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TPP批准阻止と安倍政治打破の方策ー(植草一秀氏)
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28th Oct 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
衆議院のTPP特別委員会で安倍政権与党がTPP批准案の採決を強行しようとしている。
しかし、TPPの広範な問題について、判断するための情報は明らかにされておらず、
審議が不十分であることは明白である。
交渉参加国は批准を急いでいない。
また、85%ルールで、米国が批准しない限りTPPは発効できないが、
その米国で批准の見通しが立っていない。
大統領選後に米国が批准に進むことがあるとしても、
その場合には、TPPの内容の見直しが行われると見られている。
この事情があるから、交渉参加国はTPp承認手続きを急いでいない。
米国の動向を見極めなければ国益を守っての対応ができないからだ。
TPPは例えば関税率の引き下げひとつとっても、日本に不利な条約である。
関税が撤廃されれば日本が輸出を増やせると言うが、
日本が輸出を増大させる場合の最有力候補である自動車について、どのようなことが合意されたのか。
米国の自動車輸入の関税率については次のように決定された。
乗用車:現行の2.5%の関税率が14年間据え置きされ、15年目から引き下げが開始し、20年目で半減、
25年目に撤廃
トラック:現行25%の関税率が29年間維持され、30年目に撤廃
驚愕の内容である。
米国の自動車輸入の関税率は、
乗用車では14年間、トラックではなんと29年間も引下げがゼロなのだ。
他方、日本が重要5品目に挙げた重要産品の肉の関税率はどうなったのか。
牛肉;現行38.5%の関税率が発効と同時に27.5%に引き下げられ、10年目に20%、
16年目には9%に引き下げられる。
豚肉:現行キロ当たり482円の関税が発効と同時に125円に引き下げられ、
10年目から50円に引き下げられる
重要5品目とは、TPP交渉の関税撤廃の例外品目にすることについて、国会でも議決された品目である。
2013年4月19日に、衆院農林水産委員会は国会決議のなかに次の規定を盛り込んだ。
一 米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、
引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。
十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。
ところが、TPP最終合意で、関税率引き下げの「除外項目」とされた品目はひとつもなかったことが
国会審議で明らかにされた。
そのなかの、最重要品目である牛肉、豚肉についてさえ、
最終合意で決定された関税率の引下げは上記のものなのである。
自動車の関税が14年間、29年間、まったく引き下げられないのとは対照的に、
肉の関税はTPP発効と同時に大幅に引き下げられることになる。
つまり、日本の国益を守る交渉など、まったく行われていないのである。
これは関税率の問題だが、TPPの問題は関税率にとどまらない。
関税率の引き下げなど、TPP全体から見れば、ほんの一部の事項に過ぎないのだ。
食の安全・安心が崩壊する。
公的医療保険制度が崩壊する。
労働規制が全面的に改変されてしまう。
金融サービスにおいて激変が生じる。
国民資金が外資に収奪される。
そして、日本の国家主権が喪われる。
極めて重大な問題が存在する。
TPPの恐ろしさは、現時点で全貌が明らかにならない点にある。
秘密交渉で交渉内容が明らかにされていないことも問題だが、
それ以上に大きな問題は、ISD条項などを活用した今後の経緯を通じて、
日本の諸制度、諸規制が改変される可能性が高いことが最大の問題なのだ。
現時点では明らかになっていないが、
今後、日本がTPPに参加した将来時点で発生する問題が無数に想定できることが問題なのだ。
臨時国会で批准を強行するべきでない。
しかし、ハゲタカ資本の命令を受けている安倍政権は、これを臨時国会で強行承認しようとしている。
