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安倍政権は論点を「TPP」にして年内解散を強行しようとしている アメリカでは誰も賛成していないが…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49954
2016.1015 歳川 隆雄ジャーナリスト「インサイドライン」編集長 現代ビジネス
■年内解散説が濃厚
10月14日から衆院TPP特別委員会(委員長=塩谷立・元文部科学相)は、今臨時国会の最大の焦点である環太平洋パートナーシップ協定(TPP)承認案と関連法案の審議が始まった。
そして17、18両日に安倍晋三首相が出席して、各党の質疑が行われる。政府与党が早期成立を目指しているのは、11月8日の米大統領選のクリントン民主、トランプ共和党両候補が反TPPを打ち出しているため、オバマ米大統領が退陣する来年1月までに米議会批准を後押しするためだ。
安倍官邸と自民党執行部は当初、同大統領選本選までの承認案衆院通過の国会運営を想定していた。しかしここに来て、野党民進党や共産党が早期成立に強く反対しているため国会審議紛糾が不可避と判断、密かに会期延長を検討し始めた。
11月30日の会期末を20日間程度延長するというものだ。そして11月8日までの衆院通過が難しいのであれば、遅くても同中旬までに衆院で強行採決をしてでも通過させて、12月中旬に参院自然成立を図るという国会運営方針に変更するというのである。
では、なぜ安倍首相はTPP承認案・関連法案の早期成立に固執するのか。TPPは長くて厳しい交渉の末、昨年10月の米ジョージア州アトランタで日米など12カ国閣僚合意をみた。その後、肝心要の米国が大統領選とオバマ政権のレイムダック化によって米議会での批准・発効の先行きが不透明になった。
そこで安倍首相は、国会承認を得たとして米側に早期批准の圧力にすることを考えているのだ。だが、それだけではない。早期衆院解散・総選挙の争点をTPP承認案の是非にするというのだ。
周知の通り永田町では今、「解散風」が吹き荒れている。来年1月の「通常国会冒頭衆院解散・総選挙」説が定着し、各党の現職衆院議員と立候補予定者は各選挙区に張り付いている。
それどころか、実はここに来て「年内解散・総選挙」説が急浮上しているのだ。それも複数の見方がある。
■問題はプーチンと会うタイミング
第1は、国会会期延長を行わず会期末の11月30日に衆院を解散し、12月18日の衆院選投開票といった日程を特定した見方である。さらに驚いたのは2番目で、安倍首相は選挙結果を最優先しTPP承認案の成否に固執せず、今国会開催中の11月18日解散・12月11日(4日)総選挙を断行するという説である。
興味深いのは、12月15日に山口県長門市で行われる日露首脳会談直前の衆院選実施なのか、それともその直後の実施なのかという大きな違いがあるが、両説はともに安倍・プーチン会談を挟んでいるということだ。
安倍首相が9月2日、ウラジオストクでプーチン大統領とロングラン首脳会談を終えた後、ロシアのラブロフ外相が今後の日露平和条約締結・北方領土返還と日本の対露経済協力のパッケージ交渉が「進展」を見るだろうと語ってから、メディア報道が過熱して国内で急速に期待感が高まった。
つまり前者の安倍・プーチン会談前の衆院選実施説は、その期待感が冷めないうちに選挙を実施すればそれなりの結果が期待できるという見立てである。一方の首脳会談直後の実施説は、領土問題で具体的な進展があった直後の選挙であれば野党が手も足も出ない結果になると期待しているというのである。双方ともに“筋読み”が過ぎるものだ。
それでもこうした「年内解散・総選挙」説が真面目に取り沙汰されていること自体、各党がすでに選挙戦に走り出している証左と言っていい。しかし、安倍首相自身からの選挙絡みのメッセージ発信はまったくない。自民党の二階俊博幹事長が解散風を煽る発言を繰り返し、公明党の山口那津男代表が選挙は何時あってもおかしくないと呼応するだけだ。
悲願の憲法改正を視野に入れる安倍首相の関心事は、果たして次の衆院選で自公合わせて3分の2を維持できるのか、がプライオリティ第1位であろう。でれあば、万が一自民党が現有290を20議席減らしても日本維新の会(代表・松井一郎大阪府知事)が連立に参加すればクリアできると、獲得議席のハードルを下げている可能性がある。
いずれにしても、国会でのTPP審議における今後の与野党攻防の行く末を見ないと、そして安倍首相の国会答弁の行間をきちんと読み取らないと、12〜1月の早期解散・総選挙なのかは判断できない。答弁に自信をもつ安倍首相の真意を探りあてるのは簡単ではない。
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