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自民改憲草案の怖さとは…意見広告150本の弁護士が語る 注目の人 直撃インタビュー
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/192194
2016年10月24日 日刊ゲンダイ
升永英俊氏は2009年から新聞各紙に意見広告を投稿している(C)日刊ゲンダイ
発明対価を争った青色LED訴訟を勝ち取り、長者番付に名を連ねた百戦錬磨の弁護士・升永英俊さんが、賛同者とともに新聞各紙にたびたび意見広告を出している。その数、150本以上。1票の格差是正の訴えに始まった意見広告は、憲法改正にテーマを広げている。ズバリ指摘しているのが、自民党の改憲草案に並べられた緊急事態条項や言論の自由を奪う怖さだ。
■ヒトラー独裁にも“緊急事態”は利用された
――改憲草案を批判する意見広告を出そうと思われたきっかけは?
改憲草案98条、99条で戦争や内乱、大規模災害が発生した場合に首相は「緊急事態宣言」を出せるとしています。これは9条改正とは比べものにならないほど怖いものなんです。麻生財務相が「ナチスの手口に学んだらどうかね」などと発言して物議を醸したことがあったでしょう。僕の頭の中で、緊急事態宣言と麻生発言がリンクした。そうしたら、腹の底から恐怖心が湧き上がってきた。マスコミが取り上げないので、意見広告を出して世間にその恐ろしさを訴えているんです。
――麻生発言というのは、2013年の講演会での「ワイマール憲法がいつの間にかナチス憲法に変わっていたんですよ。誰も気が付かないで変わったんだ。あの手口に学んだらどうかね」ですね。
ヒトラーは第1次世界大戦や世界恐慌で疲弊したドイツ経済を立て直し、失業率を改善。それで、国民の圧倒的支持を背景に1933年3月に全権委任法を成立させ、独裁を完成したとされている。僕もそう思い込んでいて、民主主義にもリスクが潜んでいる、多数決は危険だと考えていた。ところが、調べてみると全くの誤解だった。ヒトラー独裁は、国政選挙での多数決によるものではなかった。
――どういうことですか。
ヒトラー内閣の発足が33年1月。その直前の総選挙でヒトラー率いるナチ党の得票率は33・1%に過ぎませんでした。そこで、ヒトラー政権は大統領に2回の緊急事態宣言を発令させた。1回目の宣言で報道や言論の自由を停止。国会議事堂放火事件の直後に2回目の宣言を出し、ほんの数日間で約5000人を逮捕・拘束したのです。それで一気に独裁政権を樹立した。33年11月の総選挙でのナチ党の得票率は92・2%という異常な数字に達したのです。
――緊急事態宣言を巧妙に利用し、恐怖政治で国政の多数決を仕立て上げた。
国会議事堂が焼失したため、全権委任法を成立させた国会はクロル・オペラハウスで開かれました。オペラハウス周辺や議場代わりの会議場には銃を手にした突撃隊(SA)や親衛隊が配置されていた。会議場の正面には大きなカギ十字を描いた旗が掲げられていました。そうした異様な雰囲気の中で採決が行われたんです。国会の決議と呼べるようなものではなかったんですよ。緊急事態宣言がそうした異常事態を可能にしたんです。80年以上前の出来事ですが、いまトルコが置かれている状況はこれと非常に似ています。
■“お手本は”とトルコと中国
――トルコでは7月のクーデター未遂事件を受けて、エルドアン大統領が、「非常事態宣言」を発令しました。
マスコミは「非常事態宣言」と表記していますが、あれは緊急事態宣言そのものです。それ以降、大規模な粛清を行っている。まるで魔女狩りです。3万5000人以上を逮捕・拘束し、8万人以上を免職や停職処分にしたと伝えられています。エルドアン大統領も緊急事態宣言で独裁政権を確立した。これが緊急事態宣言の怖さなんです。
――それでも、自民党などの改憲派は緊急事態条項を支持しています。
改憲派は自然災害に備えるために緊急事態宣言条項を定めた改憲草案98条、99条が必要だと主張しています。しかし、地震や津波といった自然災害などへの対処は、現憲法で十分に対応できます。すでに▼災害対策基本法▼武力攻撃事態法▼原子力災害対策特別措置法▼石油コンビナート等災害防止法――が整備されています。不足があれば補強するなり、新法を制定すればいいのです。憲法改正は不要です。
「悲観からま何も生まれない」と升永弁護士(C)日刊ゲンダイ
広告のために沈黙するマスコミ
――最近の意見広告では言論の自由の停止をクローズアップされていますね。自民党改憲草案と中国憲法がソックリだと指摘しています。
改憲草案21条1項は表現の自由を認めていますが、2項で〈前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない〉としている。1項を全否定しているのです。この仕組みは中国の憲法と実質的に同じです。中国憲法も35条で〈国民は、言論、出版、集会、結社、行進、示威行動の自由を有する〉とし、言論の自由を保障しています。示威行為やデモまで認めています。ところが、51条で〈国民は、自由と権利を行使する時は、国家、社会、集団の利益および他の国民の合法的自由や権利を害してはならない〉とうたっている。つまり、35条を否定しているのです。自民党改憲草案も中国憲法も「公」を優先しています。
――抜け道をつくっているわけですね。
改憲草案がそのまま成立すれば、共産党による事実上の一党支配が続く中国と同じような状況が生まれかねません。中国の国民が直面しているリスクを日本の国民も背負わされる可能性があるのです。改憲草案21条2項は現憲法が保障する言論の自由を明らかに否定しています。これは右寄りの人にとっても、左寄りの人にとっても受け入れがたいことでしょう。
――自民党が改憲草案で緊急事態条項にこだわる理由は何だとお考えですか。
正義感でしょうね。尖閣諸島をめぐり、中国との緊張が高まっている。有事が起こった場合のことを絵空事や机上の議論ではなく、本当に真剣に考えているんだと思いますよ。だから、右寄りの人たちも賛同する。だから非常に厄介な問題なんです。でも、これを通したら日本はおしまいです。アウトですよ。
――マスコミがこうした事実を報じないのはなぜだと?
政権与党は法人実効税率を29%台まで大幅に引き下げるなど、企業を優遇する政策を取っています。一部の企業が自公政権の継続を望むのは自然の流れだと思いますよ。マスコミの収入は広告が柱でしょう。政権に不利な報道をするマスコミへの広告を止めるとにおわせられたら? 実際、自民党の若手議員らが集まった勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい」「沖縄の2紙は潰さなければいけない」といった趣旨の暴言が平然と吐かれていました。
■3000万人の反対で止められる
――改憲勢力で3分の2を手にした安倍政権はこの臨時国会で憲法審査会を再始動させます。仮に、国会採決を突破したとしても、改憲には国民投票で過半数の賛成が必要です。
投票人が約6000万人。3000万人が反対票を投じれば止められます。世間が自民党の改憲草案の恐ろしさを知れば、そう簡単に通るわけがありません。意見広告を繰り返し出せば、阻止するチャンスが膨らむでしょう。僕はチャンスがないことはやりません。悲観論からは何も生まれない。楽観主義者しか結果を出せないと思っています。
(聞き手=本紙・坂本千晶)
▽ますなが・ひでとし 1942年、鹿児島生まれ。東大法学部、工学部卒。米コロンビア大ロースクール修士号取得。日本、ワシントンDC、ニューヨーク州の弁護士資格を持つ。「一人一票実現国民会議」「一人一票の国民投票で首相候補を選ぶ会」に参加し、09年から新聞各紙に意見広告を出稿。一票の格差の是正を求めて全国で違憲訴訟を起こしている。
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