「数の力」で押し切る場合には、次の総選挙で自・公・維を大敗させることが絶対に必要だ。
野党は総力を結集して、拙速採決を阻止しなければならない。
最低目標ラインは、衆院採決を11月2日以降に先送りさせること。
参院での自然承認の状況を作らせないこと。
野党は最低でもこのラインを死守しなければならない。
衆議院TPP特別委では、民進党の福島伸享議員などが提起したSBS米の価格偽装問題が
まったく解決していない。
輸入業者が「調整金」の形態で表面価格よりも安い価格で輸入米を販売していた事実が明らかになっている。
ところが、農水省は調査をしたにもかかわらず、この事実を認めない。
真実をねじ曲げて、押し通している。
国会質疑で山本農水相に代わって調査内容について説明している政策統括官の唐澤彰氏は
私の大学時代のクラスメート、草野球の仲間でもあるが、国会答弁を行う以上、事実を正確に述べるべきである。
実際にヒアリングをした結果として、調整金によって表面価格よりも安い価格で輸入米を販売していたことは、
メディア等の聞き取り調査によって明らかにされているのであり、これを否定することは許されない。
米の輸入により、安い価格のコメが流通すれば国内産価格に影響するのは理論的に明らかであり、
価格に影響がないとする農水省見解は根拠がない。
福島伸享議員は、このような調査を前提とした影響試算をベースにした審議はできないと主張するが、
当然の主張である。
農水省に調査報告書を再提出させ、その上で審議をやり直すべきことは当然である。
TPPの内容は広範囲に及び、しかも、交渉過程が隠蔽されている。
発表されている文書は日本語のものではなく、
政府は最終合意文書の3分の1も日本語訳として情報提供していない。
日本は米国に次ぐ交渉参加国中第2位の経済大国である。
英語、スペイン語、フランス語の正文があるのに、日本語の正文がないことからして、不当な条約なのである。
日本の政治家は完全に骨抜きにされている。
米国は力の強い国で、日本を実質的に支配している。
政治家も、米国の命令に従っておけば、身分は安泰、経済的にも高い処遇を得られる。
しかし、そんなことで、日本国民の幸福を守る姿勢を失うくらいなら、政治家などやめてしまうべきだ。
稲田朋美防衛相は、かつて、TPPは
「日本文明の墓場行きのバス」
と明言していた。
TPPは日本の国益、日本国民の利益を損なうものだと明言していた自民党議員が多数存在する。
2012年12月の選挙では、
「ウソつかない!
TPP断固反対!
ブレない!」
「TPP交渉への参加に反対!」
と大書きしたポスターを貼り巡らせて選挙を戦ったのではないか。
その自民党議員が、この現状を目の当たりにして、沈黙しているのはどういうことなのか。
米国にひれ伏すポチだらけになって、日本国民の幸福を守れるのか。
この問題をもっとも真剣に考えなければならないのは主権者国民だ。
これからの政治においては、主権者が主導的役割を果たさなければならない。
日本の政治をここまで悲惨な状況にした主犯は
民主党=現在の民進党
である。
2009年の政権交代の偉業を成し遂げた、本当の功労者を追放して、
権力とポストだけを横取りした悪党が民主党、そして今の民進党の中心に居座っている。
そもそも、百害あって一利なしのTPPを持ち込むきっかけを作ったのは、
菅直人氏
と
野田佳彦氏
である。
だから、いまの自公と民進党内の悪党は共犯関係にある。
これから、日本の政治を立て直すためには、民進党を
悪党と悪党以外に明確に分離しなければならない。
民進党が分離しない場合には、主権者が民進党を分離する必要がある。
主権者が支援できる議員、候補者と
主権者が支援できない議員、候補者に
分離するのだ。
この主権者の支持がなければ、民進党議員、候補者は
絶対に当選できない。
民進党を丸抱えで野党共闘を成立させることは正しくない。
政策を基軸に、候補者を選別することが何よりも重要だ。
問題の背景には、連合が「御用組合連合」に仕切られているという重大な問題がある。
民進党内の悪党と、連合を仕切る御用組合連合と決別すること。
それが、日本政治立て直しの第一歩になることを主権者が明確に確認することが極めて重要である。
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