え、辞任の考えはないことを強調した。
朴大統領は談話に先立ち2日、黄教安首相ら3人を更迭する内閣改造に踏みきり、新首相に革新系の金秉準国民大学教授を指名した。同教授は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で青瓦台の政策室長や副首相兼教育人的資源相を歴任した人物である。朴大統領は新首相に大幅な権限を与え、内政を事実上任せる意向とも伝えられた。
朴大統領が革新系の人物を首相に指名し、権限の委譲の意向をにじませることで野党に歩み寄る姿勢を示したのは、「挙国中立(一致)内閣」を要求する野党に先手を打ち、人事権を手放すことを避け、引き続き国政を担う意思を示したものであろう。
しかし、共に民主党、国民の党、正義党の3野党はこの人事を「一方的な国政運営」だとして一斉に反発し、首相任命の前提条件となる国会の人事聴聞会をボイコットする方針を決定した。
談話では大統領は首相任命の際に伝えられた、権限を大幅に移譲する意向に言及せず、まして与野党で合意した首相の受け入れにも同意していない。こうした姿勢に対し、韓国の主要紙は批判的に報じている。大統領の権限を手放し、国政への関与を薄めるよう求める論調が目立っている。
機密情報漏えいに加え
崔氏の娘の不正入学疑惑も
そもそも朴大統領が談話を発表したのは、ソウル中央地裁が3日、検察が要請していた崔順実氏の逮捕状を発布したからであろう。
また、大統領府の金鍾範(キム・ジョンボム)前政策調整首席秘書官と共謀して大企業に資金を出すように強要し、自身が関わる会社を通じて財団から70億ウォン(6300万円)をだまし取ろうとした容疑が持たれている。検察は金氏についても職権乱用で逮捕した。
さらに、朴大統領の際側近の一人で崔容疑者に内部資料を運んでいたとされるチョン・ホソン前秘書官も秘密漏えいの容疑で逮捕された
崔順実氏の今回の逮捕は、財団を巡る疑惑に関連したものであり、国政介入疑惑は含まれていない。この容疑で再逮捕となれば国民の怒りはより激しくなるであろう。
崔順実氏については、これ以外にも娘の不正入学の問題が取り上げられている。娘は、仁川アジア大会で馬術の金メダルを獲得したが、本来選考対象でない馬術での特待生として名門の梨花女子大学体育科学部に入学できたとの疑惑である。
格差社会の韓国では、子どもを有名大学に入れるため、家族の生活を犠牲にして受験勉強に邁進するが、有名大学に入っても良い就職は保障されない。しかし、一部の特権階級は金や政治的コネでいい思いをしているとして反発が強くなっている。このように傍若無人な崔順実氏に操られているとして、朴大統領に対する国民の怒りが爆発した中で、崔順実氏の逮捕に合わせ国民への謝罪を行わざるを得なかった。
さらに、国民は朴大統領に対する捜査の要求を強めている。これを受け、金秉準首相指名者は3日の記者会見で、「大統領を含むすべての国民は法の下で平等。私は大統領の捜査はできるという立場だ」と述べた。
さらに、朴政権下の金賢雄(キム・ヒョンウン)法務部長官も国会答弁で「真相究明のため、必要と判断すれば、捜査が可能か検討する」と朴大統領を庇うことはしなかった。韓国では大統領と閣僚は主従のような関係にあるにもかかわらず、である。
与党セヌリ党からも大統領が国民の前に真相を明らかにし、謝罪して捜査を受けるべきだとの声が上がっている。大統領は国民の支持率が5%と歴代大統領で最低に落ち込み、与党や政権内でも庇うものがいない四面楚歌状態に置かれている。
韓国の大統領は、国会に対しては野党の数の力もあって、影響力は限られているが、それ以外の分野では絶対的な権力を有している。大統領の意向次第で韓国の政治も経済も左右される。しかし、四面楚歌となった大統領にはこうした力は残っていないであろう。
今後の捜査や政局は
どのように進展するか
