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輸入米SBS/価格決定過程に不透明さ/既得権益の温床に
新潟日報[4面] 2016年10月23日
環太平洋連携協定(TPP) に関する国会審議で、事業者間の不透明な金銭のやりとりがあったとして輸入米の売買同時入札(SBS)が問題になっている。米価に影響はないのか。入札はどのような仕組みで、何が本質的な問題なの
納税者が犠牲の懸念も
日本の米の関税は1キロ当たり341円の従量税。極めて高いため、民間の輸入はほとんどない。一方、政府は毎年約77万トンを無税で輸入している。ウルグアイ・ラウンドの合意時に対外的に約束したミニマムアクセス(最低輸入量)を埋めるためだ。大半は加工用で、政府が買い付けた後、国内の卸業者に売り渡す際に、マークアップ(輸入差益)を上乗せする。
安い輸入価格に「げた」を履かせて値段を高くするのは、国産米への影響を抑えると同時に、その収入を稲作農家の支援策の財源にできるからだ。マークアップは実質的に関税と同様の役割を果たしている。
■商社と卸がペア
政府が輸入する米のうち、主食用はSBS(英語の頭文字)と呼ばれる特殊な方式で調達している。米を輸入する商社は国内の卸業者とペアを組んで入札する。
形式上は国が仲介するが、実質的な直接取引で、実需に見合って柔軟に輸入するのが狙いだ。国はマークアップの幅がもっとも大きい業者の組み合わせから順次、落札していく。上限は年間10万トンだが、TPPが発効すれば米国産とオーストラリア産に対して合計で最大約7万8千トンの輸入枠を追加することが決まっている。
SBSだと、政府は在庫を抱える必要がなく、買い取った後の値下がりリスクもない。米国の生産者や集荷業者も、日本の商社や卸業者も損をしない。運用が適正なら、「三方得」の仕組みだ。
■米価影響に不安
しかし、輸入商社が卸業者に「調整金」という名目で、リベートを渡していたことが表面化。「調整金」を受け取った卸業者がその分だけ値引き販売して安い輸入米が流通している疑惑が生じた。農林水産省は10月7日に、一部の業者間で金銭のやりとりがあったと認める調査を発表したが、「国産米の価格に影響はなかった」と説明した。野党は「調査がずさんだ」と納得していない。
さらに別の疑念もある。本来、国に納入されるはずのマークアップの一部が「調整金」の分だけ圧縮されている疑惑だ。この場目の犠牲者は、直接の痛みを感じない納税者全体だ。この点について国会で問われた山本有二農相は「可能性はある」と歯切れが悪い。
SBSの最大の闇は、政府の買い入れ予定価格が入札時期や品種ごとに複雑に設定され、事後的にも一切公表されていないことだ。このため、「入札」でありながら、価格の決まり方は不透明だ。買い入れ価格が割高だと、その超過利益を日米双方の流通業者の間で山分けできる。つまり、必要以上に高い「げた」が既得権益となり、「調整金」の原資になっている可能性があるのだ。
他にもミニマムアクセスには謎が多い。政府は「偶然だ」と説明するが、政府が輸入する米のうち米国産の比率が毎年ほぽ半分を占め安定している。既得権益を守る密約がありうるのだ。
こうした疑惑を解明するには、最低限、SBSに参加した業者間の金銭授受に関する調査をやり直すことが不可欠だ。
TPPの理念に逆行
解説 国が直接輸出入する国家貿易は、最も強力で古典的な管理貿易の手法だ。日本の米市場は形式上、関税を支払えば輸入できる仕組みになっているが、実態は輸入のほぽ全量を国が管理している。しかも環太平洋連携協定(TPP)で、売買同時入札(SBS)を増枠する。その内容も、対日輸出実績がある米国とオーストラリアだけを優遇する露骨な既得権益保護であり、貿易の自由化とはまったく逆の先祖返りだ。
日本の米の輸入手続きだけではない。TPPの条文のうち、関税の撤廃・削減に関する記述はごくわずかで、大半は投資や知的財産の保護、政府調達、金融取引などに関する約束だ。ルールでがんじがらめにされたTPPを自由貿易協定だと考えるのは、まったくの幻想だ。
関連記事:
輸入米で不透明取引の疑い TPP国会の火種に(日本経済新聞 2016年09月16日)
[論説]臨時国会召集 SBS問題 徹底究明を(日本農業新聞 2016年09月26日)
SBS取引調査結果 調整金 業者の4割 国産影響認めず 農水省(日本農業新聞 2016年10月07日)
[論説]SBS米調査 全く疑問に答えてない(日本農業新聞 2016年10月08日)
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農産物の輸入制度を透明に(日本経済新聞 2016年10月13日)
新潟県知事選 「農の民意」受け止めよ(日本農業新聞 2016年10月18日)
<SBS問題>国会論戦振り返り論点整理(河北新報 2016年10月20日)
<TPP>東北の農業関係者 政府に不信増大(河北新報 2016年10月23日)
投稿者によるコメント
これだけの「解説」の書ける新聞がどれくらいあるだろう。
同じ新潟日報でも数日前の社説ではそこまで踏み込んでいない。
TPP審議 批准急ぐ必要は全くない(新潟日報モア 2016年10月19日)
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