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国民皆保険も風前 弱肉強食TPPを数の暴力で押し切るのか
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/192998
2016年11月1日 日刊ゲンダイ 文字お越し
なぜ急ぐ?(C)日刊ゲンダイ
多くの国民は戸惑っている。政権与党はTPP承認案と関連法案の採決を急ぎまくっているが、先週末実施の共同通信の世論調査によると、「今国会にこだわらず慎重に審議するべきだ」との回答は66.5%。同時期に日経新聞が実施した調査では、今国会での承認の賛否について「いえない・わからない」「どちらともいえない」が合わせて3割弱に達した。
TPPについて、大半の国民はチンプンカンプン。安倍政権から、ほとんど何も知らされていないのだから、当然の結果である。
安倍首相は「国民に丁寧に説明する」と言いながら、8400ページを超える協定の関連文書のうち、国民に開示した和訳は2400ページ分にとどまる。7割以上が日本語になっていないとは、国民に説明する気はサラサラないのだろう。
そもそも、これだけ大量の文書に、政治家が目を通しているとは思えない。官僚だって全容をきちんと把握している人物が本当にいるのか、実に怪しいものである。
「つまり審議の前提が成り立っていないのです。TPPが扱うテーマは農産品の関税撤廃だけでなく、環境や労働、知的財産など21分野にも及びます。しかも、関連文書は内容も表現も複雑かつ難解です。重要かつ広範な領域にわたる複雑怪奇な条約によって、国民生活はどの分野でどんな影響を受けるのか。一つ一つのテーマを深く掘り下げた審議を尽くすべきなのに、協定の中身が一般の国民はおろか、政治家や官僚の大部分にも皆目、見当がついていない可能性がある。もうムチャクチャですよ」(政治学者・五十嵐仁氏)
かような状況で採決だけを急ぐなんて、横暴極まりない。安倍首相は、とても正気の沙汰とは思えないのだ。
■11もの関連法案を十把一絡げの一括審議
公表された交渉経過の資料も全45ページ中、表題以外はすべて黒塗り。交渉の直接の担当者だった甘利明前大臣は口利き疑惑で辞任したきり、その後は説明責任を完全に放棄している。「何から何まで真っ暗闇よ」と古い歌の一節がチラつく秘密主義だが、特別委員会の運営も乱暴すぎる。
一概に「TPP関連法案」と言っても、著作権法や特許法など7つの改正案に加え、農業支援の4つの新法案と計11本を数える。「十把一絡げの一括審議」と批判された安保関連法の数に匹敵するのだが、政権与党は性懲りもなく、TPP関連11法案も束ねて一括審議をゴリ押し。
そのうえ、審議時間も圧倒的に少ない。自民党からは「タイムリミットが近づいている」(田村憲久政調会長代理)との声も上がっているが、冗談じゃない。10月31日の集中審議の開催まで、今国会で特別委が開かれたのは、たったの7日。審議時間は計26時間50分と、1日あたり4時間にも満たないのだ。
そのため、議論は緒についたばかりで、21分野にも及ぶTPPの問題点について十分な質疑は尽くされていない。「重要5項目の聖域」や「食の安全」は辛うじて議題に上るものの、それ以外の分野はどうなっているのか、ちっとも伝わってこないのだ。
命の沙汰もカネ次第に(C)日刊ゲンダイ
国民の生存権を否定する条約批准を急ぐ愚
TPPがもたらすデメリットは農業分野だけにとどまらない。特に恐ろしいのが医療分野だ。日本が世界に誇る「国民皆保険制度」が事実上、崩壊しかねないのである。
安倍政権は国民皆保険制度について、TPPの例外事項との認識だ。塩崎厚労相も今国会で「懸念はない」と答弁した。確かに協定の合意文「第11章(金融サービス)」には、TPPの適用除外事項として〈公的年金計画又は社会保障制度に係る法律上の制度の一部を形成する活動やサービス〉が挙げられている。
一見、日本の社会保障制度が守られているようにも読めるが、すぐ近くに次のただし書きがわざわざ盛り込まれている。
〈ただし、締約国が自国の金融機関に対し(中略)公的機関または金融機関との競争を行うことを認める場合には、当該活動又はサービスについて(TPP協定を)適用する〉――。これこそ国民皆保険制度を骨抜きにする“抜け道”なのだ。TPPに詳しい九州大准教授の施光恒氏(現代政治理論)が説明する。
「ただし書きにある『金融機関』には、アフラックのような外資系の民間保険会社も含まれます。日本国内でも、保険適用外の先進医療を受けた場合、その分を自己負担で賄う事実上の混合診療がスタート。すでに多くの保険会社が、自己負担分の先進医療費を対象にした保険商品を売り出しています。この状況こそ、ただし書きの『金融機関の競争を認める』ケースに該当するのです。TPPは、外国へ投資するグローバル企業の利益保全のための『ISD条項』を定めており、その行使対象として国民皆保険制度が狙われそうなのです」
ISD条項では、グローバル企業が投資対象国の制度変更などで不利益を被ったと感じただけで、その国の政府を国際裁判所に訴え、損害賠償や制度の撤廃を要求できてしまう。政府の手足を縛ることから「毒素条項」とも呼ばれている。
従来なら、いずれ保険適用の治療法リストに加えられたはずの先進医療も、TPP発効後はISD条項がネックとなって、適用されにくくなってしまう。日本国内で先進医療を対象にした保険商品を販売する外資系保険会社が「不利益を被る」と言い出しただけで、日本政府は震え上がることだろう。
■待ち受けるのは「何でもカネ」の荒んだ社会
行き着く先は国民の生存権の否定だ。TPP発効後に国民皆保険制度で賄いきれるのは、次第に陳腐で時代遅れの治療法や医薬品ばかりになってしまう。憲法25条に定められた「生存権」に基づき、すべての国民が平等に医療を受けられることを前提にした制度が、やがて音を立てて崩れ去っていくのだ。前出の施光恒氏が警告する。
「最先端の治療法を受けられるのは高額な民間保険に加入できる富裕層のみ。貧しい庶民は時代遅れの治療法しか受けられない。TPP発効後は、そんな米国型の医療崩壊が待っているのです。こうした弱肉強食の制度導入は、日本政府の思惑とも一致します。これ以上の医療費増大を防ぎ、なるべく民間の保険会社に頼りたいのが、現政権のホンネですからね。TPPが恐ろしいのは、社会基盤の切り売りが国民皆保険制度だけで済みそうにないこと。この国の基本を成す教育や労働など、あらゆる制度が市場原理の対象となり、グローバル企業に侵食されてしまう。結果的に日本全体が売り渡されることになりかねないのです」
TPPの発効後は何でもカネで片づく世の中となり、カネのない庶民はじわじわとなぶり殺される運命が待っている。
こうした懸念について、政治家や官僚たちが議論を尽くし、メディアも巻き込み、一般国民が十分に情報を共有してから初めて、TPPを批准すべきかどうかを決めればいいのだ。それでこそ「民主主義的手続き」と言えるのだが、安倍政権はハナから国民の理解を得ようとは考えていないような態度である。
「安倍政権の数の力によるTPPゴリ押しは民主主義の否定に他ならない。国民に真相を知らせない典型的な愚民政策で、つべこべ言わずにオレ様たちに従っておけという驕り高ぶった意識すら感じます」(五十嵐仁氏=前出)
弱肉強食のTPPを数で押し切る暴力政権を許していたら、国民は確実に不幸になる。いつか「何も知らされていなかった」と嘆いても、後の祭り。「自己責任」のひと言で、容赦なく切り捨てられるだけだ。
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