談話はこうした背景の下で発せられたものである。国民に対する謝罪や検察の捜査への協力に言及しているが、大統領権限の委譲を最小限に食い止めようとする朴大統領の意図を受け、国民が納得するまではいかないものとなった。
朴大統領の考えを推測すれば、「国民に対する謝罪と真相の究明そのための検察による捜査は避けられない。また、内政の実権をある程度譲ることはやむを得ないであろう。しかし、北朝鮮の挑発と核・ミサイルの実戦配備は近づいている。外交安保の課題は差し迫っている。北朝鮮に対する宥和政策を続けてきた野党には任せられない。したがって、辞任はできず、外交安保の実権は確保したい。そのためには人事権も手放せない」という判断ではないか。
検察も史上初めての大統領の聴取をどのように進めるのか難しい選択を迫られよう。大統領府への捜査員派遣や書面による聴取といった形で捜査を実施するとの見方があり、それは制約の下で行われる可能性がある。そして、大統領が崔順実氏の国政介入疑惑は否定する、辞任に結びつくような証言は避けるとの姿勢では、検察の捜査を受けても国民の満足する結果を得ることは困難であろう。
いずれにせよ、大統領が関与を認めても否定しても、国民の大統領に対する批判が一層強まるのは避けらず、求心力の回復にはつながりそうもない。また、不十分な捜査への国民の批判が高まることも考えられる。
朴大統領は辞任を
回避できるのか
それでは、検察の捜査の結果を受けての政局はどうなるのか。最大野党の「共に民主党」は野党が提案する特別検事を受け入れたうえで、国会で推薦した首相に全権を委ねて国政から手を引くよう要求している。これに応じなければ「政権退陣運動」を始めると宣言している。
しかし、前述のように朴大統領は辞任を避けたいと考えているであろうし、政治の実権、特に外交安保分野の権限を手放すことには消極的であろう。野党は北朝鮮に対して圧力よりも対話を優先する姿勢であり、それは北朝鮮の核ミサイル開発を一層発展させ、取り返しのつかないことになりかねない。常に国のことを一番考えているのは自分だと自負する大統領としては、対北朝鮮関係を野党には任せられないと考えても不思議はない。
加えて、朴大統領は父である故・朴正熙大統領が暗殺された後、隠遁生活を送っていたが、再び社会の前面に登場した背景には、朴正熙大統領が独裁政治を行ったことや歴史問題を整理せずに日本と国交正常化を行ったことで批判されている現状を踏まえ、父親の名誉回復を図りたいという意図があった、と言われている。そうした、朴大統領が自身の不名誉な疑惑で退陣するのは潔しとしないであろう。
かといって、今さら「名誉ある撤退」などという道が残っているだろうか。
すでに、国民の多くは既に朴大統領の退陣を求めている。5日夕、ソウル市中心部の光化門広場には朴大統領の退陣を要求する革新系の労働組合や市民団体が主催したデモが開かれ、警察の推計でも4万5000人が集結した。こうした市民の退陣要求はこれから強まることも予想される。朴大統領にはこれを静める良い手立てはないであろう。
朴大統領が進退について決断するとしても、当面は、検察による事情聴取まで様子見か。
焦点は来年の大統領選挙
弾劾訴追は野党にも功罪相半ば
では、朴大統領がその地位にしがみつく場合、どのような対応が考えられるか。
韓国の大統領は内乱罪などを除き、在任中に訴追されることはない。大統領を罷免に追い込むには、国会に弾劾訴追案を提出する必要がある。弾劾訴追案の可決には国会在籍議員の3分の2の賛成が必要である。野党の票だけではこれに達しないが、与党であるセヌリ党も親派と非朴派に割れており、何よりも与党が朴大統領を庇うことができなくなっていることから、弾劾訴追案が可決する可能性はある。可決されれば、大統領の権限は停止され、首相が職務を代行することになる。その後、憲法裁判所において弾劾の最終判断が行われる。9人の憲法裁判官のうち6人以上の賛成で弾劾が決まるという流れだ。
しかし、国民は権力の空白を望まず、世論の批判を受ける可能性がある。
2004年、当時の野党だったハンナラ党は、盧武鉉大統領の弾劾訴追案を可決させたが、大統領への同情や相手陣営の結束を招いて直後の総選挙で大敗した。これを受け、憲法裁判所は弾劾を棄却し、盧武鉉大統領は63日で職務に復帰したという例がある。
2017年末には大統領選挙がある。野党が大統領弾劾を可決させて、政治空白を生じさせ、世論のバッシングを受けるよりも「死に体」となった朴大統領を残し、政治的な実権は取り上げ、スキャンダルを引きずった与党とのイメージを残しながら大統領選を戦う方が得策との判断もあろう。
朴大統領が野党首脳との会談を提起したとの報道があるが、野党との党首会談のあとに、与野党で首相を決めて、大統領に呑ませるという選択肢はあろうが、野党の革新色は強いので、果たして合意できる候補者はいるのだろうか。こそもそも野党に朴大統領を助ける必要はない。朴大統領としては、野党の協力を得ないと前に進まないので、妥協するのか。その場合完全なレームダックとなるだろう。
今回、野党が弾劾訴追を行うか否かは、今後大統領に対する辞任要求がどの程度強くなるかにかかっている。
一方、与党セヌリ党にとっても、このままでは来年の大統領選挙での敗北は避けられないであろう。その場合、再び革新系の政権が5年、10年あるいはそれ以上続くことになる。朴大統領を擁立した与党では大統領選挙は戦えない。
この問題が起こるまで、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が帰国して、与党から大統領選挙に立候補するとの憶測が広がっていた。しかし、韓国の政界通によれば潘基文氏は与党から立候補しても勝ち目はなく立候補するとしても無所属であろう、と指摘している。他の候補者にしても同じであろう。
朴大統領と一線を画するとすれば、朴大統領に離党を促すか、与党を再編するかであろう。李明博(イ・ミョンバク)大統領から朴大統領にかけての、10年間の保守党政権で経済が停滞し、格差社会が拡大した。保守の立て直しには、朴大統領の離党だけでは済まないであろう。有力な人望のある指導者が出てこない限り大きな困難が予想される。
いずれにせよ、現状では朴大統領にとっても、与野党にとっても難しい選択が待ち受けており、出口のない状態が当面続くであろう。
慰安婦問題は再燃の懸念
日本は従来姿勢を貫くべき
現在の韓国の政局が日韓関係にどのような影響を与えるかなど、韓国の外交懸案については機会を改めて、より詳細に解説したい。ただ、慰安婦問題については一言、付け加えておこう。
これまで朴政権は慰安婦の説得に全力を挙げてきた。以前の韓国の政権は韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)など関係団体と協議してきた。しかし、こうした団体は自己の主張が満足されない限り妥協しない。朴政権はこうした団体に属さない元慰安婦の説得にあたり、そうした元慰安婦のほとんどの理解と協力を取り付けつつあった。
しかし、朴大統領の影響力が弱まった現在、挺対協などは再び大きな声を上げるであろう。
そして、韓国の野党が内政の実権を握れば、挺対協を支持するかもしれない。これに対し、日本はこれまでどおり、すでに日韓間で合意したので、これを変えることはできないとの姿勢を貫けばいいと考える。
挺対協は、この問題で日韓間が対立している時、米国に赴き日本の不当性を訴えてきた。しかし今米国は、この問題は解決済みとの理解であり、韓国に加勢することはないであろう。したがって、挺対協や韓国の野党が騒いでも日本は構わなければいいのではないか。
要は、韓国政府の方針が変わるか否かではなく、日本がどう対応するかである。ただ、慰安婦像の撤去は、より困難になることが危惧される。
(元・在韓国特命全権大使・武藤正敏)
http://diamond.jp/articles/-/107041
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